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168.イベントスタート(春のキングオブパスタ、その1)

 

 翌朝、僕はいつもより早く目を覚まし、伯父とともに、今日の分の畑の野菜を収穫した。

 そして、その収穫した野菜を大急ぎでトラックに積み込んでいく。


「いよいよだな。輝。」

 伯父はそう言いながら、野菜の入った箱をトラックに積んでいく。


「うん。」

 僕は頷く。

「あの子のも、母屋のキッチンと、この畑で頑張っていただろう。大丈夫さ。」

 伯父はニコニコ笑っていた。

「そうだね。ありがとう。」

 僕は伯父に向かって、うんうんと、頷いた。


 どうやら、早織だけでなく、僕も緊張しているようだ。

 早織は大丈夫かと、心配になるが、きっと、いつも通りの腕を奮ってくれるに違いないと信じていた。


 そうして、出品予定のメニュー、地元野菜のクリームパスタ、その他にも魚介類のパスタで使用する付け合わせの食材、大葉やバジルなどをトラックに乗せ、僕も伯父とともにトラックに乗り込んだ。


 持ち物の最終チェックをする僕。

 既に、赤城兄妹が作ってくれたユニフォーム、緑色のポロシャツは着ている。

 あとはその他諸々の荷物もそろっていそうだ。


「じゃあ。行こうか。」

「うん。」

 伯父はそう言ってトラックを発進させた。


 トラックは雲雀川を渡り、駅の反対側へ。そして、ライトレールの線路に沿って、走っていく。


「そういやあ、あそこに行くのは、お前が小さい時、小学校に上がる前、以来だな。」

 伯父の言葉に、僕は頷く。

「うん。うっすらと覚えてはいるけど。」

 僕は伯父の言葉に、僕はそう応える。


「だろうな。この時期は学校だし、こっちまで来るのは難しかったからな。俺も、この時期しか、あそこは行かないしなぁ。でもほら、今なら、ライトレールが行くようになったぞ。」

 伯父は先ほどから常に隣を走る、ライトレールの線路を指さす。


 そして、先ほどから、雲雀川駅に迎う、何本かのライトレールとすれ違っていた。


 僕たちが向かうのは、このライトレールの終点。【宝楽園(ほうらくえん)】と呼ばれる場所。その場所は、昔から、色々な偉人が訪れたという、庭園で、何といっても梅林が有名だ。二千本近い紅白の梅の花が、咲き誇る、北関東で、日本で有数の梅の花のスポット。


