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177.駅ビルの店

 

 さて、卒業式が終わると、一気に期末試験、つまり、学年末試験に向けて動き出す。


「ふふふっ、皆試験頑張ってるわね。」

 そう言いながら一人だけ余裕の表情を浮かべるのは、史奈。

 やはり、卒業しても、毎日顔を出していた。


「良いっすね。余裕そうで。」

 義信がうんうんと頷く。その言葉に続いて、結花が頷いている。


 そして、結花は僕と加奈子の方を見て。

「二人は、マジで余裕だよね。特にハッシーはさっきから、教科書を見てもいないし。」

 結花は僕を見てニコニコ笑う。


「ははは。まあ、正確にはこのあとね。勉強会をやりたいという人が居て、待ち合わせ中。」

 僕はうんうんと頷く。


「えっ。勉強会?誰と・・・。」

 驚く結花。だが、結花の言葉と同時に生徒会室の扉がノックされた。


「お疲れ、終わったかな?まあ、試験前だし、うちらの部活も早めに終わったよ。」

 心音の元気のいい声。


「パ、パイセン、まさか、ハッシーと一緒に勉強会する相手って・・・。」

 結花は驚くが。


「チッ、チッ、チッ。」

 心音は人差し指を立てて横に振る。


「ちがうわよ、結花。輝君から聞いてなかったね。無理もないか。あの子、重要なことは、いつも直前に言うから。」

 心音は、腕をグイッと引っ張る。

 そうして、入って来たのは風歌だった。


「はい。お誕生日おめでとう。風歌。」

 心音が元気よく言う。


「「「おめでとう!!」」」

 葉月、加奈子、そして、僕が声をそろえて言う。

 おそらく、葉月と、加奈子は、心音と風歌と同じクラスだからだろう。今日のことは知っていたのだろう。

 そして、僕も、昨日の夕べに、風歌からLINEで連絡をもらった。


 <あのね。実は明日、私の誕生日なの。>

 <だから、輝君と、一緒に、お出かけしたり、勉強会したり、色々、してみたいなって。>

 そんな内容のLINEが送られて来たのだった。突然のLINEの反応に僕はビックリしたが。

 勿論、断る理由なんてない。

 二つ返事で、OKの連絡をして、今日、風歌の誕生日である三月四日に至る。


「あっ、そういう事ですか。おめでとうございます。」

 結花は心音の言葉に納得したのか、一拍遅れて、風歌に祝福の言葉を言った。

「お、おめでとうございます。」

 同じく一拍遅れで緊張しながら、拍手を贈る早織。


「おめでとうございます。」

 義信もニコニコしながら親指を立てる。


「おめでとう。風歌ちゃん。でも、そう言うのはもうちょっと早く言わないとね~。私もプレゼント用意したのに。」

 史奈はうんうんと笑う。


「はい。あ、ありがとうございます。その、ご、ごめんなさい・・・。」

 風歌は、顔を真っ赤にしてしまう。


「まあ、気にしない。気にしない。じゃあ、輝君。風歌をお願いね。」

 心音はウィンクしながら、僕の背中を叩き、風歌の元へ促す。


 ということで、祝福の中、風歌の誕生日の放課後を迎えた。

 こういう日だけは暗黙の了解で、その日の放課後は二人きりで過ごせるという権利がある。


 結花を含む、僕と関係を持って居る面々は、納得しながら頷き、僕と風歌に向かって手を振った。

「じゃあ、すみません、お先に失礼します。」

 僕は皆に挨拶して、風歌を連れて生徒会室を出る。


 学校の自転車置き場から、自転車を取り、校門を出ると、一気に僕の腕が温かくなる。

「やった。輝君と二人きりだっ。」

 風歌はニコニコしながら、ベタベタと、僕の腕にしがみついてくる。

 心音も元ヤンとして覚醒する時があるのだが、風歌もこういう時には覚醒して、積極的な女性になる。


 そうして、自転車を押して歩く僕と風歌。やがて、狭い路地に差し掛かり、風歌が路地に入るように指さす。

 僕は頷き、風歌の指示で狭い道に入る。交通量も少なく、パトカーもあまり出くわさない道。

 そんな道で、風歌は、僕の自転車の後ろを指さす。


 そして、数百メートルの間だけ、二人乗りをしていく。

 そんなことを繰り返しながら、僕と風歌は、駅の方向を目指す。


「あのね。輝君。雲雀川の駅ビルに、スイーツのお店、えっと、ケーキのお店があるんだって。そこに行って、一緒に勉強、したい。」

 風歌がそうリクエストしたので、僕たちは、自転車の押し歩きと、二人乗りを繰り返しながら、駅に行くのだった。


 やがて、雲雀川の駅に到着する僕と風歌。

 いつ見ても、かなりの大きな駅。JR線は勿論、大手私鉄の末端区間、さらにはライトレールや、バスが行き来する駅だ。勿論、JRの在来線特急、私鉄の特急もすべて停車する。


