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98.安久尾建設の破滅の一夜(安久尾建設のざまぁ、総集編)

お待たせいたしました。

追放した側のざまぁ回、総集編です。

 

「日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。」


「「「万歳!!」」」

「「「万歳!!」」」

「「「万歳!!」」」


 時間は少し遡り、夏休みの終わりの八月下旬、こんなニュースがあった。

 秋の臨時国会冒頭、衆議院議長が発したこの言葉。


 この解散総選挙はあらかじめ予定しており、通常は九月頃に行われる、秋の臨時国会開催を少し早めて、八月の下旬に召集して、解散が言い渡されたのだった。


 この言葉により、衆議院は解散、事実上の選挙戦へ。


 衆議院の解散が言い渡される国会の本会議場。

 その中には、大きく両手を広げる、外務副大臣こと、安久尾次郎、与党の幹事長こと、反町太郎の姿があった。


 心なしか余裕の表情。

 それもそのはず。彼ら二人の選挙区は地盤も安定しているし、最近では野党も第一党になる力を持った、有力野党の政党は二人の選挙区に候補者を擁立しない。


 今回も当選できる・・・。

 そう思った二人がそこに居たのだった。


 地元に帰り、余裕の表情で選挙運動する、安久尾と反町。

 勿論、二人とも力を持った議員だから、地元の選挙活動は最小限にして、他の候補者の応援へ全国へ向かったのだった。


 そして、僕、橋本輝が、ピアノコンクールの関東大会のその日。まさにその裏側で、解散総選挙が行われていたのだった。

 だから、安久尾五郎の嫌がらせも最小限で済んだ。

 確かに、安久尾は、選挙の時は静かにしていた。

 そう言う意味では、コンクールのその日に選挙があって本当に良かった。だが、父親が今回も当選できると思っていたからだろう。相変わらず、安久尾の煽りはあったのだが。


 それはさておき、ピアノコンクールが終わり、早々に僕が疲れて寝ているころ。

 まさに開票速報がテレビ局各社で放送されていたし、実際に開票作業が行われていたのだった。


 各社メディアは、開票開始の午後八時。一斉に、安久尾次郎と、反町太郎の当選確実を伝えた。


「よっしゃー!!」

「やったー!!」

 と、叫ぶ安久尾と反町。二人は、各々の地元の選挙事務所ではなく、党本部に居た。速攻で後ろのパネルに移動し、自分の所に、最初の当確の薔薇をつけたのだった。

 今回も与党が政権維持、そんな出口調査の結果に、大喜びする、安久尾と反町。


 だが、そこが彼ら二人のピークだった。

 そこから、二人の笑顔が一瞬で消えた。


「幹事長。大変です。」

 秘書の一人に呼び出される反町。

「どうした?」

「それが・・・・・。」


 時刻は開票が始まって、一時間近く経過。

 反町の秘書から伝えられた話は彼の顔色を一瞬にして苛立たせた。

 一緒に聞いていた、安久尾もそうだった。


 それは、ある県の議席がまだ一つも決まっていないのだった。

 別にそれは問題ないのだが、問題はその県の立場だった。


 メディアも速報で報じ、解説に着ている記者、政治学者も首をかしげていた。

 メディアのアナウンサーはこう伝えた。


「こちらの県は五つ小選挙区があるのですが、まだ一つも議席が決まっていません。」

 アナウンサーが伝えると。


「ちょっとおかしいですね。」

 解説員の一人がこう切り出す。


「はい?理由をおたずねしても。」

「この県は首相を五人輩出している、保守王国です。五つの選挙区ともその世襲候補が立候補していて、一つでも決まっていないとおかしいのですが・・・。出口調査をもう一度見せてもらっても・・・。」

