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122.花園学園グランプリ(文化祭、その4)

 

 【花園学園グランプリ】の準備のため、体育館に向かう僕たち。


「お疲れ様。輝君。早織ちゃんもお疲れ様。メイド喫茶良かったよ~。」

 葉月がニコニコ笑いながら声をかける。

「うん。私も葉月も、行って、食べた。本当に美味しかった。」

 一緒に居る加奈子、頷きながら、笑っている。


「お疲れっした、社長。メイド喫茶、すげーっスよ。今日から社長だけでなく、八木原さんをお嬢と呼ばせてくだせえ、お嬢!!」

 義信の言葉に顔を赤くする、早織。


「えっと、その、ありがとう、皆さん。」

 早織は恥ずかしがっていた。だが、それだけ、皆、早織のことを心配していたという証拠だった。

 さすがにこれからの義信の呼ばれ方に関しては、恥ずかしいかもしれないが、義信や皆の心配と今まで早織の取り組みを、全てわかってくれていたことに、早織は感謝するのだった。


 そうして、その輪に、遅れてやって来た史奈。


「あらあら、何かな。この感動ムードは。私も混ぜて欲しいな~。」

 史奈は皆を見回す。


「それに、私以外、皆かわいい衣装、着てるわね~。」

 史奈は少し不満そうな表情。


 因みにだが、史奈のいう通りで、史奈以外、僕たちは何らかの衣装を着ていた。

 早織と結花は、メイド喫茶でも着用した、メイドの衣装。僕も、赤城兄妹からもらったベストを着用している。

 葉月と加奈子は、ゲームコーナーということもあり、バニーガールの衣装。


 それに義信は上からシーツを被っている。


 そう。花園学園グランプリの司会進行も、生徒会メンバーが担当するということで、僕たちは、赤城兄妹に許可をもらって、衣装を借りてきたのだった。

 生徒会メンバーも各々の出し物から衣装を借りて来て司会進行を行うことになっていた。


「まあまあ。会長もお疲れさまです。」

 加奈子は会長をなだめる。


「そうね。汗だくだくね。おかげさまで、綿あめが予想以上に売れたわ。」

 史奈は、高校三年の企画以外にも、バレーボール部の企画として、外の屋台で綿あめを販売していた。十一月のこの時期でも、外にいて、露店で働いていれば、さすがに汗だくになる。


「良かったですね。」

 葉月は史奈に声をかける。

 史奈はそれに笑って応える。そして。


「お疲れ様。早織ちゃん。私もメイド喫茶に行ったわ。とても良かったわよ。」

 史奈はニコニコと笑いながら、早織に言う。


「すみません。ありがとうございます。会長も、入試とか、バレーボール部のこととかで、お忙しいのに本当に、気にかけていただき、ありがとうございました。」

 早織は深々と頭を下げる。


 因みにだが、史奈は入試の他にも、“春高”と呼ばれる、バレーボールの大会の面倒も見ていた。

 抽選の運というものなのだろうか。県の初戦で、夏に僕たちも見に行ったときに対戦していた、強豪校と当たってしまい、それでも、必死に食らいつき、惜敗という結果に終わり、気持ちを切り替えながら、一生懸命、バレーボール部員は文化祭で綿あめを販売していたという。


 僕たちの方も、早織や生徒会に付きっきりだったため、応援に行けず申し訳なかったと頭を下げたのだが。


「いいのよ。私は、とっくに引退して、好きでやっているから。」

 とニコニコ笑う史奈がそこに居たのだった。


 そして、今日も。そんな感じで。

「いいよ。いいよ。私は好きでやってるから。」

 と、史奈は早織に返した。


 本当に史奈の存在はありがたかった。


「会長、やっぱり素晴らしいっす、そんな会長のために、会長の分、言われた通り、持ってきました!!」

 義信は、そう言って、史奈に衣装を手渡す。


「あらあら、ありがとう、気が利くわね。義信君♪まあ、皆素敵な衣装で来るから、私がお願いしたんだけど・・・・。」

 史奈はそう言って、義信から、衣装を受け取る。

 その衣装である、黒いポンチョを頭からかぶり、魔女の帽子をかぶった。

 一年生の企画、お化け屋敷で使用した、魔女の衣装だ。


「魔法掛けちゃうわよ~」

 史奈はにやにやと笑いながら、手渡されたステッキを振り回す。

 まさに魔女っ娘、史奈だった。

 史奈はバニーガールの衣装を前日祭では着ていたが、ゲームコーナーの衣装が足りなくなるということなので、今回は魔女っ娘の衣装を着ることになった。


 葉月、加奈子はバニーガール、結花と早織はメイド、僕はベストに蝶ネクタイ。義信はシーツを被り、史奈は魔女。

 全員何らかの衣装を着て、持ち回りで花園学園グランプリの司会をすることになった。

 ちなみにメイド服は予算の関係で、着回しで着ることになっていたが、この時だけは、事前に調整済みで、結花と早織は予備のものを着ている。勿論、ゲームコーナーを担当している、バニーガールの衣装も事前に調整済みだった。


