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135.温水プールと宣戦布告(美女たちの水着回、その6)

 

 夕食の後、僕たちは部屋に戻り、バッグから、水着とタオル、そして、いくつか浮き輪を取り出す。


「さあ。スパの室内プールで、思いっきり遊ぼう!!」

 葉月の掛け声に、僕たちは、おーっ!!、と大声で頷き、再び部屋を出て、エレベータに乗り、スパのある二階へ向かう。


 ホテルの二階は客室はなく、全てスパの施設一色だった。

 温水プールに、マッサージ、サウナや遊技場も完備されており、大浴場以外の施設がここに詰まっていた。


「さてと、遊技場とかでも遊びたいけど、メインはプールよね。」

 史奈がニコニコ笑う。

 事実、このフロアの七割ほどのスペースは室内温水プールだった。史奈の言葉に大きく頷く僕たち。


「それじゃあ、更衣室で着替えて、プール側の入り口の所で、集合ということでいいかな。輝。」

 加奈子の言葉に、僕は頷く。


「う、うん。わ、わかった。」

 僕はそう皆に頷く。そして、男女の更衣室に分かれて入っていった。といっても、男子は僕一人だけなので、先ほど加奈子が僕の方を見て、集合場所を指定したのだった。


 

 ホテルのスパ。温水プール。しかも、かなりの広さの・・・。

 そして、男子は僕一人。


 ということになれば、自然とドキドキしてしまう僕。下半身の方へ目をやれば、そう。それなりの大きさになってしまう。

 更衣室に入り、周りの目を気にして、出来るだけ人気のない場所、誰も来なそうな場所で、水着に着替える僕。


 頼むから、まだ、抑えててくれよと願いながら・・・。他の人の視線を気にして着替える。

 そうして、着替え終わる僕。気持ちを抑えたまま、着替えることが出来たので、少しホッとする。


 プール用に持ってきた、水にぬれても大丈夫な小さな入れ物に、浮き輪とペットボトルを入れ、ゴーグルを首に掛け準備完了。温水プールへ向かう僕。


 するとどうだろうか、視線の先には、南国をイメージした広々とした空間が存在した。

 そして、夜の時間帯だからなのか、照明も少しロマンティックなオレンジ色をした照明が使われ、まるで、夏のナイトプールをイメージした、そんな場所だった。


 思えば、更衣室に入った時から、ものすごく暖房が効いており、この場所だけ、南国リゾートのような暖かさだった。


 入口の所で、皆を待つ僕。

 水着を着ているため、上半身が裸でも少しも寒くない。


 

 そして、数分後、待ち合わせの相手が現れる。

「お、お待たせ輝。」

「ごめんね。待った?」

 一番先に出てきたのは、加奈子と早織。


 思わずドキッとなる。加奈子の水着は、競泳水着で、早織の水着は、それに似た花柄ワンピタイプのものだった。


「ご、ごめんね輝君。ビキニとかじゃなくて。その、仕事メインだから、その、こういうリラックスする時は、思いっきり動きやすくて、泳ぎやすいものを持ってきたから。」

 早織の言葉に、思わず首を横に振る。

「そ、そうだよね。でも、すごく可愛いよ。」

 僕は緊張しながらも早織にそう応える。

「ありがと。輝君。」

 早織の言葉に首を縦に振る僕。そして、緊張しながらも、加奈子の方を見る。


 バレエをやっていて、シュッとしている加奈子。競泳水着というのは、体のラインが強調されるものが大半のため、加奈子の体のラインが際立っている。

「ぷ、プールということもあって、わ、私も動きやすいものを選んだかな。う、海に行くときは、ビ、ビキニも着るけど、実は、こういう水着の方がたくさん持ってる。実はバレエでもプールでトレーニングすることもあるんだ。特に怪我をしている時なんかは有効でね。それに・・・。」

 加奈子は少し深呼吸。どことなく緊張しているようだ。


「競泳水着は、レオタード着てるみたいな感じで、結構好きだったりする。実は。」

 加奈子の言葉に、ドキドキしながらも頷く僕。

 確かにそうだ。レオタードというのはバレエの練習着、身体にぴったりフィットさせ、体のラインを強調するための服だ。

 だけど、バレエの練習時は、足にタイツを履く。だが、加奈子の水着は、足を太ももから露出しているため、なんだかドキッとしてしまう。それに、彼女のお尻も少し見えてしまいそうで、形がより想像できてしまう。


