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第4話  稲荷

雨上がりのある日


「あぁ~気持ちのいい天気だ!!」


 士郎は両腕を上に伸ばし体を伸ばす。


士郎は日の光が反射しキラキラと光る河川敷を歩いていると集団で一人の男をいじめているのを発見した。


 士郎は大声で


「おい、お前らやめろよ」


 いじめている。男の一人が士郎の顔を見てオラオラした感じで


「なんだ、お前」


 士郎は男の言葉を無視して倒れている男を見て慌てて駆け寄り


「おい、チビるじゃないか。大丈夫か‼」


 士郎はチビるを抱きかかえながら男達を睨み付けて


「おい、てめぇらなんてことしてくれたんだ」


 士郎よりも一回りも大きな主犯格の男が


「こいつは俺達の下僕だから、文句あるのか?お前」


 士郎は恐怖で震えながらも強い口調で


「文句あるに決まってんだろ!それがしの大事なチビるに何てことしてくれたんだ!!」


 主犯格の男は笑いながら


「お前、まさかこの人数相手に逆らう気か?」


 士郎は敵の数を指で数えて


「1,2,3,4,5」


 やはりこの人数相手に戦うのは無理だ。でもチビるがやられたんだ!黙ってこのまま逃げるわけ行かねぇだろ


「おい、わかったらゴミをかばうのはやめろよ」


「ゴミだと!!」


「ゴミに決まってんじゃん。俺の親が雇わないとこいつとこいつの母親は生活出来ないんだぜ」


 士郎は大きく深呼吸し


 (本気で怒る時はまず冷静になる事)


