72.お菓子パーティー
線香花火の最後の灯が落ち、花火の後片付けを終えて僕たちは茂木の別荘に戻ってきた。
「それじゃ、次のイベント、お菓子パーティーと、コンパと行こう。まだまだ、海鮮焼きの具材は沢山あるからね♪」
原田先生はそう言って、夕食の時に余った具材と、この時のために買っておいたお菓子を取り出す。さらには、余っていた食材を再び出した鉄板で焼き始める。
そして、さらに、酒が追加された。
「それじゃ、もう一度、君の瞳に~。カンパーイ」
「「「カンパーイ!!」」」
原田先生と吉岡先生はそう言って、お酒を再びグビグビと飲み始める。
しかも今度は、先ほどの比ではなく、さらにさらに飲むペースが速くなってきている。
「ん~やっぱ最高だね。」
原田先生はそう言いながら、お酒を楽しむ。
「悪いね、皆、悪酔いはしないから・・・。」
吉岡先生もそう言ってお酒を飲むが、明らかに、呂律が落ちている。
改めて、お酒はこうなると実感する。僕たち。
「ふふふ、輝君も楽しみましょう!!ほら、ポテチがあるわよ。」
「そうだよ。こっちにもまだまだ、食材のあまりがあるから、鉄板で焼いちゃおう!!」
史奈と加奈子は笑って、こちらに向かう。
僕も史奈に勧められた通り、ポテトチップスの袋を開ける。
そして、加奈子は遠慮している僕を見ていたのだろうか。史奈と同じく、こちらを見て笑っていた。
ポテトチップスの味は、まさに王道のポテトチップスという味で。やはりお菓子はこれが一番だと感じる。
それを見ていた、加奈子は、立ち上がり、ニコニコ笑いながら、余った食材を、鉄板で食材を乗せて焼き始める。
すると、どうだろうか。
「ふーっ、やっぱり、さっきの肝試しとかでお腹すいちゃったわね。」
そう言って鉄板に向かってきたのはマユだった。
鉄板の位置は先ほどの夜の晩餐の時と変わらず、プールと、この部屋の境の、ウッドデッキのような部分に置いてあったので、海産物の焼き物は焼けたら各々取りに行く感じだ。
「おーっ、さすがは高校生で運動部、たくさん食べろよ~♪」
原田先生はそう言いながら、再び、酔った足取りで、鉄板に近づき、追加の食材を焼き始めた。
「ほーら、少年も、食べるべき人なんじゃないのか?」
原田先生はそう言って、手招きをする。
確かにそうかもしれない、お腹が一杯の状態でもなく、少し小腹が空いた程度ではあるが、折角の夏休み。たくさん食べられるような気がしてきた。
「どうぞ、輝君、沢山食べてくれ、皆で個々に行くということになって、沢山買っちゃったし、どっちみち、余ったら捨てちゃうし。」
吉岡先生はそう言いながら、僕の肩をポンポンと叩いた。
再び食べる海の食材と、様々なお菓子は、とても美味しかった。
「ヨシッ。酒が進むように歌でも歌うか。なんか、知ってる歌ないか?」
原田先生はそう言いって、僕たちに振ってくる。
「おーい、少年、なんかあるだろ?」
原田先生は僕の目を見る。
「えっと、それじゃあ・・・・・。」
イキナリ指名されて驚くが・・・・。まあいいだろう。
ここで歌う、アカペラで歌える歌。
合唱部出身で、コーラス部の面倒を見るということもあり。
パッと出てきた歌は、『アメージンググレース』だった。
僕は、その『アメージンググレース』を歌うが。
一番を歌い終えて、繰り返そうとしたとき。
「タイム、タイーム!!ストップ。ストップだ。少年。。」
原田先生は手を止める。
原田先生以外の面々は拍手をする。
「すごい、輝君。流石ピアノ弾けるだけの歌唱力はあるね。」
「ホント、良かったよ~。」
葉月、結花が言うが。
原田先生は、少し重苦しそうな顔で僕に近づく。
「歌声、歌唱力、問題なし・・・。『アメージンググレース』、勿論私も知っているし、とてもいい歌だ。だけどな。」
原田先生が頷く。
「なんか、酒が止まっちまって、しんみりしてしまった。もっと、何だろう、ノリのいい元気な曲ないか?」
原田先生はそう言って。
「例えば、こーんな感じで。」
先生はそう言いながら手を叩き始め。
「♪ズンズンチャッチャ、ズンズンチャッチャ、パンパカ、パンパカ、パンパカ、
酒は最高、仲良くなれる!!
同じ瓶で、乾杯すれば・・・・。
昨日の敵は今日の友達。
そして、明日は恋人同士。
それ、ズンズンチャッチャ、ズンズンチャッチャ♪」
原田先生の歌は自然と手拍子が溢れる。そして、手拍子は勿論、掌で膝を叩いたり、足を床に叩いたりする人も居る。
パチパチパチパチ!!
