表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/192

153.スイートルームの夜、マユ編

 

「「「最初はグー、ジャンケンポン!!」」」


「やったー。ひかるんと一緒だ!!」

 マユは大きく拳を揚げて、高らかに勝利を宣言する。まるで、試合に勝った時のように。


「あーあ。やっぱり幼馴染には敵わないかぁ。」

 葉月がため息をつく。

「本当。そうね。羨ましいわ。」

 史奈が、ふうっ、とため息。


「よーしっ。それじゃあ。ひかるん、レッツゴー。」

 マユはそう言って、僕の手を引き、皆とともに部屋の外へ出る。


 そうして、皆とともにエレベーターに乗って、下の階でエレベーターを降りていく、僕とマユ以外のメンバーを見送る。

 さらに僕とマユはエレベーターを乗り続け、室内プールのあるホテルの二階にたどり着いた。


 ホテルの二階のフロアは、温水プールの設備だけではない。遊技場や、マッサージもこのフロアにある。

 そうして、僕とマユが向かったのは、ホテルの中の遊技場だった。


 マユは受付を済ませ、こちらに向かってくる。そして。


「それじゃあ、ひかるん。卓球と行きますか。」

 マユは遊技場の受付で受け取った卓球の用具を僕に差し出し、いくつかホテルに備え付けられていた卓球台の一つへ向かう。


「やっぱり、温泉に来たら、卓球でしょっ。やりたかったんだ。」

 マユがニコニコ笑う。

 なるほど。確かに、そうかもしれない。温泉で卓球、テレビやドラマ、そして、CMでもよくそう言った場面に遭遇する。


 僕たちはお互い、卓球台の両端についた。

 深呼吸して、集中する僕。


「おっ、真剣だね、ひかるん。私も負けないよ。」

 マユはニコニコ笑う。

 だが、僕にはわかる。この表情はやる気に満ちた表情だと。


「まっ、といっても、先ずは慣れるためのラリーから始めますか。」

 マユはそう言ったので、ラリーから始める。


 さすがに球技は少し苦手な僕。

 ラリーといっても、なかなか続かない。何とかして、マユについて行こうとする僕。


「ハハハッ。まあ、そんなもんか。」

 マユはうんうんと頷く。


「勘弁してよ。陸上や水泳と違って、球技は僕、苦手なんだから。」

「そうだよね。昔から。」

 僕の言葉にマユは頷くと。


「でも、そうして、私に付き合ってくれるから、苦手だけど、嫌いじゃないよね。さっきからひかるん、私に頑張ってついて行こうとしているし。」

 マユは親指を立てて笑っている。


「ま、まあね。少なくともマユと一緒なら。」

 僕は素直にそう答える。


「へへへっ。そう来なくっちゃ。それじゃあ。ひかるんも慣れたことだし、試合するよーっ!」

 マユは鼻を高くして、ニヤリとしていた。

「ハハハッ。やっぱりそうなるか。」

 僕は少し笑う。

「そうそう。じゃ、頑張って私に付いてきてね。卓球は、十一点先取だったかな。」

 マユの言葉に僕は頷く。

 まあ、一点でも返してやろうと。意気込む。


 そうして、打ち合いが始まるが。

 流石は体育会系のマユ。卓球のお手の物で、先ほどのラリーよりも少し球速が速くなる。


「ヨッシャー。」

 速い球種を空振りし、マユに得点が入る。

 ハハハッ。と思いながら、マユの方を見て笑う。


「さあ、さあ。ひかるんも頑張って、打ち返してよ~。」

 マユがニコニコ笑うが。

 再び、マユの方に得点が入る。


「サーッ!!」

 マユはガッツポーズ。オリンピック選手の真似だろうか。

「へへへっ。こういうオリンピック選手いるよね。真似してみた。」

 マユがうんうんと頷き、おどけて見せる


 喜んでばかりはいられない。マユから点を取ってみたい。

 僕はそんな気持ちで、マユのサーブを打ち返す。


 そして、打ち返したはいいけど。


 コースが外れ、アウト。

 しまったと思ったら、奇跡が起きた。なんとその球は、卓球台後方のラインぎりぎりで、バウンドをする。

 この瞬間、イン。僕の方にポイントが入る。


「おーっ、今のはミラクルだね。」

 マユは感心したように僕を見る。


「ヨッシャ―!!」

 と叫ぶ僕、だが、僕はこれが限界のようで。その後はずっとマユが点を取り続けて。


「はーい。私の勝ち。」

 マユは高らかに勝利を宣言した。


 まあ、でも、一点でも、マユから点が取れたので良しとしよう。

 体育会系にはやはり敵わなかった。


 そうして、卓球を楽しんだ後で、部屋に戻る。

 ソファーに腰かける、僕とマユ。

「ふうっ。」

 マユは一息つく。


「たくさん遊んじゃった。久しぶりに。」

 マユはうんうんと頷き笑う。そして。


「ひかるん、こっちこっち。」

 マユは僕に手招きをして、ソファーに座っているマユの隣に座っているように誘導する。


 僕はマユの隣に座ると。

「ふうっ、疲れた。」

 マユはそう言いながら、僕にもたれかかる。


 それに、ドキッとする僕。だけれども、優しくマユの髪を触る僕。

「へへへっ。」

 マユは顔を赤くしながらも、嬉しそうな表情をする。


「何か、テレビ、やってないかな?」

 マユはそう聞いてきたので、僕はテレビをつける。

 そうして、たまたまつけたチャンネルは恋愛のドラマが放送されていた。年末の特番だろうか。一挙放送というような形でやっていた。


「僕はチャンネルを変えようとすると。マユが首を振る。」

「このままで良い。」

 と、マユは静かに答える。


「いいの?」

 僕はマユにそう聞くと。

「うん。この俳優さん好きだし。それに・・・・。」

 マユは少し顔を赤くしながら言う。


「それに?」

 僕は聞き返す。

「こういうドラマ好き。恋愛のラブストーリー。」

 マユの口から信じられない言葉が返って来た。

 小さい頃から活発で、運動することが好きなマユ。今日も先ほどまで、温泉卓球をしていたのだが。

 やはり、女子高生なのだろう。こういうドラマがわかって来たのだろうか。


「ひかるんの知らないところで、ちょっとは女らしく、なったんだから・・・。」

 マユは恥ずかしそうに言う。


「うん。知ってる。」

 僕は頷く。


「ありがと。」

 マユは照れながら笑う。そして、自然と唇を重ね合わせる。


 ドラマのピュアなラブシーンに合わせて、僕たちも唇を重ねる。

 そうして、ドラマが一話終わり、マユは意図的にテレビを消す。


「ねえ。ドラマでは、キスまでで終わっちゃったけど。」

 僕はマユの言葉にごくっと、息を飲む。


「私たちは、その続きをしてみない?」

 マユは恥ずかしそうに言う。

 僕はコクっと頷く。そして、マユは着ていた浴衣に手をかけるように促す。


 僕は浴衣に手をかける。そうして、浴衣を脱がしていけば、彼女の焼けた褐色の素肌が入ってきた。

 その後どうなってしまったかは言うまでもない。

 幼馴染同士の、二人だけの夜を過ごした。懐かしい話を語り合いながら・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