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186.リゾートホテル

 

 沖縄の平和記念公園から、再び史奈の運転で、今回泊まるホテルを目指す僕たち。

 夕食もホテルで出る、ということで、沖縄の料理が楽しみだ。


 いつになく緊張する史奈。

 今回は、高速道路を利用するということで、少し緊張しているようだ。


「大丈夫。乗り方さえつかめれば、行けるからな。」

 原田先生はニコニコと笑う。

「はい。よろしくお願いします。」

 史奈は少し深呼吸する。


「少年も、一緒に前方を見てろよ。」

 原田先生の言葉に僕は頷く。



 そうして車は高速道路を利用するため、沖縄本島を北上していく。途中、やはり、那覇市に向かうにつれて、進路変更で右折のレーンだったり、左折のレーンだったりと、色々と車線を変更しないといけない場面に遭遇してきた。

 しかし。


「大丈夫。このために、後ろから、ヨッシーに付いてきてもらっている。」

 原田先生はお指を立てて笑っている。後方が映る、備え付けのモニターで後方を確認すると、後ろにいる吉岡先生の車が、先に進路変更してくれているようで、ウィンカーを長めに出しながら、前に入るように指示している。


 ミラー越しに、それを確認して、安心して、車線を変更する史奈。

「うん。そういう事だよ。だから、大丈夫。サポートするから。」

 原田先生はそう史奈にニコニコ笑って、安心させるように言った。



「ありがとうございます。」

 史奈はそう言って、運転に集中していく。


 因みにだが、今回の車の移動は、平和記念公園で再び公平にジャンケンをして、運転する史奈とサポートをしている僕と、原田先生の他に、加奈子とマユが乗っている。


「なんか、すごく様になってますよ。会長。さっきまで後ろから見てましたけど。」

 マユがニコニコ笑って、史奈の運転を応援する。

「ありがとう。マユちゃん。」

 史奈はうんうんと頷き、笑っている。


「でも、ちょっと不安なのもあります。普段の会長、見てましたから。」

 加奈子は生徒会活動で一緒に居たからだろうか、史奈の少し、おっとりした性格、どこか抜けている要素、そこを心配しているのかもしれない。


「ハハハッ。まあ、そうだろうな。でも、確実に教習所には通って、免許を取ったみたいだな。加奈子ちゃんも続かないとだな。」

 原田先生はニコニコと笑って、加奈子に親指を立てる。


「はい。さっきも後ろから見てましたけど、良い感じでしたし、だんだんと安心してきました。」

 加奈子はうんうんと頷き、尊敬するようなまなざしで史奈を見る。


 僕の方も、史奈が、頼もしく見える。


「あらあら、ありがとう。」

 史奈が嬉しそうに微笑みながら、笑っている。


 そんな感じでいよいよ、史奈の視線の先に、緑の看板、そう、高速道路の看板が視野に入ってきた。

「さあ、いよいよ、高速に乗って、沖縄本島を北上だ。準備は良いか?」

 原田先生の言葉に頷く、史奈、そして、一緒に載っている、僕と加奈子、そして、マユも大きく頷いている。


 そうして、史奈の車は、高速道路に入っていく。

「合流気を付けて、まあ、でも、後ろからヨッシーの車も見てくれているから、一気に加速していいよ。」

 原田先生の言葉に、一気に加速していく史奈。

 無事に高速道路の本線に合流できたようだ。


「ふうっ。」

 と、安心する史奈。


「ヨシッ。無事に上手くいったみたいだな。」

 原田先生の言葉に、僕たちは思わず拍手を贈る。


「ありがとう。私も、なんだか安心したわ。」

 史奈はそう言いながら、前方に集中する。


「まあ、本州の高速道路よりもゆっくりな速度だからな。そこは、安心できそうだな。」

 原田先生はそう言って、周りの車の流れを観察していく。


「はい。そうですね。」

 史奈はそう言いながら、車の速度を周りの流れに合わせて行く。


