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46.コーラス部

 

「あっ、来てくれた!!」

 心音の元気溢れる声がする。

 僕は放課後、音楽室の扉を叩き、心音たち率いるコーラス部の見学に行ったのだった。一応、伴奏を頼まれるが、正式な入部ではない。県のコンクール迄は助っ人。

 雰囲気を見てから入部しよう。

 そう思いつつ、心音に促され、僕はコーラス部の皆に自己紹介をした。


「一年B組の橋本輝です。よろしくお願いします。」


「わぁ。本当に来てくれた。」

「待ってたよ♪」

「合唱コンクール見てたよ、ピアノ伴奏、すごかったね。」

 そんな声が、一気に飛び交う。


「ゴホン、とりあえず、橋本君には、コンクール迄は助っ人という扱いにします。最優秀伴奏者賞という実績で、自由曲の伴奏をしてくれます。そして、ここで橋本君さえよければ、指揮者か伴奏者として、コーラス部に加わってもらいます。」

 一喜一憂している、コーラス部員たちに心音たちがまとめる。


 心音の言葉に緊張感が一気に伝わる部員たち。

「それじゃ、今日は橋本君にも慣れてもらうために、コンクールの練習をしましょう!!校内の合唱コンクールではなく、一気にレベルが上がるので、皆緊張感を持ってね。風歌は橋本君のサポートをお願い。」

「「「はい。」」」

 皆、心音の言葉に返事をする。


 僕は拍手に送られてピアノに向かう。

「は、はいっ。これ、自由曲の楽譜・・・。自由曲はこの曲集の二曲目・・・。課題曲の伴奏は、私がやる。このコンクールのために、新しく作られて、作曲して、出来た曲、だから、橋本君、知らないと思う。」

 ピアノの傍で風歌が待っていてくれ、そういって楽譜を差し出してくれた。


 曲集。つまり、『女声合唱組曲』の楽譜だ。

 その女声合唱組曲のタイトルを見たとき、ああ、あれかと思った。有名な曲で、花の名前のタイトルの詩を曲にしたものだ。

 僕は、その曲集の楽譜を、混声合唱版で見たことがある。該当する自由曲の楽譜を開く。楽譜を開くと、少し落ち着くことができた。

 混声合唱版と調合、つまりキーが同じで、伴奏も全く同じような感じだった。これなら大丈夫そうだ。

 皆が発声練習をしているときに、僕は少しばかり、ピアノの練習をする。

 今日は、風歌がサポートしてくれる。


 自由曲を頭から弾いてみる。

「やっぱり・・・・。すごく・・・・。上手い。初見でも、こんなに、弾けるなんて。」

 風歌は笑っている。


「いや。曲は前から知ってます。聞いたこともありますし、それに、僕も、実は中学時代は合唱部でした。」

 僕は風歌に言った。

 風歌は笑顔になる。

「えっ。・・・・そうなんだ。まあ・・・・。そうだよね。部活、やってないのかと思った。」

 風歌は顔を真っ赤にしながら、微笑む。


「ははは。まあ、中学校でなら、部活はやってました。高校も部活、入ろうと思ったのですが、悩みました。生徒会に誘われるまで。」

 僕は笑いながら、話す。


「そ、そうなんだね。」

 そういいながら風歌は笑う。


 部員全員の発声練習が終わったところで、いよいよ曲に入る。

 自由曲の指揮は、心音だそうだ。

 コーラス部の顧問は、音楽の藤田先生ではあるのだが、音楽系の部活の顧問を他にも持っているとかで忙しいらしいし、それに、いろいろな会議があるので、部活に顔を出せない日が多いらしい。

 そう言うことなので、指揮、伴奏も、生徒主体で、この年は、心音が務めることになった。


 心音の指揮は本当に躍動感がある。

 さすがは最優秀指揮者賞を取っただけのことはある。


 今弾いている自由曲は割合静かな曲調なので、もっと大きな、雄大な曲を振るとどうなるのだろうと思う。


 僕も、合わせやすく思い切り伴奏をした。

 最初の通し練習が終わる。


「うん。やっぱり、橋本君、いいね。メリハリもあるし、男の人だからバシッと力がある弾き方。」

 心音は頷く。


「それじゃあ、橋本君のピアノに合わせるということで、フォルテのところもう少し、音量をください。全体的には静かな曲なので、こういうところがせっかくピアノを弾いてくれるので、合わせちゃいましょう。」

