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第24話  川中

 金崎軍主力隊九千と天羽軍千は妻女山を物音たてずに下って行く。金崎Uー太、Oー太率いる二千の兵と天羽軍片倉さんとチビルと海老太郎を含めた千人は妻女山に留まる事になった。


 山を下っている経丸は不安そうな顔で


「残った皆さんは大丈夫ですかね?」 


 凛は経丸の肩をポンと叩いて


「片倉さんがいるので大丈夫ですよ」 


「それならいいですが」


 経丸の顔は晴れない


 凛は経丸の両肩を優しく揉みながら 


「経丸さん、家臣を信じるのも殿の役目ですよ」


「そうですよね」


 ひのが真剣な表情で凛と経丸の手を取って


「残った皆は絶対に死なないです!だから私達も必ず生きて帰ってまた皆で楽しい事しましょうよ!!」


 経丸は笑顔で


「そうだね、ひのちゃんの言う通りですね。また皆で楽しいことしよう」


 凛も笑顔で


「とりあえず、皆で豪勢な祝賀会しましょうね」


 経丸は凛の肩を揉みながら


「それいいですね!凛ちゃん」


 ひのが


「私、楽しみになってきました」


「二人とも頑張ろう」


 凛とひのは声を揃えて


「はい、頑張りましょう」


 三人が気合を入れて終わった後にゲッソリした顔をした士郎が現れてか細く震える声で


「皆、頑張ろう」


 凛は心配そうに


「どうしたのその顔」


「あまりの緊張で上からも下からも・・・」


 凛は士郎の言葉を遮り


「あ、ごめん私から聞いといてあれだけどそれ以上は言わないで」


「おっ、おう」


 その頃片倉さん達は


 チビルが不安そうな顔で


「経丸さん達行ってしまったね」


「そうですね、経丸さん達大丈夫かなぁ」


 不安そうな顔の海老太郎とチビルに片倉さんが頼もしい表情で


「大丈夫、若達は強いから」


 海老太郎は片倉さんの背中をバーンと叩いて


「そうですよね。経丸さん達めちゃくちゃ強いもんね」 


 片倉さんは苦笑いしながら


「痛たいよ。海老太郎君」


「あっ、すみません」


 片倉さんは両手を大きく叩いて気を引き締め、海老太郎達に向かって 


「皆、とにかく敵を倒すぞ!!」


 海老太郎達は大きな声で


「おう!」


 片倉さんは夜空を見上げて


 (殿、自分の命に代えてでも絶対に若を死なせませんから)


と心の中で誓ったのだった。


 朝六時、川中島一帯は霧に覆われている。


「いいですか、皆さんこの戦いは日ノ本の歴史上最大の戦いになるでしょう、その戦いに私達は参加している」


 金崎は右手で拳を作りグッと天に突きつけて


「自分達に誇りを持てぇー‼」 


 兵達は声を揃えて


「オー‼」


 金崎はけして大げさな事言っているわけではない。日ノ本一、最強の騎馬隊と言われている不動軍と日ノ本一、最強の軍神と言われている金崎軍が総力をかけて戦う。まさに日ノ本一、最強決定戦なのである。


 金崎は経丸に優しい口調で


「経丸さんも一言気合の入る言葉お願いします!」


「わかりました」


 経丸は右手を天に突き上げ


「気持ちー!!気持ちー!!」


 と大声で叫ぶ。


 皆も右手を天に突き上げ大声で


「気持ちー!!気持ちー!!」


 皆、一致団結天羽、金崎連合軍は士気が上がった。




 金崎は経丸に


「士郎君と経丸さんはこの戦ずっと私のそばにいてください」


 二人は少し驚き声が合わさって


「えっ!!」


 金崎は鋭い目つきで


「戦というものをお教えしますよ」 


 二人は声を揃えて


「はい!」


 ひのが金崎に


「金崎さん、私達は?」   


「凛ちゃんとひのちゃん我が軍の中心にいて今日の戦いをしっかりと見ていてください」


「私も戦いに出たいです!」


「ひのちゃん、悪いけど私を守って」


「えっ、凛も経丸さん達と共に前線で戦いたくないの!」


「私の実力じゃ足手まといになるだけだから。今回は皆の怪我の治療とかに専念する」


「そうですか」


「もしも戦いに巻き込まれることになったらひのちゃんが私の側にいてくれたら心強いからだから私の側にいて」


 凛が自分を頼って来ることがひのちゃんは嬉しく笑顔で


「わかった、私が全力でお守りします」


「ありがとうひのちゃん。頼りにしてるから」


 凛とひのちゃんは固い握手を交わした。


 凛とひのちゃんの二人は声を揃えて金崎に


「経丸さんと士郎さん(兄貴)の事をよろしくお願いいたします」


 頭を下げる二人に金崎は優しい表情で


「任せてください」


 金崎は士郎と経丸を連れて軍の前線に向かっていった。




 その頃、不動軍は疾風率いる別働隊一万二千を妻女山に向かわせて本陣は八千の兵で鶴翼の陣を構えて金崎軍が妻女山から逃げてくるのを待ち構えていた。


 軍の中心に椅子に座っている不動武虎は横に立っている虎太郎に


「そろそろ来るか?」


 虎太郎は


「後、二時間以上は来ないかと」


 不動武虎は軍配を持つ自分の震える手を見て


「そうかぁ。虎太郎、俺緊張してるのかな」


「武者震いですよ。お屋形様」


 不動武虎は笑いながら


「そっか、そっか、武者震いか」


「この戦で勝って日本海を手に入れましょう」


 虎太郎の言葉を聞いた不動武虎は先ほどまでのおどおどした表情とは真逆の強く頼もしそうなギラギラした表情をし低く力強い声で 


「そうだな、日本海を絶対に手に入れるぞ!」


 不動武虎は不安な気持ちが飛び、闘志が湧き出てきたのであった。


 不動武虎は広い領土を支配していたがその領土はすべて海に面してなかった。海がないために領民の暮らしはきつかった、海があれば領民が豊かに暮らせる、不動武虎も領民もそのことを痛いほど理解している、海奪回は不動家と領民の悲願である。そのためには日本海を支配している金崎を何としてでも倒さないといけないのだ。


 (金崎は強い。しかし必ずこの戦で潰さなければ)


 不動武虎は気合を入れるため思いっきり木の軍配で左太ももを叩いた。


 霧は晴れた。


 今それぞれが色々な思いを抱えながらこの川中島で歴史上最大の戦が始まろうとしていた。









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