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第8話   団結

夕方、チビルは経丸の部屋を訪ねて


「経丸さん、手紙が来てます」


 手紙の差出人は亀田からで内容は


「ひのをよこさなければ兵を差し向ける」


と書かれている。


 経丸は手紙を読み終えるとふぅーと大きくため息をつき手紙をしまった。




 次の日の夜中の二時前、士郎は寝床で


 経丸が深刻そうな顔で


「士郎さん、相談に乗ってもらいたいんですけど?」


 (おっ、経丸さんがそれがしに相談乗って欲しいだともしかして)


「士郎さん、実は今まで黙ってたけどあなたの事が好きなの、大好きなの。もうこの気持ち隠しけれない」


「えっ、えっ!!ええええええ!!。噓・・・それがしも経丸さんの事が大好きだぜ」


「それなら、私とキスしてください」


「キス!!!それは早くないか」


 経丸はめっちゃくちゃ可愛い表情で甘えるように


「だって士郎さんの事大好きなんだもん!!」


「わかった」


 士郎は両手を広げキスしようとして目を閉じ、


 ゴチーン‼


 あまりの痛さに士郎は飛び上がって起きると


「いってぇー」


 木刀を持った海老太郎は士郎に


「あっ、士郎さんおはようございます」


 士郎は凄いイラっとした感じで


「お前?それがしの枕元で何をやってんだ」


「昨日士郎さんと訓練の約束してたの出来なかったので今日やろうかと」


 士郎は目を擦りながら


「今?何時」


「二時です」


「二時!!!うわぁぁぁぁぁぁぁめっちゃ寝過ごした!!皆、朝ご飯と昼ご飯どうした!!」


「士郎さん、うるさいです!静かにしてください」


「おっ、おう」


「皆、朝ご飯も昼ご飯も食べてないですよ」


「うわぁ、皆に謝りに行かないと」


「謝りに行くのはおかしいですよ」


「何で?」


「今夜中の二時ですよ」


 士郎は驚きめちゃくちゃ大きな声で


「夜中の二時!!!!確かによく見ればめちゃくちゃ、真っ暗じゃん」


「そうですけど」


「早すぎんだろ!!人を起こす時間じゃないだろ!!お化けが起きる時間だぞ!!」


「あっ!やっぱりそうか」


「何が?」


「士郎さん、何かチューする時の顔してたのでお化けに士郎さんが乗っ取られていると思ったのでこの木刀で思いっきり引っぱたいて士郎さんを取り戻しました」


「てめぇ!!夜中の二時にそれがしを思いっきり木刀で引っぱたいたのか!!」


 海老太郎は元気よく大きな声で


「はい!僕のおかげで士郎さん助かったんですよ!!」


 士郎は自分の口元に右手の人差し指を当てて


「お前、静かにしろ!!今夜中の二時だぞ!!」


「すみません」


「そして、お前、せっかくのいい夢をぶち壊して更に頭にこんなデカいコブ作りやがって!!」


 士郎はそう言って海老太郎にヘッドロックすると海老太郎は大きな声で


「ごめんなさ~い!!ホントごめんなさ~い!!」


 士郎は慌ててヘッドロックをほどいて


「バカ、大きな声出すな!!皆起きちゃうだろ!!」


 海老太郎は口元に人差し指を当てて


「シッー!士郎さん、今二時です。静かにしましょう」


 士郎は思わず笑っちゃいながら


「てめぇ、が言うな!!」


 海老太郎は木刀を士郎に渡して


「とりあえず、やりましょうか」


「暗くてよく見えないだろ」


「士郎さん、戦には夜襲だってあるんですからこの暗さに慣れておきましょうよ」


「まぁ、確かに一理ある。夜襲特訓するか」


「早起きはちょっとの得するって言いますからね」


「三文の得な、それにこれはかなりの早起きだから相当得するな」


 二人は稽古を始めると海老太郎が大きな声で


「くらぁ~い!見えな~い!!怖~い!!!」


「海老太郎静かにしろ!!」


 二人は全然まともな稽古が出来なかったのであった。







 朝五時、経丸は片倉さんとの稽古を終えると片倉さんに