 今月の下旬からは、この場所で、梅まつりも行われる予定だ。


 キングオブパスタは、春と秋の開催。秋は、市役所近くの城址公園で開催だが、春の時期は、こうして、梅の時期に合わせて、この【宝楽園】と呼ばれる場所で開催される。


 いわば、梅まつりの前座的な意味合いが強いが、それでも、キングオブパスタは、地元では人気のお祭りだ。


 そして、梅の花も丁度見ごろを迎えているので、最近は例年開催されていた秋よりも、春の方が人気が高く、来場者も多く見込まれるイベントになっていた。


 そうして、トラックを走らせること二十分。

 ライトレールの終点でもあり、春のキングオブパスタの会場でもある、宝楽園にたどり着く。


 広々とした駐車場にトラックを停め、荷台から野菜を取り出す。

 伯父とともに野菜を運び、会場となる、宝楽園の広場へ。


 広場には中央に大きなステージが設営され、それを囲むようにたくさんのテントが設営されている。


 そのテントの一つに、僕と同じような服を着た人たちが集まっている。


「おーい。輝君。」

 葉月が大きく手を振っている。

 僕は葉月の元に行き、運んだ野菜をテントの傍に置く。


「おはよう。葉月、皆も。」

 僕は元気よく挨拶をする。


「「「おはよう!!」」」

 皆が、挨拶をしてくれる。


「いや~。社長、そして、伯父さん、ありがとうございます。野菜運んでもらっちゃって。」

 義信が元気よく挨拶をする。


「こちらこそありがとう。生パスタの準備大丈夫?」

「僕は義信に聞く。」


「ええ。半分ほどですが、終わってます。開始時間までにもう半分、大量に仕上げて、一気に準備する感じっすかね。」

 義信はうんうんと頷いた。


「ふふふっ。輝君も元気ね。良かった。」

 史奈がニコニコ笑っている。


「ひかるん、おはよう、部活今日は休みだから、沢山お手伝いするよ~。ああ。ウチの高校の陸上部にも宣伝しておいたから、皆来るって。」

 マユがニコニコ笑っている。


「最終チェックの時に居なかったけど、ひかるんが作ってくれたしおりを読んでいるから、完璧だよ~。」

 マユがうんうんと頷いている。


「ああ。そうだ。遅れちゃったけど、毎報新聞バレエコンクール、全国大会出場おめでとう。ひかるん。加奈子ちゃん!!」

 マユがニコニコ笑って、僕と加奈子の方を見る。


「あ、ありがとうマユ。」

 僕は少し恥ずかしくなる。


「ありがとう。でも、当然だから。」

 加奈子は一瞬、顔を赤くするが、すぐに頷き、自信に満ち溢れた顔をする。


「輝。今日は、キングオブパスタだからね。頑張ろうね。」

 加奈子はうんうんと、僕に頷く。


 まるで僕に気合を入れて欲しいように、念を押して。


「うん、勿論。」

 僕は加奈子に言う。そして。加奈子は僕に近づき。


「あれの件もよろしくね。伯父さんが来てくれてて、良かった。」

 加奈子は僕に小さな声で、耳元で言う。

「うん。勿論。」

 僕は加奈子にさらに小さな声で、そして、さらに、さらに、念を押すように言った。


 それを見て、加奈子は小さくピースサインをして、僕にウィンクする。

 そして、加奈子は伯父の元へといき、頭を下げていた。


「お、おはよう。」

「おはよう。輝君。私たちも、輝君がくれたしおりを読んで、予習ばっちりだよ。」

 次に声をかけてきたのは、風歌と心音だった。


「うん。ありがとう。」

 僕はニコニコと笑って、お礼を言う。


「コーラス部の皆も来てくれるって。流石は地元で大人気のお祭りだね。」

 心音はニコニコ笑いながら得意げに話す。

 僕は心音の言葉に頷く。おそらく、まだ準備段階で、この広場には出場するお店の関係者しかいないようだが、会場の雰囲気、ステージやテントの設営の仕方を見て、おそらく、多くの客でにぎわうのが予想される。


