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アウトランダービースト  作者: サキザキ


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エピソード1ー特例

突然変異体“D”に脅かされる世界で、若き冒険者リオが仲間とともに成長していく物語として執筆しました。冒険者ギルドという王道の舞台を軸にしながら、能力の組み合わせやパーティーの会話など、読者が自然と「この先どうなるのか」と感じられるテンポを意識しています。また、キャラクター同士の関係性が温かく、時に衝突し、それでも前へ進む姿を描くことを目標としました。今後の物語では、より強大なDの脅威と、彼らが抱える葛藤が交錯していきます。新たな世界への入口として楽しんでいただければ幸いです。

 この世界には、通常のモンスターとは別に、時に突然変異によって巨大化・狂暴化する個体が生まれる。それらはDと呼ばれ、人々から恐れられていた。

 街がひとつ壊滅した――そんな報告も珍しくない。ゆえにDの討伐は常に冒険者ギルドが担い、多くの冒険者がその危険と隣り合わせで生きていた。

 若者・リオがフォードギルドの扉を押し開けたのは、そんな時代のある日のことだった。

「ここが冒険者ギルドか……」

 木製の扉が軋み、旅の埃がふわりと舞った。受付嬢がにこやかに笑顔を向ける。

「いらっしゃいませ。フォードギルドへようこそ。本日はご登録でしょうか?」

「はい、冒険者登録を頼む」

 リオの声は落ち着いているが、どこか期待と緊張が混じっている。それを受け取った受付嬢は手慣れた動作で書類を差し出した。

「ではこちらにサインを。ギルドではS~Eランクがございます。依頼の達成でランクを上げられます。リオ様は初めてですのでのEランクからとなりますが……こちらがEランクカードです」

