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132.クリスマスパーティー

 

 クリスマスコンサートを終え、二学期の終業式を迎える。

 各々、通信簿を受け取って、解散というわけだが、僕の成績は、自慢ではないが、かなりいい方だった。


「引き続き、三学期も頑張れよ。橋本。推薦、いいとこ狙えるからな。」

 担任の佐藤先生はニコニコしながら渡すのであった。


 冬休みの部活は、一部の運動部を除くと、ほとんどの部活が休みになるため、この終業式の日が、年内で多くの生徒と会う最後の機会である。

 それ故に、それぞれ、クリスマスと年末の挨拶を済ませるのでった。

 最近はLINEやメールで、あけましておめでとうを伝えることがほとんどなのだが、年賀状を送り合う生徒たちも一定数いるため、そんな人たちは、お互いの住所を交換し合うのだった。


 僕も、生徒会メンバーと住所を交換する・・・・。必要はなかった。

 なぜならば、冬休み中も、生徒会メンバーと会うことになるし、もっと言えば、大晦日から元旦に掛けて、一緒に年越しをする約束をしている。

 義信のホテルで、大晦日から元旦に掛けて、いや、それよりも前の年末の日付から、皆と過ごす予定だった。


 義信のご厚意で、スイートルームは勿論、他の部屋の予約もしてくれたらしい。

 彼には、本当に感謝しかなかった。


 と、年末年始を皆で過ごす、その前に。

 この冬休み、一番最初に重要なイベントがあることを忘れてはならない。


 そう。クリスマスだった。

 僕たち生徒会メンバーは、心音と風歌、さらにはマユも交えて、早織のお店で、この後、クリスマスパーティーをすることになっていた。


 二学期の終業式の日は、大掃除とホームルームを済ませて、午前中で終了した。

 そして、早い時間帯に放課後を迎え、僕たちは校門の前に向かう。

 ここが生徒会メンバーたちとの待ち合わせ場所。

 どうやら、同じクラスメイトである、僕と結花と早織が一番乗りだったようだ。


「ヤッホー、一番乗り。」

 結花が得意げに笑う。

「ハハハッ。元気そうだね。結花。」

「そりゃね。ハッシーも、会長と一緒に無事にクリスマスコンサート終わって、それに、八木原さんも笑顔になったから。」

 結花は早織を見る。

「う、うん。本当にありがとう。輝君。北條さん。」

 早織は頷きながら笑っていた。


 そして、数分も立たないうちに、葉月と加奈子率いる、二年C組のメンバーがやって来た。

「おっ、輝君、ごめんね、待った?」

 葉月が手を振りながら、こちらへ向かってくる。


「ううん。今来たところ。」

 僕は葉月にそう応えると。


「ふうっ。良かった、ちょっと遅かったかなぁと思って、急いできちゃった。」

 葉月が、加奈子、そして、心音と風歌の顔を見回す。

 他のメンバーも、ふうっと、息を大きく吐き、安心した表情を見せた。


 さらには、史奈と義信の姿も。

「おまたせ、輝君、皆。」

 史奈はニコニコ笑っている。

「すみません、遅くなりまして。」

 義信も急いできてくれたような表情だった。


 というわけで、花園学園のメンバーが集まったところで、僕たちは、百貨店へと向かう。

 いつもの交差点にある、家電量販店の向かい側にある、あの百貨店だ。


「どうだった?成績表は。」

 葉月が僕に聞いてくる。

「まあ、いい方だったよ。」

 僕は葉月の質問に答えると。


「そうだよね。輝君も掲示板に名前が載ってるくらいだもんね。」

 葉月は笑っている。掲示板というのは、毎回の定期試験で成績優秀者の名前が掲載される紙のことである。

 その掲示板には、毎回、上位十位以内の成績優秀者が書かれているのだが、僕も一位ではないが、その紙に自分の名前が載せられているのだった。


「すごいっすよ。社長、掲示板に貼りだされるだけでも。」

 義信が笑っている。

「ハッシー、毎回、ピアノのレッスンがあっても、その後に勉強してるからね~。マジ尊敬。」

 結花も同じように頷く。


「まあ。僕は、その前にもいろいろあったからね。今は皆のお陰で気にしていないけど。」

 僕は深々と頷く。

 おそらく、以前通っていた高校であれば、自分の名前はまず掲示板に貼りだされなかっただろう。

 退学になった前の高校で一度やっているということで、皮肉なのか、幸運なのか、わからないが、そのため、予習と復習を円滑に行うことが出来た、というのが、掲示板に載っている、いちばん大きな要因だろう。


