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105.雲雀川の大捜索

 

 自転車を無我夢中で漕いでいく僕。

 だが、さらに我を忘れて、無我夢中で自転車を漕いでいる早織。


 さらに、雨がだんだん強くなっていき、視界が悪くなっていく僕。


 前を行く早織、それは、早織の周りだけ、雨が降っていないような感じで、異常なスピードで、早織の自転車は前を走っていく。


 僕は、視界ギリギリに、早織の姿を捉えていたが。強くなる雨、そして、夕暮れのこの時間。

 僕の視界はさらに狭くなり、ついに早織の姿は見えなくなってしまった。


 まだそう遠くへは行っていないはず。


 僕は自分を信じて、自転車を漕ぎ続けた。


 どこにいるんだ?早織!!


 <そいつは、安久尾建設の隠し子なんだよ。>

 <いいのか?そいつには、半分、お前をコケにしたやつの血が流れているんだ。>

 <それを聞いて、友達言えるのか?>


 酔っ払い客の言葉が頭をよぎる。

 ハアハアハアハア。

 僕の息遣いが聞こえてくる。


 ペダルを踏む勢いを止める。


 そして、前方の信号が、赤になる。自転車を止める僕。

 目の前には、ガソリンスタンドと、コンビニがある交差点。


 雨は強く体に当たる。

 初めて、服がびしょ濡れであることに気付く僕。




 がっくりとうなだれる僕。

 ダメだ、ダメだ。本当はそうなってはいけない!!でも。


 <そいつは、安久尾建設の隠し子なんだよ。>

 <いいのか?そいつには、半分、お前をコケにしたやつの血が流れているんだ。>

 <それを聞いて、友達言えるのか?>


 再び、例の酔っ払い客の言葉が頭をよぎる。


 目の前の、信号が青になる。

 だが、自転車のペダルを一向に踏もうとしない僕。


 そうか。早織は、安久尾の腹違いの兄妹だったのか。それが、早織が望んだこと、早織のご家族が望んだことでなくても。

 安久尾の隠し子、安久尾五郎の、兄妹。


 何かに支配される。

 再び、目の前の、歩行者と自転車用信号が点滅し、赤に変わる。


 ああ。そうなんだ。

 早織は。早織は・・・・。もう、何もかもどうでもいい。


 自転車のペダルを一向に踏もうとしない僕。

 そして、服がどんどん濡れていく。もう、乾いている箇所は無いくらい。


 でも・・・・・。


 このままで良いのか?本当にこのままで良いのか?

 自問自答に答えられない僕がいる。


 目を細める僕。前方のガソリンスタンドの二軒先。

 雨なので、近い距離ではあるが、遥か前方に感じる。


 雨でぬれた旗がある。


 『お弁当』と書かれた、旗が。


 ―お弁当・・・・。―

 心でつぶやく。


「お弁当。」

 そして口で言ってみる。


 五感を研ぎ澄ますという言葉。本当に素晴らしい言葉だ。

 外からの情報を仕入れるのに、五感というものは必要不可欠。


 そして、五感の一つ。“味覚”の記憶はいつまでも、僕の奥底に残っていた。


 早織には、早織にしかできないことがある。

 だから、こうして、僕たちの仲間に加わったとき、心から歓迎したじゃないか。

 早織の作った料理。皆、本当に、感動した。


 信号が青になる。

 もう一度深呼吸して、ペダルを踏む。


 どこにいる?どこにいるんだ?早織。


 学校か?僕の、伯父の家か?それとも市役所か?


