エピソード5ー最終決戦
平和とは、何によって保たれるのだろうか。
力か、犠牲か、それとも恐怖か。
人々が安心して暮らす街の裏側では、常に誰かが剣を握り、魔法を詠唱し、見えない脅威と向き合っている。
だが、もしその脅威自体が「守る者」によって生み出されていたとしたら――。
この物語は、Dモンスターという災厄と、それを巡る人間の選択を描いた記録である。
育成という名の犠牲を是とする者と、守るために犠牲を拒む者。
二つの正義が衝突したとき、街と人々、そして未来は何を選ぶのか。
鎖を操る一人の冒険者は問い続ける。
守るとは、縛ることではない。
奪うことでもない。
それでも――本当に、誰一人として失わずに守り抜くことは可能なのか。
これは、若き冒険者リオがその答えを探し、貫こうとした物語である。
Dモンスターの出現が増えている。
それも、人里から離れた危険地帯ではなく、街のすぐそば、あるいは街中にだ。
――おかしい。
リオの胸に芽生えた違和感は、討伐を重ねるほどに確信へと変わっていった。
偶然にしては出来すぎている。
まるで、誰かが“意図的に”Dモンスターを配置しているかのようだった。
翌朝、リオは一人でギルドへ向かった。
「おはようございます、リオ様。本日はソロ討伐でしょうか?」
受付嬢が柔らかく微笑む。
「いえ。今日は少し……Dモンスターについて聞きたいことがあって。ギルドマスターはいますか?」
「はい、マスター室にご案内しますね」
重厚な扉がきしむ音を立てて開く。
部屋の奥、窓際に立っていた男が振り返った。
「おはよう、リオ君」
ギルドマスター・フェンネル。
穏やかな表情、落ち着いた声。その裏に、何かを隠しているとリオは感じていた。
「立ち話もなんだ。座ってくれ」
二人は向かい合ってソファに腰を下ろした。
「……単刀直入に聞きます」
リオは視線を逸らさずに言った。
「あなたの“魔法”についてです」
「それが、Dモンスターと関係あるのかい?」
「あります。あなたは自分の魔法について決して語らない。でも、世の中には複数系統の魔法を扱える人間がいると聞いたことがあります。
もし、テイム系と空間系を同時に使えたなら――」
フェンネルの指が、わずかに動いた。
「前回、カウゲッコーが街中に突然現れたことにも説明がつきます」
しばしの沈黙。
フェンネルは深く息をつき、問い返した。
「もし君がギルドマスターだったとして……冒険者の質が下がり、慢心が蔓延していたらどうする?」
「……それは、答えになっていません」
「平和な街にDモンスター級の脅威が現れた時、彼らは本当に人を守れると思うかい?」
その言葉に、リオは立ち上がった。
「つまり、あなたが“認めている”ということですね」
フェンネルは、初めて苦笑した。
「私はギルドマスターとして、冒険者を“育てた”だけだよ」
「違う!」
リオの声が部屋に響く。
「守るために、犠牲を出していいわけがない!。みんなを安心させるために犠牲を出すなんて、守る立場の者が守るべきものを犠牲にしていいわけがない。みんなそれぞれ守るべきものを守っている。食をとうして生活を守ったり、子供を守るために働いたりしてるんです。誰しもが守るためになにかをしてるんです。消して守るために守るものを犠牲にしません」
フェンネルの目から、温度が消えた。
「……残念だよ、リオ君。君は優秀すぎた」
次の瞬間――
「ロッキングチェーン!」
鎖がフェンネルの体を縛り上げる。
「君なら分かってくれると思ったが」
「分かるわけない……!」
フェンネルは、なおも笑った。
「だが、真実を知った君を生かしてはおけない」
彼が詠唱を始めた瞬間、部屋の空気が歪んだ。
「トランスファー・サマニング」
黒い渦が発生し、轟音とともに天井が崩れ落ちる。
次の瞬間、巨大な影が街へと降り立った。
――ヌーラット。
Dモンスター上位種。
「巨大な体躯と前歯……街は壊滅するだろう」
フェンネルの高笑いが響く。
家屋がなぎ倒され、人々の悲鳴が上がった。
「ロッキングチェーン!」
鎖が巻き付く――が。
バキッ!
狂気じみた怪力で、簡単に引きちぎられた。
「ハハハ! 一人で何ができる!」
ヌーラットの牙が迫る。
「シャープカッティング!」
血飛沫と悲鳴。
だが、止まらない。
「リオ!」
駆けつけたのはロゼだった。
「フェンネルがDモンスターを召喚した!本人は拘束している!」
「すぐ皆が来る!それまで耐えろ!」
スワンの仲間たちが次々と合流する。
だが、攻撃は通るものの決定打がない。
「このままじゃ街が……!」
リリーが叫んだ。
リオは歯を食いしばる。
(鎖は“縛る”ための魔法じゃない……
捕らえ、守るための“檻”だ)
「リリー!僕と同時に撃って!」
「……分かった!」
リオは全神経を集中させた。
「キャプチャーボックス!」
「ファイヤーピラー!」
熱を帯びた巨大な檻が、空から落ちる。
高温で強化された檻は、前歯でも破れなかった。
ヌーラットは咆哮し、やがて動きを止める。
「……捕獲、完了」
リオは大きく息を吐いた。
事件は終息した。
フェンネルは投獄され、真実は公表された。
――三日後。
「リオさん、特Sランクへの昇格が決定しました」
「……特S?」
「国家級ランクです。実力、判断力、そして信念。すべてにおいて申し分ありません」
「恐縮です……」
一週間後、街では祭りが開かれた。
スワンとリオを称えるための、盛大な祝祭だった。
空を見上げ、リオは思う。
守るために、犠牲は要らない。
鎖は、縛るためではなく――
人と未来を繋ぐためにあるのだと。
こうしてDモンスター事件は幕を閉じた。
だが、街を守る冒険者・リオの物語は、これからも続いていく。
みなさん、どうだったでしょうか。最後まで作品を読んでくださりありがとうございました。今回の話のDモンスターは実は外来種をもとに考えています。最終回のヌーラットはヌートリア、スクミレッドはスクミリンゴガイ(ジャンボタニシだったり」、、、。作品のタイトルアウトランダービーストも外来種ということで名づけました。ぜひ、これを機に外来種に興味を持っていただけると嬉しいです。最後になりますがここまで読んでくださりありがとうございました。これからもリオの活躍を願って、、、