 

「ああっ。ごめんね。聞かない方が良かったね。」

 葉月がすまなそうな表情をする。

「そ、そうだね。輝君。今年は、沢山、頑張った。」

 風歌がニコニコ笑う。

 風歌の言葉に、僕は再び表情を戻す。


「そうだよね~。輝君はすごく頑張ったもんね。だから、今日、思いっきり楽しもう!!」

 葉月がニコニコ笑いながら、僕にハイタッチするように求める。僕はそれに応えて、笑顔になる。


「はいっ。それに・・・。」

「それに?」

 葉月が聞き返す。


「成績なら、僕と同じか、僕よりも、さらにハードなレッスンをしているにもかかわらず、毎回一番の人が居るから。僕、小学校から、マユと一緒に、陸上をやってましたけど、その時くらいから、体動かすのって、苦手かなぁと思ってしまったりして。」


 僕の言葉に、頷き、全員が加奈子を見る。


「そうね。加奈子ちゃんの成績表は、黄金に輝いているわね。」

 史奈がニコニコ笑う。

「お、黄金、金色。見て見たい。」

 風歌がニコニコ笑う。

「うん。確かに、黄金の成績表だ。」

 心音が同情する。


 他のメンバーも大きく頷いている。


「み、皆、大げさよ。私は、バレエも勉強も、そして・・・・。輝のことも・・・・。」

 加奈子は顔を赤くしながらさらに続ける。

「・・・好きだから・・・。」

 加奈子はボソッとつぶやき、息をふうっと吐いて、緊張をほぐしたのだった。


 それを見て、ドキッとする僕。

 他の皆も、ニコニコ笑っていた。


 そんな話をしていると、あっという間に百貨店に到着。

 百貨店の自転車置き場に、自転車で通学しているメンバーの自転車を止めて、百貨店の正面入り口に移動する。


 すると、僕たちの視界に、正面入り口の前で大きく手を振っている人物が、入ってきた。

 マユこと、熊谷真由子が大きく手を振っている。


「ひかるん、お疲れ。私も、学校終わって、自転車を勢いよく飛ばしてきちゃった。」

 マユはニコニコ笑っている。

 マユの部活も冬休み期間の活動は少し少なめで、年末はお休み期間に入るという。


「基本的に、予選を勝ち進んで、大きな大会に出ない限り、この時期はお休みの時期かな。陸上部には、長距離走や短距離走以外にも、幅跳びとか、砲丸投げとか、他にも色々な競技をやっている子が居るから。その子たちとの日程を調整するためにもね。私は、全国大会とか出場できなくて悔しいけど。ひかるんのお陰で、大きく飛躍できた年になったかな。メンバーにも選ばれて。ああっ、だから、その分、来年の冬は忙しいかも。」

 マユがそんな話をする。

 思えばマユも、僕と同じで、今年は色々と、自分との闘いを乗り越えた、そんな年だった。


「ホント、ひかるんとまた会えてよかったよ~。」

 マユは僕に近づき、両手で僕の頬をさする。

「うん。僕もまた会えてうれしかった。」

 僕はニコニコと笑って、マユにそう返した。


「はあぁ。幼馴染っていいわね。」

「ホント、マジで羨ましい。」

 史奈と結花が少しため息。加奈子も大きく頷きながら、嫉妬深い表情をしていた。

 そして、少し間を置き、彼女たちの表情が緩み始めたところで。


「よ~しっ。それじゃあ、全員揃ったところで。クリスマスパーティーの準備をします。早織ちゃんと一緒に、皆でクリスマスケーキを作ろう!!ということなので、ケーキに入れたい具材を各自で調達。そして、プレゼント交換もあるので、まだ買ってない人は、それも合わせて購入してきてね。」

