依頼File.1-2 『永黙の森』に潜む魔物の群れの討伐②
前回の、「依頼File.1 『永黙の森』に潜む魔物の群れの討伐①」を読んでから、お読みください。
ミエ「ですよね、依頼人さん?」
永黙の森で魔物退治をしていた何でも屋の四人は振り向き、ミエティトーレは四人を睨んでいる人影に問いかける。
依頼「・・・あ〜あ、君たちを殺そうとしたのに。残念だよ。」
後ろにいた人影、もとい依頼人が答える。
依頼「そうだよ、あなたの推理は大体当たってる。気づかれるとは正直思っていなかったけどね。」
ミエ「そりゃ、あんな殺意が向けられてたらな」
シエ「勿論」
エス「はい、バレバレでしたね」
イル「もうちょっと、殺意を隠さなきゃね〜」
依頼「そうか、もうちょっと訓練が必要か・・・。だけど。こんな山奥の結界がない場所にはあまり近づかないほうが良いよ。魔物がいっぱいいるからね!」
そう依頼人が言うと、森の奥の方から唸り声が聞こえる。
グルルルル
依頼「来たね。やっちゃいな、人食い狼!」
依頼人の声に応じてバイティングウルフの群れが現れ、周りを取り囲む。
イル「なんかこんな感じのさっきも見た〜」
シエ「相手は洗脳系の能力持ちか。洗脳されないように気をつけろよ」
エス「了解しました!」
ミエ「依頼人も捕まえなきゃな。てか、こんな悠長に会話してる暇もないか」
ミエティトーレの言う通り、バイティングウルフの群れは襲いかかってくる。
イル「無計画で突っ込むのは、やめたほうが良いぜ。」
シエ「え、誰がなんて言ってるって?」
イル「あ゙?」
イルジオーネがシエンツァに苛立ちながら、ズボンのポケットの中からトランプの束を取り出す。
イル「オーバーハンドシャッフル・8ビート!」
イルジオーネがトランプを飛ばすと2頭の前足を完全に切り飛ばす。
エス「お〜、イルジオーネさん、やる時はきちんとやるんですね。」
イル「えっ、やる時は?」
エス「単独響く奏鳴曲!」
エスプルスィオーネが掲げたてるてるが灰色に染まり、一つの幻影が生まれる。すると、4方向のバイティングウルフが苦しそうにのたうち回って倒れる。
ミエ「その攻撃、相手の内臓を衝撃波で破壊するやつじゃん。やるね〜」
イル「え、そんなヤバいこと行われてたの?」
ミエ「そうだよ。おっと囲まれたね〜」
ミエティトーレの前後左右から狼が敵を食らい尽くそうと牙を向ける。
ミエ「タグリアンテ・トリル;ルオターレ」
ミエティトーレがそう言ったと思うとミエティトーレが鎌を振り回す。次の瞬間、飛びついてきた血飛沫がとび、切り裂かれた肉片になった。
イル「お前が一番ヤベえよ・・・」
エス「ミエティトーレさんが一番ヤバいですよ・・・」
シエ「3人共、ナイスだ!あとはあいつを・・・」
シエンツァが依頼人、否、敵に向き直る。
依頼「使えない駒だな・・・まあ良い、駒はまだあるから」
シエ「アルペジオ・B!」
液体の弾薬が連続で銃から飛び出る。
依頼「スライムウォール!」
依頼人の呼び声に応じ、依頼人の前の地面から、スライムが飛び出し、銃弾を受け止める。が、スライムは銃弾から起こった爆風により弾け、消滅してしまった。
依頼「チッ、クソが」
シエ「チッ、クソが・・・な〜んて。実験台!」
イル「実験台って書くな!バンディエーレ・イレゴラーレ」
イルジオーネが胸ポケットから再び取り出した連続旗は依頼人の方に飛んでいき、彼に巻き付いた。
依頼「クソ、銃の方は囮だったか」
連続旗に絡み取られた依頼人の首にミエティトーレが鎌を突き立てる。
