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G†C/onter code  作者: 渡鳥
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Episode 2 “美人は侠気を孕む”

前半はコロシアムについてで非常に簡単です。っていうか二話、三話はソウルイーターについてがメインです。

 コロシアム・・・ソウルブレイカー達が命を削る闘いの場はここでのみ許されている。超古代に存在した魔道科学の結集であるソウルイーターの力を100%解放させることができる能力者同士の闘いは、下手をすると相手の命どころか、都市すらも消し飛ばしてしまうほどの力を秘めているからである。そのため、魔道兵器の力を抑える特別な魔方陣を敷いた上に建つこの建物の中でのみ、ソウルイーターを利用した戦闘行為は許可されている。




「・・・・それが、コロシアムよ。」


今二人の目の前には巨大な建物が立ちはだかっている。恭介にあらかたの事を教えたミカは、最後に彼をコロシアムへつれて来た。


「・・・・。」


 恭介は目の前に建つ建物に手を触れてみる。手に伝わる金属とも土くれともつかぬ不思議な感触。どこか温かみを感じるその建物に、彼は大いに興味をそそられたようである。








恭介がここ・・・Grave crossに到着してから三日たった。その間にミカは彼にこの世界で生き抜く術を身につけさせ、何をすべきかを教え込んだ。最初は半信半疑な恭介だったが、やがて何をすべきか理解したようである。しかし、恭介にはまだ一つだけわからないことがあった。


「なあミカ、“GOD”ってなんなんだ?」


 恭介は歩きながら肩にとまっているミカに問いかけた。自分がソウルブレイカーだということ、ソウルブレイカーが戦い続ける宿命にあること、ソウルイーターとは何か。知るべきことは全て知った。しかし、わからないのが全ての話に断片的に出てくる謎の単語“GOD”。しかし、彼女はそれを話すことに抵抗があるようだ。今ここで聞くべきか、恐らくは最後に知るべきであろう単語を、彼は思い切って聞いてみることにした。


「・・・GODはね。まだ誰も見たことがないのよ。」


GODという単語にミカが顔を曇らせる。彼女の表情からは何も読み取れないが、やはり聞いてはいけない事だったらしい。


―――やはり、聞くべきではなかったか。


聞くべきではないことを聞いてしまったことに、恭介は後悔した。二人の間に重い空気が流れる。恭介は重い空気を振り払おうと、話題を変えることにした。


「と、ところでミカ。今日は何のために商業区に来たんだ?」


――――商業区とは地下世界にのみ生きるソウルブレイカー達のための生活の場である。地下世界には通貨という概念はなく、ソウルブレイカーという証明そのもので何でも手に入れることが出来る。無論、それでは犯罪が多発してしまう無法地帯になってしまうのだが、ソウルブレイカー達の秩序を守る“ファミリー”の存在が無法者の存在を許さない。言うならばファミリーとは、ソウルブレイカー同士の同盟“チーム”を総括するいわば元締めのようなものだ。ファミリーは強大な力を保持しており、秩序を守らない者、裏切り者をファミリー総出で徹底的に殲滅するのである。そんな訳で、地下世界は危ういバランスの上で完璧な秩序を結んでいるのである。


ミカは恭介の肩から飛び出した。


「ソウルブレイカー同士が戦うにはソウルイーターが必要だっていうのは判るわよね?今日はそのソウルイーターを手に入れる為にここに来たのよ。」


そう言ってミカは、ある施設の前に立ち止まった。彼女の立ち止まった施設の看板には“朝鶴”と書かれている。建物自体は古ぼけており、こじんまりとしているがそれがかえって歴史を感じさせ、老舗のような雰囲気を醸し出している。


「ここは・・・呉服屋じゃないのか?」


「大体当たっているけど、ちょっと違うわ。まあ、入ればわかるわよ。」


ミカに促されて店の中に入った恭介は、その様子に驚いた。内装こそはどこかの呉服問屋のようであるが、店の中いたるところにカードが飾られている。店中に所狭しと飾ってあるカードの大群は、見るものに妙な圧迫感を与えた。恭介は自分が立っているそこが入り口だというのに一歩も動けず、立ち尽くしている。


「いらっしゃい。」


店の入り口で立ち尽くす恭介に、カウンターから声が聞こえてきた。声の主の方向に顔を向けると、そこには着物を着たロングヘアーの女性が立っていた。女性は、恭介に顔を向けにっこりと笑顔を見せている。


「あらあら珍しい、こんなに若いお客さんが来るなんて。・・・あなたも魂を駆る者なのかしら?」


あくまでもにっこりと、そして丁寧に話す女性。外見から想定するに30歳ぐらいだろう、藍染の着物を着た姿からは見るものに高貴な印象を与える。容姿端麗なその姿はすれ違う者を瞬時に振り返させる程で、俗に言うならば“見返り美人”というものだろうか。


―――魂を、・・・駆る?