何だろうか、僕の『アメージンググレース』より、盛り上がった。
「どうもありがとう。っとまあ、こーんな感じの、ポルカみたいなリズムでさ。他になんかないか?」
確かにそうかもしれない。一気に明るい。うん。『アメージンググレース』も明るい感じの歌だが、原田先生の歌は一気に楽しむ、そんな明るい歌だ。
「あの、あまりにも凄すぎて。今の何の歌ですか?」
興奮状態の結花。
マジて超楽しい。そんな風に心が言っている。
「あー、私が適当に作詞作曲して作っただけだよ。今即興で。私と、ヨッシーの好きなゲーム音楽の作曲家も言ってたぞ、『五分で出来る曲は良い曲』ってな。そしたら、何も浮かばないなら作ってみなよ。」
結花は原田先生の発言に、ものすごく共感したようだ。
「す、すっげー。」
結花は目を丸くする。
確かに原田先生のいう通り、僕も適当に鼻歌が思い浮かぶときがよくある。
「どうだ?やってみないか。」
結花は少し緊張したが。合唱コンクールで頑張って指揮を振って頑張って緊張を克服した人物。ここに居る面々は皆同じ高校でも、とても仲のいいメンバーだと知ると。
「おーっ、結花、私も手伝うわよ。」
心音も立ち上がる。
すーっ。はーっ。
結花は深呼吸して。
「じゃらら~ん。」
ギターを弾く真似をする。
「ヘイヘイ、ヘイヘイ、ノってるか~い?」
「「イェーイ!!」」
僕たちは結花の言葉に応える。
結花は心音と一緒にギターを弾く真似をしながら、楽しそうに歌った。
「おーっ、君たち最高だね♪」
原田先生はそう言って、拍手を称える。
「ここからの、『アメージンググレース』だよ。少年。まあ、先ほどそれは使ってしまったわけだし、少年もなんか即興で作曲できないか?」
原田先生はそう言ったので。
「じゃ、じゃあ。」
僕は立ち上がり。
思いついた適当な歌詞で歌ってみる。
そして、わからないところはラララ唱法で。
「♪君と見た海は、とても、切なくて、愛しくて。ラララララ~」
「おおっ、いいじゃんいいじゃん。流石はピアノ少年だ。ここの景色は最高だものね。」
「はい。」
原田先生はそう言いながら僕の肩をポンポンと叩く。
こうして、その後のメンバーもかわるがわる、ノリよく自作自演の歌を披露する時間となった。
当然、その間、食べ物もおいしく感じて、僕たちの食欲は止まることは無かった。
そして勿論、原田先生と吉岡先生の酒も止まることはなかった。
「ヨシッ。全員歌を披露し終えたな。他に、なんか面白いものはないか?」
原田先生はニコニコ笑う。
「あの、そしたら、いろいろ持ってきました。」
加奈子はそう言って鞄から持ってきたものを取り出す。藤代さんも同じだ。
おそらく、こういう展開になると、毎年ここに来ている二人は分っていたのだろう。トランプやウノ、さらにはボードゲームなどを取り出した。
「おっ、わかっているじゃないか。」
原田先生はニコニコ笑う。
一通り、トランプやウノを楽しんだ後。
「次は。これをやってみよう。輝は初めてだよね。これなら、皆で、輝をサポートできるかな。」
加奈子が指さしたものは、かるただった。
「ああ。これね。これは確かに、輝君は見たことないかも。前に話したっけかな、この北関東の地域の名産とかを乗せた、『故郷のかるた』。北関東の地域だと、小中学校は毎年この大会があるんだよ。」
葉月はニコニコ笑いながら言う。
「まあ、物は試しよね。まずは体験してもらいましょう。輝君はサポートするね。」
史奈がニコニコ笑う。
皆はこの提案に頷く。僕も不安だったが、皆のサポートがあれば。それに、かるたなら僕もわかる。
わかるのだが・・・・・。
実際にやってみたら、一枚も取れなかった僕が居た。
「はははっ、やっぱり輝君。一枚も取れなかったね。」
葉月がニコニコ笑う。
確かに、負けて悔しいが、僕はそれ以上にすごいものを見ていた気がする。
皆、取っていくのが物凄く早い。
僕は取り札の字を見て取っているのだが、おそらく他の皆は、取り札の絵を覚えているのだろう。
「ふふふっ、輝君のために次は、チーム戦にしましょう。」
史奈がニコニコ笑い、この提案にみんな頷く。
バレーボール、肝試しに使用した、原田先生のクジを使わせてもらい、一緒に組んだペアが。
「しょ、少年とか、よ、よろしく。」
原田先生だった。どこか緊張している原田先生。
そうして、二対二で、チーム戦をやったのだが。
「すまない、少年、完全に酔っぱらって、手も足も出なかった。」
原田先生は僕に、土下座し、両手を合わせて頭を下げる。
僕と原田先生が取れた枚数は、お互い二枚ずつ、合わせてたったの四枚。
残りの四十枚近くは相手チームのペアが取ったのだった。いわゆる大差でぼろ負けだった。
「原田先生、意外と弱すぎ。」
対戦相手は葉月と加奈子のペアで、葉月がニヤニヤ笑いながら言った。加奈子も頷いている。
「あ~。ま~、そうだな~。めちゃくちゃに酔っぱらってるからな~。」
原田先生は大きく頷く。
「ふふふっ、まあ、先生はともかくとして、輝君が自分で取れたじゃない。それだけでも大健闘よ。」
史奈はニコニコ笑いながら、僕の頭を撫でる。
僕が座って、史奈が立っているからだろうか。身長が低い史奈はニコニコしている。
「あっ、会長ずるい。」
葉月は顔を赤くし膨れ上がっている表情をするが。
「いいじゃない。減るもんじゃないんだし。でも、そうよね。輝君?」
確かに史奈のいう通りだった。北関東でない地域の出身の僕にとって、大きくハンデを背負う中で、二枚取れただけでも大健闘だったかもしれない。
そうして、僕たちは他のボードゲームをやりつつ、楽しい夜を過ごしていった。
その間中、原田先生のお酒も、吉岡先生のお酒も止まることは無かった。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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