68.ビーチバレー(美女たちの水着回、その4)
スイカを食べ終わると、次の企画が始まる。
原田先生がニヤニヤと笑いながら準備をする。
「と、言うことで、次のイベントスポーツ大会と行こうじゃないか!!」
そういって、原田先生はネットを砂浜に張って、ボールを用意した。
「おお、ビーチバレーですね。」
僕がそう言うと。
「そうだな。」
原田が答える。
「やったわね!!」
バレーボール部出身の史奈。親指を立てながらガッツポーズをする。
「ん?でも待って、ビーチバレー・・・・・。ってことは。」
当然、ルールにも詳しい史奈。何かを感じたか?
「おお、鋭いな。流石はバレーボール部。今からペアを組んで、ビーチバレーと行こう!!」
「ああ。そういうことね。」
史奈ががっくりと肩を落としてやる気をなくす表情となる。
それは他の皆も一緒のようで。少し肩を落とす人がちらほらいる。
半面、俄然やる気なのが、藤代さんと吉岡先生と原田先生だ。
僕はどちらかというと、運動が少し苦手なので、とても緊張している。
失敗したらどうしようと。
「ふふふ。皆、それぞれのリアクション、感謝する。というわけで、恨みっこなしという公平を図るため、クジを作ってきた。」
原田はドヤ顔で、クジの紙が入っているビニール袋を取り出す。
全員、深く頷く。
ぞう、クジだ。恨みっこなし。
「では、少年からクジを引いてくれ。ああ、そうだ、引いてもまだ書いてある数字は見ないでくれよ。」
僕は原田先生に指示され、歩み寄り、ビニール袋に手を入れる。
紙を一枚確認して、取り出す。
書いてある数字は見ない。紙を握りしめた。
「それじゃ、他の皆は公平にじゃんけんだ!!」
原田はじゃんけんを僕以外のメンバーにじゃんけんを指示する。
そうして、クジを引く順番が決まる。
勝ち負けで一喜一憂の表情はあったが、そこはクジ。その表情はほんの一瞬。
本番はここから。
おそらく、僕は想像つく。他のメンバーのクジに、それぞれ、各々、紙に書いてある番号がどうなって欲しいか。
全員のくじが引き終わる。
「ルールは勿論知っていると思うが、同じ番号の数字が、ペアだからな。」
原田先生の言葉に全員が頷く。
「では少年、お前の紙に書いてある数字を言ってくれ。」
原田は僕に言ってきたので。
僕は深呼吸して、紙に書いてある数字を言った。
何だろうか、僕も、僕のことを好きな女の子とペアになりたいという気持ちが強い。
「三番。」
僕は言った。
「「あっ。」」
「「あーっ。」」
リアクションが様々だが、大半が、暗い表情をした叫びだった。
「ふふふ。みんなごめんなさいね。はい。三番よ。輝君。」
皆のリアクションを確認し、ニコニコしながら僕と同じ数字を見せる史奈。
「は、はい。よろしくお願いします。心強いです。」
「ふふふ。いろいろ教えてあげるわね。」
バレーボール部の史奈。何だろうか、とても心強い。
他の面々も、自分のペアを見つけ、試合をすることに。
最初の試合は僕たちは試合には出ずに、見ることになった。
「ボールが余っているから、待機組は練習しててもいいぞ。」
という原田先生の話だったので、僕と史奈は練習することに。
といっても、ビーチバレーは初めてなので、待機の時間に、史奈に教えてもらう。
「まずは、サーブなんだけど。アンダーの方がやり易いわね。」
史奈からやり方を教えてもらう。
アンダーサーブ、手を下から上に振って、サーブを打っていく。
僕も史奈の動きをまねてみる。
といっても、体育の授業でバレーボールはやったことがあるので、その延長戦だ。
「うまい。うまい。アンダーの方が確実性があるからね。」
史奈は褒めてくれる。
