エピソード3-潜む影
本作「潜む影」は、Sランクパーティー《スワン》の新たな冒険を描いた物語です。前作でDレッドバックスパイダーの脅威を退けた彼らでしたが、その裏ではすでに新たな異変が静かに進行していました。本編では、移動能力を持たないはずのDモンスター《ダークバス》が、なぜ北の泉に姿を現したのか――その謎を追いながら、仲間たちの連携や成長、そしてスワンらしい軽快な掛け合いを楽しんでいただければ幸いです。次なるDモンスターの気配が迫りつつある中、彼らの前にどんな試練が訪れるのか。新章の幕開けとしてお読みください。
―北の泉―
「今日はやけにギルドが騒がしいな」
ギィィィ――。
フォードギルドの扉を押し開けた瞬間、慌ただしい足音がこちらへ向かってきた。受付嬢が息を切らしながら声を上げる。
「お待ちしておりました! スワンの皆様に、至急の討伐依頼です。北の泉にDモンスター『ダークバス』が出現しました」
「わかった。依頼の受理をすぐに頼む。」
短く返したロウガは踵を返し、アジトへと急いだ。
「みんな集まってくれ」
号令とともにスワンの面々がリビングへ集まり、椅子に腰を下ろした。
「北の泉でダークバスが現れたらしい。ここから丸一日かかる。一時間後、出発する」
リオ、リリー、ロゼは真剣な表情で頷いた。
そして一時間後。スワンはアジトを後にし、北への街道を進んだ。
「そろそろ暗くなってきたし、今日はここで休まない?」
リリーが辺りを見回しながら言った。
「そうだな。ロゼも疲れてそうだし、ここで明日に備えるとしよう」
ロウガが答えると、リリーは手際よく薪を積み上げ、火を灯した。炎の赤が周囲の木々を照らし、静かな夜が訪れる。
「北の泉って、どんな所なの?」リオが問いかけた。
「漁業が盛んな街だ。だが、最近はダークバスによって漁獲量が激減しているらしい」
ロウガの表情は重かった。
「魚型モンスターは本来移動できないはずなのに……どうやって泉まで来たんだろう」
「誰かが放流した? でも相手はDモンスターよ。そんな無茶をする人、普通いないし……」
ロゼも不安げに炎を見つめた。
その夜、メンバーはそれぞれの考えを胸に眠りについた。
翌朝、北の泉の町へ到着すると、ロウガは市場で声を上げた。
「この魚を十匹くれ」
「まいど!」
袋いっぱいの魚を抱えたロウガに、リリーが首を傾げる。
「リーダー、なんでそんなに?」
「今回のモンスターは、口が大きいが故に、口に入るものなら何でも飲み込む。湖の広さを考えると、餌を投げて反応を探った方が効率がいい」
「なるほど、索敵用ね」
「すぐ逃げられても困るから、拘束魔法で釣るよ」
リオの提案にロゼが楽しそうに笑った。
「いいじゃん! 釣りバトルってわけだ!」
彼らは泉の周囲を歩きながら、魚を一匹ずつ水面へ放った。
「もう七匹も投げたのに全然いないじゃん……」
リリーが不服そうに口を尖らせた、その瞬間――。
バシャァァアアアアッ!!
巨大な水柱が天へ向かって弾けた。
「リオ! 釣り上げろ!」
ロウガの声が響く。
リオは即座に両手を構え、
「ロックチェーン!今回は先が釣り針バージョンだぜ!」
針の形に変化した鎖が水中へ飛び込み――ガチン!
巨大な影の口に食い込んだ。
「うわっ、えげつない引き……!」
リオの腕に凄まじい力が伝わってくる。
バシャーン!!
ダークバスも湖面を割って跳ね上がり、激しく抵抗した。
「飛び跳ねた瞬間に攻撃するぞ!」
ロウガの号令とともに、三人が同時に魔法を放つ。
「ウォータースピアー!」
「ラージナイフ!」
「ファイヤーボール!」
衝撃が炸裂し、ダークバスは苦しげに暴れる。
バシャーンッ!!
次の瞬間――
巨大な影が、一直線にリオへ向かって跳ねた。
「――っ!」
誰もが目を見開く中、リオだけが冷静だった。
拘束魔法を解除し、身を翻して跳躍を回避。
着地と同時に両手を地面へ向けて構える。
「ロックチェーン!」
地面から起き上がった鎖がダークバスを絡め取り、地面へ叩きつけた。
「さすが、特例昇格のリオだぜ!」
「ほんと頼りになるわね!」
メンバーが口々に称える。
「そのままにしておいて! ラージナイフ!」
ロゼが素早く近づき、巨大な刃でダークバスを三枚におろす。
「エクスプロージョン! ――ダークバスの素焼き完成!」
香ばしい煙が立ち上がった。
「……おいしい!」
「モンスター素材とは思えないな」
スワンの面々は一気に笑顔になった。
「そういえば、討伐の証拠どうするの? 食べちゃったけど」
リリーの一言で――
「あっ!!」
全員が同時に叫んだ。
「……この骨、持って帰るしかないな」
ロウガが苦笑すると、メンバーは吹き出した。
こうしてDモンスター『ダークバス』の討伐は完了した。
だが――
~なぜ移動できないはずの魚型モンスターがこの泉に現れたのか~
「今度は……この街にDモンスターを……」
こまで「アウトランダービースト」をお読みいただき、ありがとうございました。今回の物語では、スワンのメンバーが初めて魚型のDモンスターと対峙し、異変が単なる偶然ではないことを示す重要な鍵が登場しました。謎の声、そして不自然なモンスターの移動――背後にいる存在は一体何者なのか。今後は、その黒幕の姿が徐々に明らかになり、物語はより大きな脅威へと進んでいきます。日常のユーモアと迫力ある戦闘、その両方を引き続き楽しんでいただければ幸いです。次章もぜひお付き合いください。




