第27話 兄弟
「おい、しっかりしろ虎太郎」
武虎は必死に倒れている虎太郎に呼びかける。
虎太郎は全く返事をしない
回想
兄の武虎の方が勉強は出来たが武術は俺の方が出来兄より周りからも慕われていた。だから俺は自分が後継ぎになると心の中で思っていた。だが違った。
虎太郎、十五歳
俺はある決意をしていた。隣国の太松太郎の元に仕えそのまま国を乗っ取り実力もなくただ先に産まれただけで家督を継承できた兄貴よりも格上の大大名になって自分の方が優れていると証明してやると
虎太郎は仲間と共に稽古に励んでいると
「すみません。虎太郎ここに来てませんか?」
男は
「虎太郎様、お知り合いの方が来ております」
「誰?」
「虎太郎、飯出来たってよ」
「何だ、クソ兄貴!来てんじゃねぇよ!!」
「帰ろうぜ。もう夕飯の時間だぜ」
「兄貴の分際で気安く俺に話しかけるんじゃねぇ」
「お腹空いたろ、今日ご馳走だぜ」
虎太郎は武虎の胸倉を掴みながら
「兄貴、舐めてんじゃねよ!俺は兄貴でもふざけてる奴は殺すぞ!!」
「そんな恐い顔するなよ~」
虎太郎は武虎を殴り飛ばし
「もう、わかったろ。俺は本気だぞ。わかったら二度と気安く話しかけるな!!」
「虎太郎、お前は反抗期なのか?」
「はぁ?てめぇバカにしてんのか!!」
「いや、してない。反抗期なのかなぁ?って思ったから聞いただけ」
「てめぇの事が嫌いだから、強く当たってんだよ!!」
「何で俺の事嫌いなの?俺なんかした?」
この武虎の言葉に虎太郎はブチギレ
「ふざけた事抜かしてんじゃねぇ!!」
と言って武虎をぶん殴った。
「俺の方が兄貴より武術に優れているのになんで俺じゃなくて兄貴が当主なんだよ!!先に産まれたって理由だけじゃ、納得出来ねぇんだよ!!」
武虎は優しい口調で
「それがお前が俺の事気に食わない理由か?」
「そうだよ!」
「そうか、十分な理由だな」
「しかし、悪いが当主を譲る事はできない」
「はぁ?兄貴に譲ってもらうつもりなど元からないわ!!」
「ふざけんじゃねぇ!!兄貴に譲ってもらうつもりなど元からないわ!!実力で証明してやる!兄貴より俺の方が実力があって当主にふさわしいって事を!!」
「いい心意気だ」
「虎太郎様、我々がこいつをボコボコにしましょうか?」
虎太郎は
「お前らは絶対に手を出すな!!」
と怒鳴る。男達は虎太郎の迫力に驚き
「はっ、はい!!」
虎太郎は慌てて
「ご、ごめん。これは俺と兄貴の問題だから」
「兄貴、タイマン張ろうぜ。兄貴が勝ったら俺兄貴に従うわ。俺が勝ったら俺が当主だ」
「それでお前の気が済むならそれでいいよ」
虎太郎は武虎を殴り出す。武虎は全く動かず全ての攻撃を受け止める。
(兄貴はよけもせず殴り返しても来ない。なぜだ!なぜなのだ!!)
虎太郎は武虎の態度に恐くなり殴りながら
「兄貴、なぜ殴らない!!兄貴!!」
(この男、何を考えてる。顔から血が噴き出してるのに表情一つ変えないぞ。)
「兄貴腰抜けか、殴り返せよ!!」
あまりの恐さに虎太郎は殴るのを一旦やめて大声で
「兄貴てめぇ!!殴り返さないと本気で殺すぞ!!」
それでも武虎は全く変わらない。
虎太郎は気持ちが昂り過ぎて泣きながら
「兄貴!!マジで殺すぞ!!」
武虎は呟くように
「俺は味方にはどんなことがあっても手を出さない主義なんだ」
虎太郎は膝から崩れ落ちる。
「こんなに殴って敵意むき出しの俺を味方と言ってくれるのか」
武虎は崩れ落ちた虎太郎の右肩をポンと優しく叩いて
「気が済んだか、虎太郎」
「兄貴~!!」
虎太郎はそう泣け叫びながら武虎に抱きついた。
虎太郎は涙を流しながら
「兄貴、こいつらも不動家で雇ってくれないか。こいつら根はいい奴らなんだ」
と必死に訴える。
「お願いします。兄貴、お願いします」
「虎太郎様、我らは雇ってもらえるわけないですよ」
「兄貴、お願いします。こいつらは絶対に役立ちますから!!」
武虎は男達を見て
「俺はこの日ノ本で一番最強の軍を作る。その為にお前達にぜひ力を貸してもらいたい」
「えぇ?」
「不動家で働け迎え入れるぞ」
「俺らみたいな素性のわからない集団を受け入れてくれるんですか!!」
「不動家うちで活躍し、自らを誇れる人間になれ」
「はい!ありがとうございます」
男達は深々と武虎に頭を下げた。
その姿を見た虎太郎は
(兄貴は俺とあまりにも器の大きさが違い過ぎる兄貴は実力で次期当主に選ばれたんだ)
「兄貴」
「どうした。そんな真剣な顔して」
「俺、一生兄貴に付いて行く」
武虎はキョトンとした顔で
「ストーカー宣言?」
虎太郎は慌てて
「違う!そういう事じゃない!!」
武虎は笑いながら
「わかってるよ」
虎太郎は強い口調で
「じゃあ、からかうなよ兄貴!!」
武虎はフフッと笑う。
「兄貴の為なら命懸けで戦います」
武虎は虎太郎の右肩を優しくポンと叩いて
「頼もしいな。頼りにしてるぞ」
虎太郎もの凄く嬉しそうな顔を武虎に向ける。
回想終わり
虎太郎虫の息になりながら
「兄貴、俺は約束は守ったぞ」
「おい!虎太郎!!死ぬな」
「虎太郎!!!」
虎太郎はいき途絶えた。
武虎の泣き叫ぶ声が川中島一帯に響き渡るのであった。




