表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/192

100.早織のお店で~第一部完結~

第一部最終回、本当にご覧いただき、ありがとうございました。

 

 【森の定食屋】。八木原早織が経営しているお店。

 僕も、このお店の新メニューを開発したことがある。その時が懐かしい。


 生徒会のメンバー、葉月、加奈子、史奈と出会い。クラスメイト、結花と早織と出会い。コーラス部で心音と風歌。さらには、幼馴染、マユとの再会。

 すべてが詰まった雲雀川の地。


 【森の定食屋】にはテラス席がいくつか用意され、そのテラス席の先には、綺麗な庭があって、いろいろな花が施されている。


「ここで結婚式をする人もいるの。」

 早織の言葉を思い出す。素敵なガーデンウェディングが出来そうで、事実、結婚の雑誌でも紹介されるほど。


 その早織のお店の二階部分に僕は居た。

 白い、タキシードを着て。


 呼吸がだんだんと荒くなってくるのが自分でもわかる。

 こういう衣装はピアノの演奏会でも、とうてい着ないだろう。


「・・・・輝。」

 加奈子の声。

 僕は振り返る。


「お待たせ、輝。」

 ウェディングドレスに身を包んだ、加奈子。

 細身のマーメイドドレスと呼ばれていて。加奈子にぴったり。


 結婚式が行われる。そう。

 僕と加奈子は、お互い、ピアノとバレエで惹かれ合い・・・・・。


「ありがとう。輝。私で、本当に良かったの?」

 僕は頷く。

 今さら何を言っているのと聞きたくなるが。


「私は、あなたが高校時代、一緒に居た他の人より・・・。」

 加奈子はその言葉を言い、少し戸惑いながらも、両手で、両方の胸を押さえて、その両手は大きく半球を描いた。


「はははっ、確かにそうかもしれない、でも。」


「でも・・・?」

 加奈子は食い入るように僕を見つめる。


「このドレスは他の誰より加奈子が似合ってる。その・・・・・。」

 僕も恥ずかしがりそうに、両手で、縦の線を描く。

 バレエを小さいころから習っていて、今も、プロのバレエ団で活躍する加奈子。綺麗な体のライン。わかっただろうか。


「ふふふっ、ありがと、輝。」

 加奈子はそう言ってにっこり笑った。


「さあ、行こうか。皆待ってる。」

 僕は手を伸ばし、加奈子と手を繋ごうとするが・・・・・。


「ちょーっと待った!!」

 階段を勢いよく駆け上がる葉月。


 そして驚く僕と加奈子。

 なぜなら、葉月は光り輝く純白のウェディングドレスを着ている。そのドレスは綺麗な刺繍が施されて・・・・・。

「輝君。私と約束したよね。結婚しようって。今からでも遅くないよ!!パパからも許可もらってる!!」

 葉月はニコニコ笑っている。


「あらあら、そうはいかないわ、葉月ちゃん、加奈子ちゃん。」

 階段を駆け上がってきたのは葉月だけではなかった。葉月の後ろに史奈が大人びたように上がって来た。


 そして史奈も、肩の部分が露出し、胸の谷間を覗かせた、白地のウェディングドレスを着ていた。


「私だって、本気よ~。ねえ、このまま、私と式、乗っ取っちゃおうかしら。」

 史奈はニコニコしてウィンクしている。


「ちょっと待って。」

 史奈が手を差し出してきた瞬間、別の声。だけど、その声は、加奈子でも葉月でもなく。


「ハッシー、私とこのまま式しちゃおう!!」

 結花が勢いよく、階段を登って来た、彼女もまたウェディングドレスで、綺麗なアクセサリーが施されている。


「ひ、輝君。ここは、私のお店よ、私が主役!!」

 結花のその後に、早織が一気に声をあげてやってくる。

 早織もウェディングドレス。そして。


「にへへっ、ご、ごめん、輝君、やっぱ、勇気でなくて、仕度してて、遅くなった。」

