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夜空を見上げて  作者: 森中満
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真っ黒な光のない宇宙の中で、わずかな灰色を見つけ出すのは大変だ。もう私の目は老眼が始まっている。まだ35歳にやっと届くかどうかというところだというのに。おそらくもう2、3年もすればこの宇宙の最も小さな星雲はこの目に捉えることができなくなるに違いない。だから、今日もひたすら小さな小さな星雲を観測する。灰色のもやっとしたもの。ひたすらファインダーで夜空を彷徨う。


「あった。」


見つけたら、自分の目が閉じてしまわないように、金属でできた金色にメッキのされた器具を右眼に装着する。この作業がとてもつらい。目が乾いてしまって痛くてしょうがないし、大量の光を自分の眼で集めて、色をつけるのだから、つらいのは当然だ。天文学者は、よくカイツブリに例えられる。彼らは、餌を取るために海へ飛び込む。彼らの目にはだんだん海水によるダメージが蓄積されていって、年老いたカイツブリの眼は、光を失うのだそうだ。天文学者も同じ。年老いた天文学者で自分で観測する者がいないのは、その眼はもう何も捉えることができないからだ。器具を装着した目が乾ききってしまう前に、目一杯感度をあげるべく眼を見開く。自分の目が光を映さなくなる前に、死ねたらいいなと思う。暗闇に閉ざされた世界は、私にとって何の意味も持たない。きっと、ひどくつまらないだろう。私は思い出の光の中で生きるなんてまっぴらごめんだ。


「薄っすらと赤。右端は薄い青。中心付近は緑色。」


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