「さてと、次はレシーブ。少し、腰を低くして。身構えなくていいよ。多分大丈夫。」
史奈と一緒に、ボールで、打ち合っていく。
最初は少し戸惑ったが。
だんだんと、コツをつかんでくるようになり。
「うんうん。良い所まで、行けるかも。」
史奈がそう言った。
「ありがとうございます。運動、特に球技は本当にダメなので。」
僕はそう言うと。
「あら、さっきの泳ぎだったり、陸上教室にマユちゃんと一緒に行ってたんじゃなかったっけ♪」
史奈が、ニヤニヤ笑いながら聞いてくるが。
「すみません、こういう個人系のボール使わないタイムを競うのだったら、小学生レベルであれば・・・。それに、そう言うスポーツでも、僕よりもマユの方が・・・。」
「ふふふ。冗談よ。慣れて行きましょ。」
史奈はそう言って、僕の肩をポンポンと叩く。
そうこうしているうちに、僕たちの試合の出番になる。
「ヨシッ。それじゃあ、先攻は少年と、元生徒会長のペアからだな。」
引き続き、審判をしている原田先生。
ボールが渡される。
「ふふふ。大丈夫よ。合図するからね。それじゃ、見ててね。良いところ、沢山見せちゃう。」
史奈が僕に向かってウィンクする。
史奈は、ボールを高く上げて。
「はぁーーっ」
一気にジャンプする。
まさに、砂の上のマーメイドだった。
そして、史奈の手が、ボールに伸びる。
バゴーン!!
史奈の手とボールから、低くて鋭い、とても大きな音が鳴る。
ジャンプの距離、そして、手の伸び方。
本当に史奈はこのメンバーで、一番背の低い人物なのだろうか。
見た目だけでなく、プレースタイル。
きっと、人一倍、その恵まれない弱点をカバーするために努力してきたのだろう。
ボールは、加速し、さらに威力を増して。
相手側のコートにストレートに落ちていった。
ドスーンッ!!
落ちたときに砂煙が舞う。
「イン!!少年ペアに1点。流石はバレーボール部。」
審判の原田先生の声。
僕は目が点になっていた。
振り返る僕。
「ふふふ。どう?輝君。」
手を振って、ウィンクする史奈。
「す、すごいです。」
僕は頷く。
「オーバーサーブ、上から下に振り下ろす方法ね。ちょっとアレンジしました。アンダーサーブよりも、確実性が劣るけど、威力は増すのよね。」
史奈はそう言って、目が点になっている僕に説明してくれる。
「会長!!ずるい。手加減してくださいよ~。いくら輝君と一緒だからって、良いところ見せようとして。」
相手コートには葉月と藤代さんのペア。
「ほら、か弱い中学生の女の子もそう言ってますよ。」
葉月は藤代さんを見る。
「す、すごい。」
だが、藤代さんは目が点になって、史奈を見ている。
確か、史奈と藤代さんは、加奈子のバレエの応援か何かで、何回か一緒になって、史奈がバレボール部ということを知っているのだろう。
そんなような尊敬のまなざしでこちらを見ている。
「ふふふ、まだまだ行くわね。バレーボールはね、点を取り続けている人がサーブを打てるのよ。」
そうして、史奈は、先ほどと同じようなサーブを五連発し、一気にスコアを五対〇とする。
そうして、六連発目。
「あっ。ごめん。輝君。」
左側にそれ、アウトに。
「大丈夫です。すごかったです。」
さあ、ここからが僕の番。
「会長、負けませんよ。輝君といい、サーブといい、倍返ししますからね。」
葉月はそう言いながら、サーブをする。
「左よ。輝君。」
史奈の指示で、僕は移動し、レシーブの姿勢を取る。
ボールが飛んできたが、レシーブを決める。
その瞬間、僕は目を閉じて、ボールを追うことができなかった。
「ナイスレシーブ。それじゃあ、いくわよ~。」
史奈がボールめがけてダッシュを決めて。一気にジャンプする。
バゴーン!!
