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10 噂



強烈な二人と別れたロメオは自分の探索兼討伐を進める。


彼等が残していったマーンベア-の利用できる部位や魔石を貰おうかと考えたが、それは違うのではと思い、そのままにした。

その後は日が暮れるまで狩りを続けて、時折見付ける果物を採取する。知っている果物はどんどんもぎ取って影部屋に入れていくが、始めて見る果物や野菜らしき物は、用途が分からない物なので数を抑えて集めていく。


(図鑑なり、知識ある人に教えてもらうべきだな。マールはどうかな?ギルド職員だから詳しいと思うけど)



そんなことを考えてギルドに彼女がいたら聞いてみようと思い山を下りていく。背負う荷物は下山の前に影から取り出して詰め込んだ今回の戦利品。

狩りの最中は邪魔にならなかったが、帰りはこんなパンパンな荷物を背負うことを面倒だと思う。


(他の人達よりはずっと楽だけどさ)



買取所で戦利品を卸して証明書を貰い、ギルドでは前に会話した通りマールの列に並ぶ。


「プリプリンゴに塩味(しおみ)スイカ、ニヤニヤ鹿の報償金です。お受け取りください」


「はい、確かに」


お互いに丁寧な対応で金銭のやりとり。

それを終えるとフゥっと気を抜いてマールは軽口を入れてくる。



「それにしてもロメオは本当にEランクなんだね。正直言うと信じてなかったのよね」


「....そういうのってさ、もうちょっと遠まわしに言うもんじゃないの...」

報償金を渡しながら小馬鹿にした事を言うマール。けれど悪気が無く思った事を言った様なので強く言えない。


(素で言えるのが恐ろしい...)


「だって初めて見た時は頼り無く見えてさ、顔の良い街の人が遊びに来ただけだと思ったの」


そんな事も正直に言われるとは思わなかった。からかいでは無く、これまた思った事を言っている様なので彼女に照れは見られない。

勿論、こんなストレートに女慣れしてないロメオは赤くなる。それが目に分かる程に赤いと誰でも指摘したくなる。


「おやおや~、戦闘能力はあるけど恋愛経験は無いのかなぁ?」


「うっ、うるさいなぁ!旅でそれどころじゃなかったんだよ!この都市でこれから彼女を見つけるからいいんだよ!」


「ふふ、ゴメンゴメン。それよりも友達から見付けないといけないんじゃない?誰も知り合いがいないみたいだし、もし良かったら一緒に探そうか?」


事実を指摘され怒るロメオだが、謝罪を込めた返答に見栄を張る返しが出来る事に気付き、ドヤ顔に早変わり。



「へへ!いやいや、実は昨日友達が出来たんだ!今度、明後日に会う予定でさ、まさかすぐに出来るとは思わなかったよ。流石グリンジョン!本当に何でも手に入るんだね!本当嬉しいよ!」


「私は友達が出来て、そんなに喜ぶ人を初めて見たよ...」

ドヤ顔で報告するロメオに少しホロリとするマール。



冒険者は討伐した魔物の強さや手に入れた珍しい採取品を自慢する人が多いが、こんなにも友人一人が出来た事に喜ぶ者は初めてだ。むしろ微笑ましく思い、何故か笑みが零れてしまう。



「それにしても本当、出会いというものは沢山転がっているんだね。さっきもあのエルガン・ロンタルさんと話すことが出来たしさ」

嬉しそうに話すロメオを見て、可愛い所があるもんだと思っていたマールはその名を聞いてギョッっと固まってしまう。



「...エルガン・ロンタルってあの裸の紳士の?」

一転して真面目な表情になるマール。出会ってから1度も見たことが無いその顔は受付嬢そのものだ。


「まぁ...そう言われているその人。恵まれ山の中で会って話したんだ。強くて優しくて格好良くて、それでいて凄いモノを持ってるよ。あの人は。出会って痺れるって、ああいう状況の事を言うんだって思ったよ」


「...ロメオ君。そのことについてはあまりおおっぴらに言わない方が良いよ」


「えっ?どうして?確かにまぁ...半裸だったのは変だとは思ったけど、それ以外は目標にしてもいいと思うけどな。マールもこの都市にいたらあの人の話は聞いているんじゃないの?」

マールの芳しくない反応に、疑問を持つ。



「...ロメオ君は知らないみたいだね。私は、話は話でも好きじゃない話を結構聞くなぁ。私のお兄ちゃんも被害にあったって言ってたし」


「...それってどういうことだい?悪い人には見えなかったけど」


(マールは彼に対して好意的ではないみたいだ。お兄さんが害を受けたって言うけど...不用意に力を振るう人では無かったのも確かだ)

そんな人だったら自分は殺されていた可能性が高い。





「...他人の目があるから、ココでこれ以上は言えないかな。...ロメオ君。3日後って時間あるかな?」


「大丈夫だけど、何か噂について教えてくれるの?」

正直、彼に関することなら知りたい。悪い噂がなんなのか。あんなに誇り高い人にそんな事は無いと思いながらも、気になってしまう。



「ええ。3日後は無理にでも仕事を午後までに切り上げておくから。お昼にビックロードの『動物ベンチ』の狼ベンチで待ち合わせね。悪いけど、どんな所かは調べといて」


(女の子と待ち合わせって、しかも秘密の話のために。これってもしや話に聞くデー)


「言っとくけどこれはっデートじゃないから!カウントしないでね。私もそのつもりじゃないし」


期待が顔に出てたのだろうか、怖い顔で釘を刺されてしまった。ロメオは少し俯きながら「はい...」と返事をする。


そんな自分の醜態が面白いのか、周りを見たらニヤニヤしている人が多い。

特に女性だ。マールの隣にいたエルフの受付嬢なんて顔を真っ赤にしながらも笑っている。どうやら清い精神を持つとされるエルフにも良いネタになったようで。



そんな状況に恥ずかしくなり、速足でギルドを出る。

マールとは歴史と迷宮の採取品について話をしたかったが、また今度になりそうだ。




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