「私は、ひのさんを守りたいです。亀田家は天羽家より強いです。そんな亀田家と戦になってでも私はひのさんを守りたいです。」


 片倉は優しい口調で


「私は、若と同意見です。若が守りたい者は全て守るのが私の使命です」


「片倉さん、ありがとうございます」


「私にお礼などもったいないですよ。私は、若を騙して殺そうとした。奴らが許せないんで私一人でも奴らを始末しようと思っていましたから」


 二人は固い握手を交わしたのであった。




 経丸が縁側で休憩していると凛がスッと隣に来て


「経丸さん」


「どうしたんですか?凛ちゃん」


「ひのちゃんの枕元にこんな手紙が置いてありました」


 経丸は凛に急かすように


「見せてください」


 凛は経丸に手紙を渡した。


 手紙には「少し外に出て行きます」


 凛は不思議そうに


「経丸さん、これはどういう事なのでしょうか?」


 経丸は真っ青な顔で呟くように


「これはもしかして私と片倉さんの会話を聞いて亀田の所に行ったのかも知れないですね」


 凛は全く状況が把握できず


「どういう事ですか?」


 経丸は凛に説明すると凛は急いで片倉さんを呼んだ。


 片倉さんが来て経丸達三人は真剣な話し合いをしているところに


「士郎~士郎~外岡士郎!それがし安房の国の英雄だ~」


 士郎は陽気な感じでどうしようもない歌を歌いながら経丸の肩を叩く。皆の顔をみて


「どうしたんだ?そんな深刻そうな顔をしてパッとしないな、こんないい天気の日に城に籠ってちゃいけないよ」


 凛は呆れながら


「いつもならどうしようもない歌にツッコむけど今はそれどころじゃないの」


「何がどうしようもない歌だ、それがしの名曲を!」


「ごめん、ホントに静かにして。今ひのちゃんが亀田の元に行ったかも知れないって話し合ってるんだから」


 士郎は凛の言葉に驚き


「えっ?じゃあ、さっき城の外を歩いてたのは亀田の所に向かうためだったのか!」


 士郎の言葉に経丸は凄い勢いで反応し


「えっ、ひのちゃんを見たの?」


「見たよ」


 経丸は士郎の両肩を勢いよく揺らしながら


「いつ見たんですか!、いつ見たんですか!!」


 士郎は経丸の迫力に驚きながら


「一時間くらい前に富田亭の前辺りで見ました」


 経丸は士郎の言葉を聞いて


やっぱり、ひのちゃんは責任を感じてたんだ。


「皆さん、すみません。連れ戻すの協力してくれませんか?」


 片倉さんは丁寧な口調で


「もちろん、協力させて頂きます」


 片倉さんに続いて凛も


「私も協力します」


 士郎は


「待って、状況がつかめないひのさんはなぜ亀田家に狙われてるんですか?」


 経丸は強い口調で


「理由はまだわからないですがとにかくひのさんが窮地なんです。私はひのさんを救いたいんです」


 士郎が


「片倉さん、敵の兵力は」


「本佐倉城の城主で下総を支配していて8000の兵を動員できる」


「これは絶対に勝てない相手だな」


 稲荷がつぶやくと


「何言ってんだ!!稲荷!それがしらは勝てる!!」


「嘘を付くなよ、兵力差を見れば絶対に負ける。皆は負けるとわかっていて戦うんですか?」


 稲荷のつぶやきに対して士郎は腹を立て稲荷の胸倉を掴み


「お前、なぜこの場で勝てると嘘を付かない!!なぜみんなの士気を下げることを言うんだ!!」


「俺は嘘を付くのは大っ嫌いだだからホントの事を言った」


「嘘だって必要な嘘ってもんがある。今必要な言葉は味方を奮い立たせる嘘であって。お前のクソみたい士気を下げる事実なんか必要ねぇんだよ!!」


「俺はどんな嘘だって嫌いだ!!必要な嘘?そんなの嘘つく奴のいい訳だろ!!」


「てめぇ!」


 士郎は思わず海老太郎を殴った。


 経丸は慌てて間に入って


「士郎さん!!何やってるんですか!」


「このバカ殴られなきゃ!わかんねぇんだよ」


 経丸は、稲荷をもう一発殴ろうとする士郎を必死に止める。


