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アウトランダービースト  作者: サキザキ


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2/5

エピソード2ー東の森の異変

本作では、冒険者ギルドを舞台に、仲間との連携と成長を軸にした物語を描いています。今回の章では、Sランクパーティー「スワン」が初めて公式に受けた討伐依頼に挑み、通常では起こり得ないモンスターの移動という“異変”を追うことで、世界の奥に潜む不穏な気配が姿を見せます。レッドバックスパイダーの群れ、そしてその頂点に立つDレッドバックスパイダーとの戦いを通じ、リオやスワンのメンバーがどのように役割を発揮し、信頼を深めていくのかを丁寧に描きました。スワンの真価が問われる最初の戦いを、ぜひ見届けてください。

フォードギルドの掲示板に赤い札が掲げられた。

 ―討伐依頼:東の森に出現したレッドバックスパイダーの討伐(ランクA)―

「この依頼なら、Sランクパーティーの俺たちなら問題ないだろう」

 リーダーのロウガが低く囁く。リオとリリー、ロゼも頷き、受付へ向かった。

「この依頼を頼む」

「はい、受理いたしました。お気をつけて」

 受付嬢の声を背に、スワンは東へ歩き出した。街の人々の視線が注がれる。

「あれ、Sランクになったスワンじゃない?」

「特例でランク昇格した新人がいるらしいな。すげぇ……」

 そんな噂にリリーが肩をすくめる。

「私たち、すっかり有名ね」

「リオの特例昇格のおかげだな」

 ロゼが言うと、リオは照れくさそうに頬をかいた。今では彼もスワンの一員として完全に溶け込み、仲間から一目置かれる存在になっていた。


 スワンは討伐区域の情報を得るため、東の森の手前にある小さな町・ローブに立ち寄った。町のハーバーギルドには、すでに冒険者たちが数人詰めている。

「レッドバックスパイダーの情報を頼みたい」

 受付の男性はスワンの名を聞くと目を見開いた。

「スワンの皆さんですね。……レッドバックスパイダーは本来、この森に生息していないはずなのですが、最近15体ほどが確認されています。非常に強い毒と糸にはお気をつけください」

「助かる」

 ロウガが礼を言い、ギルドを後にした。

「今日はこの街に泊まって、明日の朝に討伐へ行くぞ」

「了解、リーダー!」

 その夜、リオはベッドに横になりながら考えていた。

(本来いないはずのモンスターが十五体……何かが変だ)

 胸の中に生まれた小さな不安は、完全には消えぬまま眠りへ落ちていった。


「よし、出発だ!」

「よっしゃー!」

 朝日を浴びながら、スワンは東の森へと足を踏み入れた。しかし――。

「……何もいないね」

 リリーが周囲を見渡しながら言う。

「たしかに変だ。こんな静かな森、普通あり得ない」

 ロウガも眉をひそめた。リオは足元に触れた違和感に気づく。

「しかも……そこら中に糸が張り巡らされてる」

 森の奥へ進んでも、他のモンスターに一度も遭遇しなかった。

 スワンは不自然な静寂に包まれたまま、最深部へたどり着く。

「……やっぱり、おかしい」

 ロウガが呟いた瞬間。

「上だっ!」

 ロゼが叫んだ。

 頭上の巨木から複数の影が降りてきた。赤い斑点を持つ蜘蛛――レッドバックスパイダー。さらに、その奥にひときわ巨大な影が潜んでいた。

「あれ……まさか、Dレッドバックスパイダーか!? Sランクだぞ!」

 ロゼの声はかすかに震えていた。

 レッドバックスパイダーが森を移動してきた理由。それは、Dレッドバックスパイダーのために新しい住処を見つけるためだった。他のモンスターが姿を消したのも納得できる。

「まずは雑魚を片付けるぞ!」

 ロウガが叫び、戦闘が始まる。

「シャープカッティング!」

 ロゼの刃が蜘蛛を切り裂くが、敵の殻は予想以上に硬い。

「まだ切れる!」

 だが、蜘蛛が素早く糸を吐き出し、ロゼの動きを封じ込める。

「くっ……動けない!」

「任せて! ファイヤーボール!」

 リリーの火球が糸を焼き払い、同時に周囲の蜘蛛へ牽制をかけた。

「バインド!」

 リオの拘束魔法がレッドバックスパイダーたちの足を縛り付ける。

「今だ、いくぞ! ウォーターバレット!」

「シャープカッティング!」

 連携は完璧だった。次々に蜘蛛が倒れていき、ついに全てのレッドバックスパイダーを討伐した。

 だが。

 ドシンッ!

 大地を震わせながら、Dレッドバックスパイダーが樹上から落ちてきた。巨大な赤い殻、黒光りする足、猛毒の牙――すべてが規格外だった。

「シャープカッティングっ!」

 ロゼが突撃し、刃を振り下ろす。しかし、金属のように硬い外殻はびくともしない。

「なっ――」

 次の瞬間、巨大な顎がロゼの胴を噛みついた。

「ぐわっ……! 体が、痺れる……!」

「ロゼ!」

 ロウガはすぐさま両手をかざし、

「バキュームフロー!」

 水魔法が傷口から毒を吸い出し、ロゼの顔色がわずかに戻った。

 だが、Dレッドバックスパイダーが糸を吐き出し、スワン全員に襲いかかる。

「くそっ、これじゃ動けない!」

「糸で拘束とは……だが、拘束なら負けない!」

 リオが前へ出る。

「――ロックチェーン!」

 鎖が地面から噴き出し、Dレッドバックスパイダーの四肢を絡め取った。巨体が軋みながら拘束される。

「よし、畳みかけるぞ!」

「ウォーターフォール!」

「ファイヤーピラー!」

「ラージナイフ!」

 三方向からの連携魔法が一斉にDレッドバックスパイダーを襲い、蒸気と衝撃が森に響き渡る。

 ――ドゴォォォン!

 煙が晴れると、Dレッドバックスパイダーは動かなくなっていた。

「……討伐、完了だ」


 フォードギルドへ戻ったスワンは報告を行った。

「Dレッドバックスパイダーがいた。あれが原因で、東の森に移動していたんだろう」

「Dレッドバックスパイダー! Sランクの皆様に行っていただき、本当に助かりました。今回の功績により、リリー様とロゼ様はAランクへ。リオ様はCランクへ昇格です!」

 スワンの面々は顔を見合わせ、安堵と達成感を分かち合った。

 こうして、Sランクパーティーとしての初討伐”は成功に終わった。

 しかしその頃――。

 北の泉では、新たなDモンスターが誕生しつつあった。

 スワンに迫る影は、まだ誰も知らない。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。スワンの初討伐となる今回の章では、彼らの連携の強さや、リオの成長をより明確に描くことを意識しました。また、ロゼの負傷シーンを通し、戦いの緊張感と、仲間同士の信頼関係がどれほど重要かを感じていただけたら嬉しいです。Dレッドバックスパイダーとの戦いは、彼らがこれから直面する“異変”の序章にすぎません。北の地で動き始めた新たな影が、物語をさらに大きく揺さぶっていきます。次章では世界の秘密に一歩近づく展開を描く予定です。これからもスワンの冒険を楽しんでいただければ幸いです。

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