依頼File.2-2 動物園で行方不明になった子供の捜索②
眼の前にいたのは美しい女の上半身に緑の蛇の下半身を持つ魔物だった。体長8mほどで、両手に2人の子どもを握っている。一人は茶色の髪と目を持った女の子、もう一人は黒と赤い髪に黒の目をした男の子だ。その周りには小ぶりな骨が散乱している。
ミエ「なるほど、エキドナか」
そう言いながら、ミエティトーレは飛び上がり鎌を大きく振る。
ミエ「タグリアンテ・ルナ;デュオ!」
ミエティトーレの鎌から紫色の二つの斬撃が飛び出る。二つの紫の月は相手に当たらなかったものの、エキドナは二人を両手から話した。
エス「キャァァァァ」
イル「うぉぉぉぉぉ」
ミエ「よっと。大丈夫だった?」
エス「ミエティトーレさん、ありがとうございます」
シエ「実験台、一人で着地くらいできないのか?」
イル「は?勝手にお前が受け止めたんだろ」
大人二人が落ちてきた子供二人を受け止める。
エス「手間を掛けてしまってすみません。私達も加勢します」
ミエ「いや、君たちはまだ捕まっている子どもたちの救出をお願いできるか?」
イル「自分たちも戦いたいんだが」
シエ「そんな小さな体では無理だ。お前たちなら捕まっている子どもがどこにいるのかわかるだろ?」
シエンツァが正論を言ってることを理解しているのだろう、渋々エスプルスィオーネとイルジオーネは敵の横を通り抜け、子どもがいるであろうエキドナの奥に走っていく。
エキ「せっかく捕まえた獲物、みすみすと逃がすわけ無いだろうに」
吐いた毒液はエスプルスィオーネの眼の前の床を狙い、エキドナの尾はイルジオーネに唸りをあげる。
シエ「させるか!ユニゾン・D、ユニゾン・B!」
シエンツァが両手にかまえた拳銃から銃弾が放たれる。左の銃弾はエスプルスィオーネとエキドナの間に着弾すると、その地点に大きな氷の壁を作り、猛スピードで吐き出された毒液を阻む。右の銃弾はイルジオーネの足元にあたり、爆風でイルジオーネを吹き飛ばす。イルジオーネは突然の出来事に驚いたようだったが、子供の体でも見事な着地を決める。
イル「子どもなんだからもう少し優しく扱ってくれませんかね!」
エキドナが驚いている間に、二人はエキドナの奥…子どもが囚われている場所まで走っていく。
エキ「チッ、もう一度…!」
ミエ「同じ攻撃を自分たちが見切れないとでも?」
ミエティトーレがそう言うと、鎌からカラスを呼び出す。カラスは吐かれた毒液へ矢のように飛び、すべて受け切るとそのまま黒色の液体となって溶けていく。ミエティトーレは鎌で尻尾を受け止める。しかし、完全に抑えきれずに吹っ飛んでしまうが、綺麗に受け身を取り、ダメージを最小限に抑える。
ミエ「だめだ。あの鱗、こちらの攻撃を通さない」
シエ「それなら、鱗に覆われていない上半身を狙うまで。アッコルド・B!」
二丁の拳銃から飛び出た大きな弾はエキドナの上半身に直撃…と思われたが、尾に銃弾が弾かれ、空中で爆ぜてしまった。
シエ「弾速は秒速450mはくだらないのに…」
ミエ「とりあえず、どうにか鱗と攻撃を避けて攻撃するしか無いか」
シエ「そうだな、っと」
降ってきた毒液を躱すと、毒液がかかった地面は煙を出して溶けていく。
ミエ「あれに当たるとヤバそうだな。気をつけろよ」
そんな注意喚起を皮切りに二人の猛攻がスタートする。
ミエ「タグリアンテ・スファルツァート!タグリアンテ・サルト・コルヴォ!」
シエ「アルペジオ・F9(♭5)!アッコルド・C#aug7!」
ミエティトーレが力強く切りにかかるが鱗に傷をつけることすらできない。シエンツァもほぼ全ての弾が弾かれてしまう。
エキ「そんな弱い攻撃を続けていても私は倒せないぞ!」
その間にも、エキドナは毒液を吐き、尾を振り回し、隙さえあらば食べてしまおうと口を大きく開けている。
ミエ「エスプルスィオーネがいたら楽なんだが、薬の効果が切れるまで粘る事は?」
シエ「それだとジリ貧だろう。効果が切れるまでにはまだかかるはずだ」
