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密着八日目

 再びナラト・テルミさんに取材するための口実を、スタッフ全員で考えていました。その途中、ナラトさんから「もう一度、どうしてもお話ししたいことがある」と連絡をいただきました。渡りに船です。


 早速、光のチャーペンソンの施設へ向かいます。ナラトさんは道場にいるとのこと。


 道場にはナラトさんと、黒スーツの男二人が待っていました。他の信徒には聞かれたくない話とのことで、ここで取材を始めます。ナラトさんが話したいこととは何なのでしょうか。


ナラト「この前、修行の様子を取材していただいたとき、信徒たちが恐れてるもんを無理やり聞き出すところしか見せられんかったでしょう? 私が問い詰めるばかりで、パワハラしてるみたいやったじゃないですか? それだと不公平やと思って、私も自分が恐れているもんを、明らかにしようと思ったんですよお」


 そう語るナラトさん。あくまで自分も恐怖を感じる人間の一人であり、信徒とは何も変わらない、光のチャーペンソンの一員であることをアピールしたいようです。


 では、ナラトさんが恐れているものとは、何なのでしょうか。


ナラト「ネズミです。ネズミが恐ろしくてしゃあない。ほんま嫌いなんですよ。特にこの道場は古いから、よく出るんです。ネズミは噛むし、病気を媒介することもあるし……何より、私たちの秘密を外に漏らそうとするから、嫌いなんですよねえ。で、ネズミはどの信徒ですか? あなたたちを手引きしたネズミは、どいつですか?」


 私たちが光のチャーペンソンの秘密を探っていたことが、ナラトさんにばれていました。黒スーツの男二人が詰め寄ってきます。非常に危険な状況です。


 私たちは桑島(くわしま)さんの名前を伝えました。身を守るためには、そうするしかないと判断しました。それに、今こそ絶好のチャンスだとも考えたのです。桑島さんはナラトさんと直接話す機会が欲しいと言っていました。ここで桑島さんの名前を出せば、ナラトさん自身が桑島さんに会おうとするのではないかと。


ナラト「桑島……ああ、最近入った新人の子か……。汚いネズミは、()()()()あかんねえ」


 ナラトさんの言葉を聞いた黒スーツの二人は、私たちの横を素通りし、道場から出て行きました。おそらく、寮にいる桑島さんを探しに行ったのでしょう。私たちにとって、逃げ出す大チャンス。すぐに道場から撤収しました。


 これ以上京都に長居すると、光のチャーペンソンの信徒に追いかけ回されてしまうかもしれません。急いで京都駅に向かい、新幹線のチケットを購入します。


 京都駅を出発する新幹線の中で、桑島さんのスマートフォンに電話をかけてみました。しかし、「電波の届かないところにあるか、電源が入っていません」というアナウンスが流れるのみ。何度かけても、つながりません。桑島さんはすでに、ナラトさんの言葉のとおり「開かれてしまった」のでしょうか。


 ただ、光のチャーペンソンの信徒たちは、一日三十分しかスマートフォンの使用が許されていません。桑島さんは時間的に都合が合わず電話に出られないだけという可能性があります。あるいは、桑島さんも私たちのように脱出でき、逃げている最中で連絡する余裕がないということも考えられるでしょう。「開かれてしまった」と判断するのは早計(そうけい)かもしれません。


 ひとまず彼が無事であることを祈り、京都を()ちました。




 翌日、さらにその翌日も電話をし、桑島さんの返事を待ちます。しかし、桑島さんから折り返しの電話はかかってきません。テキストメッセージも送りましたが、既読はつかないまま。


 私たちが京都を出て一週間が経ちました。依然として、桑島さんとは連絡が取れていません。

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