152.スイートルームの夜、風歌編
「「「最初はグー、ジャンケンポン!!」」」
「にへへっ、勝っちゃった。」
風歌は照れながら笑っている。
「良かったじゃない。風歌。輝君と楽しんで。今なら、泳ぎも教えてもらえるかもよ。プールはまだまだ営業時間内だよ。」
心音は風歌にピースサインを送りながら、アドバイスをする。
「えっ?」
風歌は顔を赤くする。
「ひ、輝君、今からでも、プール、一緒に行ってもいい。もう一回、泳ぎ方、教えてください。」
風歌は僕を見て、勇気を出して言う。
「勿論、良いよ。」
そうして、僕と風歌は、部屋に干していた水着をもって、もう一度、室内プールへと向かった。
当然、他のメンバーはおらず、僕と風歌の二人きり。
お互いに更衣室で着替えを済ませ、プールの入り口で待つ。
「お、おまたせ。」
風歌は恥ずかしそうになりながらも、着替えを済ませ、プールの入り口から出てきた。
「ひ、輝君と二人きりで、プール。ちょっとだけ、恥ずかしい。」
風歌は僕の腕にしがみつく。
「大丈夫だよ。」
僕は風歌に優しく声をかける。
「あのね。輝君。い、今は、私だけを見てくれる。」
風歌が可愛らしい野うさぎのような瞳で、僕を見る。そして、一緒に彼女のビキニからはみ出ている胸の谷間が少しだけ揺れて。僕はドキッとする。
「も、勿論だよ。さあ。行こう。」
「う、うん。ありがとう。」
僕は風歌の手を引っ張り、早速二十五メートルプールへ。
「えっと、先ずは、ここはプールなので。プールの壁を蹴って。」
僕はプールの壁際に蹴って、蹴伸びをする。そして、蹴伸びで進むのが止まったところで。
腕を片方ずつ動かし、そして、バタ足を初めて、クロールする。
そうして、ある程度の所まで行ったところで、風歌の元へ。
「すごい。すごい。」
風歌は拍手をして、喜んでいる。
「まあ、こんな感じでね。おそらく、マユとかの方がもっと速く泳げるんだろうけど。要は、最初に、壁を蹴って、蹴伸びをする。そして、ある程度進んで、泳ぎ始めるかな。」
「そうなんだ。壁を蹴って、伸びる。わかった。」
僕の言葉に風歌は頷き、風歌はイメージしながら、深呼吸して、プールに潜る。
そして、壁を蹴って。伸びる。
「おおっ。」
蹴伸びが出来た。そして、壁を蹴った勢いで、進んでいく風歌。そして、勢いが止まったところで、風歌は顔を出す。
「すごいじゃん。これが蹴伸びね。」
僕は拍手をしながら、風歌の元へ。
「う、うん。なんか出来た。」
風歌はニコニコ笑う。
「で、もって、次はクロールと行きたいけど。水の中なので、苦しくなると思うから、息継ぎを教えるね。キホンはこんな感じで・・・・。」
僕は潜って、水の中で息を吐く。そして、顔を出し、息を吸う。それを何回か繰り返す。
「にへへっ。ぶくぶく。ぱっ。」
風歌はニコニコ笑っていた。
「そうそう、ぶくぶく。ぱっ。で、忘れないで。ぱっ、の時に、息を吸うんだよ。息を吐くのは水の中でね。」
僕の言葉に風歌は頷く。
少しぎこちないが、風歌も、水の中に潜っては、顔を出す、ということを繰り返す。
風歌の吐く息が水の泡となって、こちらから確認できる。
「にへへっ。出来た。」
風歌は水の中から顔を出して、ニコニコ笑った。
「すごい。すごい。で、ここからは。難しいんだけど。」
僕はクロールを少しして、水中から、顔を横向きに出す。この顔を横向きにして、水面に出す動作を意識してやる。
風歌はそれを見ている。
そうして、ある程度それをやり終わったところで。風歌に聞いてみる。
「どこで、息を吸ったり吐いたりしたか、わかったかな?」
「えっと、横向きに顔を出した時だよね。」
風歌がそう答える。
「ピンポン、ピンポーン。大正解。」
僕は笑顔で拍手をする。
「で、息継ぎと同時に、手の動きもやろうと思うんだけど、手の動きもやる?」
僕は風歌に聞いてみるが。
「えっと、こうだよね。」
風歌はクロールの真似をする。
