あなたのための幸せ屋+
前回の作品の続編を作っちゃいました。
正直、自信がありません。
前回の作品を楽しんでいただけた方は、多分今回も楽しんでいただけると思います。
〜1日目〜
ワシは今、入院中じゃ・・・。
毎日が寝てばかりの、つまらん生活を送っておる・・・。
今日は、こっそり病院を抜け出してみた・・・。
外は気持ちが良いのう。
風も、太陽の光も、空も、最高じゃ。
ワシは、車椅子に座り、散歩しておった。
病院にはいたが、身近のことは寝てばかりでわからん。珍しい店ばかりじゃ。
そこに、変わった店を見つけた。
「〜あなたのための幸せ屋〜
あなたの幸せお売りいたします。」
ワシは、驚いた。
最近はこんな店も出ておるのか。
でも、本当に幸せをもらえれば、どれだけ嬉しいことだか・・・。
とりあえず、店に入ってみるかの・・・。
カランカラン・・・。
“いらっしゃいませ”
これはまた、可愛らしい女の子が働いておるわ。
大変じゃのう・・・。
「こんにちは。幸せを売ってもらえるかの?」
すると、彼女はワシの顔をじぃっと見つめだした。
“はい、あなたはそれほどの良いことを、息子さまにそそいできたようですね”
よくわからんが、どうやら買えるようじゃ。
「では、それを頂こう。」
“かしこまりました”
彼女がそう言うと、またワシの顔をじぃっと見つめだしてきおった。
「どうかしたかの?」
ワシは無視をされた。思ったより、無愛想な子じゃのう・・・。
しばらくしてから、普通の姿勢に正してお辞儀をした。
“ありがとうございました”
「いえいえ。こちらこそ。」
おままごとだったのか・・・。幸せを簡単にもらえるわけが無かろう。
まぁ・・・それは、それで楽しかったから、良かろう。
「さようなら。」
ワシがお辞儀すると、彼女も最後に気を使ってくれた。
“お大事に・・・”
「ありがとう。」
〜2日目〜
ワシは、今日も病院で寝ていた。
いつもどおり暇じゃのう・・・。
せめて・・・最後に息子に会わせてほしい・・・。
昨日のことを思い出すと、涙が止まらなかった。
すると・・・。
ガチャリ・・・。
病室のドアが、開く音がした。
ワシは涙を拭き、窓の方を見た。
そして、嫉妬した・・・。
うらやましいのう・・・。息子は仕事で面会に来れないのはわかっておる・・・。でも・・・。
布団をギュッと強く握って、歯をかみ締めておると、その手をそっと何かが包み込んだ。
ワシは振り向いた・・・目の前にはいるはずのない、たくましくなった息子が笑いかけておった・・・。
「久しぶりだね。父さん。」
驚きのあまり、声が出なかった。が、息を整えてから、声をかけた。
「そ、そうじゃのう・・・。」
突然の出来事に、笑うしかなかったが、息子もしっかりこっちを見て、笑っておった。
「仕事はどうしたんじゃ?」
そう言うと、あまり言いたくなさそうにしおった。
何があったんじゃろうか・・・。
「今日から、しばらく休暇をとったんだ。父さんのためにね。」
怒られると思ったじゃろうな。まぁ、その通りだがな。
「何をやっておるんじゃ!仕事を休むなんて・・・。」
なぜか、ワシは途中で口を閉ざしてしまった。
最後まで叱ることが、なぜかできなかった。
昨日のことを、思い出してしまったからじゃ。
しょうがないから、説教はやめて、日常会話を楽しむことにした。
「まぁ、別にかまわん。わざわざすまないな。ワシの為に。」
「いいんだよ。父さんの体のことも心配だし。」
「それと、どうじゃ?最近、仕事は?」
「ボチボチってとこかな。父さんこそどう?お体のほうは。」
その質問には、なかなか答えるわけにはいかんかったが、しょうがなく答えた。
「ワシは・・・ワシの命は、そう長くないんじゃよ・・・。」
息子は、驚いてから黙り込んでしまった。
「そ・・・そうなんだ・・・。あ・・・もう面接時間が終わりそうだから、近くの小さなホテルに泊まったから・・・。」
「そうか・・・。」
元気が無さそうにワシが返事をすると、息子は笑って、明るく励ましてくれた。
「また明日来るから。いろいろ持ってくるよ。果物とか、せんべいとか・・・いろいろね。じゃあ、また明日。」
「おう。楽しみにしておるよ。」
息子は、病室の部屋を静かに出て行った。
ワシは今日が一番幸せじゃった。
もしかしたら・・・あのお店の子のおかげかの?
