12
ロイスは目をしばしばと瞬き、やがて顔を青ざめさせて、慌てて私のベッドから出た。その弾みにベッド脇の小さな目覚まし時計が床に落ちる。やかましい音を立てて時計の銀や金色のゼンマイやら、ネジやらが小汚い茶色に色あせた寝室の床一面に飛び散る。
「あ…。」
「大丈夫ですから、少し落ち着いてください。」
「あ…。」
ちょっと面白い。
「そんな壊れたファインダーみたいな声を出さなくても大丈夫ですよ。とりあえずおはようございます。」
ルーカスがロイスの頭に手を置こうとすると、彼は何かに怯え、亀のように頭を引っ込めて、目をぎゅっと瞑って全身を硬直させた。小さなあかぎれの目立つ手もぎゅっと握り込み、口も引き結んで、まるで何かに耐えるかのようだ。ああ、また私に殴られると思ったのか。
「もう殴りませんよ。」
ゆっくりとロイスの頭を撫でる。初めてじかに触ったロイスの頭は、思ったより柔らかい茶色の髪の毛に覆われて、ふかふかしていた。初めてロイスに会った時はみぞれのせいで、髪の毛がべっとりと頭皮に張り付いていたから少し意外だった。ロイスは、ずっと昔家にいた子犬によく似ている。あの茶色のふかふかした犬も私が10歳になる前に死んでしまった。あの犬が死ぬまでは冬でも凍えることはなかったのに。あれ以来、少し寒さが苦手になった。そんなことを考えながら頭を二、三度撫で続ければ、やがて全身の硬直を緩めていき、まあるい目を私に向けた。
「おはようございます、でしょう?」
「あ…。おはようございます。」
ロイスはこちらの顔色を伺いながら、小さくかき消されそうな声で呟く。かき消されそうな声でも、今度は私にしっかりと届いた。