 心音の言葉にますます、大きな希望を持つ僕が居た。


「ハッシー、おはよう。パイセンも、そして、八木原さんも気合入っているよ。」

 結花がニコニコ笑っている。既に記録要員として、スマホにいくつか写真を収めているようだ。


「ありがとう。よろしくね。」

 僕は結花に、そう声をかけた。


「さあ。ハッシーも、八木原さんと、そのご家族に会いに行ってよ。」

 結花は僕に早織たちの方へ行くように背中を押した。


 僕は早織のご家族の元へ。


「おう。ガキンチョ。野菜ありがとな。」

 道三は元気よくニコニコと笑っている。


「本当にありがとうございます。ここまで、早織と一緒に居てくださって。」

「ありがとうございます。どんな結果になろうとも、早織と一緒に皆さんが、ここに居るだけでも、嬉しいです。」

 早織の、母親と祖母はそれぞれ、僕に、丁寧に頭を下げてくれた。


 そして。

「輝君。おはよう。頑張ろうね。ほ、本当にありがとう。」

 赤城兄妹が用意してくれたコックコートを着ていた早織。

 目には既に涙が出そうになるが、それを押さえて、すぐに深呼吸をして、作業に入ろうとしている。


「ううん。早織が頑張ったからだよ。僕も、皆も、負けないから。頑張ろう!!」

 僕は早織にそう声をかける。

「ありがとう。」

 早織はそう笑っていた。


「ありがとな。ガキンチョ。早織の勇士。早織の店長としての姿。見てやってくれ。」

 道三はそう笑って、僕に言った。


「はいっ。」

 僕は今日いちばんの大きな声をだして、頷いた。

 そうして、道三も早織の傍に行き、準備作業を見届ける。


 それを見て、僕たちも準備作業に入る。

 僕は接客担当ではあるが、準備作業は皆で行う。


 僕は伯父の農家の兼ね合いのこともあってか、食材の準備をする担当だった。


 改めて、伯父とともに運んできた野菜を段ボールから取り出し、一つ一つ確認して、野菜を洗っていく。

 人参、キノコ、ホウレンソウと、大方、クリームパスタに使用する野菜がほとんどだが、それを総点検して、野菜を洗い、食材を切る担当、煮込んでいく担当に渡していった。


 そうして、一通りの準備を終えると、春のキングオブパスタ、開始間際の時間になり、会場にはさらに多くの人が詰めかけ、イベントの開始を今か今かと待ちわびていた。


 こちらも野菜を洗い終え、一通りの準備を終えて、深呼吸している僕が居る。

 改めて、この会場を見回してみると、詰めかけている多くの客は勿論だが、それ以上に、梅の花が咲き誇っており、紅白の梅の花が、僕たちの活躍を見守ってくれている。

 まさに、見ごろを迎えた梅の花達。


 それを見て、気持ちに余裕を持つことができた。


 そうして、全員、一通りの準備が終わるのを確認して、早織と富田部長が皆を集めて、最終のミーティングを行う。


「皆さん。早くから集まっていただき、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします!!」

 早織は深々と頭を下げた。


「「「よろしくお願いします。」」」

 僕たちも声を揃えて、挨拶をする。


 そうして、早織、富田部長、そして、僕を含め、生徒会メンバーから諸連絡を行った。

 十分ほどして、最終の打ち合わせが終了する。


 さあ。いよいよ、イベント開始の時刻を迎えた。


「皆様、大変長らく、お待たせいたしました。ただいまより春のキングオブパスタの開幕です!!地元から集まった、たくさんのパスタをご賞味ください。」

 司会者が、中央の特設ステージに、出て来て、開会宣言を行った。その瞬間、ワーワーと歓声が上がり、イベントの開始を告げた。


「それではまずは、ゲスト審査員をご紹介しましょう。」

 司会者はゲスト審査員を一人一人紹介する。

 その中には、加奈子の父親であり、現在、この雲雀川市の市長を務める、井野宏司の姿がある。

 他には、地元の料理の専門学校の先生だったり、料理研究家、料理の雑誌の出版社といったところだろうか。


「そして、会場の皆様も審査に参加できます。投票用紙、もしくは投票サイトに接続するQRコードが印刷された紙を受け取ってますでしょうか?

 入場料の百円、もしくはスマホにから申し込んだ方は、スマホの入場整理券の画面を表示して、そちらにあります、大会本部のテントにお持ちいただければ、投票用紙、または、QRコードを受け取ることができますので、受け取っていない方は、大会本部のテントにお並び頂いてから、それぞれの出場団体のお店のテントにお並び頂ければと思います。

 尚、パスタの値段は各々、お店によって異なりますので、それぞれのお店・団体のテントでのご精算をよろしくお願いいたします。」

 司会者は来場している客に、来場者も審査に出来る旨を伝えた。


「それでは、続きまして、毎回大盛況いただいている、地元一番のイベント、キングオブパスタ。盛り上がりにお応えして、今回は最多の四十三のお店と団体が出場です。それでは一つ一つ、ご紹介していきます。えー、出場団体の皆さま、これからカメラが回り、ステージ前方のテレビジョンに映し出されますので、是非、ご自分の団体がご紹介されたときには、ぜひ手を振って応えていただきますよう、よろしくお願いいたします。」

