3.馬車救出
3.馬車救出
ハコブは慌ててバスに戻り、ペットボトルの水と、救急セットを取ってきて、馬車の所に戻ってきた。
まずハコブは、金髪の中年男の目に入った血液をペットボトルの水で洗い流し、
頭の傷を止血薬で治療し包帯を巻いた。
そして、腕の折れている男性には、添え木を使い、包帯で巻いた。
意識のない2名は馬車の床に寝かせた。
そして、うめき声を上げている女性は、よく見ると、腕の所から血を流しており、
こちらも消毒剤でゴミを洗い流した後、止血薬で治療し包帯を巻いた。
消毒剤をかけた時は大きな声を上げたが、
包帯を巻いた後は、痛みが少し収まったのか、
小さな声で、
「ありがとう。」
と返事があった。
(俺は医者じゃないから、これ位しかできない。)
とハコブは心の中で思う。
「あんた、変な服を着ているな。それに髪も黒い。」
金髪の中年男が声をかけてくる。
「目が見えるようになったんですか?」
「ああ、少しな。
俺は、この馬車の御者だ。フラン町からクレメント町行の馬車だ。
しかし、ゴブリンに襲われ、馬が停まり、ゴブリンはベルトを切り、馬は森へ逃げていった。
襲って来たゴブリンは6匹だ。
3匹が荷物を奪っていった。
いずれここに戻ってくるだろう。
この馬車はもう馬がいないので動かせない。
君は馬を持っているのか?」
そう尋ねてくる。
「いや、馬は持っていないですが、良い方法があります。」
「いい方法?」
「任せてください。」
ハコブは、バスに戻ると、緊急牽引用の鎖を取り出し、
バスのフックと馬車を急いでつないだ。
そしてバスの運転席に戻り、ギアを1速にし、ゆっくりとバスを動かす。
1m程動かし、バスをすぐ止める。
そして、外に出てみると、うまく馬車を牽引できていることを確認する。
(よし!OKだ。)
ハコブは急いで馬車に戻り、馬車を牽引していくことを御者に伝える。
「そうか。ちょっと、どのように引いていくか、私も確認しよう。」
「動けますか?」
「大丈夫だ。」
御者の男が馬車の外に出ると、固まった。
「な、なんだ!?あの、なめらかな箱は?見たことない色使いで?
あ、あれは、ガラスか?こ、これは馬車なのか?いや、馬がいない。
動くのか?」
「あれは、現在開発している新型の馬車で後で説明します。
とにかくゴブリンが戻ってくる前にこの場所を離れましょう。」
「そ、そうだな。君は一体?
我々の味方なのか?」
「もちろん味方です。」
「…、ここからだと、フラン町が近い。
引き返して、フラン町まで引っ張って行ってもらえないか?
町までは一本道だ。」
「わかりました。」
ハコブは馬車を降りると、バスに戻り、ゆっくりと牽引している馬車ごとバスをUターンさせる。
そして、時速15㎞/hから20㎞/h位で注意しながら牽引していく。
ここは泥道なので、馬車などが轍にはまり、スタックすることを恐れて走っていた。
道は平たんになり、森の中の泥道はほぼ直線に伸びていた。
バスはこの道を2時間半ほど走ると、やがて、森の道の先の方に、木の塀が見えてきた。
(あそこが町かな?)