ミエ「オイ、お前。能力とこんなことをした理由を、答えろ。」
依頼「なんでお前なんかに・・・」
ミエ「言わなければ、この場で死んでもらう」
ミエティトーレが凄む。
依頼「分かった分かった言うよ言うよ言えば良いんだろ。俺の能力は、魔物召喚だよ。自分の仲間の魔物を召喚するんだ。意外に自分から遠くても召喚できるからな、洗脳系スキルに誤認するようにしてたんだよ。あと、理由だっけ?・・・村のバーで飲んでたときに、黒いフード被った奴に言われたんだよ。“お前、金に困ってんだろ。じゃあ、永黙の森の中にある女神像の台にはめられてる宝石をはずして売りな”って・・・」
ミエ「その黒フードは誰だ?」
依頼「知らない」
ミエ「その宝石は今お前の家だな?」
依頼「ああ、そうだよ。今日売ろうと思ったんだけど、魔物が出てきて騒ぎになったから売れなかったんだよ。」
ミエ「なんで自分たちを攻撃した?」
依頼「さっき話した黒フードに言われたんだよ。“あと、この人たちを殺したらこの番号に連絡してくれ、そしたら金をやる”って」
ミエ「だから自分たちに連絡を・・・分かった。お前を魔法警察に逮捕してもらう。そして、宝石を返せ。」
依頼「え、宝石だけは・・・」
ミエ「宝石と命、どっちが大切だ?」
依頼「命、命です。命だけはどうかご勘弁を・・・」
戦っていた時までの威勢が嘘のようだ。
ミエ「皆、こいつを森の外まで運ぼう。急がないと、宝石を持ってここに戻る頃には日が暮れてしまう」
数時間後、警察が来て依頼人を逮捕していった。
警官「何でも屋の皆さん、また犯人を捕まえたんですね。すみませんね、感謝状を渡したのが3回目までで・・・」
エス「大丈夫ですよ、感謝状なんて。いつもお疲れ様です」
警官「ありがとうございます、では」
警官は依頼人を連れて、テレポートした。おそらく、魔法警察庁に連れて行かれ、これから取り調べになるだろう。
エス「そう言えば、ミエティトーレさん。何であいつの家に魔法石があると分かったんですか?」
ミエ「午前中にあいつの家で依頼の詳細内容を聞いたときに、家の中からとても強力な魔力を感じてね、何でこんな魔力が?って不思議に思っていたんだ」
シエ「さすが、死神」
ミエ「おい、あんまり人前でそんな事言うな。一応魔物だからな」
シエ「というか、あの黒フード誰なんだろうな。」
ミエ「朝、ニュースでやってた人型の魔物か、人に化けた魔物だろうな。あそこの森も生息地にしようと企んでたんだろ。」
イル「帰ろうぜ〜、お腹空いた〜」
イルジオーネは気が抜けた声を上げた。
ミエ「はいはい、今日の夕食は何にする?」
イル「俺ハンバーグが良い!」
シエ「子供か」
イル「あ゙?」
やはり、イルジオーネとシエンツァは口喧嘩を始める。
エス「ハ、ハンバーグ、良いですね。私和風が良いです。シエンツァさんは?」
エスプルスィオーネが口喧嘩を止めようとする。
シエ「要らない」
ミエ「そんな事言わない。じゃあ、今日は帰ったらハンバーグな」
そんなことを会話しながら、何でも屋のメンバー達はテレポートで帰宅していった。
藍月夜です。依頼File.1が終わりました。戦闘についての補足ですが、何でも屋の皆さんはとても強いため、そこら辺の雑魚敵なら瞬殺できるほどの能力を持っています。
お読みいただきありがとうございました。ちょうどクリスマスということで、話が少し進んでいる支部の方でクリスマス特別編として上げている作品もありますので、よかったら支部の方も覗いてみてください。