 葉月の言葉に皆が頷く。そして。


「いくぞーっ。」

「「「おーっ!!」」」

 葉月の掛け声とともに、一斉に拳を突き上げ、気合を入れて、僕たちは百貨店の中に入る。


 先ずは地下の食品売り場へ向かい、食材を購入する。

 苺、と思ったが、フルーツが好きな僕。時期は少し違うかなぁと戸惑いながらも、パイナップルの缶詰と、キウイフルーツを購入した。


 そして、大急ぎで、加奈子の誕生日プレゼントを購入する時、原田先生とともに訪れた、雑貨売り場へ。

 そこで、プレゼント交換に使用する、クリスマスプレゼントを購入した。


 今回は、意外とすんなり選べた気がする。

 自分と義信以外は全員女子生徒、ということで、女子たちにプレゼントが行く可能性が圧倒的に高い。

 さらに、プレゼント交換ということで、誰に自分のプレゼントが行くかランダムだ。


 ということなので、それを加味して、かわいいイラストが描かれていた、来年のカレンダーと、スケジュール帳を購入した。


 勿論、包装を依頼して、クリスマスらしいラッピングをしてもらい、商品を受け取ったのだった。


 そうして、再び集合して、早織のお店へ。

 早織のお店のドアを開けると、早織の母親と祖母が迎えてくれた。


「皆、二学期お疲れ様。早織から話を聞いているよ。厨房、好きに使ってくれて大丈夫だから。」

 母親の美恵子は僕たちを笑顔で出迎えてくれた。

 午前中で学校が終わり、百貨店でケーキの材料を購入、そして、ここまで移動するに費やした時間、そのすべての時間が経過すると、丁度、お店のランチのピークの時間帯が終了したことになる。

 お客の入りも、落ち着き、ひと段落したところのようだった。


 実はクリスマスコンサートの打ち上げ以降、早織のお店のお客の入りは、結構増えていた。

 バレエ教室の保護者達が色々と方々に紹介したことが要因のようだ。

 原田先生から聞いたことがあって、バレエをやっている人は、お嬢様と呼ばれる人が多かったりする。勿論、全員がそうではないが、加奈子も市長の娘だし、確か藤代さんの父親も、会社を経営しているのだとか。


 そういった人たちの人脈がかなり多く、少しずつではあるが、お客の入りが増えていった。


 そう言うこともあったので、忙しくフル稼働した時間帯を終えた、早織の母親と祖母も少し休憩に入るようだった。


「それじゃ、ごゆっくりね。」

 早織の祖母は僕たちに手を振りながら、お店の奥の休憩室へ向かった。

 早織の母親も、レジの従業員用の椅子に座って、笑顔でこちらを見て、頷いていた。


「それじゃ、厨房に案内するね。といっても、道具とか取ってきて、奥のテーブルでメインの作業しましょう。」

 早織は僕たちを厨房へ案内する。

 早織のお店、森の定食屋の厨房。意外にも、僕たちは初めて入る。


 流石はお店の厨房。

 広々としていて、大きな冷蔵庫が置いてある。さらには、流しや作業台、ガスコンロやオーブンも、家で使用している者より、一回り大きいものが、それぞれ一つずつではなくて、複数台置かれていた。