 雲雀川の橋を渡り、学校方面へ。しかし早織は見つからない。

 市役所の方だろうか。すぐに、市役所の方へと自転車を進めるが、ここでも早織は見つからない。


 伯父の家の方へ向かい、南大橋へ。

 だが、南大橋を渡っても、早織は見つからない。


 どうしよう。急がないと手遅れになってしまう。何か手掛かりは・・・・。


 <もっと近いルートもあるんだけれど。まあ、別の機会に、紹介するね。>

 今日の帰り道、早織の言葉を思い出す。


 もっと近いルート。ということになると。

 僕は雲雀川の川沿いを自転車で進める。

 もう一本、僕の知らない、雲雀川の橋があるのか。


 急いで、川沿いの道を早織のお店の方へ、自転車を走らせる。


 ここら辺の土手で、葉月の姉、弥生さんと出会ったんだっけか。そうして、僕の高校生活が再び始まった。

 今や、早織は、絶対に必要な、仲間だった。

 そう、高校に居る間は、一緒に居ると約束した、大切な人。高校に居る間に、将来、誰にするか、僕に決めてもらう。その、大切な約束の中に居る、仲間の一人。


 川沿いの道を、しばらく走る。

 その途中、緑地公園があり、この道は川から大きく迂回していく箇所がある。

 いろいろと運動場がここら辺にはあるようだ。思えば川沿いの道はそんな感じだ。


 そして。緑地公園の施設の中だろうか。

 緑地公園を貫く、道がある。


 この道は川の方に伸びている。

 一か八か。


 僕は道を曲がって、緑地公園内を貫く道へ自転車を走らせる。

 ウォーキングコースやテニス場、ドッグランなどの施設が目につくが。

 その道は確かに、坂を登っている。


 だから、坂を登った時には、緑地公園内を見渡すことができた。

 そして、雲雀川が見える。


 さらには、雲雀川を渡る橋がある。

 木でできた、人道橋で、流れ橋のような構造だ。


 『この先車両(自転車を除く)の通り抜けは出来ません。』という看板が存在する。


 そして、その橋の入り口には、自転車が止めてあり。

 その木の橋の真ん中に、一人の人影。


 その人影は僕のよく知っている。人影だ。


 安心して、胸をなでおろし。急いで、その人影の元に駆け寄る僕。


「早織っ!!」

 僕は早織を見る。


「・・・・・。よく、ここがわかったね。」

 早織は体の力を抜いたかのように、呼吸を感じるような小さな声で言った。


「ああ。帰り道に話しててピンと来たんだよ。『もっと近いルートがある』って。だから、川沿いを自転車で走って。」

「そうなんだ。」

 早織の瞳にはまるで色が入っていない。輝きが本当に無かった。


「ねえ。下を見て。輝君。」

 早織は橋の下を指さす。

 木でできた橋の下には当然だが、川が流れている。


「川だね。」

「そう、この町のシンボル、雲雀川。」

 早織は頷く。


「ねえ知ってる?輝君。この木の橋、地元では有名で、ちょっとした名所で、抜け道だから、いろんな人が来るんだけど。今日みたいな、強い雨の日は人っ子一人、来ないんだよ。なんでか知ってる?」

 早織は僕に聞いてくる。

 僕は首を横に振る。


「それはね。この橋は、流されやすいんだよ。強い雨の日、台風の日とかは一気に流されて。ニュースにもならずに、知らないうちに、橋が無くなったりするんだ。だからね。こういう雨の日の翌日は、橋が流されていないか、ドキドキしながら、見に行くの。そうして、流されては復旧して。流されては復旧するんだ。」

 早織は深刻な顔をする。そして。


「ねえ、川の流れを見て。輝君。上から下に、川は流れているね。」

 僕は、頷く。ゆっくりと。


「川の流れは、変わらないんだよ。もう、私は無理。川の流れに逆らおうとする力もないの。」

 早織は静かに言った。


「そして、この橋みたいに踏ん張る力も無いの。川の流れもそうだけど、時間の流れも逆らえない。次にこの橋が雨で流されたら、どうなるか知ってる?」

 早織が静かに言う。


「そんなのまた作り直せば。だって、流されては作り直してって。」

 早織が首を横に振った。


「線路を挟んで、駅の向こうに、新しいライトレールができたの知ってる?本当は、こっち側にもライトレールが伸びる予定だったの。この橋を取り壊して。でも、一度、反対されて、川を越える工事は難しいって、少し遅れているんだ。でも、もう、これで、決定的。この橋が次に流されたら、時間の流れで、次は、ライトレールの橋になるの。こんな橋があったことを忘れさせるかのように。」