 時刻は夕刻、沈みゆく太陽に合わせ、早めにライトを点灯していく。

「うん、高速乗ってるし、早めのライトは良いかもな。まだ、明るさもあるから、弱めでいいからな。」

 原田先生はそう言いながら、史奈にアドバイスを送る。


 史奈と隣に座り、前を向いている、僕。

 史奈が、右斜め前により集中しているなら、僕は左斜め前をより集中しながら、前方を見ていた。


 高速道路ということもあり、短調な景色ではあるが、周りの生い茂っている木々は、まさに沖縄という感じがする。


「なんだか、短調な景色でも、沖縄を走ってるって、実感できますね。」

 僕は皆に向かって、そう言う。


「そうね。木々もそうだし、遠くに見える、屋根の色も、そんな感じがするわ。」

 史奈はうんうんと頷きながら、ハンドルを握る。


 遠くには、沖縄の赤い屋根、そして、屋上には給水タンクも存在する建物が見える。


「ここが沖縄だね。輝。」

 加奈子がうんうんと頷きながら、遠くを見るように言う。

「本当に、来たんだね、ひかるん。」

 マユも、うんうんと笑って頷く。


「そうだね。沖縄だね。」

 どこまでも進んでいく道。沖縄の景色、一つ一つが、僕の目には楽しく見えた。


 車は走り、途中のパーキングエリアで、休憩を取る僕たち。

 目的地まで、ちょうど半分という所だろうか。引き続き、夕日を浴びながら、車を降りて、パーキングエリアで休憩ということになる。空を見上げると、やはり沖縄の風景。米軍の小型の飛行機だろうか。空を飛んで、高度を落とし、近くの米軍の基地へ着陸する様子が目立つ。


 このパーキングエリアの建物も、どこか沖縄を感じさせる建物。

 赤瓦の屋根にシーサーと、これぞ沖縄、という感じがする。


「すごいね。やっぱり沖縄。」

 運転していた史奈。少し一息ついて、パーキングエリアの建物を見る。ここで初めてゆっくり落ち着いて沖縄の建物を見ることができたのかもしれない。


「おう。お疲れさんだったな。周りの風景、ゆっくり見ておけよ。」

 そんな史奈に対して、原田先生はニコニコと笑っている。


「はい。」

 史奈はうんうんと頷いている。


「その、お疲れ様。史奈。」

 僕は史奈に優しく声をかける。

「ふふふっ、ありがとう。輝君。」

 史奈はニコニコと笑っていた。


 そうして、各々、パーキングエリアで休憩を取り、再び、沖縄本島の北側、僕たちが宿泊する宿屋を目指す。

 丁度、パーキングエリアということもあり、車のメンバーを交代して。


「ここからは、僕が運転のサポートをするね。」

 吉岡先生がニコニコと笑って運転席の後ろ側の席に乗る。

 僕は相変わらず助手席に乗り込み、史奈の運転をサポートした。


 他のメンバーは公平にジャンケンをして、早織と雅が、史奈の運転する車に乗ることになった。


 パーキングエリアを発つと、太陽は沈み、薄暗くなっていた。

 これから本格的な夜になるということで、ライトを点灯し、高速道路を走っていく。


 順調に、高速道路の本線に合流できた史奈。

「うんうん。上手い。上手い。慣れてきたようだね。」


 吉岡先生の言葉に少し嬉しくなる史奈。

 少し安心したのか、落ち着いて入ることができた。


「ありがとうございます。」

「うん。だけど、油断しないで。車はそう言う乗り物だから。」

 吉岡先生の言葉に気を引き締める史奈。


「すごく上手ですね。私はとても安心できます。」

 雅がニコニコ笑う。そして、安心した顔で車に乗っている。


「ふふふっ、そうだね。私は、少し緊張しちゃうかも、雅ちゃんは学校での会長さんを見てないから。」

 早織がニコニコと笑っている。この二人は、かなり前々から仲が良く、すぐに車内はほんわかした空気になる。


 早織のいう通り、確かにそうかもしれない。普段の史奈はおっとりしていて、運転できるか不安に思うことがあるかもしれないが、OGとしての史奈はどこか頼もしく見えるのだろう。


