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28.夜明け

 

『夜明けの来ない夜はないさ‥‥。』

『瑠璃色の地球』冒頭。合唱曲にもアレンジされて。多くの合唱団が、よく好んで歌う。


 どんな辛いことが起きても、明日は必ずやってくる。この日も、朝日が僕の離の部屋に差し込んできた。うっすらとだんだんはっきりわかる僕の部屋。


 目覚めると。四人の美女が、僕の隣で眠っていた。

 とても辛いことがあった昨日。だが、そうであっても、今日もまた、朝日が昇ってきてくれた。


 昨日見た夢は何だろうか。

 いや、夢なんて、見ていない。勿論、悪夢という夢も見ていない。

 そう、昨日は夢を見ない方が正しい。

 これ以上の夢は僕の中であり得なかったから。


 昨日は、心に傷を抱えた僕の隣に、ずっと一緒にいてくれた、ここで眠っている美女たち。


「むにゃむにゃ。輝君。だいしゅき‥‥。」

 葉月先輩、いや、葉月の可愛らしい小さな声。


「輝‥‥。ありがとう‥‥。」

 加奈子の愛おしい寝言が聞こえる。


 スーッ。ハーッ。

 スーッ。ハーッ。


 瀬戸会長と結花は安心しきった顔で熟睡していた。瀬戸会長と結花のとても大きな胸のふくらみが、呼吸と同時に上下するのを見て、ドキッとなる。


 僕は自分の下半身に目をやる。

 そのドキッとなったとき、一か所、ものすごく元気になっている。

 昨日、全てを出し尽くしたと思ったのに‥‥。


 昨日の夜、僕の身体の一箇所は、今以上に、ものすごくパンパンに張っていた。その時に、僕の全てを出し尽くして、もう当分は出せないと思ったのだが。朝日が出て、美女たちの生まれたままの姿がはっきりわかると、どうやらものすごくドキドキしている僕がいるようだ。


 ゴミ箱には大量のティッシュが捨てられている。美女たち曰はく、原田先生からもらったという小袋の中身、すなわちゴム製の例の物がそのティッシュにくるまれている。そして、気付けば、全ての小袋を開封していた。