 少し準備を始める僕たち。

 ボードを用意したり、プログラムを確認したりする。

 そして、最後に、会場の音響をチェックする。音響の機材は軽音部の先生や、音楽の藤田先生が見てくれた。


 さらには、ステージの飾りつけを簡単に済ませ、その間に、最初のグループの出場者が来ているか確認を取る。


 出場者も、それぞれの出し物の企画があるため、その企画のシフトの時間があるので、その徴性もあってか、集合時間もグループごとに決められていた。


 そして、この文化祭のメインイベントということもあり、出場する生徒を応援する生徒も体育館に続々と集まってくる。

 開始時刻直前には、体育館にはかなりの人が集まっていた。


 僕と加奈子が、ステージの中央に出て。

「皆さん!!こんにちは!!」

 加奈子がマイクを会場に向ける。


「「「「こんにちはーっ!!」」」」

 盛り上がる会場に、加奈子が笑って、僕に合図をする。


「はい。皆さん元気がいいですね。それでは、文化祭のメインイベント、【花園学園グランプリ】を開催します!!」

 僕は元気よく開会宣言をする。 


「第一部の司会をします。生徒会長で二年C組の井野加奈子と。」

「一年B組の橋本輝です。」


「「よろしくお願いします!!」」

 会場は大きな拍手で迎えてくれる。


 先ずは、諸注意と、投票の説明を行う。


「それでは、最初のチームのパフォーマンスに行きましょう!!」

 加奈子のアナウンスで、最初のチームが勢いよく登場。

 チアダンス部の有志で結成されたメンバーたちで、動きの激しいキレのあるダンスを披露していた。


 そう。第一部の司会進行は僕と加奈子が担当することになっていた。

 僕と、加奈子は、出場者の演技を終えるたびに、元気よく司会進行していく。


 出場者にも気合が入っており、ダンスの他にも、お笑い、仮装でのパフォーマンス、バンドのライブなど、いろいろあって。

 無事に、僕と加奈子が司会を務めた、花園学園グランプリ、第一部が終了する。


 休憩を挟んで、第二部に移行する。

 ここからは僕は裏方に徹する。


 そして、第二部の途中で、出場者の待機場所に向かった。

 そこにはすでに、双子の兄の隼人、双子の妹の未来、そして、風歌が到着していた。


 赤城兄妹と風歌は、僕の姿を見て、大きく手を振る。


「こんにちは、遅くなりすみません。改めて、よろしくお願いします。」

 僕は頭を下げる。


「は、はい、よろしくお願いします。」

 未来は緊張しながらも頭を下げる。

「こちらこそ、ありがとうございます。よろしくお願いします。」

 隼人も緊張している。


 少しでも緊張をほぐすため、隼人と未来に着替えてくるように指示する僕と風歌。


 そして、プリ〇ュアに変身した未来は、案の定、そのキャラクターになり切っており、ニコニコと笑う。

 そう。その笑顔は、上品であり、奥ゆかしい大和撫子。まさに、このプリ〇ュアの女の子そのものだった。


「本日は、輝さん、風歌さんにご無理を聞いていただき、ありがとうございます。」

 改めて、未来から丁寧にお辞儀をされ、僕たちも頑張ろうという気持ちになる。


 僕もそれに応え、風歌もどこか安心している、

 未来の品の良さ。まさに、このキャラクターそのものだ。


 そうこうしているうちに、第二部が終了する。


