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第9話  救出

夜遅く士郎達は今、佐倉市の本佐倉城の正門が見える草むらの中にいる。城にはたくさんの兵が警備を勤めている。


 (こんなにもたくさんの兵がいる忍び込むのも大変そうだ、とにかく音を立てないようにしなきゃ)


と経丸は思いこそこそと忍び込もうとした。


その姿を見た士郎は


「経丸さん、こういった兵の数が多い場合はコソコソ忍び込むよと怪しまれるから、堂々と入って行ってこの城の城兵になり切った方がいいよ、兵が多いと人の把握が完全に出来てないから」


 片倉さんは驚いた顔で


「士郎君、昨日おかしなものでも食べたか?」


「えっ?何でですか?」


「いや、珍しくまともな事を言っているから」


「それがしだってたまにはまともな事言うわ」


 凛が鋭い口調で


「兄貴、たまにじゃなくてまれでしょ」


「やかましいわ!」


 皆、笑った。


「じゃあ、堂々と行きますか」


 経丸の言葉に皆は声を揃えて


「はい」


 経丸を先頭に警備の薄い所から城に入り込んだ。


 堂々と入ろうと言い出した士郎はもしもの事があったら自分の責任だと思い一番緊張し、体中が震えていた。そんな自分を奮い立たせるために心の中で


(気持ちー‼気持ちー‼)


と叫んでいた。


 城内に入りしばらくすると


「あー‼」


「どうした海老太郎‼」


 海老太郎の声で皆に緊張が走る。


「あの穴から人が出てきたと思ったら猿だった」


「アホか!大事な時に」


 士郎はそう言って海老太郎の脇腹をギュッとつまんだ。


 突如静寂を切り裂く、偉そうな声で


「何をやっとるお前は?」


 士郎は偉そうな声色をに対してイラっとし


「あぁ?」


と言って振り向くと恐い顔の城兵が立っていた。


(まずい)


と思い辺りを見渡すと士郎と片倉さん以外は皆上手く隠れていた。


 ヤバい!どうしよ。これ殺されるんじゃないか


 士郎は城兵を前にして物凄い量の脂汗が噴き出し体中を震える。


 (何とかしないと、なんかいい方法はないか)


士郎焦りながら頭の中で考えを巡らせたがなにも思いつかずどんどん追い込まれていく。


 士郎とは対照的に横で堂々としている片倉さんが


「えっっとですね、人質の見張りを変わって来いと言われたんですけど私達、最近入った者でこのお城大きくて道に迷ってしまって、すみませんが人質の場所まで教えて頂けませんか?」


 丁寧な口調の片倉さんに城兵は


「おー、そうだったのか、じゃあ教えてやるよ」


 片倉さんは


「ありがとうございます」


 と言いって城兵に頭を下げた。 


 片倉さんはあんな堂々としていて凄いな


 士郎は片倉さんの凄さを改めて認識した。


 士郎と片倉さんは城兵に付いて行った。


「ここだ」


 案内された場所にはひのが手足を鎖で繋がれていた。


「じゃあ、よろしく頼む」


 と言って男は去って行った。


 その瞬間、皆が集まって来た。


 経丸が片倉さんに


「さすがです、片倉さん」


「いや、たいしたことないですよ」


 士郎と海老太郎以外の皆は手際よくひのの鎖を外していった。


 ひのは驚き、そして小さな声で


「皆さん、どうしてここに」


 経丸は優しい口調で


「ひのさんを助けに来たんです」


「なぜですか!私を助けたら戦になっちゃうんですよ‼」


 経丸は優しくひのの頭をポンポンとして優しい表情


「例え戦になったとしても私達はあなたを見殺しにする事は出来ませんから」


 ひのは経丸の言葉を聞いて涙目になる。


 その二人の横でガチャガチャガッシャーンと大きな音を立てて士郎と海老太郎の二人が手錠を外すと皆蜘蛛の子を散らすように逃げた。


 この凄い物音に反応した城兵が凄い勢いで士郎とひのの前に現れた。


「おい、どうしたんだ。凄い音がしたが、あっー、お前何してんだ‼人質をどうするつもりだ!」


 士郎は顔を引きつらせながら


「いやぁ、この人質お手洗いに行きたがっていたので行かせてあげようと思いまして」


「お主、鍵貰ってなかったのか?」


 士郎は


「すみません、もらうの忘れてました」


 と言って必死に頭を下げた。


 城兵は呆れた感じで


「全く、お主はそんなにうっかりしててよく採用されたな」


 士郎は恐怖のあまり上ずった声で


「いやぁ、それほどでも」


「褒めてねぇよ」


 経丸達は士郎の事をとても心配そうに草陰から見ていた。


「あっ、殿」


 士郎と話をしていた城兵は何人もの体格のいい男達を引きつれて偉そうに歩いて来る亀田栄助に即座に膝をつけて頭を下げた。


 偉そうに歩いてきた亀田は低い声で城兵に


「おっ、ご苦労様」


「ありがたきお言葉」


「ところでお主の横の男はなんだ」


「殿、何を言っておられるのですか?殿が見張りを頼んだとこの者から伺っております」


「いやぁ、俺そんな奴知らないし、知らない奴に見張りなど頼まないぞ。お前がこの男、勝手に連れて来たのか?人質の見張りという大切な仕事場に」


 亀田の言葉に城兵は慌てて


「いや、こんな奴知りません。私は連れてきておりません」 


 この会話を聞きながら士郎の体から大量の汗が吹き出しながら


 (ヤバいな、会話を変えない)


と士郎は緊張で身体を震わせながら上ずった声で


「とっ、殿、とりあえずこの話はここで終わりにしましょう。人質がお手洗いに行きたがっているのでそれがしはこれで」


「そっか、この話は終わりにしよう」


 亀田の言葉にそれがしがホッとしたその時だった。城兵が


「ちょっと、待ってください殿。こいつ怪しくないですか?」


「こいつが怪しい?」


 この言葉に士郎は泣きそうな顔で


 (バカぁー余計な事を言うなよ〜!お〜い!)


 士郎は慌てて大きい声で


「怪しくないですよ!それがしは全くいや、全然怪しくないですよ!!」


 城兵は士郎を睨み付けながら


「じゃあ、お前の班の班長は?」


 (えっ?班の班長の名前?知らねぇよ、どうしよ。あっ、でも鈴木って名字は全国的に多いここは鈴木に賭ける)


 士郎は震える声で


「鈴木班長です」


 城兵は真顔で


「鈴木って班はこの家には一つもないぞ」


「えっ、こんなに人がたくさんいるのに鈴木って人いないの‼」


 驚く士郎に城兵は


「殿、こいつやはり怪しいです」


 亀田は低い声で


「お前、何者だ」


 士郎はもう覚悟を決め大きな声で


「人気者だぁー!!」


「舐めてんのか!!てめぇ!!ちゃんと名を名乗れ!!」


 怒鳴る亀田を覚悟を決めた士郎は全身を震わせながら必死に睨み付けて(傍から見たら変顔にしか見えないが…)


「てっ、てめぇなんかに名乗るほど安い名前じゃねぇんだよ!!」


 亀田は真っ赤な顔で


「お前、ふざけんじゃねぇぞ‼」


 士郎は刀を抜いて亀田達に刃を向ける。


果たして士郎はこの窮地をどう乗り切るのだろうか




 


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