 士郎は自分を奮い立たせるため大きな声で


「外岡士郎ならできる!外岡士郎ならできる!気持ちー‼気持ちー‼」


 と叫びながら飛びかかろうとしたが


「やめろ!士郎」


 チビるの叫び声を聞いてそれがしはピタッと動きを止める。


「なぜ止めるんだ、チビる!」


「この方々の言う通りだ。俺みたいな何もできないゴミはこんな事されてもしかたないんだ。雇ってもらえているだけでも感謝しないと」


 男達は大笑いしながら


「おい、ゴミはちゃんと自分の立場を理解しているぞ」


「何一人熱くなってんだよ。バカ坊主」


「ヒーロー気取って迷惑っぽいぞ、カッコ悪りぃ」


 士郎はチビるの意気地なしに頭来てチビるの胸倉掴みながら


「何もできないからなんだって言うんだよ」


「えっ?」


「何もできないのが理不尽な事される理由になんねぇだろうが!!」


 士郎は思いっきりチビるを殴って自分の頬を突き出し


「おい、理不尽に殴られてんだ。殴り返せよ」


 チビるはいきなり殴られて驚き声も出ない


 士郎はもう一発思いっきりチビルを殴り


「おい、殴り返しせよ!!」


「無理だよ。。。」


 士郎はもう一発殴り


「目覚ませよ!!何理不尽を受け入れてんだ!!戦えよ!!」




 士郎の行動を見た男達は


「ヤバくね、あいつ頭おかしい奴だ」


「俺らよりもわけわからん理由で殴ってるよ」


「関わるのやめとこう」


 男達は撤退していった。


 士郎は更にチビるをもう一発殴る。


「おい、殴り返せよ」


 チビるは殴られた右頬を抑えながら


「士郎、何で殴って来るんだよ」


 士郎は本気の表情で


「それがしはお前が殴り返してくるまで殴り続けるぞ」


 士郎はもう一発チビるを殴る。


「どうした、殴りかかって来いよ」


 チビるは情けない声で


「無理だよ、人を殴るなんて」 


 士郎は強い口調で


「無理じゃない‼」


「お前が無理じゃないとか、かってに決めるなよ」


「俺には人を殴るなんて出来ないよ」


「甘えんじゃねぇ‼」


 士郎はチビるを思いっきり殴り


「いつまで甘えてんだ‼このままあんな奴らの言いなりのまま人生終わらせるのがそんなに楽か!」


「いい加減にしろよ‼」


 と怒鳴りながらチビるは人生で初めて人の事を殴った。


 士郎はよろめきながら


「いいじゃねぇか、この際、腹の中にくすぶってるもん全部出せよ」


 チビるは大声で怒鳴りながら


「俺は、勉強も、武術の才能も何もない!何の才能もない俺は耐えるだけで金が稼げて母親を支えられるならそれでいいんだよ!!」


 士郎はチビルの言葉に


 こいつはあの状況に不満を抱く事も出来なくなってしまったのか


 士郎はショックで呟くように


「お前は、今の生活幸せか?」


「わからない・・・」


 と小さく呟く。


「わからない?」


「幸せとか考えた事ない。俺は毎日母親を養うために稼ぐ事しか考えてない」


「お前に楽しみはあるのか?」


「楽しみ?あーああるよ」


「何だ?その楽しみは」


「月一回、お前と遊ぶ事」


 チビルの言葉に士郎はボロボロと涙を流す。


「だから、また遊ぼうね。じゃあね」


 士郎は慌てて


「じゃあねじゃない!!じゃあねじゃない!!このタイミングで帰るのはおかしいだろ」


 稲荷はキョトンとした顔で


「なんで?話終わったから。それに早くあの方々の元に戻って仕事しないと」


 士郎は必死に大声で


「違う、違う!今だけは絶対に帰るタイミングじゃない!!それにあんな奴らの元に戻る必要なんかない!!」


 チビルは表情一つ変えずに


「いやいや、戻らないと生活できないから」


「それがし今から、お前の欠点を言ってやる」


「いや、そんな事頼んでない?欠点言われるために残らされるの溜まったもんじゃない」


「いいから、聞け」


「強引だよ、士郎」


「お前には二つ欠点がある」


「二つも言うの?ちょっと図々しいよ士郎」


「うるさい、黙って聞け」


「ボコボコにされた挙句、二つも欠点を言われる俺の気持も考えてよ。せめて一つじゃん」


「うるさい、一つも二つも変わらん!!」


「今まさに人の話を聞かない士郎の欠点が露呈してるよ」


「まずお前は自分の事を過小評価し過ぎだ。最初から自分にはできないとか無理とか決めつけるな。もっと自分に自信を持てよ」


「あともう一つは人を頼らなすぎだ。頼れよ!もっと‼それがしはいつでもお前の味方になんだから」


 チビるは泣きながら


「ありがとう、士郎」


 士郎はチビるの頭を鷲掴みでガシガシしながら


「何、改まってお礼なんか言ってんだよ。それがし達親友だろ」


「俺、これからは自分の事過小評価やめてあの人達の元で働くよ」


 士郎は驚いた顔で


「はぁ?何言ってんの?」


「いや、何って何が?」


「なんでまだあんな奴のところで働くんだよ!」


「辛いかも知れないけど時々、士郎に相談しながら働けば今までよりは少し気持ちが楽になって働けるから」


「いや、そうじゃない。あいつの所じゃなくたって働き口はたくさんあるだろ」


「俺、他の職場に転職できるかわからないから」


 士郎は思わず強い口調で


「だ・か・ら!もっと自分に自信を持てよ‼」


 チビるは真剣な表情で


「逆に士郎はなんでそんなに自信に満ち溢れられるんだ?」


「お前、めちゃくちゃ失礼だな」


「いや、そんなつもりじゃなくて純粋な質問」


 士郎は腑に落ちないながらも


「考えすぎたってしょうがないんだよ。意外と人生何とかなるもんだよ」


「あっ、士郎は楽天家なんだね」


「なんか、お前いちいちムカつくな」


「そうかな?」


 「そうかな?」って言葉にもイラっとしたがあえて突っ込まなかった。


「あっ、そうだ。お前天羽家に仕えろよ」


「天羽家って、士郎が仕えてる天羽家?」


「そう、その天羽家」


「待遇はいいのか?」


「お前がそれ聞く!!お前が今務めている所より絶対にいいから!!」


「給料もか?」


 (まさか?こいつの所、給料がべらぼうにいいのか?)