 風歌も階段を上がって、僕たちの控室にやって来た。

 当然、風歌もウェディングドレス。

 早織と風歌のウェディングドレスは、とてもシンプル。

 だけど、風歌は若干ピンク地の生地だろうか。


「あーっ、抜け駆けずるい!!ひかるん、わたしと一緒だよね。」

 同じような感じで、マユも階段を駆け上がってやって来た。


「ねぇ、結婚するなら私とだよね。」

「まって、ハッシーは絶対渡さない!!」

「輝君は私のものだもん!!」

 そうして取り合いになるが。


「残念ね、結花。」

 その声にピンと反応する僕たち。

 なんと、そこに居たのは心音だった。

 結花と同じ、アクセサリーを多く施されたウェディングドレスを着ていたが、結花とは違い青地。


「いえいえ、橋本さん、私とはどうですか?」

 そして、その輪の中に藤代さんも入ってくる。彼女は、うん。白無垢で角隠しまで被っている。


 本当に綺麗な美女たち。

 って、感心している場合ではない。

 僕は、一体、何人の、『何等分・・・・・・』おっと行けない。行けない。ゴホンッ。何人の花嫁と取り合いになっているのだろうか。


「良いすね、大統領!!ウハウハで最高っすね。」

 参列してくれて様子を見ていた義信は、僕に笑いながら声をかける。

「違う、違う、ここは結婚式で、僕のパートナーは、当然一人だけで、そのパートナーは・・・。」




「うわぁっ!!」

「ぜぇ、ぜぇ、はぁっ、はぁっ・・・・・・・。」

 見慣れた天井。伯父の農家の離屋の天井。

 服は何も来ておらず、生まれたままの姿の僕。


「さ、さむいっ。」

 そのせいか、一気に体が冷え込む。十月の最初の週末。

 暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので、僕の身体は、一気に冷え込んでくる


 北関東のこの場所は内陸に近く、夏場は暑いが、冬場は一気に冷え込む。寒暖差の激しい場所だ。もう、そんな時期になっていた。


「・・・・・輝君、今日もありがとう。」

 葉月のすやすやとした寝顔。

「輝・・・・。」

 加奈子の寝言、つぶやき。

 結花、史奈、風歌、早織、そして、マユ。

 加奈子とマユ以外の胸は大きく上下して再びドキドキしてしまう。

 加奈子とマユは、他のメンバーと比べて、胸のふくらみが小さいが、加奈子はバレエ、マユは陸上ということもあり、その分体のラインがはっきりしていて・・・・・。


 皆、全員、生まれたままの姿ですやすやと眠っている。

 さすがに、大分時間がたったので、体が冷え込むだろうと思い、暖房のスイッチを入れる。

 もう、そんな時期だ。


 結婚式の一幕は夢だった。ある意味、夢で安心する僕。


 ここの週末を迎えるまでは長かった。

 マスコミの対応は学校の取材で、市長と理事長のフォローもあって、完了したが、それでもマスコミの人、週刊誌の人達が訪問してくることもあって、簡単ではあったがお話をした。

 バレエ教室でも話題が持ちきりになり、心配してくれた人への謝罪とお礼をする。

 勿論、花園学園でそれぞれ心配してくれたメンバーにも。


 そして、マユの方にも取材が来たらしく。

「ちょっと大変だったぁ~。」

 とマユが疲れた顔で話し、時には一緒に取材を受けて、お互いにフォローし合ったのだった。

 といっても、マユにフォローされっぱなしの僕だったが。


 そうこうしているうちに、実家、つまり、僕の父と母から郵便物を転送してもらう。

 僕あての郵便物で、送り主は、反町高校の新理事長。


 そこには謝罪の手紙と、必要があれば高卒認定試験のフォローと認定が取れ次第、高校の卒業証書の授与、もしくは来春より統合された高校での無条件での入学許可、大学の受験フォローなどが丁寧に書かれていた。