 司会者はニコニコ笑って、そう呼びかける。来場者も大きな拍手をする。


 そうして、司会者は、エントリーナンバー一番から、出場店舗や団体を紹介していく。

 いくつか紹介されていくが、イタリアン専門のレストランから、喫茶店、その他、インスタグラムで上げているだけの個人活動家の人もおり、出場者は多種多様だった。

 そして。


「さあ。続きましては、エントリーナンバー十四番。森の定食屋さんです。家族経営で行っていますが、今回は思い切って、世代交代。リーダーは店長のお孫さんであります、八木原早織さんが店長代理として、メンバーを取り仕切ります。なんと、早織さんはまだ高校一年生。メンバースタッフも、早織さんが在籍している、花園学園の家庭科部の皆さんであり、八木原さんご家族以外、なんと、メンバー全員が高校生!!もちろんこれは、全出場団体、最年少であります。高校生のフレッシュさが、どこまで快進撃をしていくのでしょうか。注目です。」

 司会の言葉と一緒に、カメラのスタッフが森の定食屋のテントに来てくれる。

 僕たちはそのカメラに向かって笑顔で手を振っていて、中央のステージのテレビジョンにも映し出されていたようだった。


 来場者も、高校生というワードにどよめきを隠せなかった。

 大きな拍手をして、僕たちに敬意を表してくれた。


 さらに司会は出場店舗、出場団体の紹介を続ける。そして。


「続いては、エントリーナンバー二十六番。洋食屋のKUROYAMAさん。この地にお店をオープンして、間もなく半世紀。地元出身の総理大臣全員が足を運んだこともある、老舗洋食屋が悲願の初優勝なるでしょうか。」

 司会は黒山の店を紹介した。


 どうやら、この店のリーダーである、黒山は、カメラに向かって、ニヤニヤと笑って手を振っていた。


 そうして、その後、黒山は作業に戻る。

 洋食屋のKUROYAMAのテントでは、黒山を筆頭に淡々と、料理の作業を行っていた。


「フッ。ついに、八木原道三は堕ちるとこまで堕ちたか。小娘たちに作業させやがって。赤っ恥をかくのが目に見えて分かるというのに・・・・。レシピもない、適当にでっち上げたメニューでどうにかなるイベントじゃないぞ・・・。バカだったな。」

 黒山はそう呟きながら、作業を進めていた。



 黒山の店が紹介され、僕は改めて、出場者用に配られたパンフレットを確認する。

 洋食屋の黒山の出品メニューは、【北関東の魅力アピール、納豆餃子パスタ。~ニンニクと生姜の味と香りを添えて~】、【山の幸満点、キノコパスタ。~北関東は海より山、山の魅力をお届け~】、【大葉とシラスの海鮮和風パスタ。~北関東民の夢乗せて~】の三品だった。