 だが、加奈子の緊張は少し違うようだ。

 ーわ、私と早織以外は、ビキニなんだよね。そういう水着を持ってきた方が良かったかなぁ・・・・。ー

 加奈子の心はそう思っていた。


 一瞬沈黙が流れたが。僕は加奈子の方に手を乗せて。


「だ、大丈夫だよ。加奈子。そうだよね。この水着は、スタイル抜群の加奈子にぴったりだよ。」

 僕は加奈子のスタイルの良さにドキドキしながら、そう言う。

 加奈子はその言葉を聞いて、顔を赤くし。


「ありがとう。輝。」

 加奈子は緊張を解き、ニコニコと笑っていた。

 言い忘れていたが、加奈子の来ている競泳水着も、一色しかない無地のものではなく、花火に似た、少し光沢のある模様が綺麗に映し出されていた。


 そしてさらに、着替え終わったメンバーが続々と出てくる。


「おっ、ハッシーお待たせ。」

「お待たせ、橋本君。」

 結花と心音が手を振っている。

 今回は先輩と後輩の間柄だからか、同じ形のクロスビキニを色違いで着ていた。結花が黒、そして、心音が赤。


「先輩後輩で揃えてみたよ。」

 心音がノリノリで笑っている。


「へへへっ、似合うかな?ハッシー。といっても、新しく買ったとかじゃなくて、前からこの水着、持ってたんだけど。」

 結花がニコニコ笑っている。


 二人とも、ビキニの上部から、胸の谷間を覗かせて、ドキッとしてしまう。

「すごく似合ってる、先輩後輩で、揃ってていいね。」

 僕は緊張しながらも心音と結花に告げる。


 二人とも、少し安心してい暮れたようだ。


 続いて出てきたのは、マユ。

 ニコニコと笑いながら、スキップして出てくる。


「見て見てひかるん。」

 得意げになるマユ。

「みんなの前で、ビキニ着れて嬉しい。」

 マユはニコニコ笑いながら、その場でクルクル回る。マユらしい、動きやすそうなビキニで、どこかしら、競泳水着をイメージさせるようなデザイン。

 セパレートタイプの競泳水着と言った方が近いかもしれないが、マユはとてもうれしそうだ。


「夏だと焼け跡、すごくはっきり残るから、冬場の室内プールはこういうの着て、ひかるんをドキドキさせたいな。」

 マユはニコニコ笑っている。


 そして続けて、葉月と風歌が出てくる。

 葉月は、ピンクと黒ビキニを重ね着をした、レイヤードタイプのもので、上の部分がピンク、下の部分が黒いものだった。

 特に下の黒い部分だけになれば、露出は激しくなりそうで、ドキドキする。


「私も、こういう水着持ってるんだ。まあ、お姉ちゃんからのおさがりだけど。私だとちょっときついかな。」

 葉月がビキニの上の部分、胸の中央部分を少し引っ張って、僕に見せてくる。それにドキドキして、顔を赤くしてしまう僕。

 そう、葉月の来ているビキニも、胸の谷間をはっきりと覗かせていた。


「にへへっ。準備できた。輝君、一緒に遊ぼう。」

 ピンク色の柄でフリルのビキニを着ていた風歌。ニコニコ笑いながら僕に近づいて来る。

 こちらも、フリルタイプのものではあるが、風歌の胸のふくらみがよくわかってしまうものだった。


「あらあら、お色気たっぷりでいいわね。でも、私も負けないわよ。」

 一番最後に史奈が出てくる。


 史奈が着ていた、黒の紐ビキニは、うん。すべての夢が詰まっていた。


「やっぱりこういう時は大胆ですね。会長。」

 葉月はうんうんと頷き、他の皆も頷いている。


「いいじゃない。別に。それに。どうかな?輝君は。」

 史奈がニコニコ笑いながら僕を見る。

 身長の低い史奈、史奈が近づけば近づくほど、僕の目線からだとよりはっきり、胸の谷間が際立ってしまう。


「み、皆とても可愛くて、似合ってます。すごく、セクシーで・・・。」

 言葉が出なくなる僕、だが、思いは伝わったようで。


「「「やったー!!」」」

 皆は声を揃えて喜んでいた。


「そしたら、輝君に喜んでもらえたことだし。プール、楽しんじゃおう!!」

 史奈の声に、僕たちは全員頷いて、いよいよ温水プールへと向かった。


 早速、プールに入る僕たち。

 プールの水は温水で、冬場でもとても気持ち良かった。


「すごい。暖かくて、それが気持ちい。」

 葉月はニコニコ笑っている。