 どうやら、過去の年度を遡れば、僕以外にも被害に遭った生徒がいるらしい。

 その方々全員含め、一斉にフォローしますというような内容だった。


「どうする?輝。」

 実際に両親から電話もかかってきたが。


「ううん。再入学する必要はないし、受験や高卒認定のフォローも必要ないよ。僕はもう、花園学園に転入しているし、そこで素敵な友達に出会ったから。」

 と、丁重にフォローを断った。


 そして、この十月の初旬を迎えたのだった。

 夢から覚め、だんだんと思い出して来るこの週末の出来事。


 この週末は、ピアノコンクールの全国コンクールが行われ、机の上には三枚賞状が置かれていた。


『二台ピアノ・連弾部門、銅賞三位 橋本輝、緑風歌』

『個人部門、五位入賞 橋本輝』

『個人部門、七位入賞 緑風歌』

 あとは同じような文章が続く。


「おめでとう。輝。」

「輝君、おめでとう!!」

 皆から祝福され、僕はお礼を言った。

 勿論、ここまで、導いてくれた、原田先生と茂木、藤田先生、岩島先生に深々と頭を下げて。


「輝君、おめでとう。そして、お帰りなさい!!ピアノの世界に輝君がもどってきてくれて、嬉しい!!」

 風歌はこれまでにない喜びを爆発させていた。

 そう、再びみんなのおかげで、戻って来た、僕が好きだったこの世界に。戻ってくることができた。


 今年は、今の状況を把握するために出場した経緯がある。

 次は金賞一位を目指して、頑張ってみたい、いや、それが駄目でも、もっと他の分野でも音楽にかかわってみたい。そう思った自分がたしかに居た。


 そうして、祝福の中、コンクールからの帰路、原田先生のワンボックスカーに乗り込んで、生徒会メンバーともども、ここまで送ってもらい、伯父、伯母が畑の野菜を大量に用いてたくさん料理を作り、早織もそれを手伝い、小さな祝勝会をやったのだった。


 そうして、その後、この離屋に泊った、僕と、美少女たち。

 原田先生からのお祝いは、例の袋だった。


「まあ、もっと、良いものを贈るさ、今は仮ということで。今夜は思いっきり楽しんで来い。」

 原田先生にニコニコ言われ、何度目かの離屋で過ごす美少女たちのとの夜。例の袋を案の定、全て使い切っていたのだった。


 花園学園に入学して、半年強。本当に素敵な仲間、友達。そして、恋人たちに出会った。

 ここまでの期間、本当にいろいろなことがあった、密度の濃い、時間だった。

 改めて、机に置かれている賞状を見る。


 そして、ベッドの上を見る。


 夢の中のようにいるようだが、最後には一人に選ばないといけない。でも。

 まだ、良いんだよね。このメンバーと一緒に居て許されるんだよね。少なくとも、高校にいる間は。


 そう思いながら胸に手を当てる僕。

 誰を選ぶことになっても、ここに居るメンバー、ひとり、ひとりに感謝しないといけないな。


 楽しい思い出をくれた。再び走り出す勇気をくれた。そして、安久尾建設の魔の手からすくってくれた。


「ありがとう。みんな。」

 僕は皆の方を向いて、静かにつぶやく。


 再びベッドに入って寝息を立てる僕。


 再び朝日が昇る。


 そして、朝日が昇って、皆とおはようのキスを交わす。


 僕たちはここから皆と一緒に、学校へ登校して行くのだった。






ご覧いただき、ありがとうございました。

続編、第二部も読みたい、少しでも面白いという方は、下の☆マークから高評価とブックマーク登録をよろしくお願いします。


改めて、第一部、ここまで読んでいただきありがとうございました。

そして、改定前からの作品からご覧いただいている皆様、本当にありがとうございます。

というわけで、皆様に感謝の気持ちを込めまして、続編第二部の他に、本作過去編・スピンオフ版『 ちょっと昔の、勇気の恋舞踊』(https://ncode.syosetu.com/n0310ja/)をご用意しました。


第二部、第五章へ進みたい方は、すぐ下の次へをクリック、またはタップして、第二部へ。

過去編・スピンオフ版へ進みたい方は、このページの一番下の、他の主な作品はこちらというところに、リンクがありますので、そちらのリンクをクリック、またはタップして、過去編をお楽しみください。


過去編の方を多めに投稿して行きますので、第二部の方は、更新頻度が少なくなるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。


それでは、続編第二部または、過去編・スピンオフ版をどうぞお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