冒険者ギルドで登録だ
「じゃぁ次は私が」私がそう言うと、先輩が手で遮った。
「次はわたしぃ〜」そう言ってウィンクしてみせる。
「どうぞどうぞ」私は先輩に先を譲った。
先輩がルンルンとカウンターに近づいて両腕を鑑定者に差し出す。
「お願いします」お縄を頂戴する人みたいだなぁと思った。
「でも、きれいな手を見せたらニートになっちゃうんじゃ…」私が心配してそう言うと。
「園子はニートがいいんだろ」さっきうなだれて帰ってきたみかかさんがそう言う。
「えっ!」
「ニートはレベル20で賢者になれるから」
「初耳ですよ!!」「レベル30で魔法使いになれるとは聞いたことがあるかもですが」
「哲子ちゃん魔法使ったよね」そう言えば。
私は自分の手を見て私は魔法使いなのかもと思った。
先読みして手を差し出した先輩だったが、鑑定者は頭を振って両手でばってんを作った。
「手を見せて貰う必要はありません」
「そう」素直に手を引っ込める先輩。
「あなたの職業はなんですか?」
「学生だからニートみたいなものだと思うけど」
「いいえ、他の何かです」
「科学者?」
「先輩は科学者って言うよりもマッドサイエンティスト」
「そこのアナタ!」ビシっと鑑定者に指さされる私。
「今なんとおっしゃいましたか?」
「マッドサイエンティスト?」
「おおっ」「意味はわからないけどそれですよ」「それはどういう意味なんですか?」
「狂った科学者?」
「バーサーカーです」
「(笑)」大いにウケる私とみかかさん。いくるみちゃんは必死に笑いを噛み殺している。
バーサーカーの登録証を持って帰ってきた先輩は私とみかかさんに向かって暴れた。バーサーカーだけに?
「このジョブはチョット予想外過ぎない?」登録証を苦虫を噛み潰すようにして眺める先輩。ややするとそれをポケットに仕舞った。
「さて、次は私行ってきます」ビシッと敬礼ポーズを決めて気負うこと無くカウンターへと向かった。
「お願いします」
「手を見せて下さい」「はい」手を見せて、私はこう言った。
「私は魔法が使えるんですよ」
「うんうん」
「だから魔法使いですかね?」
「うんうん」そして私の顔を見てこう言った。
「知力が足りないわ」顔をひきつらせる私。
後ろから聞こえる先輩とみかかさんの笑い声。
「じゃぁ、もうニートでいいですよ」
「いいえ、違います」
「へぇ」何なんだろ。
「あなた家業は?」
「ブルセラショップだけど」
「それが何かはわからないけど、ジョブはわかったわ」
私が受け取った登録証に書いてあったジョブはと言うと。何だと思います?
「商人か」先輩が登録証を見てそう言った。
「はい、そうです」
「何が出来るの?」
「道を歩いてると時々お金を拾えます」
「そ、それは便利だネ」「お金を見つけたら私に教えて欲しいヨ」
「いいけど〜」
こうして冒険者ギルドに登録したふかばすのパーティー構成は。
ニート・ニート・バーサーカー・商人となった。
余談だが冒険者ギルドはその名をフルキャストと言った。そして、街から歩いてアジトに戻るまでに20ゴールド拾いました。