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第7話  日課

経丸は毎朝四時半に起きて片倉さんと木刀を振り込むことを毎日の日課としている。


 経丸が起きてきて稽古場に行くと


「若、おはようございます」


 経丸は片倉さんに


「おはようございます。片倉さん、今日も稽古よろしくお願いします」


 と言って深々と頭を下げた。


「わかりました」


 二人の激しい稽古が始まった。


 稽古が終わりそうな頃合いで士郎が割烹着姿で


「経丸さん、片倉さん朝ご飯できましたよ」


「ありがとうございます。すぐに行きます」


 二人は稽古が終わった後、すぐに朝食に向かった。


 机には豆腐とわかめの味噌汁、卵焼き、ぶりの塩焼き、切り漬けが並んでいた。


 経丸は席に座ると笑顔で


「うわぁ、いい匂い。今日も美味しそうですね」


 士郎は上機嫌で


「経丸さん、ありがとうございます」




 凛が


「兄貴、この鰤の塩焼きめちゃくちゃ美味しい」


「だろー、美味しいだろ。今日早く起きたから時間あるから漁港まで行って捕れたてのブリ買ってきたんだよ」


「どれどれ」


 片倉さんは鰤の塩焼きを一口食べると


「めっちゃうま!流石士郎君!!料理の天才だね」


「いやぁ、ブリがいいんですよ」


 経丸が幸せそうな顔で


「朝からこんな美味しいもの食べれて幸せです」


 ひのはテンション高めで


「わかります、幸せですよね。これホント美味しいです」


 士郎は嬉しそうに


「そんなに喜んでもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです」




 経丸が海老太郎の席を見て


「あれ?海老太郎さんは寝てるんですか?」


 士郎が


「海老太郎は虫取りに行くからあいつだけ先に朝食食べさせました」


「虫取りに行ってるんですか。相変わらず楽しそうで」


「あいつ、ホント虫が好きなんだから」


 天羽家の皆はいつも通り和やかに士郎の作った朝食を食べた。




 海老太郎が一人で虫取りをしていると体中ズタボロの男が海老太郎に

 

「すみません。助けてください」


「うわぁ~〜〜!!オバケ!!」


 海老太郎は必死に走って逃げる。


 ズタボロの男は物凄い勢いで海老太郎を追いかけながら


「待って!待って!俺オバケじゃないから!!」


と大声で叫ぶと


海老太郎の足がピタッと止まって


「あなたオバケじゃないんですか?」


「違いますよ!私は3羽の森で野武士にボコボコにされたんですよ」


「えっ!大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃない!経丸さん呼んできてくれないかな」


「わかりました!!すぐ呼んできます!!」



 経丸は皆との食事を終え一人で部屋にいると海老太郎がいきなり戸を勢いよく開けて


「経丸さん!大変です!!この人困ってるらしいです」

 

 経丸は驚きながら


「何があったんですか?」


 海老太郎が連れて来た体中ボロボロになっている男が


「三羽の森で野武士にやられました。そして姉が連れ去られてしまいました。経丸様お願いします。助けてください」


 経丸は即答で


「わかりました。すぐ案内してください」


「僕も行きます。けどその前に便所行ってもいいですか?ちょっとお腹壊したみたいなので」


「海老太郎さん。一刻を争う事態なので先に行ってます。後から来てください」


「わかりました」


 片倉さんは刀を磨いている時に経丸が誰か見た事もない人とがどこかに向かって行く姿を目撃した。


 経丸は男に案内され三羽の森に着くと。

 

「ここに先ほどまで野武士達がいたんですか?」


 男はニヤッとして


「今もいるけど」


「えっ!」


 男は大声で


「お願いします!!」


 数十人の男達が茂みの中から出てきてその中の大将の男が亀田栄助が


「お前が天羽経丸か?」


「そうですけど、何か?」


「先日、お前がが連れて行かれたひのを返せ」


「ひのちゃんを?」


「はい、ひのをです」


「あなた達のような人にひのちゃんは返せないですね」


「お前、立場わかってるのか?」


 経丸は冷静な口調で


「私は殺されたとしても悪人には屈しない!!」


 亀田は低い声で


「お前のせいでまたひのを取り逃がしてしまっただろ!お前は邪魔をしただけではなく俺の部下をあんな目にあわせてくれたな」


 経丸は冷静な口調で


「ひのちゃんが、何をしたかは知らないけど。あんな捕らえ方はするのはおかしいでしょ!」


「何も知らない奴がでしゃばって来るんじゃねぇ。お前は邪魔だ。だから殺す。そしてその後ひのを捕らえる」


 亀田は凄んだ顔で経丸に言った。そして周りの男達に向かって。


「借りを返す時が来た。お前ら、天羽経丸を捕らえよ」


 一斉に男達が経丸に襲い掛かって来た。経丸はとりあえず逃げようと思ったが相手の数の多さに逃走は不可能と悟り死を覚悟した。


 どうせ死ぬなら一人でも多く倒そう。私の人生これまでだ。


 経丸が敵に突っ込んで行こうとしたその時だった。


「お前ら、攻撃をやめー」


 亀田の叫び声に経丸含め皆が振り返った。


「若、お待たせしました」


 亀田を抑えつけている片倉さんの姿があった。


 経丸は驚きと嬉しさが入り混じった声で


「片倉さん‼」


 と叫んだ。


 片倉さんに抑えつけらている亀田が


「貴様、何だいきなり!何者だ!!」


「人に名前を聞くときはまず自分から名乗れ」


 片倉さんの切れるような目線と静かなトーンの口調が亀田を怯えさせた。


 亀田は震える声で


「本佐倉城城主、亀田栄助三十二歳です」


 片倉さんは優しい口調で


「なぁ、亀田殿。この兵を撤退させて欲しいのですが」


 亀田は声を震わせながら


「何を言うか」


 反抗する亀田に片倉さんはジッと亀田の目を見ながら静かなトーンで


「速やかに撤退させないのならそなたの首をこの場で刎ねますぞ」


 片倉さんの目と口調で


 (こいつは本気で殺る奴だな)


 と思った亀田は大きな声で


「お前ら、撤退だ」


「はっ!」


 亀田達はもの凄い勢いで撤退していった。


 片倉さんは急いで経丸の所に駆け寄り心配そうに


「若、お怪我はありませんか!!」


「怪我はありません、すみません片倉さん。ご迷惑おかけして」


 片倉は安堵し思わず涙を流して


「よかったぁ、若に何かあったらどうしようかと。若がご無事なら何よりです」


 経丸は片倉さんの涙に驚きながらも


「片倉さん、心配かけてすみませんでした」


「ホントに、ホントに無事で良かったです」


 経丸は恐怖で震える体を必死に片倉さんにばれないように抑えようとした。しかし片倉さん泣きながらもそれに気づくが経丸に配慮し気づいてないふりをしたのであった。



 その頃、海老太郎は


「ここどこ?木ばっかり生えててどこがどこだかわからないよー!!」


海老太郎は3羽の森と逆方向にある二羽の森で迷子になり一人大声で叫んでいるのであった。


 

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