 心音の指示で。再び練習をする。

 風歌は常に僕の隣に座り、譜めくりをしてくれる。


 だんだんとコーラス部の声のメリハリが大きくなり、心音が満足し、窓の外が夕方の色に変わったのを確認したとこで。


「それじゃあ、今日の練習はここまでにします。今日は良い感じでした。素晴らしい伴奏をしてくれた橋本君に拍手。」

 心音はそう言って、拍手を送り、最後は部員全員が、

「「「ありがとうございました!!」」」

 と、お礼を言ってくれ、今日の練習を終えた。


「お疲れ様。すごく良かったよ。」

 練習を終えて、心音が僕のもとに歩み寄る。


「・・・・・。うん。とても・・・・。良かった。」

 風歌も満足そうだ。


「みんなには気を引き締めて欲しいという意味で言わなかったけど、今年は県大会を突破して、関東大会、全国大会まで行きそうな気がする。」

 心音はそう言って僕の傍に、僕と風歌にだけ聞こえるようなトーンで言った。


「ああ。そう。それはよかったです。」

 心音と風歌が頷く。


「それじゃあ、ごめん、皆にはああいってしまったのだけど、このまま、コンクールの伴奏、お願いできるかな?」

 心音が両手を合わせて、頭を下げる。


 関東大会・・・・。全国大会・・・・。

 少し不安な要素が僕にはあったが。


 結花たちが背中を押してくれたこともあるし。まずは県大会ということであれば、このまま、頑張ってみようと思った。


「はい。大丈夫です。コンクール、一緒に、頑張ります。」

 そういって、僕は心音と風歌に頭を下げた。


 二人はとても喜んでくれており、お互いに握手を交わした。

 心音は僕が手を握ると一緒に握り返し、風歌は、握手をすると、今日いちばん頬を赤く染めていた。


「よろしくね。橋本君。」

「わ、わぁ。えっと、よろしく・・・・。お願いします。」

 心音と風歌はそう言って返事をした。


「はい。よろしくお願いします。」

 僕は、心音と風歌に頭を下げる。


「と、言うことで・・・・。」

 心音がニコニコ笑い、一枚の紙を取り出す。そして。


「はい。これ。」

 心音が紙を渡す。

「夏休みの練習日程表。橋本君は伴奏ということで、星印がついている日に来てくれればいいからね。」

 そういって、心音から紙を受け取る。

 星印の日、どうやら、心音が手書きで星印を書いてくれたようだ。

 その記載されている日にちは、今週、来週つまり、七月の下旬にかけて毎日のように付いているが、これは想定通り。

 大体、県のコンクールが七月の終わりにある。これは僕も合唱経験者なので、想定通り。


 その後の星印の日は、八月の後半、お盆を過ぎたあたりから存在する。


「ごめんね。七月がかなり多い感じだけど、私たちの県はコンクールが、七月の末にあって。橋本君には急ピッチでピアノをお願いすることになるのだけど。大丈夫かな?

 その後、八月の頭から中旬までは休みで、また八月の下旬からやっていく感じなんだけど。」


 心音の頼み事は、昼休みの一件とは違い穏やかな表情だった。

 少し、落ち着けたのだろう。昼休みの一件は矢継ぎ早だった気がする。


「はい。大丈夫です。いいですよ。」

 僕は大きく頷く。


「大丈夫?ごめんね。」

 心音は頷く。


「まあ、想定してましたから。日程とか。」

「想定?」

 心音は僕の目を見て聞いてくる。


「ああ、えっと。」

 心音の覗き込む目の色は、少し鋭く、戸惑ってしまったが。


「あっ、は、橋本君、中学、合唱部だった。だから、日程とか、だいたい、わかるんだよね。」

 風歌がフォローしてくれる。風歌の言葉に僕は頷く。


「そうなの。それじゃあ、一気に行けそうな気がする。」

 心音はニコニコと笑っていた。


「それなら、わかっていると思うけど、その後の、八月の後半の練習なんだけど。」

 心音が、さらに付け加えていく。


「県のコンクールが終わって、そこで入賞したら、八月の終わりから九月の始めに、関東コンクールがあって、入賞したら、その練習。入賞しなかったら、その期間は、冬の定期演奏会の練習になります。