 保健の授業で習ったことだ。彼女たちを護るためだから、すべて使うのは当然のことだろう。

 床には無造作に置かれている、僕たちの服。

 ここまでの話の流れで、当然だが、その中には最後の一枚も脱ぎ捨てられている。


 悪い夢を見るはずだった昨日。ここにいる美女たちのおかげで、それが打ち消された。涙が出てくる。しかし、前を向かなければならない。彼女たちのために。


「んー。ふわぁぁぁ。」

 一番に起きたのは、さっきまで熟睡していた瀬戸会長こと、史奈。


「おはよう。橋本君。ううん。輝君。」

「おはようございます。瀬戸会長‥‥。史奈‥‥。さん‥‥。」

 昨日の夜、みんなから、名前で呼んでほしいと頼まれた。早速、口に出して呼んでみるが少し緊張する。


「まだ慣れなそうね。」

 史奈は少し笑う。僕の方に近づいてきて。両腕を僕の背中へと回す。

 自然と口付けができる位置。お互いに唇を重ねる。


「これも覚えていきましょ。」

 史奈は優しい目でこちらを見る。

 そして、視線を下の方へ向ける彼女。


「あらあら、昨日、とても激しかったのに、まだまだ元気そうね。朝一番でもらっちゃおうかしら。」

 史奈はニコニコ笑うが、何かを察してすぐに彼女の身体が僕から離れる。

 ベッドの方へ視線を傾ける僕と史奈。


「ふぁぁ。」

 ベッドからもう一人起き上がる。

「あー。会長、先に起きて独り占めずるい。」

 葉月はそう言いながら僕のもとへ。


「ふふふ。ごめんなさいね。」

 史奈は僕のもとを離れ、代わりにやってきたのは葉月だった。


「輝君。おはよ♪」

 葉月はそう言って、頬にキスをする。

「おはよう。葉月。」

 葉月に関しては、お互いに同い年ということが分かったので、名前を呼び合うのにものすごく鳴れている気がする。


「私にも、おはようのキス。欲しいなぁ。」

 葉月はそう言いながら、僕の顔に近づく。それに応える僕。


 そして、結花も起きてきて。

「ハッシー。私にもお願い。」

 同じようにねだってきたので、同じように応える。


 そして、そこからしばらく時間が経過し、一番遅く起きたのは加奈子だった。

「あーっ。あーっ。」

 ものすごく低い声で、背伸びして起きる。

 こうしてみると、朝はかなり苦手だということが判る。

 学校では、バレエの時のように髪の毛を整えてこないで、登校したり、一番遅く来たりするのも納得だ。意外な一面が見れて、すごくドキドキする。


「あーっ。ひかるぅ。おはよー。もーいっかい一緒に寝よう!!」

 加奈子は僕の腕を掴み。ベッドに引っ張り出す。自然と体が横になり、加奈子と向かい合う僕。「輝。だーいすき。」

 そういいながら、加奈子は僕の唇にキスをして、舌を絡めてきた。


「もーっ。起きるよ。加奈子!!」

 葉月が布団をはぎ取り、加奈子を起こす。加奈子は渋々立ち上がる。

 僕たちは無造作に置かれた服から自分の服を見つけ出し、服を着ていく。


「輝君、どう?よく眠れた?」

 葉月が聞いてくる。

「うん。ありがとう。葉月。」

 僕の瞳にはすっかり明るさがもどっている

「良かったぁ。輝君はこうでなきゃ。」

 葉月はそう言いながら僕の頬に再びキスをする。その動きに迷いがない。


 皆が着替え終わったら、外に出る。

「輝!!よく眠れたー?ご飯できてるけど食べるー?」

 伯母の声が聞こえる。


「ありがとう。伯母さん。今行く。」

「良かった。みんなの分もあるよ。食べる?」

 伯母の声に、四人が反応する。


「「「「ありがとうございます。」」」」


 いつもと変わらぬ食事。

 伯母はどうやら人数分を作ってくれたようで、少し朝食の量が多い。


「やっぱり農家ね。お野菜がたくさん並ぶわね。」

 史奈は僕の方を見て、笑っている。


「瀬戸会長、苦手なんですか?野菜。」

 結花の質問に史奈はタジタジになるが。


「そ、そんなわけないわよ。ほら、美味しい。」

 明らかに、苦手な野菜を無理して食べているようだった。その表情だと野菜の中で一番苦手なのは、トマト、だろうか。


「トマトは、スパゲッティーとか、トマトソースのハヤシライスとかなら、大好きだから!!」

 史奈はそう言いながら、結花の質問に笑って受け流している。


「へぇ~。意味深。」

 結花は明らかに無表情で、史奈を見る。


「毎日遊びに行きたいな。輝の家。やっぱり原田先生も野菜が重要って言ってたし。」

 瀬戸会長に対して、野菜を躊躇なく食べているのは加奈子だ。前にも食事をしていた時に見ていた光景。


「体重が少し違うだけでも、バレエに影響出てくるんだよね。野菜はそういう時本当に心強い、もちろん他の栄養に関しても。」

 加奈子はそう言いながら黙々と食べている。

 改めて、彼女がバレエをやっているということが分かると、この食生活は納得する。


「あら~そうなの。そしたら、お野菜分けようか?」

 伯母が加奈子に話しかける。


「ありがとうございます。そう言うことなら、家近いので、毎日遊びに行きます。」

 そのやり取りを聞いた他の三人はそろって加奈子を見る。


「加奈子、今地味にさらっと、嫌なこと言った。」

 葉月がサラッと発言する。


「さあ、何のこと?事実でしょ?」

 加奈子はするりと受け流す。


 確かにこの四人の中では、僕の家だと、加奈子の家が一番近いようだ。

 しかし、昨日の一件以来、それは四人の中では由々しき問題であり、加奈子にとっては少しリードすることになる。


「まあ、いいわ。いずれにしても加奈子ちゃんを含め、少なくとも、四人全員、ここまで来るには雲雀川を渡らなければいけないわね。七夕様にお願いして、天の川みたいに氾濫しないようにしないとね。」

 史奈はそう言いながら、一生懸命苦手な野菜に向き合っていた。

 おそらく、電車を利用している史奈が、この家から一番遠いだろう。それをカバーするように発言していた。


 朝食を済ませ、昨日の一件もあり、今日は午前中で、それぞれ帰宅することになった。

 それに僕も、昨日は原田に送ってもらったため、行きに使用した自分の自転車をバレエ教室の駐輪所に置きっぱなしだった。

 改めて四人を送って行くことにした。徒歩でもさほど問題にならない距離。だが四人で話しながら向かったため、少し時間がかかる。

 雲雀川にかかる南大橋を渡り、駅の方向へ。ここで本来であれば加奈子が別れるのだが、加奈子も僕と同様、彼女の自転車をバレエ教室の駐輪所に置きっぱなしのため、駅の方向へ向かう。

 そして、百貨店と家電量販店の交差点にたどり着いた。

「ここで大丈夫だよ。」

 葉月が言った。

「そうね。私もここから自分で駅に行けるわ。」

 史奈が言った。

「あたしもここで良いよ。送ってくれて、ありがと。」

 結花がウィンクする。


「それじゃ、加奈子ちゃん。くれぐれも、輝君を独り占めしないでね。」

「そうですよ、加奈子会長。この後、ハッシーの家の離屋でもう一回なんて許さないっすよ。」

 史奈と結花がゆっくりと加奈子に近づく。


「す、するわけないじゃない。それに、もう一度、例の袋を買わなきゃできないわよ。」

 加奈子は顔を真っ赤にする。


「じゃあね、輝君。また明日ね。」

 葉月は手を振る。


「うん。みんな、本当にありがとう。」

 僕は頭を下げて、皆と別れる。


 そうして、僕と加奈子は、バレエ教室の駐輪所に向かい、自転車を取りに行く。さすがに、コンクール明けの翌日だ。レッスンは休みなのだろう。教室の電気が消えているし、駐輪所にある自転車は僕と加奈子の二台しかない。


 自転車を走らせ、再び、南大橋に通じる交差点にたどり着く。

「加奈子、昨日は本当にありがとう。」

 僕は改めて加奈子にお礼をした。

「ううん。お礼を言うのはこっち。生徒会選挙といい、コンクールといい。大役を引き受けてくれて本当にありがとう!!」

 加奈子は僕に向かって、お礼をした。


「それじゃあ、また明日。」

 僕は別れようとする。

「うん。輝。大好き!!」

 加奈子は僕の頬にキスをして、自転車を走らせた。


 そのまま見送る僕。誰かに見られていただろうか。

 いや、車で通りすぎるのは一瞬だし、大丈夫か。


 僕は自転車を走らせ、雲雀川を渡り、自分の家へと戻っていった。そして、明日からの予習をして再び眠った。


 その日は、一人でも、悪い夢を見ることもなく、ぐっすり眠ることができた。

 新たな夜明けがここから始まる。


今回もご覧いただきまして、ありがとうございます。

第1章はここまでです。

勢い付けたいなと思い、一気に投稿しましたが。皆さん本当に応援していただき、ありがとうございます。

2章も気になる方は、是非一番下の☆マークから、高評価とブックマーク登録をよろしくお願いいたします。

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