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”ルーカス・ヴィクトール ここに眠る”
ジョンの墓石に彫られていた文字と同じものを麓の石屋の小柄なおじさんに頼んで、小さな石碑に彫ってもらった。
石碑の場所は望遠鏡が見えて、森の中にぽかりとあいた小さな高台。ここからだったら夜空も見えるし、何よりもジョンという人の墓の隣だ。この墓を作った当時のルーカスも僕と同じ気持ちだったに違いない。慣れ親しんだ土地で静かに眠れるように、せめてもの恩返しに、いちばん空に近い場所に。
こんなに小さなところにも彼との思い出を見つけて少しくすりと笑う。
秋の風が頬を撫でて、僕はぶるりと身を震わせた。あわいの時間が空に訪れて、一番星がきらりと輝いているのが、目の端にちらりと映る。さて、そろそろ観測の準備をしなければ。そう思ってくるりと踵を返して家へと向かう。
ルーカスは念願の墓参りができたかな。