「すごいね。早織。いつも、ここで作ってるんだね。」

 僕は目を丸くして、早織に言う。

 他のメンバーもその厨房の広さや、大きさに目を丸くしていた。勿論、お店の厨房に初めて入ったということも大きいだろう。


「ありがとう。輝君。」

 早織は少し照れながらも、得意げになって、ニコニコと笑う。


 食器棚や用具の棚を開け、必要な道具を取り出していく早織。

 そうして、僕たちは、お店の一番奥のテーブルに移動し、早織のリードの元、皆で、クリスマスケーキを作ることになった。


 各々、百貨店で買ってきた材料を見せ合う。

 僕は、パイナップルの缶詰と、キウイフルーツを見せ。


「へえ。いいね。輝君、フルーツ好きだもんね。」

 葉月が得意げになって、ニコニコと笑う。


 その他、イチゴを持ってきたり、チーズケーキにしたいのだろうか。クリームチーズを持ってきたりしているメンバーもいた。

 そして、勿論、僕と同じで、沢山のフルーツを買い込んでいるメンバーも居たのだった。


 材料を確認した早織は、ケーキの生地を作り込んでいく。

「イチゴをはじめとする、フルーツのケーキと、チーズのケーキで二種類作れそうだね。」

 早織は、頷きながら、二種類のケーキの土台、生地を手際よく作っていく。


 本当に慣れた手つきだった。

 オーブンで焼いたり、待ち時間の間に、トッピングの具材や、他のお菓子の準備をする。

 他のお菓子。そう。葉月の特製クッキーだ。


「へへへっ、私だって、早織ちゃんに負けないよ~。」

 葉月は得意げになりながら、クッキーを用意されたお皿の上に盛り付けていく。

「葉月のクッキーも美味しそう。」

「ホントね。」

 加奈子と史奈がニコニコと笑っている。


 僕も同じだ。


 やがて、ケーキの土台の記事が焼き上がり、生クリームを塗って、具材をトッピングしていく。

 パイナップルの缶詰、カットしたキウイフルーツ、イチゴやリンゴ、オレンジ、メロンなど、色とりどりのフルーツケーキが完成した。


 そして、それと同時に、チーズケーキも完成し。


「「「完成!!」」」

 皆で声を揃えて拍手をした。


 さあ、ケーキを囲んで、クリスマスパーティーが始まった。


 『ジングルベル』や『サンタが町にやって来る』など、クリスマスの歌を歌って。

 ケーキをカットして食べていく。


「「「メリークリスマス!!」」」

 皆で声を揃えて、拍手をする僕たち。


 早織のリードの元、皆で作ったクリスマスケーキはとてもおいしかった。


「すごい!!フルーツ、具だくさんで美味しい。」

 葉月がニコニコ笑っている。

「そうね。本当に、具沢山でいろんな味が楽しめるわね。」

 史奈がうんうんと頷き、笑っている。


「フルーツ、沢山、おいしい。」

 風歌もニコニコしながら笑っていた。


「こっちのチーズケーキも美味いっすよ。」

「ハハハッ。ごめんね、ウチと、パイセンと義信がチーズ、準備したんだけど。」

 義信が呼びかけ、結花が照れながら笑う。

 心音も、ニコニコ笑って頷いている。


 勿論、チーズケーキも、食べていく、僕たち。

「うん。チーズが濃厚で私は好き。」

 加奈子が大きく頷いている。

「うんうん。流石に、この人数だと、ケーキ一種類じゃ足りないからね♪」

 マユが得意げになりながら、二つのケーキを勢いよく食べていく。

「あっ、足りない分は、自主トレで消化ッと。」

 マユがさらに続けて笑っていた。


 そして、お待ちかねのプレゼント交換の時間になった。

「自分のプレゼント、持ったかな?」

 葉月が皆に聞く。

 お互い、自分が用意したプレゼントの包みを高々と上げる。


「よーしッ。それじゃあ、もう一回、歌いながら、プレゼント交換レッツゴー。」

 葉月が心音に指示し、心音は元気よく歌い始める。

「『さあ、あなたから、メリクリスマス!!・・・・・。』」

 もう一度、『サンタが町にやって来る』を歌う。僕たち。歌いながら、隣の人へ、隣の人へと、プレゼントを渡していく。


 そして、心音の指揮で、ストップの合図が送られる。


「やった。輝君にプレゼントが行った。」

 得意げに言ったのは葉月。

 僕は、葉月が用意したプレゼントをもらうことになった。


 そして、僕が用意したプレゼントは。

「にへへへっ。輝君のもらっちゃった。」

 風歌がニコニコと笑っていた。


「運がいいね。風歌。福引大会の時も、特賞の沖縄旅行もらっちゃって。」

 心音が風歌を羨ましそうな眼で見る。そして、他のメンバーも羨ましそうな表情で見るが。


「にへへへっ。日ごろの行いが、いいっ。」

 風歌は、照れながらもウィンクして応えるのであった。


 風歌は早速プレゼントの包みを開けて。

「可愛いカレンダーだ。スケジュール帳もかわいいイラストで嬉しい。」

 風歌は、ニコニコと笑っていた。

「ハハハッ、喜んでくれて嬉しい。女の子にプレゼントが行くかなぁっと思って、買ってみた。」

 僕はそう言いながら、笑っていた。


「ありがと。輝君。」

 風歌はニコニコ笑っていた。


「ねえねえ、輝君。輝君のプレゼントも開けてみて。」

 葉月が得意げになって笑う。

 包みを開けると、おしゃれなパッケージをした、紅茶が入っていた。

 パッケージには、可愛い動物が施されていて、より可愛さを引き立たせている。


「すごい。ありがとう。紅茶、結構好き。」

「へへへっ。クッキー持ってくるから、輝君の家で、飲もう!!」

 葉月がうんうんと頷いて笑っていた。


 そして、他のメンバーも、各々がもらったクリスマスプレゼントに一喜一憂しながら、交換した相手にお礼を言ったりして笑いあっていた。


 こうして、二学期の終業式のこの日。皆で、楽しいクリスマスパーティーの時間が過ぎていった。



今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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