チャッカマン
「なぁ・・・・昨日の夜の事なんだけどな・・・俺の人差し指から”火”が出たんだがどう思う?」
目の前に座っている友人:津崎健次郎が、真顔でこう言ってきた時、
俺はどうするべきだろうか。
「あだ名をチャッカマンに変更してやる」
とりあえず、俺も真摯に答えてみる事にした。
「そうそうそう、いつでも安全に火をつけられ・・・って違うわっ!!
真面目に聞けや!真面目に相談にのれや!」
「あぁぁあん!?ふざけんな!お前常識的に考えて人の手から火が出るわけ
ないだろうがっ!なんなのこれ!?真面目な話があるって聞いてわざわざ
高校生の懐事情では高いス○バまで足を運んだのになんなのこの仕打ち!?」
「お前これ真面目な話なんだって!ほんと昨日の夜、指から火が出たんだよ!
今も・・・・ほら!ほら!まじ見てみ!火出てるだろほら!」
津崎が、人差し指だけ俺の目の前で立て、指先の方が赤く光った。
ろうそく程度の火がそこには灯っている。
いやいや冷静に分析してる場合では無い、
「なん・・・だと・・・・」
とりあえずこういうリアクションを取ることにした。
「そんな使い古されたネタはいいんだよ!とりあえずこれどうすべき?
ちょっとマジ昨日の夜から寝れなくてやべぇ!マジどうすべき?
ってあれ?お前なんでこんな人が真剣に話してるのにスマホいじってんの?」
「いや・・・とりあえずNA○Aの番号でも調べてみようかな・・・って・・」
「なんでN○SA!?おいお前まさか、人体実験的な何かに献上しようとしてる
んじゃないだろうな!?やめておけ!むこうは宇宙専門だ!」
「お前の指で、宇宙がヤバイとか言えばなんとかしてくれんじゃね?」
「無理やり宇宙と繋げようとするなっ!
ねえ、ほんと真面目に考えて。俺ほんと結構悩んでるんだって!
これもう中学生の頃トイレ入って大きい方してて、何気なくマイサン
の確認をしたら発芽を発見したくらいの衝撃走ってんだけど!?」
なんでこいつの下の方ふさふさ事件をカミングアウトされなければならんの
だろう。悲しくなってきた。
「オッケーわかった。冷静に考えてみよう。こういう時こそ冷静にだな」
「なんでスマホをポケットにしまって、サイフをカバンに入れながら喋ってんだ?
完全に帰ろうとしてんじゃねーか!待って!置いてかないで!一人にしないで!?」
こいつ今日はとても気持ち悪い。
もうコーヒーもない事だし本当に帰っていいじゃないかと思う。
「ちょっとそこの貴方!!少し話があるから私についてきなさい!!」
さてここで問題である。
男2人組で座っているのに対して、恐らく声質からするに女であろう人物に
いきなりこういう風な声をかけられた場合どういう反応を取るべきであろうか。
俺はこう応えた
「わかった!わかった!帰らないからYシャツを掴むな苦しいわっ!!」
当然の如くスルーである。
いくら真横で声を発したからといって、もしかしたら席向こうの人間に声をかけている
可能性だってあるわけだ。
そもそも『貴方』だけではどっちを指しているかわからないし、
こんな女子高生に知り合いはいない。
流石に”いきなりなんで横に立ったんだろう”という疑問でチラ見をしたが、
この付近の制服としては見慣れないものでやはり知り合いではないだろうしそもそも・・・
「なぁどうしよう!?燃料とかあんのかな!?燃料とかあんのかな!?
なに?血か!?俺の血を使って火を起こしてんのこれ!?」
この五月蠅い奴が人の襟首をつかみながら叫んでいるのである、
真横の奴になんて相手している暇はないだろう。
なんてやっていると、横顔に思いっきり水をかけられていた。
何を言っているのかわからないと思うが俺もなにされたか一瞬わからなかった。
完全に無防備な状態で見えない場所から顔にある程度の衝撃を受けた際、
そのショックは怒りメータが軽く振りきれるくらいの勢いがある。
これは俺だけではないはずだ。
よって
「にしやがんだこのやろう!!」
と怒鳴る事となった。
そしたら、また水をかぶっていた。というか浴びせられていた。
Yシャツはもう完全に濡れ、中が透けている(男子高校生)
使っていたトレイには水が溜まり、酷い有様だった。
なにより、
「いいからきなさい!!」
「ちょ・・・まて!!なんだよ誰だお前!引っ張るなっておい!!!!!つかこいつ力強っ!?」
無理やり連れて行かれるチャッカマン。
取り残される俺。
悲惨な現場。
店員がカウンターから出てきていた。
何故か俺が怒られて、清掃作業まで行った。
一体どういう事だゴルァ!!!!