「お前?今務めてるとこそんなに給料いいのか?」


「一日、十六時間勤務で緊急出勤ありの週六で手取り十五万」


「なにそれ?奴隷契約?」


「天羽家は?」


「戦とかもあるから月によって変わるが基本週五日、勤務一日八時間、戦手当もありで手取り二十二万」


「戦手当はいくら?」


「基本、一日一万、敵の首を取れば首の価値によって変わるボーナスが発生する」


 チビルは腕を組みながら


「悪くない条件だな」


 士郎はチビルが上から発言にイラっとしながら


「どう考えても、お前の働いているとこよりだいぶ条件いいだろ!!」


「でも、今の働いてる場所。家から近いんだよな。館山城に勤務となれば片道一時間だもんな」


「めんどくせぇ!!もう行くぞ」


「待って、今の勤め先やめるならやめる挨拶しに行かないと」


「真面目か!そんなもんしなくていい!!」


士郎はボロボロの姿のチビルを館山城まで引っ張って連れて行った。


「ただいまー」


 士郎の声を聞いて経丸達が走ってくる。


「経丸さん」


 士郎とチビるを見て経丸は驚き


「どうしたの・・・そんなにボロボロになって」


「二人で殴り合ったらこうなった」


「大丈夫ですか?」


 凛は冷静に


「片倉さん、救急箱はどこですか?」


「今持ってくる」


 経丸はチビるを手当しながら


「なんで殴り合ったんですか?」


「男の友情だよな、チビる」


 経丸は呆れた感じで


「はい?何言ってんですか?」


「僕もよくわかりません」


「おい、チビる裏切んなよ」


 士郎がチビるの首を絞めると凛が士郎の頭を叩いて


「やめなさい、兄貴。稲荷さん怪我しているんだから」


「士郎、妹の方が随分と大人じゃん」


 士郎はドヤ顔で


「当り前だろ‼それがしと違って優秀なんだから」


「違いますよ、兄貴がいつまでも子供なだけですよ」


「ふざけんなよ、お前‼なぁ、皆それがしは子供じゃないよな」


 皆、無反応だった。



「皆に紹介してなかったな。こいつはチビる、それがしの幼なじみだ」


 チビるは小さな声で


「本名は稲荷です」


「今日から天羽家に仕えることになったんでよろしく」


「ちょっと待って、兄貴が勝手に決めちゃダメでしょ」


「何で?こいついい奴だよ。凛もしかして反対なのか?」


「違う、私が言いたいのはそういう事じゃなくて」


 経丸は凛の肩に手を置き


「凛ちゃん、いいんだよ。仲間が増えるの嬉しい事ですから」


「本当に」


 経丸は笑顔で


「気にしないで」


 チビるはバツが悪そうに


「僕が勝手に仕える形になってすみません」


「稲荷さん、これからよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 経丸とチビるは固い握手を交わしたのであった。


 経丸は笑顔で


「稲荷さん、頼りにしてますからね」


「いや、俺なんて武術出来ないので全然役に立たないと思います」


「お前、卑屈になりすぎそれがしだって飯作る以外何も出来ないんだから」


 士郎の言葉に片倉さんが


「そうですね、士郎君がまだ戦力としては4分の1人前ですからね」


 士郎は


「なんだ!!4分の一人前って過少評価過ぎるだろ!!」


 片倉さんは士郎の肩をポンポンと叩いてニヤニヤした感じで


「士郎君、本気だよ」


「なんだ!その言い方「士郎君、冗談だよ。の言い方で更にえぐる事言うな!!」


 と叫び、皆笑ったのであった。


 こうして士郎の友稲荷が仲間になったのであった。



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