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ユールの黒嵐  作者: イチシメ ケイスケ
3/5

⚠️この話は読まないでください。

注意⚠️

この話は飛ばしてください。すみません、、、

ユール歴2953年晩夏――


イクセルン城下から北東へ数十リーグ離れた高原地帯――タルノリ領 ノルヴァレン高原。


その中央に位置する、歴史ある要塞、

『カストル城』。

黒岩と呼ばれる巨大な一枚岩を削り出して造られた、

古くからある城塞都市である。


城全体は黒く染まっている。

切り立つ高壁のため内部から外はほとんど見えない。

内部は螺旋状の大通路から細い狭路、

地下洞窟、

巨大ホールに至るまで迷路のように張り巡らされ、

要所に見張り塔や隠し通路が仕込まれている。


城の第二層・中央セクター、刻印番号L2-C-R12。

ここに、セイリク・ハルナードの家族は暮らしている。


ここ最近カーシュ侯国と緊張関係にあったカストルには、兵役義務があった。

16歳から2年間。明日はついにセイリク達の入隊式である。


「明日は早いんだから。今日は早く帰って、早く寝なさいね」


セイリクの母親リアナが優しく声をかける。


「はいはーい、いってきまぁす」


セイリクは肩越しに適当臭い返事を投げ、薄暗い通路へと駆け出していく。


城内の小径を抜け、彼が辿り着いたのは『暮霧亭』。

第二層中央セクターの一角、石の柱に揺れるランタンが柔らかな灯りを落とす小さな酒場だ。

同年代の友人たちはすでに集まっていた。


「セイリク、おせーぞー」


エリンコがにやりと笑いながら手招きする。

鍛冶屋の息子らしい無骨な声だ。

ミランナはひらりとマントを揺らし、涼やかな眼差しで促す。

シオンは静かに頷くだけだ。


酒場の一隅、曲がりくねった木製の一枚板に並んで腰を下ろす。

エリンコは胸が高鳴るのを感じた――明日はついに入隊式。

二年間の兵役が、彼らをさらに遠くへ連れ去る。


暗がりに溶け込む石壁の息づかいを背に、エリンコが大杯を掲げる。


「さぁさぁ、いよいよ明日だな。カンパーイ!」


「カンパーイ!」


グラスを合わせる音が、ひときわ大きく響いた。エリンコ以外は、途切れそうな笑顔を必死に繋ぎ止めていた。


エリンコは、この中で唯一、明日を待ち望んでいる。元々そういう性格だった。


お調子者で、頭もあまりよくない。

しかしリーダーシップはあるし、いざとなると強く出られる。

将来成功するのはこういう奴なんだろうとつくづく思う。


「お前ら、希望の配属は決めたか?」


「俺は弓兵かな。敵に近づきたくないし。」


シオンが答える。

シオンは孤児院育ちだ。


エリンコとは対照的な性格で、

ガツガツしていないが頭はキレる。

静かだが意見ははっきりしているタイプだ。


ミランナはエリンコのいとこだ。


女子だから、兵役はなかった。

エリンコの家の血筋なのだろうか、彼女は気が強かった。

エリンコと違うのは、頭が良い点。自己中で、強調性のかけらもないが、彼女のやることは大抵うまくいく。


「セイリクは?行きたいとこないの?」


ミランナが聞いた。

セイリクは困ったように眉を寄せる。


「んー、決まってないんだよなぁー」


みんな、ニヤリとした。顔に『だろうな』と書いてある。

セイリクは優柔不断。皆が知っている。


明日からの日々に対する不安感はしだいに薄れてゆき、

その夜4人は昔話に花を咲かせた。

小さい頃エリンコの起こした数々の事件、

城内のかくれんぼ、

気まぐれに城壁へ忍び込んだ冒険――

くだらない話に笑い声が絶えない。


4人の時間なんていつでもとれるものだと思っていた。

でも、明日からは違う。

その晩は本当に楽しかった。


やがて、時刻は深く。

4人は名残惜しそうに席を立った。


「また会おう」


みんないつも通りの挨拶をして別れた。


城の闇はひときわ深まる。


内心、明日なんて来てほしくない。


しかし今更どうしようもない。


セイリクはあの長い螺旋道を駆け上がった。


―そして未だ複雑な気持ちのままで、

セイリクは、深くも浅くもない眠りに浸る。

お読みいただきありがとうございます!

評価等してくださると嬉しいです。

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