「本当ね。暖房も水の温度も、結構いい感じね。冬場でも楽しめるわ。」

 葉月の言葉に頷く史奈。


「ひかるん。」

「輝!!」

 マユと加奈子が大きく手を挙げている。

 比較的水を弾き動きやすい水着を着ているからだろうか、ニコニコと笑いながら、先の方まで行っていた。


「ほらほら、さおりんも、加奈子ちゃんの所までおいで。動きやすい水着を着てるのにもったいないよ。」

「えっ?」

 マユの言葉に反応する早織。


「輝!!」

 加奈子の言葉に頷き、僕が早織の手を引いて、加奈子とマユの元へ。


「えっと。」

 早織は少し戸惑うが。


「こういう時くらい、忘れて楽しもう。料理の復習とか、色々、気にしてたり、緊張しているかもしれないけど、ずっとこんなんじゃ、調子悪くなるよ。」

 加奈子が優しく早織に声をかける。


 加奈子の言葉にマユも頷く。

 早織は、大きく頷いて、楽しむ表情に変わった。

 それを見て、少し安心する僕たち。


 そして、珍しく、マユと一緒に先頭でプールに入っていった、加奈子の姿。それを見て。


「珍しいね。加奈子がこんなこと言って、はしゃいでいるの。」

 僕はそう言うと。


「まあね。北関東といっても内陸の方だし、ここら辺の地元の人は、海とか、プールとかが大好きだよ。一種の憧れ。海の時は、先生もいたから。ドキドキしちゃって。」

 加奈子が照れながら笑っている。

 確かにこの言葉は頷ける。自分の興味のあることには全力で取り組む加奈子だ。この地域が地元の人にとっては、海やプールは、少し憧れなのだろう。


「それに、プールは私も好き。そして、ほらね。」

 加奈子が後ろを指さす。後ろを振り返る僕は驚く。


「ヤッホー輝君。」

「ハッシーに追いついた!!」

 葉月と結花が僕のすぐ後ろに来ている。そして驚いたのは、泳ぐのが得意ではない、風歌がこちらまで来ていることだった。


「にへへ。流れるプール。流れに乗ってるから、自然に来れる。水、気持ちいい。」

 風歌が笑顔で言う。


 確かにそうだ。そういえば、早織も、泳ぐのがあまり得意ではなさそうで、藤代さんと一緒に砂のお城を作っていた。

 だが、ここは流れるプールだからだろうか、泳ぐのが多少苦手な人でも、流れに沿って、浮かんだりすることによって、多少なりとも泳ぐことはできる。


 皆の表情を見ると、どうやら、海やプールに憧れているのは加奈子だけではなかったようだ。

 そうなってくると、冬でもやっている、こういう場所は、人気のある場所のなのだろう。


 そして、僕も、冬場に入れる温水プールに、少し興奮していたのだった。


 流れるプールは、この温水プールの外側を囲うように設置されていた。


 僕たちは、流れるプールを何周もしながら、温水プールの施設全体を把握する。

 冬のこの時期でも、いつでも南国感が出せるように、作り物ではあるが、シュロの木の置物や、ハイビスカスの造花などが飾られている。

 そして、小規模ではあるが、ウォータースライダーも用意されている。


 そして、大体わかったところで、流れるプールから出て、小休止する。


「さて、次は、どこにしようかな。」

 史奈が皆の方を向いて、笑っている。


「やっぱスライダーですよね~。」

 マユが大きく手を挙げて、スライダーを指さす。


「おっ、マユちゃん、良いね。私も賛成!!」

 ニコニコ笑う葉月。

 ほとんどのメンバーは頷くが、早織はわずかに首を縦に振り、風歌は少し怯えながら首を縦に振るのだった。


 その様子を見た心音。

「ああ、もしかして、早織ちゃんと風歌は、あんまりやったことなさそう?」

 心音の言葉に二人はこくりと頷く。


「ああ、でもちょっとだけ興味があるので、大丈夫です。折角の休憩みたいなものですから、思いっきり遊びたいし。皆さん、そう言ってくれているので。」

 早織は勇気を振り絞って言う。彼女のその様子だと、無理はしていないようだ。

 だが、あまりやったことが無いため、少し緊張している。


「う、うん。早織ちゃんと同じ、で、でも、皆いるから。それに・・・・。ちょっと小さめのやつだし。その、夏のプール、外のプールはもっと大きなのあるじゃない。そんなんじゃないから・・・・。」