 残りは、僕たちが出場する、第三部。

 深呼吸する僕たち。そうして、僕たちは、控室から舞台袖へと移動した。


「みなさーん、こんにちは!!」

 葉月は元気よくステージに向かって挨拶をする。

「ここからの第三部の司会をします。生徒会役員の二年C組花園葉月と。」

「一年E組の磯部義信が、元気にお届けします。」

 義信の声に、会場は盛り上がる。


「それでは、第三部最初の出場者のご紹介で~す。」

 そうして、最初の出演者が、舞台上に上がり、第三部が始まった。

 第三部最初の出場者は、有志のダンスチーム。今勢いのあるアイドルユニットのダンスを踊った。


 そして。

「ありがとうございました!!続いては。」

 葉月の呼びかけに義信が答える。


「はい。前日祭で、見事福引、二等と、特賞を当てた、花園学園史上最強のピアニスト二人、合唱コンクールの最優秀伴奏者賞一年B組橋本輝君と、合唱コンクール金賞クラスの伴奏者二年C組緑風歌さんのピアノとシンセサイザーの演奏だぁぁ。」

 義信の勢いある声に、拍手が沸き起こる。


「はい。今回は、この二人に加え、何と、素晴らしいメンバーが来ています。YouTubeでアニソンを投稿している、この高校の某生徒二人、通称、【赤鬼メイド】のお二人です。拍手!!」


 葉月の司会に、会場は一気に盛り上がる。

 赤城兄妹こと、【赤鬼メイド】の登場だ。


「皆さん、こんにちは。これから、このキャラクターのキャラソンを、橋本君と緑さんと一緒に披露します!!この曲の歌詞、このキャラクターのように、皆さんも、諦めないで、夢を叶えてください!!」

 未来は本当に、丁寧にあいさつをする。まさにこのキャラクターになり切っての挨拶だった。


 一気に会場は盛り上がる。


「それでは、よろしくお願いします!!」

 葉月の司会の合図で、僕たちは深呼吸する。


 お互いに頷く、僕たち四人。


 僕と風歌が、テンポのカウントを確認して、ピアノとシンセサイザーを奏でていく。


 雄大な前奏。

 夢を叶えていくように、前へ進むようにそんな前奏だった。


 そして、歌声が入る。未来の声も、そのプ〇キュアの声にそっくりで、透き通った歌声で、会場を魅了していく。

 そして、僕たちにも、透き通るように、歌詞が伝わってくる。


 改めて、このシリーズは、オープニング曲や、エンディング曲より、このキャラソンの方が人気な理由が、伴奏を奏でていてわかる。

 雄大なフレーズ、透き通ったメロディーに一気に乗っていく僕たち。


 会場も同じようで、聞き入っている。


 僕と風歌、そして、ここに居るすべての皆、そして、文化祭の一番の功労者かも知れない、早織。


 僕たちは皆、頑張って、夢を叶えるんだ!!

 絶対、夢はあきらめない。それが、僕たちの“道”だった。

 そんな思いを込めて、曲はクライマックスへ。


 美しく、雄大なメロディーとハーモニーだった。

 確かに、フルバンド構成とはいかないが、本当にそれを超える何かがあった。


「「ぴゅー!!」」

「よかったよ~」

 そんな声で、会場は拍手で包まれている。


「ありがとうございました。是非皆さんも、これを機に、【赤鬼メイド】と検索して、YouTubeチャンネル登録をよろしくお願いします!!橋本君、緑さん、そして、赤鬼メイドの皆さんにもう一度大きな拍手を!!」