 早織が深く深く頷く。


「私も地元の人間だよ。葉月先輩より詳しくないけど、地元のニュースくらい知ってるよ。」

 早織がニコニコ笑う。


「どういうこと?一体どうしたの?」

 僕は早織に聞く。恐る恐る。


「だからね。私も、この川も、この橋も、おんなじ何だってこと。あの人が言ってたじゃない。私は、かつて、輝君をいじめてた人と、同じ血が流れているの。そして、犯罪者の娘なの。もう、これは、大きな流れに逆らえない、事実なの。でも。」


「でも?」


「私は、輝君やみんなといる時間が大好きだった。たとえ、恋のライバルでも、楽しかった。でも。もうこれで終わり。私の行く道は、大きな流れは、こうするしかないの。だから。」

 早織が意を決したように頷く。


「ばいばい。輝君。」

 早織は、橋の欄干に足をかけ、よじ登っていく。


「早織!!」

 僕は急いで駆け寄り。早織の両足を掴む。


「どうして、どうしてなの?このまま、私は、死んだ方がいいのに。せめて、何もしないで見送ってよ。」

 僕の両手を振りほどこうとする早織。


「そんなことは、絶対させない!!」

 僕は必死に早織を止める。暴れる早織を、必死に押さえつける。


「なんで。なんでよ。事実を知った今。私が憎いんじゃないの?嫌いになったんじゃないの?」

 早織の言葉は僕の胸を突きさす。


 数か月前、僕も同じ渦中にいたのかもしれない。

 加奈子のバレエのコンクールの時、茂木に偶然出くわして、僕の真実を話さなければならないときが来た。

 しかし、その時は、僕の口から正直に、勇気を振り絞って、深呼吸出来る機会を、皆が与えてくれた。


 しかし、今回の早織の一件はその時とはわけが違う。

 愚か者が一方的に真実を暴露し、否が応でも、すぐにすべてを受け入れざるを得ない状況になってしまった、早織。

 自暴自棄にならない方がおかしい。


 とにかく、早織を止めないと。

 早織は、本当に今、弱っている。今度は、僕が助けてあげないと。



「どうして。どうして。私の自由を奪うの。私の意思を尊重してくれないの。もう、そこまで、嫌いになったの?」

 僕は必死に首を横に振る。


「大好きだから止めてるんだ!!」

「えっ?」

 早織は、一瞬動きを止める。


「確かに、確かに、最初は、もう、このまま、早織が見つからなくてもいいやと思った。」

「じゃあ何でよ?」

 早織がまた掴まれている部分を必死に振り払おうとして、橋の欄干へ向かおうとする。


「思い出したからだ。早織の料理の味。全部。僕の味覚の記憶が全部!!」


「料理?笑わせないでよ。葉月先輩だって作れるじゃない。加奈子先輩だって、ご家族が帰るのが遅いからって、よく作ってるって聞いたよ。お店の、お客の状況だって、見たでしょ?やっぱり、輝君たちと新メニューを作っても、それでもお客は、以前よりは減ってるの!!」