「「「ああ~。」」」

 風歌の言葉に大きく頷く僕たち。


 確かに、ここにあるウォータースライダーは、屋内にあるためか、他のプールと比較しても少し小さめのものだ。夏の屋外にあるプールだと、このホテルのものよりも、何倍も大きいウォータースライダーが存在するし、実際僕も見たことがある。何なら、小さいころ、マユとよく一緒に行っていたし、現に、僕は初心者中級者コースを、そして、マユは上級者コースをよく滑っていた。

 そうなると、この場所の物は、初めての人やあまりやったことが無い人にもおすすめなのかもしれない。


「わ、私も、風歌先輩と同じかな。もっと、規模が大きいものであれば、遠慮していたかもしれない。」

 早織も風歌の言葉に同情する。風歌の緊張も少し和らいだようだ。


「ヨッシャ―、皆、賛成したところで、スライダー、行こう!!」

 結花が得意げになって、早織の腕を引っ張る。

 そして、心音は風歌の腕を引っ張る。二人とも、それぞれ、優しく腕を引っ張った。


 そうして、階段を登り、ウォータースライダーの入口へ向かう。


「まずは輝君から。」

 葉月がニコニコ笑って僕を見る。


「そうだね。ひかるんは、下で、さおりんや、風歌が来るのを待っているのがいいかもね。」

 マユもニコニコしながら言う。


「そ、そう。それなら、じゃあ、先に行くね。」

 僕は、そう言って、ウォータースライダーを滑っていく。

 皆から、最初を指名されたので、一瞬僕も、早織と風歌と同じように緊張してしまうが、皆が居るからだろうか、少し安心感がある。


 そして。ウォータースライダーは、確かに、夏の屋外の物と比べても小規模なものだったが、水の流れに沿って、スピードに乗り、スリル満点で、滑って行った。最後は、勢いよく、水に飛び込み、滑り終えた。