「うん、うん、上手。上手。そしたら、一緒に見てるから、ゆっくりやってみよう。」
「う、うん。お願い。」
僕は風歌にそう言って、いよいよ、実践してみる。
水に潜って、壁を蹴って、蹴伸びをする風歌。
蹴伸びの勢いが止まったところで、バタ足をする。バタ足は夏にやったこともあり、さらには、ここの温水プールで、少し復習したこともあり、少し上達していた。
さあ、ここから、手の動きを加える。
僕は風歌の手をもって、片手ずつ振り下ろす感じで、水かきの動作を教えていく。
「苦しくなったら、顔を横に出して、息継ぎして。」
僕は風歌に声をかける。
風歌は、顔を横に出して、息継ぎをする。
少しゆっくりでぎこちない。だけれども、着実に、クロールの泳ぎが身についているようだ。
そうして、風歌は少し苦しくなり、途中で立ち上がってしまう。
ここが彼女にとっての限界のようだが、本当に進歩した風歌がここに居た。
僕は拍手する。大きな、大きな拍手をする。
「すごいじゃん、風歌。この手と、バタ足の動きを速くしていければ、もっと長い距離も泳げるよ。」
「にへへっ。風歌、頑張った。はあ、はあ。」
風歌の呼吸は荒かったが、達成感に満ちた表情だ。すごい進歩だった。
「ありがとう。輝君。教えてくれて。」
風歌はニコニコ笑う。
「うん、風歌も頑張ったよ。また、練習しよう。一緒に。」
「うん。ありがとう。」
風歌は笑っていた。
「ねえ。輝君、もう一つプールでやってみたいこと、ある。」
風歌はゆっくりとスライダーの方を指さす。
「スライダー?」
「うん。ねえ。一人じゃなくて、一緒に、ウォータースライダー滑りたい。」
風歌の言葉にドキッとする。
胸の鼓動を押さえきれないまま、スライダーへ。
スライダーのスタート位置につく僕と風歌。前に風歌、後ろに僕。
「ねえ、後ろで、支えて、抱いててくれる?」
風歌は僕にそうお願いするので、少しドキドキしながら、僕の両手は風歌の両脇腹をしっかり持って、支えている。まるで、初めて、滑り台を滑る親子のようだ。
そうして、僕と風歌は、ウォータースライダーを滑っていく。
「きゃっ。」
風歌は、ドキドキしながらも、後ろに僕が支えているという安心感があるためか、とても楽しみながら、スライダーを滑って行った。
そして。見事にゴールのプールに着水したのだった。
「にへへっ。ありがとう。楽しかった。」
風歌は笑っていた。
「ハハハッ。風歌が楽しんでくれたみたいで、本当に良かった。」
僕はそう言って、風歌と笑い合った。
「ねえ、輝君。そろそろ、部屋に戻って。えっとね。」
風歌は僕の手をギュッと握りしめる。そして。
「お部屋の露天風呂、一緒に入りたい・・・・。」
風歌の言葉に再び胸の鼓動が速くなる。
コクっと頷く僕。
そうして、室内プールをあとにして、部屋に戻る僕と風歌。
備え付けの露天風呂にお湯をためる僕。
お湯がたまる間に、室内の暖房器具の傍で、水着を干し直す。
そして、その作業をしていると、露天風呂に、お湯が溜まった。
「お湯溜まった。にへへっ。一緒に入ろう。輝君。」
風歌は僕の元にやってきて、お互いの唇を重ね合わせる。
「にへへっ。そして、お外でも、やってみたいかも。」
風歌は僕の目を見て言った。風歌が覚醒した眼の色だった。こうなってしまえば風歌は誰にも止められない。
「えっと、外で、だよね。露天風呂がある、バルコニーでだよね・・・・。」
僕は風歌に念を押すように言う。
「そう。見られちゃっても平気だもん。輝君のこと、好きだから・・・・。」
風歌は再び僕の唇に、風歌の唇を重ねるのだった。
コクっと頷く僕。ドキドキしながらも、風歌の着ている浴衣に手をかけ、風歌は頷いた。
そうして、彼女の浴衣の帯を解き、浴衣を脱がし始める僕がいた。
その後、どうなったかは言うまでもない。
生まれたままの姿になった、僕と風歌は、お互いに手を繋いで、スイートルームに備え付けられている露天風呂がある、バルコニーへと向かったのだった。