 ここでも伴奏を、お願いすることにしようと思ったんだけど。今の感じだと、少なくともコンクールには、間に合いそうだし。定期演奏会の伴奏も、無理しちゃうかもしれないけれど・・・。」


「はい。まあ、その、依頼していただければ、その都度、状況を見て判断することになると思いますが、少なくとも、コンクールには行けると思います。」

 僕は、心音と風歌に向かって頷く。


「ありがとう。良かった。」

 心音は僕の表情に安堵している。

 風歌も、大きく、ホッとしたように息を吐いた。


「勿論伴奏者の変更は直前まで、認められているから。こっちでやっておくね。」


「はい。よろしくお願いします。」

 僕は頷く。


「そして、加奈子からも、橋本君の予定を聞いていて、七月末から八月の頭に開けてくれれば大丈夫ということなので、そこも調整しているから、無理のない範囲で来てね。」


 加奈子、と一瞬思った。

「加奈子・・・・先輩。ですか?」

 おっと、いけない。つい、加奈子と呼んでしまう。

 心音と風歌は知らないのだ。この秘密の関係は。少し落ち着かせる僕。


 そうは言っても、僕はまだ何も予定は聞いていないが。


「ああ。なんか、バレエのことでまたお願いしたいことがあるみたいよ。橋本君、どうやら、知らなかったみたいなので、あとで、加奈子から予定は聞いてね?橋本君は大丈夫?私たちに付き合わされてばっかりで、橋本君の個人的な予定とかはない?夏休み。」

 心音がそう聞いてくる。


 ここで初めて気づく。もうすぐ夏休みということを。

 練習の日程表を渡された時点で気付くべきだったが。部活に対して真剣な二人に言われるまで、そんなことを考える余裕も無かったし。

 むしろ、ここ数か月、本当に充実していたので、そんなことを考えてもいなかった。


 少し考えて、夏休みの予定を考える僕。補習と三者面談くらいしかない。

 しかも、補習といっても、四日くらいだ。

 そうなってくると、誰かと予定を入れるのも苦ではなかった。


「いえ。とくには大丈夫です。夏休みの補習とかに参加できれば。特にすることもないので。今のところは。」

 僕は心音にそういうと。


「そう、よかった。急なお願いだったから無理しないでね。」

 心音は安堵した表情をする。そして。


「ああ。そういえば、顧問の藤田先生が会いたがっていたから、今度は藤田先生がいるときに来てね。あの先生、他の音楽系の部活の顧問と兼任もしていて、いろいろ忙しいから、一学期は合唱コンクールもあったし。」

 心音はそう言って、コーラス部の練習後、夏休みの打ち合わせを終えた。


 そうか。藤田先生か。そういえば、藤田先生、岩島先生を交えて、ピアノのことも話を進めておかないとな。今度は、藤田先生が居てくれるといいな。

 そう思いながら、僕は改めて心音と風歌にお礼を言って、練習を終える。


「お礼を言うのはこっちの方だよ。」

 と、心音。風歌も心音の言葉に頷く。


「またよろしくね。橋本君。」

「あ、あの・・・・・。今日は、ありがとう。」

 二人から、手厚い見送りを受けて、生徒会室の方へと向かったのだった。

 何だろうか、少しいい汗をかいているのが背中に感じる。


 少し緊張したのだろうか。そして、先ほどの打ち合わせにもあったように、今週末には一学期の終業式があり、その後は夏休みだ。

 いろいろなことがあった。密度の濃い、数か月だった。

 緊張が少しほぐれ、生徒会室の扉をノックする。

 今日は少し遅めの時間。誰も居ないだろうか。と思い扉をノックした。


「すみません。遅くなりまして。」

 僕はみんなに頭を下げると。


「ああ。輝君。本当にごめんね。心音たちが無理して誘っちゃって。輝君の最優秀伴奏者賞の一件で、心音と風歌が、急にガンガン身を乗り出して積極的だったから、伴奏のことも、加奈子のコンクールのことも話しちゃって・・・。予定が結構忙しくなっちゃったよね。」