聞きなれない単語に戸惑う恭介。と、そこに脇からミカが耳打ちした。


「ソウルブレイカーのことよ。」


恭介に耳打ちしたミカは、そのまま女性の目の前に飛んで行く。


「お久しぶりです、サエ様。」


ミカが女性へ丁寧に挨拶した。


「あら、ミカちゃんじゃない!ひさしぶりね〜。元気だった?」


「はい、サエ様もお元気そうで安心しました。・・・あの、この人が以前話した。」


「あら、じゃああの子がミカちゃんの新しいパートナーなの?」


「はい・・・。」


と、サエはミカとそこまで会話をして、入り口にいる恭介を手招きする。こっちへ来い、という意思表示なのだろう。挨拶がしたいのか、それとも彼に興味が湧いたのか。いずれにしても、呼ばれたからには無視をする訳にはいかないだろう。そう思い恭介はサエがいるカウンターに歩いていくのであった。








「ねえねえ、彼女いるの?」


サエに客間へと通された恭介は、気がつくと質問攻めにされていた。質問はもっぱら恭介自身についてだが、終わることのないサエの質問に恭介は自分自身のことについてでも正直うっとおしく感じていた。そんな恭介の空気を感じ取ったのか、机の上に座っていたミカがここぞとばかりに話を切り出す。


「サエ様、お話はここまでに・・・。実は今日ここに来たのは日和話をするためではないのです。」


そう、彼らが今日彼女の元を尋ねたのは、ソウルイーターを入手するためである。決して彼らは目的を忘れていたわけではないのだが、サエの作り出す独特な空気で言い出すタイミングがつかめなかったのである。別に彼らは特別急いでるわけではない。だが、これ以上続けると埒が明かないし、なによりも恭介自身が持ちそうにないからだ。


「あらあら、ごめんなさいね。わたしったらついお話に夢中になっちゃって。」


そういうとサエは立ち上がり、背後にある桐ダンスから一つの箱を取り出してきた。


「あなたたちが欲しいのはこれでしょ?」


サエは黒漆造りで作られた箱の蓋を持ち上げた。箱の中には数枚の紙が納められている。だが、そこに入っているものは白紙。裏にも表にも・・・いや、白紙であるがゆえに裏も表もない両面まっさらな只の厚紙である。


「・・・白紙じゃないか。」


驚嘆が混ざったような溜息交じりの声、期待はずれな箱の中身に恭介は思わず声を漏らしてしまう。まあ無理もない、散々期待させておいて白紙という結果、ある意味当然の反応とも言える。


「違うわ。・・・見ててね。」


サエはそう言うと箱の底にある紙を1枚取り出し、なにやら呪文を唱えだした。するとである、さっきまでは白紙であったはずの紙に文字が浮かんできた。


「ふう・・・、これでよし。」


サエは恭介にカードを手渡した。さっきまで白紙だったカードには新たに文字が浮かんでいる。


「Grave cross・・・。これが、ソウルイーターか?」


「そうよ。・・・でもまだ完成してないわ。それにはまだこれからあなた自身の魂を封じ込めなければいけないの。」


恭介は手渡されたカードを見る。


「でも・・・どうやって?」


「・・・それわね?」


サエはそこで話を切ると突然立ち上がった。顔は相変わらず笑ったままであるが、その笑みは最初に見た子供のような無垢な笑みと違い、どこか悪戯っぽい裏がありそうな黒い笑みである。しかし、恭介はそれに気づかず飽きもせずカードを見続けている。そして、彼女が恭介の背後に回ったその瞬間である。


――――ガシッ


女性とは思えないほどの力でサエは恭介の首元を掴み、持ち上げた。突然の事で不意を突かれた恭介は思いもかけずに目を丸くする。しかし、彼女は笑ったまま表情を変えずに恭介の耳元へ語りかけた。


「ごめんなさいね♪」


悪戯っぽく笑うサエは恭介の手からカードを取り上げ、机にそっと置いた。サエは机の上に片足を乗せる。着物の裾から足が露出しているがお構いなしだ。そして、サエは恭介の首を掴んだまま、背中から思いっきり机に叩き付けたのである。


――――ダァン!!


「ごふっ・・・・・・!!」


世界が揺らぎ、机に叩きつけられた衝撃で一瞬呼吸が出来なくなる。しかし、恭介は更に衝撃的なもの目にした。


「覚悟はよろしくて?」


そう言うサエの手には日本刀が握られている。


――――殺される。


恭介の頭の中でシグナルが鳴り響く。しかし本能が危険を告げても、体の痛みが指の一本ですら動くことを許さない。涙があふれ、吐き気を催すほどの恐怖が彼自身の体を包み込む。


「えい。」


気の抜けた声を放ちながらサエが恭介の胸の辺りに刀を突き立てる。混濁した意識の中でさえ、リアルに伝わる異物感と身を裂く痛み。魂に直接突き立てられたかの様な激痛の中で、彼の意識は徐々に消えていったのだった・・・・。







Episode 2 完

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