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49.反町市の建設現場にて(安久尾建設のざまぁ、その1)

お待たせしました。安久尾建設(追放した側の)ざまぁ回、パート1の始まりです。

 

 反町市。東京からほど近いこの町。

 反町市のプロジェクトとして、駅を一つ作ろうとしていた。


 当然、このプロジェクトを企画したのは、この反町市とまったく同じ苗字を持つ政治家。反町太郎だった。彼は古くからの武家の出身で大地主。だからこの町の名前の由来も彼の先祖からきている。

「いや~先生には大助かりですよ。本当に、本当に感謝しています。ここに駅ができれば‥‥。」

 そういいながら、地元住民はニコニコしながら、駅の完成を待ちわびている。


 建設を担当するのは、この反町市の隣、北反町市に本社を構える、安久尾建設だった。

 安久尾建設の社長の兄、安久尾次郎はその北反町市選出の国会議員で、実質、反町太郎の秘書を務めてから、国会議員になった人物だ。

 その、安久尾次郎の息子が、橋本輝を退学に追いやった張本人。安久尾五郎だった。


 そんな建設現場の朝だった。

 いつものように現場監督が指揮にあたる。


「今日も、皆の安全、そして、利用者さんが気持ちよく利用できる駅の完成に向けて頑張っていこう!!」

 現場監督はそう言って、朝の朝会を終える。


 だが、異変に気付く。


「あの‥‥。監督。」

 業務開始時間からしばらくしたとき、作業員の一人が声をかける。


「どうした?」

 監督は作業員に聞く。


「今日来るはずの十トントラックが来ていないのですが‥‥。あれが来ないと作業できませんし。」


「ああ。確かにそうだな。道路事情により、遅れているんじゃないか?」

 はじめはそんな風に答えた。


 だが、何時間待っても十トントラックは来なかった。


「十トントラック、遅いなぁ。」

 少しため息をついた、現場監督。彼は重い腰を上げて、スマホを取り出し、十トントラックの運営している会社に電話をかけた。


 電話はつながる。そして、電話に応対するものが現れた。


「はい。【瀬戸(せと)運送(うんそう)】です。」

 電話の受付はそう言った。


「ああ、安久尾建設の者だが、反町市の新駅プロジェクトの担当の人はいらっしゃいますか?」

 現場監督はそう言って、瀬戸運送の担当者にかわってもらうように指示した。



 一方電話の向こうの瀬戸運送本社。

 安久尾建設から電話を受け取った人物は、まるで、この電話を想定していたように深呼吸して。


「社長、例の件で、お電話です。」

「了解した。」

 瀬戸運送の社長は、そういって、電話に向かう。


「もしもし、社長の瀬戸ですが‥‥‥‥。」

 そういって、電話応対をする。


「あー、安久尾建設だが、今日予約した十トントラックが来ていないのだけど。」

 現場監督が荒々しく声をあげる。


「はい。確認します。」

 瀬戸社長は、安久尾建設からの電話を保留にして、一呼吸置く。だが、電話を保留にしてから、パソコンを見る素振りもなければ、ファイルを確認する素振りもせず、電話をしばらく保留にして、一分間待つ。



 そして。

「大変申し訳ありません。こちらのシステムに不具合が発生しまして。本日の予約ができていない状態になっておりました。」

 瀬戸社長は謝る口調をするが、彼の眼もとはすまなそうな表情など、一切なかった。


「おいおい、何だよ。そしたら、いつ来るんだよ!!」

 現場監督はさらに声をあげる。


「申し訳ありません、あいにく、一か月以上、予約でいっぱいでして‥‥。手配できるのは早くても一か月後になります。」

「はあ、なんだそれ!!ふざけるな!!」

 現場監督は声を荒げるが‥‥。


「申し訳ありません、そちら様への違約金はお支払いしますので。」

「そうだな、そうしてもらわないと困るよ。そして、金だけじゃない。社長に報告して、これからは、お前たちとの取引は無しだ!!」


「はい。申し訳ありません。それで結構でございます。」

 瀬戸社長はすんなり、取引停止と、違約金の支払いを受け入れた。

「ふん。潔いじゃねえか。覚えてろよ。」

 そういって、現場監督は電話を切り、急いで、他の運送会社を探すように、部下たちに命じた。


 同じタイミングで、受話器を下ろした、瀬戸運送の社長。

 社長はほっと、胸をなでおろす。


「よし。取引停止、奴らとやっと手を切れたよ。」

 社長はそう言って、瀬戸運送の社員に報告する。


「よかったっすねー。社長、そういう意味で、娘さんの友達に感謝しないとですね。」

「ああ。そうだな。史奈にも帰ったら報告しないとな。」

 社長は笑っている。


 なぜならば、この会社の名前は瀬戸運送であり、会社の社長の苗字も、瀬戸だった。

 そう、この社長の娘は、つい最近まで、花園学園で生徒会長をしていた、瀬戸史奈だ。

 つまり、史奈は瀬戸運送の社長令嬢だった。


 瀬戸運送にとって、安久尾建設は、もともと、県を跨いでの出先機関で、不況以降、地元での仕事がなかなかか厳しく、助けられてきた恩があったのだが。


 瀬戸運送は、その恩を利用され、長い間、瀬戸運送は、安久尾建設にこき使われてきたのだった。

 先ず、トラックを手配したのに、お金が払われないし、未納分が数多くある。

 その他、瀬戸運送の社員たちに無理難題を押し付ける。その中には、深夜帯に集められたり、これから荷物を配送しに行くにもかかわらず、酒の席に無理やり参加させられたり、明らかに、積載量をオーバーした荷物を積み込まれたりと、明らかに法律に触れる内容を強要されることもあった。

 これが原因で辞めてしまった社員もいるほどだ。

 取引を停止してもよかったのだが、やめられない事情がいくつかあり、なかなか取引を停止できなかった。


 だが、そんな時、取引停止を決定づける要因が入ってきた。

 それは、社長の娘の史奈が、橋本輝と出会ったことだ。


 史奈は輝の一件を父親に話していたのだ。

 安久尾建設の社長の息子が原因ということで、ピンと来たのだった。

 そして、最近は景気も若干回復し、安久尾建設との取引がなくても十分に売り上げが達成できる状況だった。

 こうして、瀬戸運送の社長は安久尾建設との取引停止に一歩踏み出したのだった。


「これで、よかったさ。今回発生した、こちらの違約金も、奴ら、安久尾建設からの未納分で相殺される。」

「そうですね。いや~。本当に良かったです。」

 そう言って、瀬戸運送のメンバーは胸をなでおろしたのだった。







今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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