154.スイートルームの夜、葉月編
「「「最初はグー、ジャンケンポン!!」」」
「やったー。私の勝ち!!」
葉月はニコニコ笑って言った。今日のじゃんけん大会を制したのは葉月だった。
「ふふふっ、良かったわね。葉月ちゃん。」
史奈がニコニコ笑っている。
「ありがとうございます。やっぱり、提案して、音頭取った私が勝たないとなぁ、なんて。」
葉月はそんな感じで、勝ち誇った顔をしていた。
「それじゃあ、皆さん、おやすみなさいっ。」
そうして、葉月は他のメンバーが部屋を出て行くのを見送った。
そして。部屋の扉が閉まる。
その扉が閉まったのを確認して、葉月は勢いよく僕の元へ抱き着く。
「やったー。輝君と一緒に居られる。」
葉月の純粋な瞳に僕はドキドキする。
「そしたら、こっち、こっち。」
葉月は部屋のソファーに僕を促す。
そして。
「一緒にクッキー食べよう。で、食べながら、映画見よう。」
葉月は大きな荷物の入った鞄の中から、クッキーを取り出す。
いくつかクッキーの箱がテーブルに並べられた。
「ご、ごめんね。手作りだと、悪くなっちゃうから。もともと、このじゃんけん大会、事前に私が提案して、計画してたんだ。だから、いつ一緒になれるかわからなかったし、一緒になれなかった時にも備えて、日持ちの長い、市販のやつで。」
葉月は顔を赤くしながら、申し訳なさそうに言った。
「ううん。大丈夫。ありがとう。いろいろ持ってきてくれて。楽しめそう。」
僕はニコニコと笑った。
「へへへっ。そう言ってくれて嬉しい。本当に、二人で新婚旅行する時は手作りのクッキー作っていくね。」
葉月はニコニコ笑った。
「嬉しい。楽しみにしている。」
葉月の言葉が本当に嬉しかった。
早速、備え付けのポットでお湯を沸かし、備え付けの紅茶パックで、紅茶を準備する。
そうして、紅茶を淹れ、葉月のもとに差し出す。
「ありがと。輝君。優しいね。」
葉月は僕の頬に、キスをする。
それにドキッとする僕。
「さてと、映画、映画。」
葉月は楽しそうにテレビの方に歩み寄り、テレビの操作の資料を確認する。
その資料を確認して、テレビをつけ、画面を切り替える葉月。
そうすると、色々な映画のタイトルの一覧がある。
「すごいっ。」
僕はこんなにも映画の一覧が出てくることに驚いた。
「へへへっ。こういうホテルのスイートルームだからね。プライムビデオとか、そう言う会員制の何かに、絶対入ってると思ったよ。」
葉月はニコニコ笑いながらうんうんと頷き、自慢するような表情で、こちらを見ている。
「何かみたいのは?」
僕は葉月に聞く。
「へへへっ。こーれ。」
葉月は得意げに見たい映画のタイトルを映し出す。
そこにあったのは、誰もが知っている有名なミュージカルの映画だった。
「ああっ。有名だね。僕は何回も見たことある。これでいいの?」
「うん。これで良い。輝君と一緒に歌おう!!輝君や心音と風歌がいる前でのカラオケで一人で歌うのは苦手だけど、こうして、映画の俳優さんと一緒に楽しい歌を輝君と歌えるなら。」
葉月はニコニコ笑った。
「なるほど、それなら、全然いいよ。楽しいし。」
僕は葉月に向かって頷いた。
「ありがと。やったー。」
葉月は小躍りするように、張り切って、リモコンの再生ボタンを押した。
そうして、ミュージカルの映画が始まる。
冒頭から、早速、歌が始まる。
一緒に歌う僕と葉月。
「やっぱり輝君、上手いね。」
葉月はニコニコ笑っている。
「それを言うなら、葉月だって。」
僕は葉月に向かって、笑顔で言う。
「へへへっ。」
葉月は笑っている。
「そして、映画の景色もきれいなところ。ここも内陸で山が多い場所なんだけど、この映画の中の山の麓の街並みは本当に綺麗。」
葉月はその景色に見とれつつ、映画を見る。
「そうだね。僕だって、一回行ってみたい。この場所は、この映画だけでなく、色々なクラッシック音楽が生まれた場所でもあるから。」
僕はそう言って葉月に向かってニコニコ笑う。
「そうだよね~。」
葉月はうんうんと、頷き、楽しいミュージカルの映画を本当に、楽しそうに見ていく。
そして、葉月も何回もこの映画を見ているのだろうか。
クッキーを食べるタイミングや、紅茶を飲むタイミングが僕と同じだった。
そう、ここのタイミングで、楽しい歌が入るということがわかっているから・・・。
「へへへっ、やっぱり、楽しい歌を歌いたいというのは、おんなじだね。」
「そうだね。」
僕と葉月はお互い顔を合わせ、ニコニコ笑う。
そして、クッキーと紅茶はとてもおいしかった。
「美味しいね。クッキー。」
僕は葉月の方を見ると。
「へへへっ、そうだね。」
葉月はそうして、笑って応えてくれた。
そうして、歌を歌いながら、クッキーを食べながら映画を見る僕たち。
この映画の前半部分は楽しいミュージカル、そして、後半は、恋愛と、壮大な歴史のドラマが待ち受ける。
葉月とともに映画を見て、恋愛のシーンでは、お互いに唇を重ね合わせ、後半になるにつれて、お互い感動しながら、映画を見た。
「やっぱりいいね。」
葉月はニコニコ笑う。
「うん。そうだね。」
僕は葉月にそう応える。
「楽しく歌っちゃった。」
葉月はニコニコ笑っていた。
「僕も。」
葉月の言葉に僕は頷く。
「ちょっと、汗かいちゃったね。熱い。ねえ。」
葉月は顔を赤くしながら、窓を指さす。
「そのお風呂、使ってみない?一緒に。」
指さした先には、バルコニー部分に備え付けられている、この部屋専用の露天風呂。
「い、いいけど・・・。」
僕は顔を赤くする。
「へへへっ。大丈夫だよ。誰にも見られてなさそうだし。」
葉月はそう言いながら、ソファーから立ち上がり、窓を開け、露天風呂にお湯を入れる。
そのタイミングで、僕はテーブルにあるクッキーと紅茶を片付ける。
「へへへっ、ありがとう。片付けてくれて。それじゃあ。準備オッケーで良いかな?」
葉月は再びこちらに歩み寄る。
そして。再び僕と葉月はお互い唇を重ねる。
僕はコクっと頷く。
葉月は、彼女の着ている浴衣の帯に、僕の手を持ってくる。そして、結び目の所に僕の手を持っていき。
「いいよ。」
と耳元で囁く。
そうして、僕は浴衣の帯を解いて行った。
その後、何が起きたのかは、言うまでもない。お互いに、生まれたままの姿を愛撫し、お湯が溜まった、スイートルームの露天風呂へと向かうのだった。




