表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

146/192

146.スイートルームの夜、初夢編

 

 ホテルで上質な年越しそばを食べ終える僕たち。


「皆さん、本当にありがとうございました。」

 義信がニコニコと笑う。


「いや、お礼を言うのはこっちの方だよ。本当にありがとう。」

 僕は義信に頭を下げる。

 他のメンバーも声を揃えて、義信にお礼を言う。


「いえいえ、社長にお嬢、当然のことをしたまでですよ。そしてですが、なんで、大晦日から元旦の夜まで、このホテルに滞在していただくように手配したか、わかりますか?」

 義信の質問に僕たちは首をかしげる。


 確かにそうだ。年末年始の忙しい中、わざわざ、この日まで滞在する必要はなさそうに見える。

 特に年越しは、どのホテルも忙しそうだ。


「それはですね。皆さんに、牧場のカウントダウンイベントを見せたかったからっすよ。といっても、実際に牧場に行くのではなくて。牧場から花火が上がります。本当に毎年、大量に花火が上がるんで、是非見て欲しかったからです。」

 義信はニコニコと笑いながら説明をする。そして。


「で、その花火なんですが、お泊り頂いている、スイートルームから見れますので、是非、皆さんで見て欲しいです。」

 義信の言葉に、僕たちはたちまち興奮する。


「すごい!!」

 僕は思わず両手を叩いて拍手をして喜ぶ。

「うわぁ!!」

 早織も目の色をキラキラさせながら喜んでいる。


「嬉しいわ。素敵ね。」

 史奈がうっとりしながら笑っている。


「うんうん。花火最高。」

 マユもニコニコ笑いながら、はしゃいでいる。


「絶対写真の準備をしましょうね。パイセン。」

 結花は親指を立てて、心音に合図をする。心音も大きく頷く。


「すごい、感動しそう。」

 加奈子は頬を赤くし、目の色をキラキラして、笑っていた。


「にへへっ、皆で花火、嬉しい。」

 風歌も笑っている。


「最高じゃん、磯部君、ありがとう。」

 葉月は義信にお礼を言った。


「はい。ということで、皆さん、スイートルームで、花火、是非楽しんでください。よいお年を。」

 義信はニコニコ笑って、アルバイトの業務へ戻って行った。


 義信の言葉に僕たちは笑顔で、良いお年をの挨拶を交わし、スイートルームに戻る。


「さあ。今日は全員でこの部屋に泊まりましょう。そして、花火も楽しみましょう。」

 史奈の言葉に、皆は頷く。


「「「やったー。」」」

 全員で、一緒に叫ぶ僕たち。本当に、この年、皆と出会えてよかったと感じる。


 ということで、トランプで、ゲームをやりつつ、テレビを見て花火大会まで過ごすことになった。


 見たい番組となってくると、色々あるのだが、女性陣と、文科系男子の僕ということで、見たい番組は大きく二つに分かれた。

 某バラエティ番組と、某歌番組だった。


 ということで、某バラエティ番組と、某歌番組を三十分交代で交互に見ることになった。


 某バラエティ番組は、笑いをこらえている出演タレントさん達には、申し訳なかったが、沢山笑わせてもらった。


 そして、三十分経過したところで、某歌番組に切り替えたのだが、そこからはずっと某歌番組を自然と見ることになった。


 なぜならば、ここには、ピアニストで色々知っている僕を含め、コーラス部の心音と風歌、さらには最新の曲を知っていそうな結花、バレエの出身ではあるが、ダンスを知っていて、即興で色々踊れそうな加奈子、とそうそうたる面々がここに居た。


