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大した事のない非日常を持った我ら!  作者: TDW
We with the extraordinariness which amounts to little!
3/23

「いやだ」

なんだかんだで付いて行く事にした。


でしょうねー


なんて思わないで欲しい。

一応昨日の件は俺の中でも衝撃と言えば衝撃だったのだ。



『人間の指から火が出る』



これがどういった事なのか、気にならない人間なんていないのではないだろうか。

パイロキネシスなんて呼ばれる人間がいるらしい。

聞いた事くらいあったのでネットでちょろっと調べてみたが、

本当に実在するか眉つばであった。



その眉つばが、隣にいるのである。

スマホから線の着信音であろうピロンピロンと鳴り、

その度ににいそいそと指を動かしながら、デレデレした顔になる

奴ではあるが、実際にこいつは指から火を出して見せたのだ。



ちなみにそれは熱くないのか?と聞けば「熱くない」と言う。

燃え移らないのか?と聞けば、「燃え移る」と言う。

危険人物認定して、政府の届けていいのか?と言えば「全力で否ぁっ!」と言う。


実際こういう人物が近くにいて、身の危険を感じた場合

何処に言うべきなのかと、本気で考えネットでも色々検索してみたが、

該当するものは無かった。

間違いなくこっちの方が病院送りにされるとしか思えない

この現状をどうにかすべきである。どうにもできないだろうが。





さてさて、津崎が言うには、ここが例の連中の溜まり場であるという。

溜まり場と聞いて、


どっか廃屋であったり、

橋の下であったり、

どっかの学校の一室であったり、


なんて事はないので何処か拍子抜けした。

なにせここは、




「え?ガ○ト?」



庶民の味方であり、大手チェーンのファミリーレストランだったのだ。




「2名様ですか?あ、先にお客様がいらっしゃる?・・・・あぁ」




あぁ、の後に( )付けで察されたような気がした。

この店員の対応だけで、いかに常連であり、いかに迷惑をこうむっているのか

少しだけ伝わった気がする。



奥には6人の人間がおり、男女共々の混成メンバーであった。

津崎はその男女6人組に背を向け、俺にこう告げた。




「紹介しよう!『大した事のない非日常を持った我ら!』 

 通称『We with the extraordinariness which amounts to little!』だ!」



え?なんだって?

言葉として、ぱっと出なかったのだが、津崎は俺の表情で読み取ったのだろう。




「俺達が『大した事のない非日常を持った我ら!』

 通称『We with the extraordinariness which amounts to little!』さ!」



お前は何を言っているんだ。


なんて言葉が書かれた外人の絵が脳内に浮かびあがった。



なんだろう、どう返答すべきなんだろう。

発音すげぇえええとか言っておくべきなんだろうか?

通称という言葉の意味を教えてやるべきなんだろうか。



とりあえず、


「お、おう」


とだけ言っておいた。







いつまでも突っ立ってる訳にもいかないので、隣から席を寄せ一つにし、

ソファー側に津崎を、イス側に俺が座る事でいつでも逃げ出せ・・・

飲み物を取りに行く態勢を整える事にした。


俺らが座った事でどことなく、和やかなムードになったわけでもないが、

なし崩しに自己紹介が始まったのだった。






一人目が言う。


「私が魚仁美よ!昨日の事は謝るわ!けどしょうがない事だったのよ!!」


全く謝るような感じではなく、俺はこいつの事が一瞬で嫌いになった。

確かに顔立ちは綺麗であり、女子高生という制服補正がかかっている

とは言え、さぞモテるであろうなとは、思うが。

可愛いは正義、否

素直な心こそ正義なのである。



2人目が言う。


「俺が疾風迅だ!・・・・・・・・・・・・・・・・・」


なんか色々背筋がぞくぞくする事を言っていたが、

本名は山田・・・山田・・・なんだっけな、とりあえず先輩らしい。

同じ高校の一つ上だそうだ。どうりで同じ制服なわけだ。

ネットがこれだけ発達したこの世の中で、先輩のような人間は一般的にも

多く知られるようになっている。正直、生きにくいのでは?と不安になる。



3人目が言う。


「俺は斎場愁!!人が増えて心強いぜ!」



中学生らしい。丸刈りの元気いっぱいの子であった。

さっきからドリンクバーに良く行くなと思っていたのだ。

この年齢に飲み放題のジュースというのは天国としか思えないだろう。



4人目が言う。


「その妹で斎場彗です。見てもわかると思いますが。1卵生の双子です」


さきほどのドリンクバーの子に髪の毛が延びた。

としかいいようのない女の子だ。

同じ年齢なのにやはり女の子の方が精神年齢は上なんだろうか、

やたら落ち着いているように見える。



5人目が言う。


「私は各務唯といいます。どうぞよろしくお願いします」


一言で表現しよう。

そこにシスターさんがいた。

いや、ここから何も物語は始まらないから安心して欲しい。

本当にそこにシスターさんがいるのだ。


宗教系の学校に通っているらしく、というか学生服なんですかそれ!?

という驚きに対しても慈愛としかいいようのない表情を浮かべ、

温かみのある言葉で肯定された。




そして最後の人が言う。


「僕が最年長になるんだけど、葉向匠といいます。よろしくね」


大学2年生のようで、ひょろっとたよりない感じの人だ。

こういう頼りなさそうな人に限って有名な大学に通っている!!!


と思わせてFら・・・・・・・、



何気なく聞いてみた。


頭が高あぁい!!頭が高いぞ!!このお方をどなたと心得る!?

とか言いだしそうになった。

学生証出されて思わず、ははぁ!!!ってなった。




そして馬鹿が言う。



「俺が津崎健次郎!!

 『We with the extraordinariness which amounts to little!』に!!

 俺達の仲間に入ってくれるよな!?」





いきなりであるが、寿限無という話を知っているだろうか。

昔、ある一家が自分の子供に長生きして欲しいという気持ちから

物凄く長い名前をつけた。

その名があまりにも長い為に日常生活で色々と支障をきたす。という物語である。

きっとここで、「え?なんの集まりでしたっけ?」なんて聞けば流暢で長い英語が

その都度発せられるかと思うと溜息しか出てこない。


むしろ何度か言わせてみてやろうか。

もしかしたら1回目と2回目、3回目と4回目では

若干単語が変わるかもしれない。

昨日でスラスラと言えるようになった津崎を褒めてあげたい気もするが、



いやいやいやいや褒める?何を考え出すんだ。

とりあえず答えなんて決まっているじゃないか。

俺は時と場合と、人を選んで発言するやつなのだ。



「いやだ」



津崎にはやっぱり否定から入るのが妥当な所であろう。

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