 丁度、スライダーのゴールは、スタート地点を見ることができる。

 僕は上を見上げて、スタート地点にいる皆に向かって手を振る。

 皆が笑顔で手を振り返したり、両手を高く上げてくれていた。


 僕の反応を見て、加奈子、続いて、葉月が降りてくる。

 ゴールで、プールに沈んだところを手をもって、迎える僕。


「ありがとう。輝。」

 加奈子が僕の手を掴み、着地用のプールから出る。

「へへへ。輝君、優しいね。」

 葉月もうんうんと笑っている。


 葉月と加奈子は、上を見上げて、スタート地点にいる、皆に向かって手を振る。


「輝君が迎えてくれるから、安心だよ~。」

 葉月がニコニコ笑う。


 さあ。早織と風歌の番。


 緊張しながらも、スライダーの水の流れに乗り、滑っていく早織。


「速い速いっ!!」

 早織の声が聞こえる。だけど、とても楽しんでいる様子もうかがえる。


 そして、早織が着地用のプールに飛び込んでくる。


「ナイス。どうだった。」

 僕は早織の手をもって、早織の沈んだ身体を浮き上がらせる。


「うん。結構楽しかった。今なら、次の夏は、別のプールで、もうちょっと、大きなやつにもチャレンジできそう。」

「そう。良かった。」

 僕は笑っている。早織も大きく頷いて、笑っていた。


 そして、その直後に結花が降りてくる。


 結花も僕が迎える・・・・、必要がなさそうだ。すぐに自分で浮き上がって、立ち上がった。


「あれ?八木原さん、速いね。おっかなびっくりで私が追いついちゃうかと思ったけど。」

 おそらく早織が心配で来たのだろう。既に滑り終えた早織を、ニコニコと笑いながら見ている。


「うん。結構、早織、楽しんでた。」

 僕の言葉に結花が反応し。


「うんうん。楽しんでくれたみたいで良かった。」

 結花がニコニコ笑う。


 さあ、次は風歌の番。

 心音に急かされ、緊張しながらも、スタート位置に着く風歌。


 しかし、風歌は思いのほか緊張しているのか。なかなかスタートしない。

 ということなので。


「えいっ!!」

 心音が風歌の背中を押す。


「きゃあ!!」

 風歌は勢いよくスタートを切った。

 流れがどんどん早くなる。そして、そのまま風を切って滑っていく。


 そして。

 ザブーンッ!!勢いよく水しぶきを上げて、風歌はゴールのプールに着水した。すぐに出迎える僕。


「へへへっ。ありがと。輝君。輝君、出迎えてくれた。ちょっと怖かったけど、輝君、出迎えてくれて嬉しかったし、楽しかった。」

 風歌は、僕を見て安心したのだろうか。すぐに落ち着いた呼吸に戻る。


 そして先ほどの早織と結花と同じようなタイミングで、風歌のすぐ直後に心音がやって来た。


 心音も、すぐに体勢を立て直し、僕たちの元へ。


「ナイスファイトだよ、風歌。どうだった?」

 心音が風歌にそう聞くと。


「へへへっ、怖かった。でも楽しかったし、輝君も、皆も一緒に居てくれたから、良かった。」

 風歌は笑っていた。


 そして、最後に、勢いよく、史奈とマユがやって来た。

「うん。やっぱりスリルがあって楽しいわね。」

 史奈がニコニコ笑っている。


「ズレちゃったかしら。」

 史奈が僕の方を見て、水着を整え直す。

 ドキッとする僕。


「あっ、会長ずるい。」

 葉月がそれを見てニコニコ笑う。

「大丈夫ですよ。ズレてません。」

 加奈子がうんうんと頷く。

 史奈は少し何かがお預けになった顔をしたが、僕の反応を見て。ニコニコ笑っていた。


 マユも勢いよく、ゴールのプールに着水して。

「うん。最高っ。やっぱこうでなきゃ。」

 マユはニコニコ笑っていた。


 マユと史奈も、早織と風歌の元へ。


「どうだった。さおりん、風歌ちゃん。」

 マユが二人に聞く。

 二人とも、先ほどと同じように、怖かったけど、皆が居て安心したし、楽しかったと伝える。


「そう。良かったわ。これなら、風歌も、早織ちゃんと一緒に、夏にもう少し大きなウォータースライダーにチャレンジできそうね。」

 史奈の言葉に、風歌はコクっと頷く。同じような感じで、早織も頷く。


 その反応を見た心音は、意を決してこう切り出す。


「ああっ。そうそう、ここでは、このスライダーしかないんだけど、場所によっては、浮き輪に乗って、滑るスライダーもあるのよね。で、その浮き輪なんだけど、二人乗りの浮き輪があってね。」

 心音はニコニコを指を立てて、そう説明する。


「ふ、二人乗り・・・・。」

 風歌がドキドキする。早織も同じように顔を赤くする。

 他の皆も同じだ。


「私か結花と一緒にとも思ったけど。もしかしたら、輝君が一緒にその二人乗りの浮き輪に載って、滑ってくれるかもしれないね。」

 心音の思いがけない言葉に、思わず顔を赤くする風歌。


 他のメンバーも少し顔を赤くするが、風歌が一番顔が赤い。


「ひ、輝君。私、まだまだ、スライダー、怖い。これより大きなやつってなると。だから、次の夏、一緒に二人乗りの浮き輪で・・・・。」

 風歌が緊張しながらも僕に向かって言う。


「も、もちろんいいよ風歌。楽しもう!!そして、皆も一緒にね。」

 僕がそう言うと、風歌の顔がぱぁっと赤くなる。


「「「やったー。」」」

 風歌と一緒に皆が嬉しそうに叫ぶ。だけど。


 ポンッ。


 と大きな音がする。手を叩いたのは心音だった。


「良かったね。風歌。それに皆も。でも、残念。輝君と一緒にその浮き輪に載って、スライダーで滑るのは私よ。」

 心音がうんうんと、頷く。


「今まで、風歌のサポートをしてきたけど、それも今日までね。そう甘くは行かないわよ。風歌に、結花。そして、皆もね。」

 心音は皆の顔を見回す。


「ま、まさか・・・。パイセン。」

「えっ、心音ちゃん、ちょっと。」

 結花が驚く。風歌もどこか緊張している、他のメンバーもそうだ。まさか・・・・。という反応をしている。


 

「そう。そのまさかよ。というわけで、ここからは、私も、宣戦布告します。」

 心音が僕に近づく。そして。僕に近づき・・・・。


 僕の頬にキスをする心音。


「「「えーっ!!!」」」

 心音の行動に驚く、面々。


 風歌は、それを見て固まってしまう。


「こ、心音ちゃん。そんな。」

 風歌はようやく口を開いた。


「ふふふっ。ごめんね。実は、前から輝君のことは気になってたの。そうね。最優秀伴奏者賞を取って、初めてコーラス部に来てくれた時からかな。その時は、風歌のサポートがメインだったけど。つらい過去と向き合って、そうして、頑張ってる輝君に惚れたわ。早織ちゃんの一件があった時も、自分の過去と照らし合わせながら、早織ちゃんを一生懸命応援して、支えている所もね。まるで、かつて私が憧れた人がそうだったように。」