 そう。この某歌番組は、基本的には今年活躍した歌手が今年流行った歌を歌う。

 出演歌手が歌っている歌は、誰か一人は必ず知っているという現象が起き、その歌手と一緒に歌うのだった。


 さながら、小さなカラオケ大会となった。

 歌手と一緒に歌うので、歌に自信がない人も自然と声が出ていた。


 加奈子は即興でダンスを交えながら、僕と心音と風歌は全力で歌唱力を披露する。


「すごい。すごい。皆、歌手より上手いんじゃない。」

 葉月はニコニコ笑いながら、それを見て手拍子をしていた。

「本当ね。今度皆でカラオケも一緒に行きましょうね。」

 史奈がニコニコ笑いながら呼びかける。


「「「はいっ。」」」

 と声をそろえる僕たち。


 そうして、アニソンから演歌まで、僕たちは出演歌手の歌に合わせて、一緒に歌っていた。


 その中で一番意外だったのは、早織だった。

 気合を入れて、演歌を歌っていく。


「すごいね。演歌美味いじゃん。」

 僕は早織に言うと。


「まあ。お祖父ちゃんが好きだったからね。いろいろ教えてもらった。」

 と早織。


「「「「ああっ。」」」」

 と声を揃えて頷く僕たち。


 早織の祖父母、道三と真紀子の顔が思い浮かんだ。

 豪快な人物の道三。きっと、彼も今頃、この歌番組を見て、演歌を聞いているのだろう。


 早織は、道三にお土産をたくさん買っていたようだ。


 今回のホテルも追加料金はほとんど、道三が出してくれた、僕たちもお礼を言いに行こうと思った。


 そうして、その歌番組の大トリの出演者の出番となった。

 大トリを飾るのは、人気の男性アイドルグループ。メンバー全員、音楽活動は勿論のこと、司会やドラマと引っ張りだこだ。


 そして、そのグループが歌う曲もほとんど知っている。というより、ここに居るメンバー全員知っている。

 ということで、最後は皆で、ソファーに座り、肩を組んで、一緒に歌った。声を揃えて、ニコニコと笑顔で一緒に歌った。


 そして、いよいよ、この歌番組が終了し、新年へのカウントダウンが始まろうとしている。


 胸の高鳴りを押さえられない。

 僕たちは、ドキドキしながら、部屋の窓際までやって来た。


 そして、手元の時計では、二十三時五十九分を指している。

 テレビの音、そして、時計の秒針をしっかり見て。


「せーのっ。」


「「「十、九、八、七、六、五、四、三、ニ、一・・・・・。」」」


「「「ハッピーニューイヤーッ!!」」」

 声を揃えて叫んだ。そして。


 ピュー。ドーン!!

 ピュー。ドーン!!


 夜空に大輪の花がいくつもいくつも咲き誇る。


 牧場からの花火が上がった。

 赤、青、黄色、緑、と色とりどりの花火が冬の夜空を彩る。


「輝君。」

 葉月の言葉に僕は振り向く。


「今年もよろしくね。」

 葉月はニコニコ笑って頷く。


「うん。よろしく。皆も、よろしく。」

 僕はニコニコ笑ってみんなの方を向く。


「ええ。楽しい一年にしましょう。」

 史奈がうんうんと頷く。

「輝、今年もバレエとかいろいろ手伝ってもらっちゃうけど、よろしくね。楽しい、思い出、たくさん作ろう。」

 加奈子がニコニコと笑っている。

「ハッシー、楽しんで行こうぜ!!」

 結花はイェーイと騒ぎながら僕の元へ。それに合わせて、結花とハイタッチを交わす。

「よろしく、輝君。コーラス部も楽しんで行こう!!」

 心音はうんうんと頷き、笑っていた。

「うん、楽しい一年、楽しみ。」

 風歌は、にへへっと笑って、頷いていた。

「ひかるん。今年は絶対、ひかるんにいいところを見せるぞ。」

 マユは気合を入れていた。


 そして。

「輝君。」

 早織が僕の元へ駆け寄る。

「昨年は本当にありがとう、今年、まだまだ、輝君と皆に迷惑をかけるかもだけど、よろしくお願いします。」

 早織は深々と頭を下げた。


 全員の挨拶が終わる。そして。


「ねえ。輝。どうして、この日は皆でこの部屋に泊まろうとしたと思う?」

 加奈子が僕に聞いてくる。

「そうだね。もう、一月一日なんだよね。だからかな。・・・・。」

 僕はそう答える。僕はもう答えは分っている。この後、何がしたいかもわかっている。


 皆は僕の言う事を待っている。僕は少し深呼吸する。


「皆で、一緒に泊まって、同じ初夢を見て見たい。」

 僕は恥ずかしそうにそう告げた。


 皆は大きく頷く。


「一緒に・・・。」

 僕は皆に聞こえるようにつぶやき、手招きをする。


 大きな花火を見ながら、順番に唇を重ねる。

 そして、一人一人と手を繋ぎ、全ての花火が打ち上げ終わるのを見届けた。


 それと同時に部屋の電気を少し消して、常夜灯のみにする。

 皆揃って、大きく頷き、呼吸を合わせる。


 そうして、僕は順番に皆の着ていた浴衣を脱がし始めた。


 それからどうなったかは言うまでもない。


 同じ初夢を見られただろうか。皆で、これからも共に歩んでいく、そんな初夢を・・・・。


 僕は見ることができた、皆見ることができた、そう信じてやまない僕が居た。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