 早織はそうして、必死に身体を僕から振りほどこうとする。


 まずい。義信みたいに力があれば。

 僕も一応は男子生徒で、力はあるのだが。やはり、長く続かない。


 早織の身体を押さえている力が段々と弱まっていく。


 まずい。本当にこのままだと、早織は橋の欄干をよじ登って、雲雀川の急流に飛び込んでしまう。


 さらに、雨は強くなっていく。

 その雨のせいか、僕の身体の力はさらに弱くなっていった。必死に歯を食いしばる僕。


「少年!!」

「輝君!!」


 誰かが叫び声をする。


 必死にこちらに駆け寄ってくる、原田先生の姿。

 原田先生は、加奈子のバレエの先生。僕もピアノコンクールで、色々とお世話になった人だ。


「少年。大丈夫か?」

 原田先生は、僕と一緒に、早織の身体を掴むのを手伝う。


「輝君。大丈夫?間に合ってよかった。」

 原田先生と一緒に居たのは葉月だった。



 葉月も、僅かの力ではあるが、早織の身体を掴む。


「なんで。なんでよ。」

 早織は涙目になる。だが、大粒の雨によって、涙なのか、雨なのかわからないほど、早織の顔はぐちゃぐちゃだった。


 早織は流石に、三人に掴まれているのでは歯が立たないと観念したのか。

 早織の身体の力は、徐々に緩まっていた。

 一方で、早織の心の方はまだ抵抗しようとしているのかもしれないが、とにかく、身体の力が抜けてきたのを皮切りに。


「とにかく、橋の上は危険だ。速くそっちへ。」

 原田先生は一気に早織を立たせ、彼女の腕を引っ張るようにして、川の土手側に誘導する。

 橋の手前には、原田先生のワンボックスカーが止められており、早織をその車に乗せる。


「車から出ないように見ててくれよ。少年。」

 ワンボックスカーの後部座席に僕が乗る。早織の隣に促される。

 必死に早織の腕を掴む。僕。


 原田先生は後部座席のドアを閉める。

 葉月は助手席に乗り込み、原田先生は急いで運転席に戻って、全てのドアをオートロックにして、車を発進させた。


「ふうっ。」

 と胸をなでおろす原田先生。


「事情は加奈子ちゃんから聞いている。本当に立派だった。少年。お前が止めてくれたおかげで、私も間に合うことができた。」

 原田先生は、安心して、先生が来た経緯を説明した。


 早織と僕が店を飛び出した後、加奈子は原田先生に連絡を入れた。

 原田先生は今日、バレエのレッスンが無かったため、バレエ教室で、書類整理がメインだった。

 だからこそ、こうして、一目散に駆け付けてくれたのだった。


「いや~。葉月ちゃんを一緒に連れて来て、正解だった。葉月ちゃん、この町のこと昔から詳しいし、私一人だったら、この場所を見つけられなかったぞ。本当に、ありがとう。」

 原田先生は、葉月にお礼を言う。


「いえいえ。もしかしたらと思っただけです。」

 葉月は首を横に振る。どうやら二人も町中をくまなく探してくれたようだ。

 因みに、葉月も小さいころに、原田先生のバレエ教室に通っていた経緯がある。すぐに辞めてしまったのらしいが。加奈子の応援を通して、こうして、今でも、交流が続いている。


「今、加奈子ちゃんとヨッシーも、ヨッシーの車で、お前たちを探している。無事だったことをまず連絡しよう。ああ。お前の伯父さんにも事情を説明している。伯父さんも、トラックを出してくれていて、後で伯父さんがトラックで、橋の手前に止めてあった二人の自転車を後で、運んでくれるそうだ。」

 原田先生から、一連の話を説明される僕たち。


「あの、ありがとうございます。」

 僕は原田先生に頭を下げる。


「そして。渦中の家庭科部のお嬢さんは・・・・。黙ったままだな。」

 原田先生はミラー越しに、早織を見る。


「加奈子ちゃんのバレエコンクールの時の少年のようだな。いや。その時よりたちが悪いか。」

 原田先生は大きく頷く。


「無理もないか。あの時は皆が少年が自分の口から言うのを待っていたが、今回は酔っ払いオヤジから突然すべて暴露されたのだからな。」

 原田先生はうんうんと頷く。


「・・・・・・。どうして?」

 早織がつぶやく。


「早織?」

「どうして・・・・?」

 早織が深呼吸をする。


「どうしてみんな、私なんかを助けようとするの?加奈子先輩の先生も事情を聞いたでしょ?どうして?私は。」

「ストップ!!」

 原田先生が大声で叫ぶ。


「確かに、お前のいう通り、そうだったかもしれない。実の父親の存在に気付かず育った方が幸せだったかもしれない。だが、実の父親を知って、何だ?何がしたいの?」

「それは・・・・・。輝君と一緒に居ない方がいい。皆と一緒に居ない方がいい。」

 早織は原田先生の問いに答える。


「お前の中ではそうかもしれない。でも、少年はどうだ?葉月ちゃんはどうだ?私はどうだ?それを知ったうえで、お前、早織ちゃんと一緒に居ることを選び取ったんだよ。だからここに来た。皆、さっきまで必死になって、お前を探していた。ここに居ない生徒会のメンバーだってそうだ。ヨッシーだって、加奈子ちゃんだって。お前と一緒に居たいということを選び取ったから、こうして、皆で、探した。血眼になって、このだだっ広い、雲雀川市の中を。」