ミエ「そうか…相手の攻撃も飛んでくるしな」
シエ「こいつに聞くかどうか知らないが、ちょっとやりたいことがある。自分たちの不利益にならないはずだが良いか?」
ミエ「もちろん」
エキ「お、何だ、何をやろうとして…」
シエンツァは白衣の中から試験管を取り出す。試験管には『取扱注意!防護用魔法使用』と書かれている。それをエキドナに力いっぱい投げつける。しかし、試験管はエキドナの体にかすりもしない。シエンツァはそれに構わず、銃を構える。
エキ「コントロールが良くないようだな?私の鱗にすら当たっていないぞ」
エキドナは銃弾を落とそうと、尾を振り回す。
しかし、シエンツァは明後日の方向に銃を打つ。すると、ガラスが割れるような音とカラスの鳴き声が聞こえる。その瞬間、大きな爆発が起き、戦場に猛吹雪が吹き荒れる。
シエ「…氷鬼狼の遠吠え with B7(♯9)
エキドナの体が少しずつ凍りついていく。それを見たミエティトーレがエキドナの上半身まで飛び上がる。
ミエ「君、動き、鈍くなってない?」
エキ「お前ごとき…」
エキドナの尾がミエティトーレに迫る。
ミエ「やはりエキドナも爬虫類なのか。タグリアンテ・プログレスィオーネ!」
ミエティトーレの鎌がエキドナの尾を弾き飛ばし、エキドナの体に追撃を与える。エキドナの傷口から体液が飛び散り、ミエティトーレのローブに付着する。すると、そこが煙を出しながら溶けていく。
ミエ「このローブ、死神界で作ってもらった特注品なんだけど。高かったんだがな」
ミエティトーレがシエンツァの隣に着地すると、溶けている布の部分をちぎり、捨てる。
ミエ「駄目だ、近接だと毒性の体液が付着する。シエンツァ、君が主導で戦ってくれ、自分は斬撃とカラスで援護する」
シエ「了解した」
二人は猛攻を再開する。シエンツァの二丁拳銃からは絶えず弾が発砲され、ミエティトーレはカラスと一緒にエキドナの周りを飛び回る。
シエ「アルペジオ・Bm!アッコルド・C♯M7!」
ミエ「タグリアンテ・スファルツァート・ルナ!タグリアンテ・ルナ・トリオ!」
みるみるうちにエキドナの上半身に傷が増えていく。攻撃の頻度もどんどん低くなっていく。
シエ「そろそろ終わりにするか…アッコルド・Bm7!」
エキ「その弾は、体に当たる前に尾に当たるはず…」
エキドナの予想通り、シエンツァの撃ち出した弾はエキドナの尾に当たる。しかし、銃弾は、ダメージを負い脆くなったエキドナの尾を貫通し、エキドナの体内にめり込む。
シエ「お前が喰った者たちに死んで詫びるんだな」
エキドナにめり込んだ弾は体内で爆発し、氷の棘が体から飛び出す。エキドナからは体液が噴き出すが、猛吹雪で氷塊と化す。エキドナは叫び声を上げたが、その音も次第に弱くなり、吹雪にかき消されていった。
〜*
ミエ「園長はあの壁のこと知らなかったらしい」
何でも屋の四人は事務所に戻っていた。エスプルスィオーネとイルジオーネは元の大きさに戻っている。
シエ「今回の事件での死者は幼児が十七人か…あと、ミエティトーレのカラスが八羽。氷の試験管を別の方向に移動させたカラスには感謝しかないな」
エス「捕まって精神が疲労していた子供も九人ほどいました」
イル「あの壁、外側からだとただの壁だけど、内側からの意志があるとすり抜けるらしいぞ。エキドナが言ってた」
ミエ「誰がそんな高度な魔法を…?」
〜*
?1「あれ、エネルギー供給量がほんの少し減ったかな?えーと、あ〜、あの蛇死んだか」
?2「だから言っただろう、偽装魔法は不安定化しやすいと。何回か魔法をかけ直さないと…」
?1「やっぱ駄目か。まぁ、変に暴れられて俺らのことがバレるのも良くないし。ただ、エネルギーはもっと欲しいし、今夜、他の供給源を探しに行こうかな」
作者の藍月夜です。はい、前回からとても間が空いてしまいました。理由としては、忘れてました。申し訳ございません。これからはもう少し投稿頻度を上げるので、また読んでいただけるとありがたいです。