再び強烈な当たり。
ナイスアタック。本当にすごい。
「さあ、輝君のサーブの番よ。」
史奈からボールを受け取り、教えてもらった通りにサーブを打つ。
「そうそう、うまい。うまい。」
史奈の教え方が良かったからだろう。
だが、僕のサーブは史奈のサーブよりも威力は当然弱く。
相手に簡単にレシーブで拾われてしまう。
そうして、僕たちのコートに再びボールが、飛んでくる。
「輝君、真上にあげて。」
史奈が勢いよくレシーブを行い、僕の方にボールを渡してくれる。
僕は頷き、少し戸惑いながらもボールを拾った、だが、ボールが行った先は、真上ではなかった。
若干右に逸れたが・・・。
「ナイス。ナイス。大丈夫よ!!」
再びボール目掛けて走り出す史奈。
そして、再び、飛び切り大きなジャンプを決めて・・・。
バゴーン!!
勢いよくアタックを決める。
そうして、同じように土煙を巻き上げてボールが落ちた。
「あー。また会長ずるい。ほら、雅ちゃんも。泣く真似しよ。うぇ~んって。」
葉月は藤代さんに泣く真似をして、手加減させようと促しているが・・・。
「見とれちゃいます。」
と藤代さん。
そうして、この試合は史奈が無双する形に終わる。
「ヨシッ。ゲームセットだな。流石はバレーボール部、雅ちゃんなんか見とれてたな。」
原田先生の言葉に藤代さんが頷く。
「はい。こんな人が生徒会長さんだったなんて、すごいです。」
藤代さんは、とても素敵な目で、史奈を見ていた。
その後の試合も、僕と史奈のペアが、順調に勝ちを進め。
というよりほぼすべてが史奈の無双状態となり・・・。
そのまま、決勝となった。
決勝のペアは、マユと心音。
体を動かすことが比較的得意なペアが残った。
史奈はいつも通りサーブで点を取り続ける。
そして、一級アウトになったところで、マユと心音ペアの反撃開始。
マユも陸上部。しかもガチガチの運動部ということで、史奈ほどではないが、上からのオーバーサーブをやってのける。
すぐにレシーブをする史奈。
実は、サーブやアタックよりも、史奈はレシーブが得意。それもそのはず、リベロのレシーブで活躍していた人なのだから。
「なかなかやるわね。輝君、お願い、さっきまでの感じで、あげてみて。」
僕は史奈が受けて、球の威力がとても弱くなったボールをトスして、再びボールを史奈の元へ。
史奈がボール目掛けて走り込み。
「はーっ!!」
一気にアタックを決める。
「さすがはバレー部ですね。でも、弱点が丸わかりです。」
マユは一気にネットのギリギリまで走りこむ。
「はい。流石の元生徒会長でも、二人いれば・・・・・。」
心音もマユに呼応するかのように、ネットギリギリまで走りこむ。
勝負に出る二人、決まればいいが、外せば大博打。だが、史奈の勢いを止めるにはこれしかなかった。
マユと心音は一気にジャンプする。
そして。
「ナイスブロック!!」
心音の声と同時に、マユのブロックが決まり、ボールは僕たちの方のコートに落ちた。
「はあ。一回は防げた。でも、もう手が痛い。もう一回は出来ないかも、頑張ってみるけど。」
マユはそう言った。
「あちゃー。」
史奈は、肩を落とす。
「ごめんね、輝君。やっぱり、ガチガチの陸上部の子が来ちゃうと。」
史奈はがっかりしながら、僕に駆け寄る。
いや、むしろ、ここまで史奈は大健闘だった。
「いえいえ、大丈夫です。」
さすがに弱点である、身長の低さをあそこまで利用されるともう無理か・・・。
「大丈夫。大丈夫。ギアをもう一段階上げていくだけだから。」
史奈は僕に向かって、満面の笑みを向ける。
そして・・・。
再び同じような状況。
もう一度ブロックに向かう、マユと心音。
だが。
「はーっ。」
史奈は再び大きくジャンプして、アタックを仕掛ける。
史奈のアタックは、ブロックの壁の右を軽々通過した。
ドスン!!と相手コートに砂煙が舞い上がる。
「ふふふ。軌道修正してみたわよ。どうかしらね。」
「「あーっ。」」
悔しそうな表情をする、マユと心音。
「ふふふ。輝君と一緒なら私は無敵よ!!」
史奈はそう言って、ありとあらゆる方向に強烈なアタックを打ち込み続ける。
そして、あっという間にこちらのマッチポイント。
そして。
「ふふふ、最後は特別サービスしちゃうわね。」
史奈がニコニコ笑いながら、僕のトスで。アタックを仕掛ける。
「はーっ。」
勢い良くジャンプする。
そして。
バゴーン!!
