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114.メイドの衣装、そしてお披露目

 

 今週は再び、文化祭の準備デーがあった。


 その文化祭の準備デーの日。僕と結花は、家庭科室に姿があった。

 当然、そこには早織、そして、家庭科部員たちの姿もある。


 第二回目の家庭科部の文化祭打ち合わせだ。


 今日は、諸々のお披露目の時だった。

 先ずは、赤城兄妹より、メイド服のお披露目だ。


「皆さんの希望を考慮して、作ってみました。」

 双子の兄、隼人が緊張しながらもメイド服を取り出す。


「「おおっ。」」

 家庭科室内にどよめきが起こる。

 皆、興奮冷めやらぬ様子で、赤城兄妹がデザインして作ったというメイド服を見る。


 黒色の光沢のある生地に、フリルの付いた、白いエプロン。そして、白と紺の髪飾り。


 部員全員が興味津々なご様子。


「うん。今までにないクオリティの高さね。」

 家庭科部の富田部長もご満悦。


「「は、はいっ。ありがとうございます。」」

 双子の隼人と未来は富田部長のお褒めの言葉に、タジタジだ。

 顔を赤くしながら、部員たちに頭を下げる。


「大丈夫、自信持ちなって。」

 それを見た結花は、赤城兄妹に向かってニコニコとウィンクして見せた。


「は、はいっ。」

「あ、ありがと。」

 隼人と未来は、少し安心したのか、自信を持った表情にみるみる変わっていった。



 そうして、家庭科部のほぼすべての部員が、メイド服を着ることになった。

「お帰りなさいませ、ご主人様!!」


「お帰りなさいませ、ご主人様!!」


「萌え萌え~♡」

 メイド服を着て、そんな言葉が飛び交う。

 実際に、着てみるとやはり、メイドさんそのものだった。

 まるで、どこか、いいお屋敷に使えている、お嬢様メイドだった。


「さあ。八木原さん達もどうぞ。」

 富田部長の一言に促される。見ると、赤城兄妹が早織と結花のメイド服を用意している所だった。

 勿論、人数分は予算の都合上用意ができないので、誰かが着終わったものを用意して待っていた。


 そして、早織と結花もメイド服を着ることになり。

「ねえねえ。見て、見て、ハッシー。」

「どうかな。輝君。」

 着替え終わった二人は僕にその衣装を見せてくる。


「お帰りなさいませ。ご主人様。」

「お、お帰りなさいませ。ご主人様。」

 結花は堂々と、そして、早織は緊張しながら、そう言って迎えてくれる。


「ははっ。ただいま。」

 僕はそう言ってみる。


 二人はニコニコと笑ってくれた。

 そうして、赤城兄妹のメイド服のお披露目は終わった。

 続いて、赤城兄妹と一緒に、普段は被服の活動をしている、部員たちからも装飾の報告があった。


 可愛らしい綺麗な装飾のデザインのイラストだったり、試作品がそこに並べられて、皆、一喜一憂していたのだった。


 そして、次の、進捗報告と、お披露目は、僕たち、調理班。

 早織が先週末に僕の家で作ったパスタのレシピ、そして、先日作成したデザートをお披露目することになった。


 材料をすでに買い込み、調理室の冷蔵庫に保存していたという早織。


「手伝ってくれる。輝君、北條さん。」

 早織は僕たちの方を見て頷く。


 僕たちも頷いて、先週末に見た、早織の祖父、道三にみっちり鍛えられた料理を披露していく。


「えっと、それでは、皆さんも作ってもらうので、レシピや盛り付けを共有します。」

 早織はそう言いながら、緊張しながらも的確に指示を出す。


「そしたら、輝君はパスタをゆでてもらうんだけど。スマホのタイマーとか使えるかな?」

 早織は少し心配して、皆の方を見回す。

 富田部長から、腕を大きく広げ、頭の上で、大きな丸のサインが来る。


 勿論だが、昨今の時代でも、校内での携帯電話などの機器の使用は禁止という校則がある学校がほとんどだろう。


 この高校も例外ではなく、校内での使用は原則禁止となる。

 だが、昨今は、スマホのアプリを介さないと、色々と不便な場合もある。

 そうなってくると、必要に応じて、使用が許可される。


 今回は授業中ではなく、部活動。

 部活動となってくると、スマホのアプリを介して、記録を残したり、今回の家庭科部の場合であれば、レシピを検索したりすることもあるだろう。

 そういう意味で、部活動の活動場所などでの使用は、顧問の先生によってそう言った使用が許可されていることがあるし、むしろ、それが認められるケースがほとんどだ。

 家庭科部もそれが認められているし、生徒会だってそうだ。


 しかし、真面目で、少し緊張しやすい早織の性格。

 念のために、大丈夫か聞くのも当然だろう。


 早速、スマホのタイマーを使い、パスタの湯で時間を調整する。


 僕は、早織の指示通り、鍋にパスタを入れていく。

「えっと、ゆで時間は七、八分くらいですが、実際に味見をして、麺の固さが大丈夫かを確認してください。若干ですが、鍋の材質だったり、周りの気温だったりそう言うのに影響してくるので。」