 葉月は僕に申し訳なさそうに謝ってくる。


「本当に、ごめん。これから話すのだけど、私の方の予定でも、輝にやって欲しいものがあって、心音たちの予定にも合わせてくれて、輝が少しでも休めればいいのだけど。」

 加奈子も同じで、頭を下げる。


「そんな、そんな。頭をあげてください。僕は夏休み期間中こそ、このままいくと何も予定がなさそうなので。」

 僕はそう言いながら、葉月、加奈子をなだめる。


「よかった。で、どうだった。コーラス部のエース。私たちのクラスの桐生心音と、緑風歌は?」

 葉月はそう言いながら、僕に聞く。


「ええ。とても、いい人でしたし。音楽、好きなんだなあと。心音さんはまとめるのが上手いし、風歌さんは譜めくりとか、サポートしてくれました。」

 僕はそのままの印象を伝える。


「よかった。風歌もピアノ伴奏のイメージがあるけど、歌も結構上手いんだよ。校内合唱コンクールはあの二人にみっちりしごかれてきた。」

 ヘッヘンという感じで、ドヤ顔をする葉月。

 さすがは金賞クラスの威厳だ。


「はい。これ、今日の議事録。ハッシー本当にお疲れ様。」

 結花から、今日の生徒会の打ち合わせの内容を渡される。秋の文化祭、体育祭の議事録だ。

「今日から打ち合わせが始まったって感じ。」

 とてもきれいな字で、議事録が書かれている。

 正直言うと、結花の字ではなさそうだ。


「ああ。これ、実は八木原さんが書いてくれたの。」

 結花がそう言いながら、笑って話す。


「そうなの。少し手伝ってくれることになって。議事録の方を書いてくれたの。すっごく丁寧で良い感じだったよ。夜のお店の準備ということで、輝君を待たないで帰っちゃったんだけど。」

 葉月が補足する。

 なるほど、早織も手伝ってくれるようになると、少し生徒会としてはありがたい。


「詳しくは夏休みが終わってからもしばらく準備することになるから、今は、コーラス部のお手伝いに専念してくれて、大丈夫だよ。

 そういう意味で言うと、生徒会は夏休み期間は活動はないからゆっくり過ごしてね。」

 葉月は笑顔で言う。


「はい。ありがとうございます。皆さんは夏休みの予定は?」

 僕はみんなの予定を聞く。


「私はひたすら、勉強とか、遊びとかかな。結花もだよね?輝君も都合が合えば誘うね。」

「まあ、うちもそんなかんじかなぁ。」

 葉月と結花はそんな感じで応える。

 おそらく、史奈はバレーボール部の手伝いに気が向いたら行くだろうし。今日手伝ってくれた、クラスメイトの早織は店の手伝い。

 そうなると、義信は。


「ああ。俺も、長期休暇中は、爺ちゃんと婆ちゃんの手伝いをしに行きます。というわけで課長、先ずはコンクールのピアノ伴奏、頑張ってくだせえ。」

 義信はそう言って、ガタイがいい割にはものすごく威勢のいい顔で応える。


「義信君のおじいさんとおばあさんは、すごいんだよ!さっきその話で、盛り上がったんだけど。話を聞いていると、温泉街で、ホテルを経営していてね。露天風呂とかがあるんだよ。」

 葉月が得意げになって言う。


「ええ。課長も是非、遊びに来てくだせえ。予約、押さえときますよ。まあ、夏休み期間中は、生徒会メンバーの人数だと、大方埋まっちゃっているのですが、冬休みや紅葉のシーズンも奇麗なので。」