 駅の大きな駐輪場に自転車を置き、風歌の案内で駅ビルの商業施設の中に入り、お目当てのスイーツのお店を目指す。


 エスカレーターを乗り継ぎ、駅ビルの五階へ。どうやらこのフロアはいくつかの飲食店が立ち並んでいるようだ。


「まあ、あの百貨店ほどではないけれど、駅ビルのお店も結構人気。」

 風歌はニヤニヤと笑いながら僕に説明する。

 確かに、皆とよく行く百貨店よりは少し狭そうだが、ここも人気店が多いのだろう。かなり多くの人でにぎわっていた。


「ここだよ。」

 風歌はお目当ての看板のお店を見つけてさらにニコニコと笑っていた。


 大人びた雰囲気の茶色を基調としたデザインのお店。

 おしゃれな床、そして、木の柱がさらにシックな雰囲気を出している。


 店員に案内され店の奥の席に案内される。

 椅子の座り心地も実に良く、背もたれが全身を覆ってくれるような感覚で、良い姿勢が保たれている。


 そして、防音効果もあるのだろうか、駅ビルの中とは言え、かなり、静かな店内だった。


 僕と風歌は、店員からメニュー表を受け取り、写真を見てどれにしようか決めるのだが、どれも美味しそうなスイーツの写真が並んでいる。


 風歌も目の色を輝かせながら、そのメニュー表を見ている。


「どれも、おいしそう・・・・。」

 風歌がニコニコ笑っている。

「そうだね。」

 僕はうんうんと、頷く。


「輝君、決まった?」

 風歌の質問に、一瞬戸惑うが。


「少し迷ったけど、決まった。この白玉あんみつのセットで。」

 僕は白玉あんみつの写真を指さす。

「わ、私もそれにする?でも、他のも食べたい・・・・。」

 恥ずかしそうにする風歌。


「他のでもいいんじゃない、分けて食べる。半分とか、三分の一は風歌の頼んだメニュー食べるとか、ああ、僕のも、半分とか、三分の一とかあげるし・・・・。」

 僕は風歌に向かって言う。内心僕も緊張している。


「あっ、それ。心音ちゃんがよくやってた。いいの?」

 風歌が僕を見てくる。僕は風歌に向かって頷く。


 そういえば、彼女は一緒に食事をするとき、僕と同じものと頼むときがほとんどだった。

 最初に食事をした時もそうだった。百貨店のフードコートで、色々なお店が立ち並ぶ中、僕と同じ店に並んで、同じものを注文していた。


「にへへっ、ありがとう。なんか、得した気分。」

 風歌はニコニコと笑う。


 そうして、僕は白玉あんみつのセットを、風歌はワッフルとアイスのフルーツソースのセットを注文した。

 セットにはドリンクがついており、それもお互い別々のドリンクを頼んだ。


 そうして、お互い頼んだメニューの三分の一程度の量を交換して、スイーツの味を楽しむ僕と風歌。


「白玉、もちもち。ワッフル、ふわふわ。フルーツ、ジューシー。にへへっ。最高っ!!」

 風歌は顔を赤くし、ニコニコと笑って、僕に微笑む。

「本当だね。すごく美味しい。」

 僕の口の中にも、風歌の言った通りの現象が実際に起きている。


「二人でわけっこ、二倍にお得。」

 風歌はさらにニコニコと笑い、頷く。

 僕も同じように、顔を赤くしながら、心から喜んでいる風歌の表情を目に焼き付けた。


 そうして、二人でスイーツの時間を楽しんだ後は、時間の許す限り、期末試験の対策を行う。

「にへへっ、予習ばっちり、二年生になっても、輝君、成績優秀そう。教えてもらっちゃった。」


 風歌はニコニコ笑いながら僕に微笑む。

 彼女のいう通り、風歌がわからないところは、僕が親身になって、教えていた。

 学年的には僕の方が一つ下なのだが、そんなことはお構いなしに、風歌はにへへっと笑いながら、僕を頼って来た。


 僕の方は分らない部分もあったが、持っている参考書や、スマホの検索機能で何とか事なきを得た。

 そして勿論だが、僕がわからないところも風歌が色々と教えてくれた。といっても、風歌も教科書や参考書を見たり、スマホの検索機能に頼っている部分もあったが。


「なつかしい。これ、一年生の時にやってた。」

 とニコニコ笑って僕の使っている教科書とノートを見ているのだった。


 そうして、おそらく、いちばんほっこりした勉強会を二人で行い、お店を出る。


「ありがとう。輝君。」

 風歌はすまなそうにお礼を言う。

「ううん。誕生日だから。君の。」

 僕は風歌にそう言って、風歌の分を含めた支払いをするのだった。


 駅ビルの店を出て、駅の駐輪場から再び自転車に乗り、風歌とともに僕の家を目指す。


 勿論、風歌も僕の家について行く。

 僕の家、即ち、農家の離屋にたどり着き、そこから何が起きたかは言うまでもない。


 風歌は一気に覚醒して、積極的になる。


「ねえ。一つ、大きくなった、私、全部見て。」

 風歌は、積極的に服のボタンを外していく。


 僕は頷き、風歌の服を脱がしていく、風歌はそれに応じて、身体を傾けていく。

 そこからの風歌はとても大胆で。僕が貯めていたものすべてを出さざるを得なかった。


「ねえ、もっと。もっと・・・。」

「もう一回・・・・。」

 風歌の声はそんなことの繰り返しだった。


 そして、風歌はそのまま離屋に泊まっていった。風歌の誕生日の日付が変わるころ、僕が貯めていたものが一気に底を尽いた感覚になり、もうこれ以上は無理、という感覚に陥り、二人でベッドの上で眠るのだった。






今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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