 早織はそう言って、僕に鍋の管理を任せ、具材の調理へ。


「味付けは基本で、バター一つに対して、醬油と出汁を大さじ一杯ずつ。そうして、そこに茹で上がったパスタと具材をあえて行きます。」


 早織は皆にもその料理、盛り付けができるように、自分の言葉で、丁寧に説明した。


 材料を切る係は結花が担当してくれていた。


 結花も包丁さばきには慣れなそうだったが、早織のために一生懸命取り組んでいた。

 皆当然、早織の説明にメモを取っていく。

 文化祭では、早織のシフトもあるので、全員で、これを共有しなければならなかった。


 反応が良ければ、先日の、道三が言うように、【春のキングオブパスタ】でもこれを出品する。

 そうして、パスタが完成した。


 そして、早織お得意のデザートも。パスタと一緒に盛り付けられる。


 デザートに関しては、先日の活動で、調理班のメンバーにはお披露目したので、実際に、早織の指示通り、大半の工程を調理班のメンバーが担ってくれたのだった。


 パスタとデザートの綺麗な盛り付けの見た目に、誰もが絶賛したのだった。

 そして、着になるお味の方は・・・・・。


「うん。とても美味しい。」

「最高ね。」

 家庭科部の部員たちの上々な反応。


「素晴らしい、良かったわ。八木原さんに任せて。では、今年のメイド喫茶は、【森の定食屋】さんとコラボということで、よろしくお願いします。」

 富田部長が改めて、早織に頭を下げたのだった。


「はいっ。」

 得意げになる早織。


「よかったね。早織。」

「うん、八木原さんならできるって、信じてたよ。」

 僕と結花は早織の方を向いて、笑っていた。


 きっと、早織は、先週末から今日に掛けて、道三に教えてもらったことを頑張って復習していたのだろう。

 パスタを作る工程、大半は、家庭科部員たちが作ったが、指示出しを含めたデザートを作る工程。

 明らかに、その工程に費やす時間が格段に早くなっている。


 これはきっと、良い所まで行けるだろう。


 そうして、二回目の準備デーの日。

 家庭科部は、お互いの進捗報告と、共有を行い、どれも素晴らしいものだった。


 赤城兄妹の方は、メイド服をさらに量産していく予定で、早織の方は、デザートとパスタときたら、今度は、オムライスなどの別メニューを準備して、皆に共有していく予定になった。


 僕たちは後片付けを済ませ、生徒会の方へ。

 生徒会の方も、ここまでの共有と、簡単なミーティングを行う。


 行うのだが。

 今日は、史奈が不在だった。


「ああ。会長、今日が入試の日なんだって。一般推薦・AO入試の併用形式とか言ってたかな。」

 葉月はニコニコ笑っている。

 史奈は入試の期間。確かに、受験となると本番はまだ先だが、推薦やAO入試となると、秋ごろに決まってくる。


 入試本番。そんな中でも、僕たちのことを手伝ってくれていた彼女に感謝するのだった。


 そして、少し寂しさを覚える僕。


「大丈夫だよ。輝君。あの人は、楽しいことが大好きな人だから。自分の意思で、ここに来ていたんだし。」

 葉月がニコニコ笑う。それを見て、加奈子も、うんうん、と、頷くのだった。


 その言葉を聞いて、確かにそうだとなる僕。

 しかし・・・・。高校三年という言葉に、どこか寂しさが再び、覚えてくるのだった。


「大丈夫だよ。輝君。あの人は絶対に・・・・。」

 それを見た葉月はニコニコと笑った。加奈子も、先ほど度同じように、うんうん、と頷く。


「まあ、入試の結果がわかってから、話そうかな。」

 加奈子はニコニコと笑っていた。

 そう、先ずは、史奈が無事に入試を終えるのが先だ。そのために、信じて、祈っていよう。



 そうして、諸々の学校の活動を終えると、加奈子のバレエ教室へ。


「よっ、少年。元気か?」

 原田先生がいつも通り、パワフルな声で、僕に声をかけてくる。


「はい。」

 僕は頷く。


「そうだな。元気が一番だな。」

 原田先生はニコニコ笑っていた。


 そうして、ピアノ伴奏者として、バレエ教室のクリスマスコンサートの練習に取り掛かる。

 加奈子も、藤代さんも、そして、僕が伴奏をする曲目のステージにオンステする生徒たちも皆、元気よく手と足の先に全神経を集中させ、踊っていた。


 一通りの練習を終えて、原田先生が僕の元に駆け寄ってくる。


「今日も上出来だ、ありがとよ。少年。」

 原田先生の言葉に頭を下げる僕。


「ところで、家庭科部の、あの子は元気か?」

 原田先生は少し心配そうな顔をしている。


「はい。元気になってます。文化祭に向けて、そして、お爺様も退院できたそうで、お爺様の提案で、一緒に、地元のお祭り、【春のキングオブパスタ】に向けても、活動しています。」

「そうか。それならよかった。」

 僕の言葉に原田先生は笑っていた。


「ああ、橋本さん。八木原さんのことですね。」

 僕と原田先生のやり取りに、藤代さんが訪ねて来た。


「そうだね。」

「はい。八木原さんのことは、原田先生から聞きました。頑張っているみたいで良かったです。」

 藤代さんが、瞳の奥には少し涙を浮かべて、話していた。


「ずっと心配していたよ。夏休み、すごく仲良くなったからさ。」

 原田先生の言葉に夏休みの出来事が思い起こされる。

 早織と藤代さんは、一緒に居る時が多かった。砂のお城を作ったり、そして、朝、一緒に散歩をして、朝食を作ったりしていた。


「ハハハ。ありがとう。早織のお店にも来てあげてよ。僕が案内するからさ。」

「はい。是非。」

 藤代さんは笑っていた。


 そうして、今週の活動はこんな形で過ぎていった。

 文化祭まで、そして、その先のクリスマスコンサート、さらには、春のキングオブパスタとまだまだ、イベントが目白押しだ。


 僕も、気合を入れなおして、頑張ろうと思った。



 



今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。

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