176.卒業式
更新再開しました。
お休みの期間の間にも、沢山ご覧いただき、ありがとうございます。
本年は、忙しい時期が続き、更新がゆっくりになりますが、頑張って更新して行きます。
そして、そんな中でもありますが、新しいラブコメ、新しい小説も準備しています。公開出来たら、そちらもお知らせしますので、ご覧いただけますと嬉しいです。
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僕、橋本輝が花園学園の高等部に入学してから、季節が間もなく一巡りする。
本当にこの一年、色々なことがあったし、これでもかと思うくらい青春を堪能しただろう。
加奈子のバレエのコンクールから始まり、合唱、そして、僕のピアノコンクールで再びステージへ。
そして、早織のキングオブパスタ。祖父道三からの料理の継承を無事に受け取った早織。
その、道三の葬儀の翌週、三月を迎え、まだ、肌寒いこの時期。
桜のつぼみはいつ開きかけるのだろうと、首を長くして待つこの時期。
花園学園の高等部は卒業式を迎えていた。
四月にこの高校に入学し、あっという間に三月。
この一年は目まぐるしく過ぎて行った。
僕たち生徒会メンバーは前日に、体育館で、卒業式の装飾を済ませ、卒業式本番当日は裏方メンバーとして、サポートしていた。
保護者の受付と案内、式次第の印刷など、大忙し。そして、卒業式が無事に開始され、少しホッとしている。
式が始まってしまえば、僕たちの出番はほぼない。後は、卒業生が退場時に一人一人に花を渡すくらいだろうか。
生徒会メンバー用として、用意された席に座る僕たち。隣に座る加奈子。
おそらく、加奈子は緊張しているかもしれない。生徒会長として、在校生代表として、送辞を読まなければならないからだ。
しかし、普段からバレエの発表会やコンクールで舞台に上がっている加奈子。緊張の表情が一つもなく、落ち着ていた。
この卒業式、僕たち、生徒会メンバーにも一人、卒業してしまう人が居る。
そう、瀬戸史奈。生徒会長として、僕たち生徒会を引っ張って来た。加奈子が生徒会長になって、役割を引き継いでも、元生徒会長として、ずっと、この生徒会に居てくれた。
僕が史奈とこの高校で接した期間は、一年間。だが、この一年間が人生で一番密度の濃かった一年と言っても過言ではない。史奈と出会ってから十年以上経つような、そんな一年だった。
色々と一年間の思い出がよみがえる。入学してから、生徒会活動のこと、ピアノコンクールや文化祭のこと、そして、僕の農家の、離屋の夜の営みのこと・・・。
うん。僕の掌には、史奈の、身体は小さいが、アレは大きい、アレの感触が確かに残っていた。
胸の高鳴りを押さえ、深呼吸して、僕は式が行われている講堂のステージを見る。一人一人の証書授与を見届ける僕。
A組、B組、C組、D組と続き、いよいよE組の証書授与の順番が来た。
三年E組、史奈が所属しているクラス。
何だろうか、いつにも増して、緊張感が少し増して来る僕。
それは、他のメンバーも同じのようで。葉月、加奈子は少しソワソワ。結花と早織も、少しドキドキしながらE組の生徒の名前が呼ばれている瞬間を目に焼き付けている。
そして、義信も、体格は大柄だが、どこかぎこちない表情をしている。
生徒の名前を読み上げる、三年E組の担任。ア行、カ行、そして、サ行に入り。
「瀬戸史奈。」
担任の先生に呼ばれて、返事をして、壇上に上がる史奈。
校長から、証書をもらう。
やはりどこかしんみりしてしまう。
しかし当の史奈はというと、ニコニコしながら、こちらに向かって、ウィンクで応える。
それを見た瞬間に何かを察する僕たち。
僕を含め、生徒会メンバーの全員がうんうんと頷き、緊張はすぐに解かれ、いつもの表情に戻った。
そうして、全員分の証書授与が終わり、理事長の慎一からの式辞があり、いよいよ、加奈子の在校生送辞となる。
壇上に上がり、卒業生全員の前で送辞を読み上げる加奈子。
