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大した事のない非日常を持った我ら!  作者: TDW
一週間
15/23

水曜日 ~店員の目、汚れる目~

完璧なる拒否権を発動した俺は、何事も無くあの場から去り、帰宅した。


専業である母親が作る晩御飯を食べ、自室に戻り宿題を終わらせつつ、スマホを

適当にイジり、線でのやりとりが終わった後、床へとついた。



河川敷での事で、多少の興奮は当然の如くある。

津崎が「いや~あるんだね~不思議って」なんて言った事も今なら頷けるだろう。



だが、奴が彼らと共にある事を選んだように。


俺はこのいつもの生活を選んだ。


喰う、寝る、動く。


これだけでいいではないか。




うむ、



ビバ!!日常!!お帰り!俺!










津崎が朝からおかしい。

いや、いつもおかしいのだが今日は、挙動が不審である。


そんな彼の行動を見て、クラスも騒がしかった。


「津崎の奴大丈夫か?朝玄関前で会った時バラの花束持ってたぞ?」


と級友から声がかかり


「津崎君ね、さっきトイレで何かの発声練習?してたよ?」


と、女子から目撃情報を受け、


「津崎が英語の小テストで満点を取った。どうなっている?」


職員室に呼び出される。





「津崎が!」

「津崎が!!」

「津崎が!!!」

「津崎が!!!!」




もう津崎の話題で持ちきりだった。

主に俺の方へと。



なんだろうこいつら。

俺を津崎担当だと勘違いしているのだろうか。

やめてほしい。

奴は確かに友人の一人ではあるが、彼の全てを知っている訳ではなく、

彼の面倒を見ている訳でもない。



今朝クラスで会った時は、昨日の件もあって気まずい思いをした。

が、そんなのは俺の方だけだったらしく。



「おはよう!!なぁ~聞いてくれよ~!」



いつものようにこんな感じで五月蠅かったのだ。

まぁこいつのこういう所が、こいつのキャラらしいと言えばキャラらしい。

五月蠅い奴だが嫌われるタイプではないそんな奴なのだ。



五月蠅い事に定評があり、やや変わっている事に定評がある。

それをもってしても、奴の挙動は周りの目から見たらおかしかったのだろう。






部活に青春の汗を流しに行く級友を見送りつつ、さて今日も・・・・、



「なん・・・だと・・・」



身構えたのだが、津崎の奴は既に何処にもおらず、その衝撃からか、

つい条件反射でリアクションを取ってしまった。


いやいやこれが普通。

昨日が異常。


少しばかり俺も毒されている。

いかんいかん。






この学校には少なくない人数の帰宅部がいる。

やれバイトだの塾だのデートだの、それぞれが帰路につくこの時間は、

校舎から校門まで伸びる道に結構な人数が集中する。


その中には当然俺も含まれている。


スマホをいじりつつ、線でやりとりをしながら帰る。



ドンっと、誰かにぶつかった。



「あ、すいません」


と、ぶつかった相手に反射で謝る。

やりとりで夢中になってしまっていたようだ。


「いや、こっちこそごめんごめん」


見た事もない人だった。


「いや、校門にすげーのがいてさ。ビックリして二度見しちまってたわ」


と、そそくさと彼は行ってしまう。



校門前・・・?

何があるんだろうと、目を向けた。




なるほど、あれは二度見もしたくなるだろう。




この高校とは違う制服の女子高生がそこにいた。


平均以上の容姿は確かに目を引くものがある。

それだけで通行人に、二度見させるは恐らくできない。



なぜ二度見したのか、



その女子高生は”バラの花束”を引っ提げ、他校の校門中央に堂々と陣取って、

道行く人間を選別するかの様に見渡しているからだ。



津崎に呪いの呪文をかけたくなる。

あいつは知っていたのだ。

こいつが来るのを知っていたのだ。



そこに立っていたのは紛れもなく、魚仁美だった。





「やっときたわね!!待ってたわ!!」



「ひとちがいっすわー」



華麗にスルー



「ま・って・た・わ!」



やめろ腕を離せ。

言うとおりにするから離すんだ!

とりあえずここから離れよう!わかった!話し合おう離して離れよう



周囲の視線を物凄く感じる。その目には好奇心しか宿ってるように見えない。

何せ目の前にいるのは他校の女子。しかもバラの花束付き。

なんだろうやめてくれないだろうか。






「お前には羞恥心というものがないの?普通違う高校の門で我がもの顔で

 ど真ん中に立つのすげーよ!」



「あのくらい全然大した事ないじゃない、褒め言葉になってないわよ」



褒めたつもりはないし、褒め言葉ですらない。

だめだこいつ。

やっぱりこいつ俺はダメである。

だって日本語通じないもの。ある種の電波的な者を感じてしまいます。



いいからついてきなさいと、さもないとずぶ濡れにするわよ。と脅され

連れてこられたのは、




「いらっしゃいませー。2名様ですね、奥へどうぞ」


やっぱりガ○トだった。

接客したのは昨日の店員ではなく、冷ややかな目で見られる事も無い。

いい笑顔の素敵な女性だ。


とりあえず食べ物を注文し、セットでドリンクバーを頼む。




「単刀直入に言うわ。なんでアンタ断るの?」


「むしろこっちが聞きたい、何故そこまで拘る」


「はぁ?・・・知ってるでしょ。だからよ!」


「いや、知ってはいるよ。でも俺には津崎みたい事はできないんだが?」


「そんなの知ってるわよ!でも・・・それでもいいのよ!!」


「俺は良くないんだよ!俺には俺の人生がある、ほっといてくれ」




「お待たせしました。カルボナーラです」


と、魚が頼んだカルボナーラが運ばれてきた。




「うぅ・・・」


「いや、そんな恨めしい目で見ても無駄だから。ノーはノー。断じて否だ!」


「信じらんない!こんな可愛い子が言ってるのよ!?普通断らないと思うわ!!」


「いやそんな事ないから。人間無理なもんは無理なんだよ!ちゃんとあの時も

 答えただろう!?い・や・だってな!」



「お待たせしました。チキンカレーです」


ドンっと音をたてて、俺が注文したチキンカレーが目の前に置かれた。



あれ?なんかちょっとカレーこぼれたんだけど、どういうことなの。



講義の視線を向けると、店員は既に去って行っていく途中で、


「最っ低」


ボソっと言ったつもりだろうが良く聞こえていた。

え?何が?

なんだろうとてつもなく妙な誤解を与えたのではないか。

あの可愛らしい笑顔は何処へいってしまったのだろう?



飲み物を取りに行こうとして、数ある視線に気づいた。

周りにいる客が一斉に元の位置に姿勢を正すのが見えた。




・・・・・・・。




「最低だな・・・アイツ」

「なにもこんな所で何度も振らなくたっていいのに・・・」

「あの女の子可愛いのに・・・もったいない・・・」

「うらやまけしからん」

「ッチ」



・・・・・・。



もっとヒソヒソと喋れや!!!!!

木曜日は木曜日に投稿

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