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【ホラー】集

2つの眼

作者: 蠍座の黒猫

まだ、下げないでくださいよ。残ってますから。ホッケ。あ、ところで、こんなところで、する話でもないのかも知れませんが、私、この前、夜中にトイレに行ったんですよ。ええ。それでね、あの、トイレのドアに紐をかけてるんですけどね、そうです。小さい子どもがいるので。もうすぐ2歳ですよ。早いですか、そうですかね。だからね、その子が、トイレのドアを開けてしまうんですよね。ええ、中に入ると汚いですからね、そうですよ。年寄りもいてますからね、そのポータブルトイレの中身も捨てますのでね、はい。え、掃除?してますよ。それなりですけどね。まあ、妻はあまり、やりませんのでね。私が、ときどきね。あ、紐ですね、あの、紐と言いましてもね、あれです、ポシェットというんですか、あの小さい女の子が肩からかけるやつです。ピンク色のやつでね、ふわふわしてる、え、そうです。フェイクファーっていうんですか。そうですか。いいですよね。あれは。とっても。まあ、とにかくそれなんですけどね、紐が切れたんですよね。猫が遊びまして。たくさんいますのでね。猫は。それで、そのポシェットをつかおうと。その紐をね、輪に結んでトイレのドアにひっかけまして。柱に金具をついてましたのでね、それともう一つの輪をひっかけて。結構しっかりとできるもんですよね。そんなのでも。ああ、すいません。トイレに行ったんですよ。夜中にね。腹を下してしまって。トイレのドアは開いてました。ほんの少しですけどね。まあ、家族もいますからね。誰か入って、出てくるときにそのままにしたんだろうと。そのときは、思いましたね。ええ。それで、戸をあけました。そしたらなにか光ってるんです。2つずつ、真ん中の方と少し後ろで。あんまり気になりませんでしたけどね。電灯をつけたら、猫だったんですよね。黒と茶のトラ猫と、茶トラが香箱になって、縦に並んでました。あのね、うちのトイレ、少々変わってるでしょう。縦長ですよね。なんでかしりませんが。畳一枚半ぐらいありますよね。一番奥に洋式便座がありますけどね。だから、その前の床にですね、置いてるカーペットの上に、並んでたんですよ。なんだ、と思ってね。ま、猫を出しました。それから、用を足しまして。トイレから出ようと思ったらね、ドアの取っ手にぶら下がってるあれ、ふわふわしたポシェットのところにね、猫がじゃれてました。だからね、そいつをどけて、ドアに紐をしっかりかけてました。確かにかけたと思いますよ。ええ。それからね、へやにもどってきました。でも、また、催してきまして。ええ、下してましたからね、腹を。何食べたか?いやあ、思い出せないんですけどね。ええ、とにかくまた、行ったんですよ。トイレに。そしたらね、また、開いていたんです。ドアが。さっきより、すこしだけ大きく開いてた気がしましたけどね。まあね、変だな、とは思ったんですがね、なにしろ早く用を足したかったので、開けたんです。ドアを。はい。そしたらね、また光ってました。なんか多い気がしましたけどね、気にせずに、そうです。催してますからね、何しろ。緊急だったので、はい。それで、そのまま電灯をつけましたらね、また猫がいたんです。困りますよね。4匹いましたよ。黒と茶のトラ猫と、茶トラと、白黒のぶちが2匹。きっちり、2列縦隊で並んでました。ちょっと滑稽なくらいでしたよ。ま、だから、また猫を出しまして。用を足して、出たんです。また、じゃれてましたよ。あれに。三毛猫がね。ま、それはおいて、ドアに紐ををかけました。確かにかけたんですよ。はい。え、何が言いたい?いや、ちょっと、もう少しなのでね、あの、なんか最近こんな感じで、すいません。続けますけどね、部屋に戻ったら、また、催すんです。ひどい下痢で。いや、汚いですよね、申しわけないんですけどね、また、行ったんです。トイレに。そしたらね、また、開いてるんですよね。ドアが。おかしいなと。思ってね。ドアの隙間がさっきよりもね、またすこうしだけ大きく、開いてるんですよ。でもね、やはり、あれでね、あの催してますのでね、開けたんです。ドアを。そしたら、また光ってました。もう、床一面じゃないかと思うくらい、黄色く光る目が並んでるんです。少し、ぞっとしましたよ。さすがに。いや、でもね、飼い猫ですからね、結局は。だからね、なんだろうなと、思いながら、電灯をつけたんですよ。ま、予想通り、猫が並んでました。今度は、4列縦隊です。トイレの床みっしりと。足の踏み場もないんですよね。いや、けっこう大変でしたよ。8匹出しましたから。ほとんど勢ぞろいしてました。うちの猫。ほんとに。え、すいません。もう少しですから。いや、まったく、すいません。なんか、あれで。あ、続けます。でね、そのトイレを出たんです。また、三毛猫が遊んでるんですけどね。それはおいて。紐をかけたんです。ドアにね。また。そして、え、また行ったんだろうって?そうなんですよ。わかります?いやあ、かなりな下り様で。また、行ったんですよ。トイレに。そしたらね、またですよ。また、開いてました。トイレのドア。今度はもう、半分くらい開いてるんですよ。隙間から、なんか白い猫がすでに、見えてました。でね、またかと思って。まあ、その時も結構きつく催してましたのでね。開けたんですよ。ドアを。そしたら、見えました。ソフトボールぐらいはありましたよ。大きな黄色い光る眼が2つ、足元からこっちを見ました。私ね、反射的につけてしまったんですよ。電灯を。そしたらね、それが、いました。大人の人間よりも大きかったと思いますよ。三毛猫でしたね。床一面に腹ばいになってたんです。こっちを見ながら。ええ。こわいでしょう?なんだかわかりませんよ。あれは。それでね、なんか怖いもの見たさで、よく見たらね、後ろ脚は、奥の壁までありましたよ。それでね、前足だったんですね。ドアの隙間から見えてた白い猫は。だから、私はそれの右前脚をまたぐかたちで、立ってたんですね。いや、凍り付いてきましたよ。それは。ずっと見てますからね。私を。大きな黄色い眼でじっと。針みたいになってます。瞳はね。見てました。魅入られたといんでしょうかね。私も目を離せなくなってしまって。何秒かそうしていたと思います。そしたら、それがね、耳まで裂けた大きな口をゆっくりと開けてね、真っ黒でした。口の中は。牙は、長くて大きくて鋭く尖ってました。汚れてましてね、黄色くて。そんなこと覚えてるんです。舌が真っ赤な血のような色をしてました。それでね、私の眼を見ながら、太ーい声で「にゃぁー。」って、鳴いたんです。それから、目が覚めました。へやのベッドで。夢だったのかなとも思ったんですけどね。やけにリアルだったから。まあ、こんな話ですよ。すいませんね。長々と。はい。あ、その秋刀魚、下さい。いや、いいんですよ。骨だけでも。どうもあの夢以来、魚が堪らなく好きになりまして。ばりばりばり。それとね、いい匂いがするんですよ。堪らないんです。いや、やりませんよ。荒らしたりは。行儀が悪いでしょう。いくらなんでも。そうなんですよ。でもね、生ごみが積まれてるとね、あるでしょう。いつか、なんておもいませんか?え、思わない?そうですかね。そんなことないでしょうよ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 文字がみっしりつまっていて読みにくいかな、と思ったんですが、面白いようにすらすらと目に飛び込んでくるんです。 語り口が巧みなおかげでしょうか。落語を聞いているかのように、楽しませていただきま…
[一言] 一貫して会話文調で、そこから不思議と面白さが湧いてくる。気がします。
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