「あらあら、一言余計よ、早織ちゃん。」

 史奈がニコニコ笑うと。

「ごめんなさい。でも、つい。」

 早織はニコニコと笑っていた。

「まあ。そうよね。」

 史奈もうんうんと笑っていた。


 ほんわかした車内の中、沖縄本島を北上し、一時間ちょっとで、僕たちが宿泊するホテルに到着する。


 文化祭の景品でもある、ホテルの宿泊券、そして、キングオブパスタの優勝賞金で、このホテルにチェックインして、料金を支払う僕たち。といっても、受付は原田先生が全てやってくれた。


 そして。諸々の手続きを終えた、原田先生に手招きを受け、部屋に向かう僕たち。


「四部屋あるそうで。これが、ヨッシーと、義信君のだな。二人部屋らしい。フロアが違うので、早速エレベーターに乗って、部屋に行ってくれよ。荷物を置いたらすぐに、夕食の会場、えっと、二階の食堂に集合だ。」

 そういって、原田先生は、吉岡先生と義信に部屋のカードキーを渡す。

 二人はうんうんと頷き、エレベーターに乗って部屋に向かった。


「じゃ、社長、ごゆっくりお楽しみくだせえ。」

「うん。それじゃあ、また。よろしく、義信君。」

 義信と吉岡先生はそう言いながら、エレベーターに乗り込んでいった。


「さてと、私たちも行くか。」

 原田先生はそう言って、僕たちを促し、エレベーターに乗り込む。そうして、僕たちが泊まる部屋のフロアにたどり着く。


 そして。一つの部屋の扉の前で立ち止まり。


「はい。少年。この部屋だな。」

 原田先生はカードキーを差し出す。


「ありがとうございます。」

 僕は頭を下げて、カードキーを受け取る。


 鍵の部分にカードキーを差し込み、部屋に入ると、そこには綺麗な景色が広がっていた。


「まあ、好きに使ってくれ。少し広いが。」

 原田先生はうんうんと頷き、そして。僕に耳を貸すように指示し、小声でニヤニヤと笑いながら言う。


「一応、この部屋は、四人宿泊できるらしい。お前の分とあと三人。夜は公平にジャンケン大会にするから、誰が来るかお楽しみということで。よろしくな。それまで、自由に使えよ。」

 原田先生はそう内緒話を僕にした。

 僕はうんうんと頷く。


「さてと。お前たち、少年の部屋の番号を覚えておけよ。」

 原田先生はそう言って、女性陣達に、僕の部屋の番号を覚えさせた。


 そして。

「じゃあな。少年。すぐに夕食だから、荷物を置いて、このフロアのエレベーターの前に来てくれよ。」

 原田先生はそう言って、部屋の扉を閉めるのだった。


 僕はそう頷き、皆に手を振って一旦別れた。


 原田先生は残りの、つまりは、女性陣の部屋割りをしていく。

 今回の殊勲者は、この旅行の福引を当てた風歌、そして、キングオブパスタの優勝賞金で費用を工面してくれた早織なので、この二人は、角部屋の少し広めの部屋が割り当てられることになったという。