「嘘ついて、今度は暴力か」


「てめぇ!」


「やめな兄貴!!今は争っている場合じゃないでしょ」


「やめない!こいつは何もわかってない!!」


「わかりたくもないわ。嘘つきなんか」


 この険悪の空気の中、いきなり海老太郎が大声で


「やるしかねぇ!!勝つしかねぇ!!」


 海老太郎の言葉に一瞬、皆の動きが止まる。


「嘘かホントかなんて戦ってみないとわかんないですよね。片倉さん」


「そうだな。戦わなきゃわからないな」


 士郎は海老太郎の頭をぐしゃぐしゃと乱暴になぜて


「ありがとう、お前の言う通りだ!!」


 稲荷も


「今の言葉で覚悟決まったよ。負けるとかじゃない。やるしかないんだ!」


 士郎は大声で


「海老太郎の言う通りだ!やるしかねぇ!勝つしかねぇな!!」


「相手は強敵だけど・・・」


 士郎の言葉に皆が声を揃えて


「だけど?」


「てめぇら怯むんじゃねぇぞ!!」


 凛が


「どの口が言ってんだか」


「何だと!」


 片倉さんが


「士郎君こそ、怯んでんじゃねぇのか?」


「そんな事ないわ!戦う気満々だわ!!」

 

 経丸が


「士郎さん、私達は怯まないですよ」


「そうですよね」


 海老太郎は大きく拍手しながら


「士郎さん、凄いです。怯むとか難しい言葉知ってるんですね」


「知ってるに決まってるだろ!!バカにしてんのか!!」


 海老太郎は凄く大きな拍手をしながら


「天才です!!士郎さんめっちゃ天才です!!!」


「何か煽られてるみたいだわ」


「おい、チビルもなんか言えよ!!」


 チビルは真顔で


「特になし」


「特になしって、何だお前!!」


「ないもんはないからね」




 士郎は最後


「じゃあ、気合を入れるために片倉さん一発ギャクをお願いします」


「えっ、この空気の中⁉」


「こういう時に早くやらないとハードル上がるよ早く、早く」


 士郎の急かすような口調に片倉さんは釣られるように慌てて大きな声で


「チーター崖から落っこチーター!」


 皆、反応せずにシーンとした。


「おい、士郎君フリが酷くないか!」


 士郎は片倉さんの言葉を無視して


「さぁ、片倉さんが盛大に滑ってくださいましたが気持ちを切り替えましょう」


 片倉さんは士郎を呪うように睨み付けながら


 (こいつ、最低だ!)


 士郎は片倉さんの事を気にせず


「行くぞ!安房の国―!!」


 皆が気合の入った声を揃えて


「魂‼」


「おい、士郎君だけいいかっこするなよ」


「いや、片倉さんのギャグもめっちゃ滑っててかっこよかったですよ」


 皆、片倉さんにパチパチと小さく拍手すると


「何このメチャクチャ雑ないじり」


 士郎は煽るように


「いや、いやだってあんなつまらないギャグを大きな声でやる勇気がカッコイイですよ」


 士郎はバカにした感じで


「チーター崖から落っこチーター」


 と片倉さんの真似をすると


 片倉さんは優しい表情で刀を抜きながら


「士郎君、ひのさんを助ける前にここで生死をかけた勝負をしようか」


 士郎は慌てて


「片倉さん、すみません。それがしだいぶ調子に乗りました」


 慌てて膝をついて謝るそれがしを見て笑いながら


「バーカ、本気でやるわけないだろ」


「チキショー、騙された。謝って損した」


 片倉さんは士郎をバカにした感じで


「片倉さん、すみません。それがしだいぶ調子に乗りました。それがしはバカです。オタンこナスです」


 士郎は強い口調で


「おい、勝手にセリフ付けたすな」


 とツッコんだ。


 片倉さんの物まねに皆、大笑いしたのであった。


「いいですか!行きますよ!!」


 経丸の言葉に皆は声を揃えて


「はい」


 こうして天羽家は一致団結してひのを救出する事を決めたのであった。

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