 解説員がこう切り出し、メディアのスタジオは凍り付く。

 確かにこの県は保守王国、今回も五つとも世襲が当選するとみて、マスコミも、あまり取材をしていなかった。

 ある意味で、安久尾と反町の選挙区よりも長い時代から続く保守王国だった。


 その県は、僕、橋本輝が済んでいる、雲雀川市がある県だったのだ。


 時は遡り、期日前投票の時期


 雲雀川市はこの県の小選挙区では第二区と呼ばれる選挙区だ。都市部に位置していて、有力野党の候補者も立候補してくれる。

 ここには、僕が今まで会って来た大半のメンバーが住んでいたのだ。


 バレエ教室で、原田先生と吉岡先生は、僕のことをバレエ教室の保護者に話していたようだ。

 するとどうだろう。瞬く間に、僕に同情してくれたのだった。


 実は、バレエというのはかなりお金が掛かる。故に、育ちのいいお嬢様という人が結構多い。

 育ちのいいお嬢様。つまり、地元の企業の社長の娘さんだったり、古くから続く商家の娘さんという人たちがかなり多く、原田先生のバレエ教室に在籍していた。


 僕の話は、会社の社長、そして、その従業員さんに話が行ってしまう。

 そして。その中である人が気付く。


「この子、夏祭りで、飛び入りでピアノ伴奏した子だ。そうか、そう言うことだから、ヴォーカルの、あの子の気持ちがわかったから、助けてあげたんだね。」

 そうして、その人は夏祭りの動画をSNSにアップし始める。


 他にも、それに気づいた人が、一体何があったのか聞く。

 そうして、安久尾と反町の素行の悪さに落胆してくのだった。


 場所は変わって、加奈子から、安久尾の悪行を知った、加奈子の父親、雲雀川市市長の宏司。

 宏司は、秘書、そして、自分に近い市議会議員を呼び、安久尾の話を告げた。


「なるほど。そうなると、次の解散総選挙では、安易に与党を支持できないですね。」

「お気持ち、よくわかります。私たちも決断しましょう。」


 市長と、その市議会議員の人達は、今回の選挙は与党は支持できないと明言し、理由に関しては後日話すこと公言したのだった。


 そうして迎えた、解散総選挙。この県の小選挙区第二区。雲雀川市選出の議員は、与党の世襲候補が落選し、野党系の人が当選となった。その与党の世襲候補は比例復活当選もできなかったらしい。


 改めて、スマホを見ると。

 <今頃、加奈子ちゃんのお父さんから、すべてを知っただろう。驚いたか?少年?>

 それを予想するかのように、原田先生からのLINEが来ていた。


 僕は、はいと返信する。


<いい意味でも、悪い意味でも、バレエをやっている人は、お嬢様という人たちが結構多い。雅ちゃんのお父さんだって、藤代部品という会社の社長だ。みんなお前の実力は知っているし、今回はい意味でそれが働いたようだな。>


 原田からそんなLINEを受け取る僕。最後にはニヤニヤ笑った可愛いスタンプが施されていた。


 この県の、五つあるうちの他の選挙区はどうだろうか。


 一区、四区はというと、こちらも野党系の候補が小選挙区で当選、与党のそれぞれの世襲は比例復活出来たが、大きなニュースになった。


 その理由も、勿論、僕、橋本輝が絡んでいる。

 原田のバレエ教室、そして、花園学園の生徒は、多方面から電車で通っている人たちが多い。

 そうなると、葉月や加奈子の話で、それぞれの保護者に僕の話が行ってしまったらしい。


 生徒会での加奈子の推薦人演説、合唱コンクールの一年生初の最優秀伴奏者賞受賞者、そして、今年から共学になって初の数少ない男子生徒ということで、どうやら僕は校内でかなり目立つ存在になっていたようだ。


 さらには、市長が与党側を支持しない理由も他の市議や県議会議員の人達に話が伝わってしまい。


 それぞれ、一区、四区の結果に響いたようだった。


 葉月からもLINEの通知が来ていた。

<花園学園は県内のいろんな地区から通っている人が多いからね。学費も私立だし。結構地元の名士のお嬢様もいるんだよ。へへへっ、サプライズ大成功!!>

 葉月からのLINEだった。



 そして、問題は三区、五区。ここは安久尾、反町の選挙区と同じく、有力野党はそろって候補者を立てず、ここ数回は与党の世襲と、パフォーマンス重視の弱小野党の争いだった。