 ここの部屋もかなり広くて、豪華なイメージがあるので、更に広いと一体どれくらいなのだろうと思ってしまう。

 大きなベッドとソファーがあり、バルコニー部分から外に出られる。

 今は暗くてよく見えないが、明日の朝は、きっと、窓の外は青い海が僕の視界に広がっているだろうと想像できる、そんな部屋だった。

 僕は荷物を置いて、水を飲み、集合場所であるエレベーターホールに向かった。


 皆と合流して、エレベーターに乗り込み、二階の食事の会場に向かう僕たち。

 エレベーターを降りると、義信と吉岡先生とも合流出来、夕食の時。


 僕たちのテーブルには沢山の沖縄料理が並べられていた。


 自魚の刺身、アグー豚の煮込み料理、ゴーヤチャンプルー、更にはフグを使った、アバサー汁と呼ばれる汁物。付け合わせの海ぶどう。などなど、どれも沖縄でこそのものだ。


「すごく美味しい。」

 この沖縄旅行を企画してくれた張本人の風歌。すべてを楽しむように、ニコニコ笑いながら食べて行く。

「すごい。風歌。なんやかんやで一番楽しんでいるかも。見たことの無い食べっぷりね。」

 心音がニコニコ笑う。

「にへへっ。沖縄。楽しい。」

 風歌は、料理を頬張りながら、うんうんと頷いていた。


「風歌が楽しんでくれて、本当に良かった。この旅行の発起人が楽しんでくれないと、私たちも楽しめないからね。」

 葉月はうんうんと頷き、自分の分の料理を取って食べて行く。


「そうっすね。楽しそうで良かった。」

 結花がニコニコ笑う。

「うん、うん、風歌ちゃん、楽しそう。」

 マユもニコニコ笑って、風歌を見る。

 それぞれ、夕食の料理を食べながら。そして、結花とマユに至っては、風歌と同じか、それ以上のペースで、食事を頬張っていた。


「美味しいですね。沖縄の料理。」

 早織は色々と盛り付けや、使われている具材を観察しながら、夕食の料理を見ていた。

「勉強ですか?お嬢。」

 義信が声をかける。

「そうだね。勉強中。」

 早織はニコニコ笑う。


「ハハハッ、そういう、君も、ホテルの色々な設備を観察してるね。」

 吉岡先生がニコニコと笑う。


「まあ、そうっすね。」

 義信も、ホテルのバイトをしている人。色々と気になっているようだ。


「すごく食事も、ヘルシーで、嬉しい。」

 加奈子がうんうんと頷き笑う。

「そうだね。僕も、沖縄の野菜、ゴーヤかな。チャンプルーだとすごく好きかも。」

 僕が加奈子に向かって頷く。


「ふふふっ、運転してきてよかったわ。とても美味しいわね。味が濃くて。」

 史奈はそう言いながら、アグー豚の料理をどんどん食べて行く。流石は、魚よりも肉、という食べっぷりだった。


 そうして、楽しく食事をした僕たち。

 各々部屋に戻り、それぞれお風呂に入る。

 おそらく、天気が良ければ海が見えるような大浴場で、身体を洗い、ゆっくりと湯船につかり、部屋に戻る僕。


 いよいよ、夜、就寝の時間。ベッドでゆっくり眠ろうかとも思ったが、そこは、皆で出かける沖縄旅行。部屋をノックされ。扉を開ける。


「お疲れ、ハッシー、来ちゃった。」

 結花が親指を立てて、ニコニコと笑う。

「私も、結花と一緒に来ちゃった。」

 心音がニコニコと笑う。

「輝様、お待たせしました。」

 緊張しながらも、どこか顔の表情が柔らかそうな雅。


 この三人が、僕の部屋にやって来た。

 元ヤンキーの心音と結花、そして、その対極の性格の雅。いきなり初日から濃いメンバー。一体誰がこの人選を決めたのだろうと思ってしまう。


「さあ。雅ちゃん。高校に入学するには、その洗礼を受けないとね。」

 結花がニヤニヤと笑っている。

「そうだね。超楽しみぃ。」

 心音もどこか嬉しそうだ。

「はい。お願いします。」

 雅が緊張した顔だが、どこかニヤニヤした顔で笑っている。



 そうして、僕に部屋に入ってきた三人。そこからは、言うまでもなく。かなり、激しい、ハードな夜だった。

 さらに、雅は、小道具迄持参していたようで・・・・。


 沖縄のリゾートホテルの連日連夜が、こうして幕を開けるのだった。


 


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