「卒業生の皆さま、本当にご卒業おめでとうございます。また、御列席の保護者の皆さま本当におめでとうございます。私たちは、皆さんから多くのことを教えていただきました。入学当初、右も左もわからなかった私たちを、優しく、時に厳しく導いてくださったことは、本当に感謝しています。・・・・。」
加奈子の送辞は卒業の祝いと感謝の言葉で続き、本当に卒業式にふさわしい言葉が並べられた送辞だった。
そして、今度は史奈の答辞。
史奈は壇上に向かって一礼をし、答辞を述べた。
「本日は私たちのために、華やかな式を挙げてくださり、本当にありがとうございます。この学校で学んだ三年間、および六年間は、私たちにとってかけがえのない青春でした。」
史奈はハッキリと答辞を述べ、ニコニコと笑い、一礼をした。本当に堂々としていた史奈だった。
そうして、卒業式は、華やかに、そして、厳かに続き、最後は盛大な拍手で、卒業生を送り出したのだった。
卒業式の後は、生徒会のメンバーで史奈の感謝の会となった。
僕たちは大きな拍手で、生徒会室に史奈を迎え入れる。
「「「ご卒業、おめでとうございます。」」」
僕たちは、史奈にそう言葉をかける。
「ふふふっ。ありがとう!!」
史奈はニコニコしながら笑っている。
そうして、メンバー、一人一人が史奈に感謝の言葉を述べる。
当然、僕も、感謝の言葉を史奈に伝える。
「えっと、一年間という短い間でしたが、ものすごく長いように感じました。」
僕のこの言葉に一同が頷く。
特に、葉月、加奈子、結花、そして、早織は大きく頷いた。
皆と出会い、何度、農家の離屋で過ごしたのだろう。当たり前ではあるが、全ての青春がこの一年に凝縮されていた。
「本当に、この生徒会に歓迎してくれて、色々教えてくれて、ありがとうございました。大学でも頑張ってください。」
僕はそう史奈に伝える。
「ふふふっ、ありがとう。本当にこの一年、長かったし、最高の青春だったね。」
ニコニコ笑いながら史奈はうんうんと頷いていた。
他のメンバーもそれぞれ、感謝の言葉を伝えた。
おそらく、他のメンバーもそれぞれ、感謝の挨拶は、ほとんど形式的な言葉が多かったように思う。
色紙と花束を渡し、写真撮影をして、大きな拍手をしながら、史奈を見送る。
ここまで、あまり時間をかけず、時間をたっぷりとって、別れを惜しむということはほとんどなかったように思う。
まさに、典型的な感謝の会だった。
勿論、典型的で淡々と進めたのには理由がある。そして、感謝の言葉もありきたりだったも理由が存在する。
その理由の効果が早速翌日から現れた。
卒業式の翌日、三月二日の放課後。僕は生徒会活動のため、生徒会室の扉を開けると。
「こんにちは、輝君。今日も元気そうね。」
ニコニコとジャージ姿の史奈がここに居た。
「ああ。やっぱり。」
それを見たとたん、僕は、ああっと頷いた。
生徒会室には僕が一番最後に来たようで。葉月、加奈子、早織、結花、そして、義信。全員が僕と史奈を見て、うんうん。と頷いていた。
「さあ。今日も生徒会活動、頑張るわよ!!来年に向けて、新入生の募集と、部活動紹介の案内を作成しましょう!!」
気合の入った史奈の声。
そう。史奈の進学先は、地元の大学。この花園学園からもほど近い場所にある。
彼女の性格からして、卒業して、OBになってからも、やっぱり、ここに顔をだし僕たちの作業を手伝う気満々だった。
聞けば、ジャージ姿になっている理由は、この後、バレーボール部の練習にも顔を出すのだという。
それでも、少し寂しさがあったが、どこか安心感が漂う花園学園の卒業式だった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
第3部、第8章突入です。
前章に引き続いて、元女子校での青春ラブコメ、頑張る主人公、頑張るヒロインたちの姿をお届けできればと思います。
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