今日いちばんの大きな音が響き渡る。
ブロックを仕掛ける、マユと心音。
「何しているんですか?私たちの正面ですよ。」
そういいながら二人はジャンプするが。
ポーン!!
と、大きな音を立て、マユと、心音の手にボールが当たった。ブロックされた。と、一瞬思ったが。
ボールはそのまま、二人の背後にボールは消えた。
最後は、よりパワーのあるボールで押し切ったのだった。
ビーチバレーは史奈と僕の圧勝だった。
「ナイス、輝君。上手だったよ♪」
史奈はそう言うが。
「いや、いや、全て史奈のおかげだよ。ありがとう。」
「ふふふ。良い子ね。抱きしめちゃおう。」
史奈はそう言ってぎゅっと、僕を抱きしめてくれる。
だが、ここから原田先生が衝撃的な一言を告げる。
「ヨシッ。勝利の余韻に浸っているところ申し訳ないが、もう一回ペアを変えて実施するぞ。再びくじ引きだ。」
そう言って、原田がクジを持ってきた。
「あらあら、残念。」
史奈がそう言って僕のもとを離れると再びクジを引き直す。
今度の僕のペアは加奈子だった。
「やった!!」
小さくガッツポーズをする加奈子。
「よ、よろしく、輝。」
「うん、よろしく、加奈子。」
加奈子は興奮気味に僕を見る。
だけど、最初の予選で当たったペアは、史奈ペアだった。
何だろうか、コートの向こう側に立つ史奈はいつも以上に、オーラが凄かった。
「ふふふ。加奈子ちゃん、クジだとは言え、私から輝君を奪うなんて、許せないわ。」
何だろうか、背後に黒い影でもあるのだろうか。
ゴゴゴゴゴゴゴ―ッ。と漫画の背景があるみたいだ。
「良いじゃないですか、クジなんですから。」
加奈子は反論するが。
「そう、わかったわ。試合でみっちり決めましょう。」
「良いですよ。」
史奈のニヤニヤした笑みに加奈子が答える。
だが・・・。
バゴーン!!
ドスン!!
威力の大きなサーブに手も足も出ない僕と加奈子。
「か、会長、ずる過ぎますよ。」
加奈子が言うが。
「あらあら、さっきの勢いはどこへやら。まだまだ行くわね。」
「ひ、輝、頑張ろう。」
「う、うん。」
僕は加奈子の言葉に反応するが。
史奈のボールの球について行けず、結局ストレート負けとなったのだった。
何だろうか、先ほどの藤代さんの瞳の色と同じような瞳の色で、僕は史奈を見つめていた。
こんなパワーのあるサーブを打てるなんて。
結局、二回目のトーナメント戦も、バレーボール部出身の史奈の圧勝に終わり、ビーチバレーイベントが終了した。
それと同時に日が暮れてきた。
「見て見て、輝。とても綺麗。」
加奈子が手招きする。
「本当だ。とても綺麗です。」
夕日に映える海を見る僕と加奈子。
「ごめんなさい、史奈のペアとても強くて。」
「ううん。気にしない気にしない。輝はピアノという特技もあるし。それに、あれはずるいよ。」
加奈子が笑いながら言う。
「ホントそうだよね~。」
葉月が底に寄ってくる。
「あ~あ。こんなことなら、輝君と組みたかったなぁ。」
葉月の深いため息。
「ウチも、ウチも、車と言い、今回と言い、ハッシーと一緒になったことなくない?」
結花がそれを確認するかのように、僕の隣に割り込んでくる。
あらあら、何話しているのかしら。私も、混ぜて欲しいわ。」
「あーっ、ずるい人来た。」
史奈が僕たちの元に駆け寄ってくるが、僕の隣に入らせないようにする葉月、結花の姿。
僕たちはこうして、今日一日を振り返りながら、夕日を見ていた。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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