 よりにもよって、文化祭で早織が作っていたメニュー、つまり、黒山が盗作したメニュー三品を堂々と持ってくるとは・・・・。


「驚いただろう。黒山のバカめ。やりやがったよ。」

 道三はパンフレットを見ている僕に歩み寄り、僕に話しかけて頷いた。


「ええ。許せません。ですが、奴のお陰で、何倍も成長できた早織が居ます。今の早織なら戦うことができます。」

 僕は声を低くし、道三に言う。

「ああっ。そうだ。そうだとも。見せてやろうぜ。俺たちの底力。」

 道三は闘志を燃やしている。そして、その他のメンバーもそうだ。絶対に負けない。


 そう思って、僕たちは作業を続けた。


 司会による出場団体の紹介が終わり、来場者はお目当てのお店のテントへと足を運ぶ。


 やはり、イタリアン専門のお店に行く客足が多いか。そして、黒山のお店のテントへ向かう人もかなりいる。

「ガキンチョ。まだまだ、わからん。精一杯来てくれたお客さんをもてなせよ。」

 道三の言葉に僕は頷く。


「よろしくね、輝君。」

 早織もこちらを見て、頷く。


 具材の準備、そして、義信による生パスタの準備は既に終えている。

 あとは、注文が入り次第、パスタを準備し、具材を盛り付けて行けばいいだけ。


「さあ。大丈夫よ。落ち着いて入りましょう。」

 史奈がニコニコ笑いながら僕に問いかける。


 やはりこういうイベント、時々、客足を気にしている僕だが。

 道三や早織のいう通り、こちらのテントに来てくれる来場者も一定数いる。まずは、その人達から全力で出来ることを精一杯やるだけ。


「いらっしゃいませ。」

 僕は来てくれた人達、一人一人に、挨拶をして、注文を聞いていく。


 そうして、客が注文したパスタを、正確に、かつ迅速に、客に出していく。


「美味しそう~。」

「本当だ。すごいっ!!」

「ありがとうございます!!」

 お客様からのそんな声が飛び交う。


 その声一つ一つが励まされる。きっと、ずっとお店をやって来た早織も、そして、森の定食屋を経営する、早織の家族も、きっと、そういう言葉に励まされてきたのだろう。


 イベントがスタートして、三十分ほどが経過。早い人だと、既にどこかの店舗の一品目を食べ終え、次のお店のテントへと向かう。

 向かうのだが。


「・・・・っ!?」

 僕はその光景に目を疑う。


 なんと、二品目、つまり二軒目のテントに訪れるお客様。それが一番多そうに思えたのは、ここ、森の定食屋のテントだった。


 確かに、イベント開始後は、お客の並びが少なかった、ここのお店のテント、だが、開始後、しばらくして、一気に人が溢れて来た。


「すごい。」

 僕は目を疑う。そう呟きながらも接客の業務を続ける。


「おう。すごいなあ高校生は。高校生が作るパスタも食べてみたいと思って、二軒目ここ来た。」

 お客さんのお褒めの言葉。

 同じようなお褒めの言葉がさらに続く。


 そうか。僕たちに期待してくれている人たちがいる。

 さらに言えば、おそらく、今日、どのお店を回るかあまり計画を立てて来なかった人も居るだろう。


 先ほど司会が言った言葉、そして、このイベントのパンフレットにも出場店舗の紹介があるのだが、そこにも書いてある言葉。“メンバーの大半が高校生”、それが一つのセールスポイントになっていた。


「うんうん。お客の入りがだんだん増えてるわ。クリームパスタの売れ行きが好調ね。」

 史奈が僕に声をかける。


「うん。僕たち高校生という存在で、来てくれたお客さんも沢山いるね。」

 僕は史奈、そして、皆の方を向かって、頷く。


「うんうん。そうだね。さあ。気を抜かず頑張ろう。」

 葉月がニコニコ笑う。


 そして、僕は義信の方を見る。クリームパスタの売れ行きが好調ということで、麺の担当をしている義信が心配になる。


 だが、義信は、親指を立てながら、こちらに向かって頷いていた。

「大丈夫っすよ、社長。麺なら大量に作ってあります。それに、生パスタで使用するのは、クリームパスタだけなんで。少し余裕があります。流石に、出品メニュー三品すべて、生パスタの使用だったら、生産が追い付かなかったかもしれないですが。」

 義信はうんうんと、頷き、まだまだ体力があることをアピールした。


 そして、早織を見る。

 どうやら早織も一生懸命、仲間たちをサポートし、設置された鍋に火を通したり、パスタを盛り付けたりと大忙しだった。


 そうして、さらに三十分が経過。イベント開始から一時間。

 一回目のシフト交代の時間を迎え、僕と加奈子は休憩時間に入る。


「じゃあ、ごめん、僕と加奈子はいったんシフトの時間が終わったんで、抜けるね。」

 僕は皆に向かって、申し訳なさそうに頭を下げる。


「うん、皆、ヨロシクね。」

 加奈子も一緒に頭を下げる。


「ううん。大丈夫。ゆっくり休憩してきて。」

 葉月がニコニコ笑う。葉月のシフトの時間はまだまだ続いている。

「大丈夫よ、交代要員のメンバーがもう既に来てくれているから。」

 史奈がうんうんと頷く。


 僕と加奈子は頷き、テントを離れる。

 テントを離れる際に早織を見る。


 偶然にも、早織は僕と加奈子と目が合い。

「ありがとう。輝君、加奈子先輩。」

 そう口元が動き、ニコニコと笑顔で笑っていた。


 あの調子なら大丈夫だ、と僕と加奈子は確信する。


 そうして、僕と加奈子はシフトの休憩時間ということで。

 加奈子と一緒に、他の店舗のテントの状況を見つつ、中央にあるステージの裏へと向かった。



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