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第28話 寝床

 春日山城で川中島の戦いの時、士郎をかばって重症を負った片倉を士郎は責任を感じながら毎日付きっきりで看病をしていた。


 何日も何日も目が覚めない片倉に士郎は辛抱強く看病を続けていたが目が覚めないで遂に十日もたってしまった。  


 士郎は眠っている片倉に


「片倉さん、それがしと初めて会ったときの事覚えてますか?」


「今だから言いますけどね。それがし最初は片倉さんの事よく思ってなかったんですよ」


 「イケメンだから、どうせ顔だけのつまらない嫌なやつだろうなぁって思ってたんですけど。それがしが経丸に会いに城に行った時に他の人達は部外者は城には入れないって言ってるのに片倉さんだけは笑顔で城に入れてくれてその時この人いい人だと思ったんだけど」


「それがしは経丸にいち早く会いたいのにそれがしが別に会いたくもない長経様の家臣の元に連れていくからこいつやっぱり嫌な奴だなぁと思ったらそれがしが城に自由に行き来出来るように紹介に回ってくれて」


 士郎は下を向いて畳を叩きながら


「ようは昔からカッコつけなんですよ。ズルいんですよ」


「飯は毎回奢ってくれるし、それがしが悩んでいると親身になって心配してくれるし」


「このまま、それがしをかばってかっこつけたままあの世に逝くつもりですか」


士郎はいきなり大声で


「それがしはまだなんも片倉さんに恩返しできてない」


「片倉さんを死ぬほど奢ってあげたいし、片倉さんの悩み事の相談にも乗りたいし片倉さんともっともっと色々な思い出作りたいし」


 士郎はボロボロと泣き出しながら


「片倉さん、目を覚ましてくれよ!!笑ってくれよ!!頼むよ!!」


「どうした、士郎君。人が寝ている横で熱い演説して」 


「えっ?片倉さん目を覚ました!!」


「何そんな驚いてんの?それよりここどこ、今何時?」


「ふざけんなよ、驚くに決まってんだろう。心配したんだぞ十日も目を覚まさなかったんだぞ!!」


「えっ?嘘。十日も俺寝てたの?」


「そうだよ、十日も寝てたんだよ」


「うわぁーもったいないことした。若い時の十日なんて凄い貴重なのに」


士郎は呟くように


「重症で目を覚まさなかった人のセリフではない」


「まぁ、いいか士郎君の熱い演説聞けたから」


 士郎は照れながら慌てて


「違うよ、あれは違うよ」


 片倉さんはニヤニヤしながら


「士郎くん照れるなって」


「照れてるんじゃねぇ、あれは違うんだ」


 片倉さんは優しい表情で


「でも、ちょっと感動しちゃった」


「どこから聞いてたの?」


 片倉さんは笑顔で


「最初から」


「おまえ、殺してやる!」


 二人は大笑いしたのであった。



 士郎は真剣な表情で


「片倉さん」


 片倉さんは茶化すように


「なんだ改まって、告白か?」


「片倉さん、今は茶化さないでください」


 片倉さんは素直に


「ごめん」


「戦の時それがしが未熟だったため片倉さんに重症を負わせてしまい申し訳ございませんでした」


「あー、そんなこと?」


「そんなことって」


「それよりさ、今度飲みいこうぜ」


 士郎は少しあきれた感じで


「そんな体で飲めるわけないじゃないですか」


 片倉さんは士郎の言葉に


「ふふふ」っと笑った。


「ちょっと経丸さん達に片倉さん目を覚ましたって報告してきます」


「おう、頼んだ」


 士郎は立ち去る間際片倉さんに


「片倉さん」


「なんだ?」


「よっぽど酒好きなんですね」


 そう言って士郎が戸を締めきると片倉は呟くように


「士郎君と飲む酒がな」


戸越しでその言葉を聞いた士郎は思わず泣いたのであった。









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