表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

短編集

休憩中に聞こえたインカム

登場人物

佐々ささき かい

・主人公、実は今までもインカムを外している間に陰口を信じられないくらい言われている。本人は積極的に接客意欲のある新入社員である。


インカム先AとB

・いつも主人公をインカムでバリバリ悪口を言うやつら。たまたま佐々木のインカムきり忘れで判明した。


エリアマネージャー

・役職は係長。この地域の3つの区画をまとめている。主人公のことは積極性がありすぎて質問も多いのでうざいと感じている。


滝本たきもと 沙彩さあや

・主人公の教育係兼相談窓口、行方不明から何か月たっても定期的に電話とメッセージを送り心配している。佐々木のことは質問したことは一度で覚え、些細な疑問も残さず解決し、お客様に常に最善の動きをしたいという信念を聞き、一目置いている。


荒巻あらまき 優斗ゆうと

・主人公の親友。助けてもらった恩を忘れたくないので、その日を毎年のリマインドにしている。主人公が心を壊してしまったことも知っており、実際に遠方に引っ越す際もなにかあったら頼ってほしいと言っていた。現在主人公を匿っている。

「佐々木、休憩入りまーす」

 インカムからは、返事が返ってきたり無線特有のガっという音だけだったり。いつもの耳にする音。もはや気にしなくてもいいし、気にもならない。休憩室のロッカーから荷物を取り出し、適当な机に座る。休憩中の人は午後二時を周ったからかまばらに座っている。

「佐々木、インカム外します」

 そう言って本体を机に置く。ルーティーンとして固定化されていたが、突如として耳に無線が聞こえてきた。外したはずのインカムのイヤホンをつけたままだったのである。

「佐々木あいつやばいよな?」

「ほんと、新人のくせにありえないよな」

「前職が何か知らないけどあんな積極的に声かけるとかやってることやばいわ」

「教える側からしたらきしょいよな」

 かなり聞いてると嫌な通信だった。インカムでも雑音に紛れない程度の声なので周りにはきっと聞こえていないだろう。と、エリアマネージャーの声がする。ひょっとして注意をしてくれるのではないか?

 期待していた僕の思考は次の言葉で粉砕された。

「お前らわかるし思うけど職場でやめとけよ? 本人に聞こえてたら後で痛い目にあうかもよ?」

「あいつが? むーりむり。あんなひょろチビ相手にもならねっすよ」

 必死に笑いをこらえる声の後に次々と嫌味や人が気分を害する言葉がゲリラ豪雨のように放たれる。無意識のうちにイヤホンの線を外していて、その音声は休憩室内にでかでかと響いていた。僕は知らんとばかりに本部の教育係に電話をかける。

「お疲れ様佐々木君、どうしたの…」

 言葉が途中で途切れるのも無理はない。最大音量のインカムから多種多様な罵詈雑言が僕の名前とセットで流れているのだ。

「滝本係長、僕早退するのでエリマネの西上寺さんに伝えてください。あと業務端末電源切るんで」

「ちょっとま…」

 係長の言葉を待たず携帯の電源を切る。そのまま着替えず上着を羽織り足早に職場を後にする。就職当時から遠方への派遣だったので社宅があるが、それではだめだ。家を特定されるというかすぐに足がつく。そこで、急いで個人端末で親と友人に連絡を入れて友人の返事を見て電源を切る。これも会社側は個人形態を知っているし、親にも万が一探されたら一情報が洩れるからだ。


 特急に乗って新幹線接続駅に行き、そのままグリーン車を窓口で手配する。オフシーズンの平日なこともあり、すんなりと人が隣にいない席が取れた。これで終点までやることは何もない。新幹線が来るまでに夕食とコーヒーを買う。それと本を一冊。

 列車は時間通りに駅へ入り、定刻通りに職場のある地域唯一の停車駅を去った。弁当を掻き込み、コーヒーで流しいれる。本も短編集なので読んでるうちにウトウトし始め、最後は少女と彼女の書いた手紙を見た医者の悲しい物語だった。そのせいか、夕焼けの崖に立っている夢を見た。波が崖にぶつかる音と、風の音だけが聞こえる。

「」

誰かが後ろから何か言ったような気がした…。

 振り向くところで目が覚める。

「お客さん! 終点ですよ」

「ぁ、ああ。ありがとうございます」

「あなたがなかなか起きなくて最後の乗客ですよ? まったく」

 半ば追い出されるような形で新幹線を後にする。改札から出ると、目の前には友人が待っていた。

「お前がああ言うなんてよっぽどのことがあったんだろ? 深くは今聞かねぇから、とりあえず車行こうぜ。あ、頼まれてた俺のサブ携帯貸してやるよ」

「昔から助けてもらってばっかで悪いな。お前には頭が上がらないよ」

「何言ってんだよ。助けてくれたのはお前だっての! いまだに認めないつもりかぁ?」

「あんなの偶然さ。昔の話はいいから行こうぜ」

「おう。酒は先に買って家で冷えてる。さぁ吞もうぜ!」

 親友の優斗は信頼のおける人物だ。昔暴行を受けていたところを返り討ちにして守った時から、病気で僕が心を壊した今もこうして仲良くしてくれる。


 僕はいい友達を、親友を持った。そう思うと目頭が熱くなる。彼と生活中に会社は内部調査や捜索は行うが、それは別のお話………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