嬉しさのあまり、心の中で冗談を言ってしまった。
ワシは・・・明日が楽しみになってきた。
〜3日目〜
今日は、少し早く起きてしまった。
また、息子が面会に来てくれるはずじゃ。
楽しみでしょうがない。はやく来ないかのう。
ワシは今、心の中では子供のようになっておった。
そして、しばらく待っていると・・・。
ハッ・・・また寝てしまっていた。
だが、今ので少々時間がつぶせたはずじゃ。
今は何時じゃ・・・?
ワシがきょろきょろしておると、誰かが病室のドアを、ガチャリと開けた。
「おはよう。父さん。」
息子が部屋に入ってきた。
ワシの顔は、自然と笑顔にあふれていた。
が、ちょっと疲れたせいか、頭がクラッとし、倒れそうになった。
「だ、大丈夫!父さん?」
軽くうなずき、自動販売機でお茶を買ってくるように頼んだ。
息子は返事をし、病室を出た。
しばらく、横になっておったが、そのうちフッと意識を失った・・・。
そのまま・・・手術が行われた。
全身麻酔をかけられている父さんが、ベッドに横たわり、慌しく手術室に運ばれていった。
僕にはその時・・・声をかけることしか、できなかった・・・。
手術中、僕はただただ、待っていた。父さんの手術の成功を願いながら・・・。
上のランプが消えると、中から先生が出てきた。
そして、結果が告げられた・・・。
〜エピローグ〜
あの日・・・父さんの病気は悪化し、手術を試みたが、治療しきることはできず、死んでしまった・・・。
最後に、僕は父さんに声をかけようと思い、顔の白いハンカチをどけた・・・。
すると、父さんの顔には、笑顔がうっすらと残っていた。
父さんは、最後まで幸せだったんだ。
僕は、父さんに始めて面会に行った時、正直、父さんのあそこまでの元気のよさは驚いた。
気難しい父さんが、あそこまで笑って・・・。
たぶん・・・病院に一人でいるのがさびしかったんだと思う。
僕は、父さんに声をかけた。
「父さん・・・。今まで、おつかれさまでした。そして、ありがとうございました。僕を育ててくれて・・・いろいろ教えてくれて・・・叱ってくれて・・・そして遊んでくれて・・・ありがとうございました。僕は、しっかり仕事をがんばるので、安心して天国で見守ってください。」
そして、顔に白いハンカチをそっと乗せ、病室へ向かった。
僕は、病室にある父さんのものを、しぶしぶ片付けていた。
すると、僕宛の手紙が一通、見つかった。
父さんが書いた手紙だ。
「竜人よ。元気にしておるか?ワシはな・・・本当のことを言うと、寂しいぞ。お前が元気にしておるか心配じゃ。だが、そうも言ってられんようなんじゃ。ワシの命もそう短くない。だが、お前はまだ命数尽きとらん。精一杯生きるんじゃ。会えれば、元気でな。城嶋 利光より」
僕は、手紙を読んでいるうちに、涙を流していた。
拭いても拭いても、流れてくる。
涙が止まらない・・・。
「グスッ・・・。と・・・父さん・・・。」
その場で、僕はしゃがみこんで、昨日の短い思い出に浸っていた。
ここは“あなたのための幸せ屋”
望む人がいれば、どこへでも行きます。
幸せを求める人がいれば、どこへでも行きます。
でも、それは生きることだけが幸せでしょうか?
幸せとは・・・生きているうちに、どれだけ楽しめるか・・・喜べるか・・・。
そういうことでは、ないでしょうか・・・。
――――――おしまい――――――
「何だよこれ・・・」って思った方、すいません。
「何かいいな・・・」って思った方、ありがとうございます。
でも、次作るのはもうちょっと違う作品にしようと思いますので、今回はもうこれでおしまいということで・・・。