 だが比較的人口の多い三区。そこには瀬戸運送の本社があって、史奈もここの地域から通っている。


「安久尾建設の連中に一泡吹かせよう。」

 史奈の父、瀬戸運送の社長が中心となって、他の候補者を擁立する運動をするのだった。

 そして、その運動は見事成功。有力な若手の県議会議員を擁立し、保守分裂に成功したのだった。

 そして、軍配は、無所属だったが、若手の県議会議員が当選。


<十八歳からに引き下げられたのよ。投票権。だから私も期日前投票をしたわ。間に合ってよかった。>

 史奈からのLINEにはこう記されていた。


 そして、五区。

 ここは田舎。保守分裂選挙もならず、一人勝ちという選挙区で。


 メディアの解説員も。

「ここの選挙区は当確が出でも・・・・・。」

 それは表示された円グラフを見ても明らかだった。

 出口調査の七割前後が、与党の世襲を支持している。


 だが、次の瞬間、記者たちが思いもよらぬ言葉が待っていた。

「はい。確かにそうなのですが、回答を得られた有権者が前回の半分以下となっており、投票率もここの選挙区が全国で断トツで最下位となる見込みです。」

 その発言に凍り付く、選挙の関係者たち。


 そして、与党の世襲候補が勝ったが。

 投票率は全国最低、無効票もかなり跳ね上がった。


 この五区にあるのが、義信の祖父母が経営するホテルニューISOBEだった。

<爺ちゃん、婆ちゃんが根回ししてくれた!!>

 そんな義信のLINEだった。


<保守王国崩壊>それはマスコミを躍らせた。


「なぜだ?なぜだ?」

「どうしてこうなった?」

 マスコミや与党のメンバーは一斉にその保守王国の選挙分析を始めた。


 その原因はすぐに分かった。

「あの、原因はこれじゃないかと。」

 そこには、明日発売の週刊誌の大見出し生地。


『反町と安久尾、裏金疑惑か?』

『息子や孫の非行をもみ消す、安久尾と反町』


 と、その週刊誌の記事が書いてあった。

 雲雀川市の市長の宏司は、信頼できるマスコミの人に、今回の選挙で与党を支持できない理由を語っており、マスコミが密かに取材、調査していたのだった。


 その週刊誌の記事には。


『雲雀川市の井野市長、娘の友達は、安久尾の息子に才能を妬まれ、万引きなどの安久尾の息子の非行を全て、娘の友達に擦り付け、高校を追い出されたと。そんな人が外務副大臣、そして、同じ派閥にこの市の選出の議員がいるとなると支持は出来ない。』

 と語られており、そこから、僕、橋本輝の名前にたどり着くまで、そうは時間がかからなかった。



 そこから、出るわ、出るわ、次から次へと安久尾次郎と反町太郎の大悪事。

 さらには安久尾と反町の裏金も、かなりの額を超えることがわかった。

 現時点での推定額でも二億円、それ以上の金額らしい。


 そして、安久尾の息子、僕を退学に陥れた張本人、安久尾五郎にも鉄槌が下される。

 僕のことは勿論、他にも、万引きや淫らな行為など、息子の非行をもみ消していたと、公にバレることになった。


 すぐにマスコミが動き出す。


 そして、与党の党本部でも。


 ピロ―ン、ピロ―ンと安久尾次郎の電話が鳴る。


「はいっ。」


「安久尾先生一体どういうことですか?」

「えっ?」

 電話の主は、雲雀川市の選出の“元”衆議院議員。


「ネットの記事を見てくださいよ。あなたのせいで、地元の有権者の皆さん、怒り心頭でしたよ。責任取ってもらいますからね。」

 と、大声で怒鳴る。


 すぐさま、確認する、安久尾次郎。そこには、彼の悪事が堂々と、週刊誌の記事になっていた。

 同じように、反町の記事も書かれ、真っ青になる、反町太郎。


「あ、安久尾君、一体何してくれたのかね!!どういうことだ!!」

 反町は安久尾に向かって切れ始める。


「も、元々は、反町先生だって。」

「うるさい。うるさい。うるさ~い!!」


 一気に開票速報は、安久尾と反町の不祥事速報に早変わりし、修羅場となる、与党側の開票センター。


「安久尾先生、反町先生。」

 秘書に呼ばれる、二人。


 二人とも、お互いの顔に泥を塗りあうケンカで、真っ赤な顔をしている。だけれども。


「あの・・・。下に、東京地検特捜部の方がお見えですが・・・。」

 秘書の言葉を聞いて、真っ青になる、安久尾と反町。


「お、終わった・・・・。」

「オワタ、オワタ、完全オワタ~。」

 安久尾と反町はもう逃げ場はないと確信する。そして、一気に力が抜けて、開票センターの部屋から出て行く。


「逃げるんですか?」

「おい、逃げるな!!」

 マスコミからの批判の言葉を浴びながら。



<与党過半数維持だが暗雲の船出、安久尾氏、反町氏、本日緊急逮捕へ>

 今日、月曜日の新聞の見出しの文字がこう踊っていた。



 僕、橋本輝はその話を加奈子の父親である、宏司から聞き、新聞を見せてくれたのだった。


 何だろうか。とてもありがたかったし。

 何かが吹っ切れた。そんな感じがした。






今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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