12.帰り道
12.帰り道
バスは60㎞/h程をキープし、森の中の泥道を走る。
当然バスは揺れるが、ハコブはできるだけ揺れない様、
道の馬車の車輪の轍を避けて走っている。
「それにしても、改めて車窓を見ると、とても速いな。
この新型馬車は。」
リリーがそのようなことを言う。
「フラン町からクレメント町まで、半日もかかってないですよ。
私たちの所有する馬車だと、朝、フラン町を出ても、夜遅く、
クレメント町に到着することが良くあるというのに。
クレメント町を日帰りするなんて。」
エリスは、車窓を眺めながら、感想を言う。
「それに、この様なスピードを出しても、揺れないですね。」
ハコブは、前の日本の道路基準だと、この揺れはありえない揺れと感じていたが、
2人はこれでも揺れない部類に入るらしいと驚いた。
マルクさんの馬車を見て板バネもなかったから、
エアサス搭載のこのバスは、未知の乗り物ということなのかもしれない。
バスは、やがて坂道に差し掛かり、
行き程ではないが、数匹のゴブリンが出てきたが、
同じバスの体当たりという方法で、倒していった。
ハコブはバスで何かをはねるといったことは、ものすごく拒否感があったが、
ここは異世界、ゴブリンが現れるだけでも、日本ではありえなかったことだから、
その常識を捨てる様、努力をしている。
リリーも、ゴブリンを前にバスの速度を落とす様子を見て、
「ためらうな。」
と言われた。
峠の頂上に差し掛かる頃、辺りは夕焼けになり、少しづつ暗くなってきた。
バスは何事もなく、峠を越え、下り坂を走る。
しばらくして、マルクさんのバスが事故にあった地点に差し掛かる。
「あれ?
ゲーリングさん達、もういないですね。」
「もう夕方で、町の門がしばらくしたら閉まるからな。
町の方に戻っているんだろう。」
とリリーが言う。
「では急がなければいけませんね。」
「今回、薬を運ぶという重要任務を持っていますから、
たとえ扉を閉められても、
外から門を開ける様いえば、大丈夫ですわ。」
とエリスさんが言う。
この世界の町の門限ルールとして、緊急の用事の場合は、
開門することもあるらしい。
バスは平たんな道に差し掛かると、
ゲーリングさんを含め、8人の冒険者が早足でフラン町の方向へ歩いていた。
ハコブは、その様子を確認し、車外スピーカーで、
「どうぞ乗ってください。」
と声をかけ、前ドアを開ける。
「ああ、ハコブ殿か、助かる。」
ゲーリングさんを含む8人の冒険者は、次々とバスに乗り込んでくる。
「まさか、新型馬車に乗れるなんて。」
「リーダー、とても乗り心地が良いですよ。それに早い。」
リリーがゲーリング達になぜか自慢げに話す。
ハコブは全員が席に座ったのを確認してから、
バスを発車させる。
バスは平たんで広い道になったので、
70㎞/hをだしてみる。
揺れはひどいが、暗くなりかけている外を難なく走っている。
冒険者たちは、あまりのスピードに驚いていた。
ハコブは、前照灯を点灯させると、まっすぐな森林の道がはっきりと見える。
「あのー、この時間、街道を歩く人や馬車はいますか?」
「それはいないな、町にたどり着いているか、止めてキャンプをしている。」
ゲーリングさんが、そのように説明をする。
ハコブは前照灯をハイビームにして、走らせた。
ハイビームにすることにより、角と牙を持った、大きなウサギが何か所か飛び出してきたが、
ゲーリングさん曰く、
「すべて回収していく。肉は売ることができる。」
とのこと。
やがて、フラン町の木の門が見えてきた。
ちょうど門を閉めている所で、
カイルは、閉めかけていた門を、また開けてくれた。
「もう帰ってきたのか?
クレメント町を一日で往復するなんて。
速い乗り物なんだな。」
とカイルは感想を漏らす。
「手続きなど、こちらは心配しなくていい。早く医療院に薬を届けてくれ。」
その言葉に甘え、バスを町の中に入れる。
この時間、すでに人通りは少なくなっており、
医療院まですぐ到着した。
冒険者たちはここで降り、冒険者ギルドに歩いて行った。
「今日は、ここでお別れだな。
エリス、マルクさんが元気になったら、また護衛の依頼を出してくれ。」
そう言い、リリーも、冒険者ギルドの方向へ歩いて行く。
「ハコブさん、さあ、薬をミハイル院長に届けましょう。」
エリスとハコブは、医療院に入っていった。