「ありがとう」

 金属のプレートを指先でなぞりながら、リオはギルドの掲示板へ向かった。依頼書が無数に貼られており、どれも冒険者たちの生活の糧であり、危険の象徴でもある。

「……“ドバード”の討伐か。鳥型のモンスター、これならいけそうだな」

 初仕事にちょうど良い。リオは依頼書を剥がし、掲示板を後にした。


 ドバードの目撃情報は、ビルの谷間の薄暗いエリア。人気もなく、風がひゅうと吹き抜ける。

「あれが……ドバード」

 黒い影が電線に並ぶように留まり、リオを鋭い目で見据えていた。

 ひとつ、ふたつ……ざっと数えても二十匹はいる。

「結構いるな。でも……まとめて仕留める」

 リオは深く息を吸い込むと、手を前に差し出した。

「ロッキングチェーン」

 地面から複数の鎖が伸び上がり、まるで生き物のようにドバードを捕まえていく。逃げる間もなく、パニックの鳴き声をあげる暇もなく、二十匹すべてが地面に叩きつけられた。

 わずか数十秒。

「……よし、終わったな」


「これがドバードの羽です」

 受付嬢は袋を受け取ると、中身を見て硬直した。

「え……こ、こんなに!? 普通は数匹討伐して、ほとんど逃げられるものなのに……。少々お待ちください!」

 彼女は慌てて奥へ消え、数分後――ギルドマスターを連れて戻った。

 ガチャッ。

「待たせたね。フォードギルドマスターのフェンネルだ。いやあ、リオ君、君の腕前には驚かされたよ。登録初日にドバード二十匹殲滅とは……特例でCランク昇格としよう」

「まじ、ですか!? ありがとうございます!」

 リオの胸が高鳴る。ギルドが実力を認めてくれるというのは、冒険者にとってこの上ない名誉だ。

 だが、その喜びの裏で――別の騒ぎが起きていた。

「だれか凄腕のハンターいないの!? Aランク依頼のためにも必要なのだ!」

「そうおっしゃられましても……ソロで動く高ランクハンターは少なくて……あっ! 特例でCランクまで上がられた方なら、あそこに!」

 受付嬢の指差す先にいたリオへ、ひとりの青年が勢いよく駆け寄る。

 ダダダダダッ――。

「君! うちのパーティーに入ってくれないか!」

「えっ!?」

「特例昇格だろう? 君ほどの実力者なら、ぜひとも欲しい! 僕はスワンのリーダー兼、水魔法使いのロウガだ。よろしく!」

 リオは驚きながらも、すぐに理解した。

 ソロよりもパーティーのほうが、高ランクの依頼を受けられる。

「……わかりました。ぜひお願いします」

「よしっ! 歓迎するよ、リオ」


 ロウガに連れられ、リオはスワンのアジトへ向かった。

 そこには二人の女性が待っていた。

「炎魔法使いのリリーです。よろしくね!」

「切断魔法使いのロゼ。無駄口は嫌いだが……仲間は大事にする。よろしく」

 個性豊かな面々だ。ロウガは上機嫌で酒瓶を揺らし、

「今日は仲間が増えた祝いだ! 飲め!」

「リーダー張り切りすぎ」

 笑い声の響く夜。

 リオは、久々に“仲間”という存在に心を温められた。


 翌日。

「今日はAランク依頼、Dスクミレッドの討伐だ」

「スクミレッド? どんなモンスターなの?」

「貝のようなモンスターさ。真っ赤な殻を持ち、卵には強烈な毒がある。触れるなよ」

 スワンは河川敷へ向かい、赤い卵が点在する光景を目にした。

「あの赤いの、全部?」

「そうだ。まずは卵から処理するぞ」

「ファイヤーボール!」

「ウォーターバレット!」

 爆ぜた卵の破片が空を舞い、リオは間一髪でかわした。

「危ねっ! 触れたら即アウトだな……」

 全員が慎重に作業し、卵を全滅させた――その瞬間。

 ゴボゴボゴボッ!

 川の中心に大きな波が起き、水柱が上がる。

「来た……!Dスクミレッドだ」

 巨大な殻が水面から姿を現す。リリーの炎が飛ぶが、スクミレッドはすぐに殻へ閉じこもった。

「殻に篭もった……厄介だね」

「このままじゃ倒せない。リリー、蒸し上げるぞ!」

「了解!」

「ウォーターフォール!」

「ファイヤーピラー!」

 大量の蒸気が発生し、巨大な蒸し風呂状態となる。耐えきれなくなったスクミレッドが悲鳴を上げ、殻から顔を出した。

「やっと俺の出番か……ロックチェーン!」

 しかし、スクミレッドが纏う粘液のせいで鎖が滑る。

「くっ……抜ける……!」

「任せろ。――シャープカッティング!」

 ロゼの一閃が閃光となり、スクミレッドの頭部が宙に舞った。

 その巨体が地響きを立てて倒れる。

「ふぅ……なんとかなったね!」

「初討伐としては上出来だ」

 スワン4人の、初めての大仕事だった。


 その夜、ギルドに戻ると――。

「隊長、Sランク昇格おめでとう! これで俺たちもSランク依頼を受けられるな!」

 ロゼが嬉しそうに拳を掲げた。

 ロウガは照れくさそうに頭を掻く。

「みんなのおかげだ。これからも――」

 その言葉は、酒と笑い声に溶けていった。

 だが、誰もまだ知らなかった。

 これから訪れる“最悪”の討伐は、

 今までとは比べ物にならないほど、過酷で――

 彼らの運命を大きく揺るがすことになるということを


後まで読んでいただき、ありがとうございます。本作は、仲間と共に成長していく冒険活劇として書きましたが、リオやスワンのメンバーにはまだ語り尽くせない背景が多く、その一端だけを今回は紹介しています。Dスクミレッドの討伐は、彼らにとって最初の大きな試練にすぎません。これからの物語では、Sランク冒険者としての責任、未知のDとの戦い、そして仲間同士の絆がより深く描かれていきます。読者の皆さまが「次も読みたい」と思えるよう、さらに面白い展開を目指して続編を書いていきます。応援いただければ幸いです。

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