 義信が豪快に、両手を振ってアピールした。


 退場していく僕たちに、大きく親指を立てて、前歯を大きく見せる義信の姿があった。


「すごい、すごい感動した。」

 舞台袖で待機していた、興奮状態の結花。

「うん。百二十点満点あげちゃう!!」

 その横には、ニコニコと笑う史奈が、舞台袖で迎えてくれた。


 出演者控室へ向かう僕たち。すると。


「よっ、少年、今までで一番良かったぞ!!」

「ひかるん、すごい、ピアノ健在!!」

 原田先生とマユが勢いよくこちらに近づき声をかけてくれた。


 そう、二人は今日も文化祭に来てくれたのだった。そして、見ていてくれたのだった。


「ありがとうございます。」

 とお礼を言い、控室に戻りつつ、その間に原田とマユと少し話をした。


 話を聞くと、二人はものすごく、笑顔で演奏を聞いてくれていて、とても嬉しかった。


「すみません、忙しい中、二日間も来てくれて。マユも部活で忙しいのに、ありがとう!」

 僕はお礼を言ったが、首を横に振る二人の姿。


「なーに、学校がどんな感じか知りたかっただけさ。少年と、加奈子ちゃんのおかげで、やっと、来ることができた。」

「私も。そうかなぁ。ひかるんが居ないと、ここに来なかったもん!!」

 原田先生とマユは笑っていた。

 原田先生とマユは、夏の合宿と、旅行で面識がある。

 二人のコミュニケーション力を考えれば、こうして一緒に居ることも不自然ではなかった。


「それじゃあな、少年。私はこれから、バレエ教室のレッスンだ。」

「私も帰るね。ありがとう。」

 二人は、僕に大きく手を振り、その姿を見送る僕。


 大きな二人の背中を見て、僕も頑張ろうと思う。


 それを見ながら、控室へ向かうと、早織が待っていた。

 涙を浮かべながら待っている早織。


「輝君。お疲れ様。」

 早織は大粒の涙を浮かべながら迎えてくれた。


「早織。どうした。」

 僕は涙の理由を聞く。


「ありがとう。私、感動した。」

 早織は大きく頷いている。

 彼女の目には光るものがさらにこみ上げる。


「うん。僕も良かった。」

 僕はニコニコ笑いながら、早織を抱きしめる。


「うん。私の夢。私の道。絶対。大丈夫だよね。」

 早織は問いかける。

「大丈夫。早織は一人じゃないから。」


「ありがとう!!」

 早織はそう言って、両手を僕の背中に回したのだった。


 早織とハグを交わし、風歌と、赤城兄妹とともに控室に戻った。

 改めて、赤城兄妹からお礼を言われる。


「橋本さん、緑さん。今日はありがとうございました。」

 未来は頭を丁寧に下げた。

「本当に、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」

 隼人も赤鬼のお面を外し、僕と風歌に握手を求めてきたので、僕と風歌は、その握手に応えたのだった。


 花園学園グランプリは、その後も大きく盛り上がり。すべてのプログラムが終了した。

 それは、この文化祭の終了を意味していた。


 メインイベントの行事、大きな支障もなく、乗り切ったことに、生徒会メンバーとして、安堵する。


 残りは後夜祭。


 後夜祭も、皆で歓談して、楽しむ。


 そして、後夜祭の中で、花園学園グランプリの審査結果が発表されるのだった。


「お待たせしました。これから、花園学園グランプリの結果発表を行います!!」

 生徒会長の加奈子の一言で一気に盛り上がる会場。


 出場者にとってはドキドキだ。

 ちなみに、僕は出場者なので、投票の集計作業には参加できなかったため、他の生徒会メンバーに任せていたため、結果は知らない。


 加奈子が、第五位入賞者から発表してく、プラスアルファで特別賞がある場合はそれも発表する。さらに、四位、三位と発表して。


「それでは、第二位準優勝を発表します。第二位の組には、特別賞として、ベスト音楽賞が出ています。」

 加奈子の司会に、おおっとなる会場。


「第二位は【赤鬼メイド】の二人と、橋本君、緑さんのチームです。」

 加奈子から名前を呼ばれ、設置された、ステージの壇上へ上がる僕たち。


 といっても、やはり、恥ずかしがり屋なのか、隼人と未来は、なかなか壇上に上がらず、最後は正体を知っている結花の一押しで壇上に上がり。さらに顔を真っ赤にする赤城兄妹。


 景品の図書券をもらうが。

「皆さんありがとうございます。とてもうれしいです。景品も、またもらってしまって、すみません。というわけで、景品は一緒にやろうと言ってくれた、【赤鬼メイド】の二人にあげようと思います。」

 僕はそう言って、挨拶をする。

 風歌も同じように頷く。


「さあ、それでは、【赤鬼メイド】の二人にも感想を聞きたいと思います。」

 加奈子がマイクを渡す。


「こ、こ、こ、こんにちは、こ、こんばんは、プ〇キュアの正体です。あ、ありがとう、ございました。

「あ、あか、おに、の、お面の中の人です。う、嬉しいです。」

 後夜祭の時点では、プ〇キュアの衣装を脱いでいたので、そのままの状態の、未来と隼人はものすごく緊張していたのだが。

 会場からはものすごい拍手が沸き起こっていた。

 本当に、この場所は温かい。そう思った。


 その後、加奈子の口から、第一位となったチームが発表される。

 やはり、ビジュアル重視で、圧巻のダンスをしたチームが選ばれた。


 そうして、後夜祭も盛り上がりの中、無事に終了した。

 僕たち、生徒会メンバーはハイタッチをして、この花園学園のメインイベントである、文化祭の全日程が無事終わったことを感謝するのだった。




今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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