 義信の声のトーンはいつもよりずっと明るい。

 ホテルのことは勿論なのだが、きっと、祖父母たちに愛されて育ったのだろう。

 爺ちゃん、婆ちゃんというワードの時だけ、さらに声のトーンが上がるのが分かった。


「ああ、是非遊びに行きたいよ。」

「あい。ありがとうございます。」

 義信はニッコリ笑顔で、それに応えた。


 そして、加奈子は。勿論。

「私は、勿論、バレエかな。輝にお願いしたいことがあるんだけど。」

 加奈子はそう言いながら、僕に歩み寄り。

 いくつかの紙を渡す。


「県の合唱コンクールが終わった直後の日程で申し訳ないんだけど、私たちのバレエ教室の合宿に参加してほしくて。これ、しおり。」

 ああ、何だ、そういうことか。発表会の本番ということだときつそうだが、合宿なら・・・。少し身構えてしまったが、合宿で練習ということであれば、緊張もそんなにしない。

 少しホッとして、加奈子から合宿のしおりをもらった。


「ああ。勿論、大丈夫ですよ。だから、心音さんたち日程調整してくれたんですね。」

「まあ、もともと、ここはコーラス部の練習も無いので、原田先生と調整して、誘ったんだけど。」

 合宿の日程は、まさにコンクールが終わった直後の日付。七月末日から、八月四日までの日付が書かれていた。


 少し忙しくなるが、合宿での練習であれば、特に問題はないし。引き受けることにした。


「ありがとう。輝。忙しい中、申し訳ないのだけど。合宿前に、一度、私たちのバレエ教室に来てくれると助かる。打ち合わせしたいから。」

 そういって、加奈子は笑顔で言った。

 勿論これにも頷く。


「忙しい中、ごめんね。心音たちのことも、私からもお礼を言わせてください。その代わり、八月や夏休みの後半はかなりスケジュールが空いているからゆっくり過ごしてね。」

 葉月がそう言って、加奈子と一緒に、頭を下げてきたので。


「いえいえ。大丈夫です。ありがとうございます。」

 そういって、二人に頭を上げさせ、打ち合わせを終えた。


 その後はいつものように他愛のない話、大方、コーラス部の様子を聞かれたが、かなり楽しく盛り上がり、生徒会活動は終了になった。


 そして、今週を、コーラス部の助っ人、生徒会の作業の確認を繰り返していると、一学期の終業式を迎えた。

 中間試験も、期末試験も十位以内に入っている僕の成績は、上から数えた方が速い順位に入っているとのことだった。


「問題は、体育だな。保健とかの筆記、頑張れよ。まあ、お前ならやれると思うけど。」

 担任の佐藤先生もそう言いながら、成績表を渡してくれた。

 勿論、そんな話を笑いながら言っていたし、きちんと、佐藤先生のコメントも、『校内合唱コンクール、最優秀伴奏者賞おめでとう。生徒会の活動も含めて、二学期期待しています。』と書かれていた。


 家に帰宅後、僕は一学期の出来事に、思いを馳せる。

 最初はどうなることかと思ったが。

 今年から共学になった元女子校に男子の僕が入学した。

 飛び切りカワイイ生徒会メンバーと、ドキドキな関係になり、僕が今いる、この部屋でも、そして、部屋に置いてある、ベッドでも。生まれたままの姿を見たことがある。

 バレエのコンクール、校内合唱コンクール。演説会。本当に恵まれた。


 そのせいで、少し忙しい夏休みになるが、何もない方が僕にとっては窮屈な気がする。

 そして、全て、僕のことを必要としてくれる人からの誘いだから、本当にありがたかった。


 さあ、明日からはとりあえず、コーラス部のメンバーと県のコンクールに備えよう。

 夏休みといっても、まだまだ僕は学校へ向かう日々が続くので、県の合唱コンクールが終わったら、本格的に、夏休みを楽しもう。

 そう思って。僕はベッドに潜った。








今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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