 原田先生は。大きく頷く。ミラー越しではあるが真剣だ。


「・・・・っ。」

 早織の表情は、何かに気付いた。


「なんで、皆、早織ちゃんと一緒に居ることを選び取ったと思う?」

 原田先生は、早織に聞く。


「・・・・・っ。えっと・・・・。」

 早織は答えられない。


「お前にしかないものを持っているからだ。兄なのか、弟かわかんない。何とか建設の馬鹿どもとは違って、お前は、沢山のものを持っているからだ。それは、きっと、ここの場所、お前の家族、少年と過ごしてきたから、得られたものだって、分かってるから、こうしてここに来たんだ。早織ちゃんは、奴らとは違うことを、皆知ってるからだ。」

 原田先生は大きく頷く。


「それに・・・。お前の本当の気持ちは違うんじゃないのか。一緒に居たくない気持ちは、本当は、違うんじゃないのか。だから、ああするしかなかった。でも、それは違うぞ。私たちを見て見ろ!!」


「あっ。」

 早織の表情は、一気に明るくなる。


「夏休みの茂木の別荘だって、そうさ。朝ごはん、とてもおいしかったよ。私だって、よく覚えてる。早織ちゃんの、君の好きなこと、それをひたむきに頑張るところ。だから、こうして、私もここへ来た。こうして、迎えに来た。」


 原田先生はニコニコ笑った。


「ぐすんっ、ぐすんっ。」

 早織の涙の声。そして。


「あ、ありがとうございます。皆。」

 そして。


「うぁ~ん。うぁ~ん。・・・・・。」

 早織は大きく泣き続けた。

 早織の背中をさすり、抱きしめる僕。


「ありがとう。輝君。」

 早織は、さらに声をあげて泣く。


「本当に、良かった、無事で。」

 僕はその言葉しか出なかった。

 こういう時は本当につらい。ただただ、僕はそれ以外の言葉を口にせず、原田先生の車の中で、その時を過ごした。


「とりあえず、少年の家に向かおう。ああ、早織ちゃんの、お母様とお祖母様から、着替えを預かっているよ。少年の家の離屋で、お風呂、貸してもらえ。」

 原田先生がこの後のことを話す。


 僕と早織は頷く。


 こうして、原田先生は僕の家まで送ってくれた。


「ありがとうございました。先生。」

 僕は原田先生に頭を下げる。


「・・・。本当に、ありがとうございました。ごめんなさい。ご心配をおかけして。」

 早織は一緒に頭を下げる。


「おうっ、気にすんなよ。たくさん悩んで当然さ。こういう時は。」

 原田先生はそう言って、早織に、彼女の母親から預かったという、着替えを渡した。


「本当に、二人が無事でよかった。」

 一緒に居た葉月はにこにこと笑っていた。

 そして。


「早織、今日は輝君と一緒に居て良いから。辛いときは、協力するよ。」

 葉月は早織にニコニコ笑う。

 早織は深々と頷き、葉月にお礼を言った。


「輝。本当に良かったわ。」

 帰って来た僕を見て、伯母が母屋から飛び出す。


「本当によく頑張ったわね。今、伯父さんが、トラックで、二人の自転車を回収しに向かっているから。」

 伯母はそう言って、僕と早織を離屋に案内する。


 葉月と原田先生は、それを見届け、車に乗り込み、帰路に就いたのだった。

 そして、伯母は、いつものように、原田先生に野菜を大量にお礼として、渡したのだった。


 そうして、僕と早織は離屋の玄関に入り、濡れた服を脱ぎ、二人でシャワーへ向かったのだった。









今回もご覧いただき、ありがとうございました。

少しでも続きが気になりましたら、下の☆マークから高評価とブックマーク登録をよろしくお願いいたします。

今後は、更新が少し不定期、週に1回くらいの割合になるときもあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

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