「憧れた人・・・。」

 僕は心音に聞く。


「年上の人。歌が上手くてね。この人みたいになりたいと思って、ヤンキーから足を洗って、高校受験頑張って、コーラス部に入ったんだよね。その人も、私のこと、応援してくれてたから、その人と、今の輝君の姿が、すごく似ててね。まあ、この話はまた今度ね。」

 心音が遠くを見るように言う。そして、僕の目を見て笑っていた。


「なんだか、光栄、です。」

 僕は心音にそう頭を下げる。


「皆も、いきなり、こうしちゃって、申し訳ないと思ってる。でも、私の知る限り、ここに居るメンバーは輝君と、そういう関係みたいだし、私だけ、違う立場なのはちょっと、って思ったの。だから、このホテル、みんなが居るときに、そして、早織ちゃんが元気になったタイミングで、打ち明けないとなと思っちゃった。」

 心音はそう言って、皆の顔、一人一人の目を丁寧に見て言った。


「ふ~ん。そうなんすね。パイセン。よくわかりました。パイセンにそこまで言われたら、仕方ないっすね。でも、こうなった以上、負けませんよ!!」

 結花が気合を入れて言う。


「う、うん。私も、絶対、心音ちゃんに負けないもん!!」

 風歌が大きな声で言う。


「そうね。二人がそういうし、私は別にいいわよ。相手が何人いても、最後に私が勝てばいいんだから。」

 史奈がニコニコ笑う。


「うんうん。絶対負けないし、この際。何人いたって関係ない。昔っから知っているのは私だから。」

 マユもうんうんと頷く。


「そういう事なら、絶対負けないから。輝の隣は私。」

 加奈子も心音を見て大きく頷き、笑っている。


「えっと、食べ物とか、胃袋で、射止めているのは私ですから。それに、今は、他の誰よりも、いちばん隣で、頑張ってくれてると思うから。」

 早織は緊張していたかもしれないが、ニコニコと笑っている。確かに、ここ数か月は早織のことを多く手伝っていたし、早織の中で、それだけは自信があるようだ。


「ふう。皆がそう言っているから、仕方がないか。じゃあ、心音。私たちを見て、知ってると思うけど、ルールを話すね。」

 葉月がニコニコと笑いながら心音に切り出す。


「まず、輝君が前の高校、強制的に退学になって、かなり苦しんだ過去があるのは知ってるよね。」

 葉月の言葉に心音が堂々と頷く。


「この会は、その分、輝君に高校生活を楽しんでもらいたくて、というより、輝君にはその権利が、他の誰よりもあるから、こういう事をしてるのね。そこは同情してもらえるかな?」

「もちろんよ。葉月。」

 心音が頷く。


「そう。そして、輝君が高校卒業までに、一人を選んでもらう。その一人を選んだ時、恨みっこなし。というルールです。」

「ええ。知ってるわ。皆から大体聞いているし、見てればわかるもの。」

 心音がニコニコと笑っている。そして、その表情は堂々としていた。


「ありがとう。迎えてくれて。そして、負けないわよ。結花に風歌。そして、皆もね。」

 心音がそう堂々と皆に向かって行った。


 そうして、心音が正式に、僕たちの、ドキドキな関係のメンバーになった。


 皆は心音が加わったことで、闘志がさらに燃えているようだった。絶対負けない。そんな思いが感じ取れる。

 それを見て、高校卒業までに、本当に一人を選べるのだろうか、少し不安になる。


「輝君、今一人を選べるか、不安な顔したでしょ。」

 葉月の言葉に頷く僕。


「そうね。だから、皆、輝君のこと好きなのよね。優しいから。」

 史奈が笑っている。


「輝、ゆっくりでいい。信じてるから。だから、今は、全力で楽しもう!!輝も、そして、早織も。」

 加奈子の言葉に気持ちを切り替え、大きく頷く僕が居た。


「さあ。気を取り直して、温水プールを遊びつくすわよ!!」


「「「おーっ!!」」」

 史奈の言葉に、大きく頷いて、拳を高く上げる僕たち。


 僕たちは再びウォータースライダーのスタート地点へ向けて、階段を登って行くのだった。




今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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