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第23話 勝手

 春日山城の天羽家が借りている一室で天羽家の女性陣が戦の格好に着替えている時、凛は優しく経丸の肩を揉みながら


「また、経丸さん力が入り過ぎています」


 ひのはお茶を持ってきて


「一口飲むだけで少し落ち着くので飲んでください」


 経丸は一口飲んで気持ちを落ち着けた。


「二人のおかげで緊張がほぐれました。ありがとう」


 経丸の言葉に凛とひのちゃんは笑顔になった。


 経丸達は士郎達と合流し経丸は真剣な表情で


「皆さん、敵は強いですが覚悟を持った皆さんなら絶対に大丈夫です。皆を信じて、そして自分を信じて戦いましょう」


 皆は声を揃えて


「はい!」


 皆、円陣を組んで


「片倉さん気合を入れるためいつものつまんないギャグお願いします」


 片倉さんは笑いながら


「つまんないとは失礼だな、士郎君」


「いいから早く」


 片倉さんはバカにした感じで


「モノマネ、士郎君と海老太郎君の愉快な関係性」


「士郎さんって弱虫ですね。虫けら以下じゃないですか」


 片倉さんバカにした感じで誇張しながら


「てめぇーぶっ飛ばしてやる!」


「ギャー痛い!痛い!」


 片倉さんイキる感じで


「謝るか?謝るか?」


「ごめんなさい、ごめんなさい」


「謝ったから解放してやるわ」


 片倉さん経丸の背中の後ろに回り込んで


「謝れば簡単に許すとはチョロい奴め」


 片倉さんまたバカにした感じで誇張しながら


「てめぇ!ぶっ飛ばしてやる~」


 士郎以外皆、大笑いしっぱなし


「てめぇー!ぶっ飛ばしてやる~」


 片倉さんに襲い掛かろうとする士郎を片倉さんは笑いながら


「皆!今本家が実演してくれてます」


 皆、爆笑する。士郎も皆につられて笑ってしまう。


 しばらく皆笑い倒し笑いが完全に落ち着いてから経丸は大声で


「安房―‼」


「魂‼」


 天羽家の皆が気合を入れた後スッーと戸が開き


「経丸さん」


「金崎様」


「ただいまから不動軍の進軍を止めるため信濃、川中島に向かいます」


「はい、わかりました」


 経丸は皆の方向を向き真剣な表情で


「皆、金崎様について行きますよ」


 皆は声を揃えて


「はいっ‼」  


 天羽軍と金崎軍とは決戦の地川中島に向かった。この川中島は金崎家と不動家の領地の間にあり中心に三本の川が流れている盆地ある。川中島の中心から東に不動軍の陣営となっている海津城がある。


 不動軍陣営では温泉に家臣と共に浸かっている不動武虎の元に伝令が


「お屋形様、金崎軍が遂に動き始めました」


「そうかぁ、やっと動いたかぁ、敵兵の数は」


「ざっと一万三千にございます」


 不動武虎は兵の数を聞いてビックリして


「一万三千⁉、我らより七千も少ないのか」


 周りにいた家臣達が



「我ら最強の騎馬軍団を舐めてるのか金崎は!」


 騒ぎ立てる家臣達に不動武虎は低い声で


「一旦落ち着け」


 この一言で家臣達は静まり返った。


「先に上がる。虎太郎、疾風殿、優、大ついて来てくれ」


「はい」 


 不動武虎は家臣で二つ年下の三十五歳でやんちゃな顔つきの弟の虎太郎、家臣の四十代でイカツイ顔の武士疾風と武士疾風の息子で金髪の賢そうで名前の通り優しそうな顔をしている士郎と同い年の武士優と優の家臣で背が小さく人懐っこそうな顔の大を自室に連れて行った。


「金崎軍はここ海津城に必ず攻めてくる、ここで籠城すれば兵の少ない金崎軍など返り討ちにできると思っているが四人はどう思う」


「一か月も前から海津城で待機をしていた兵達は戦はまだかとイラだっています。ここで籠城を選択すれば士気は下がり家中は分裂する可能性があります」


 虎太郎の言葉に疾風も乗っかるように


「ましてや俺達最強の騎馬隊が馬鹿にされたのに決戦を挑まないとなればお屋形様を臆病者だと思い離反する者が相次ぐと思う」


 不動武虎は顔をしかめながら


「ってことは決戦を挑めって事か」


「はい」


「しかし、金崎は戦の天才だ。そんな相手とまともにぶつかって大丈夫か?」


 疾風が


「お屋形様は慎重過ぎます。我らは最強の騎馬隊なんですよ、蹴散らしてやりましょうよ!!」


「虎太郎はどう思う」


「俺が付いていますよ。それに不動家は日ノ本一最強の騎馬隊だもいる金崎家などビビる相手ではないと思います」


「俺、金崎なんか弱いと思ってます。俺の部隊だけでも金崎家を崩壊させられますよ」


 呼んでもいないいきなりの二十歳の自信過剰な少しナルシスト気味の武虎の甥っ子、虎雲の登場に武虎は少し戸惑いながら


「虎雲、何でここにいる?」


「軍議をするんだろうなと思い来ました」


 武虎は少し嫌な顔をしながら


「そっかぁ」


 虎雲は武虎が嫌な顔をしてることなどまったく気がつかず


「俺の部隊が先鋒を務め、金崎家を蹴散らして来てまいります」


「勝手な事をしてはならぬ、虎雲には海津城の守りを頼みたい」


「嫌です!!海津城の守りなどもっと無能な奴に頼むべきです。俺みたいな優秀な奴は前線で戦い手柄を立てさせるべきです」


 虎雲の言葉に虎太郎はイラつき


「お前!!お屋形様の意見に逆らう気か!!」


「やめろ、虎太郎」


 虎太郎は武虎の言葉を聞いておとなしく黙る。


 武虎は虎雲を優しい口調で諭すように


「城を無能な奴に任せて落とされたら、敵に勢いづかせ壊滅の原因にもなりえない。今回の戦海津城の守りこそがこの戦の勝敗を握ると言っても過言ではない。だからその重要な任務を一番優秀な虎雲に任せたいんだ」


「そんな、重要な役目なら俺にしか出来ない、じゃあ俺に任せてくれ」


「てめぇ!!調子ってんじゃねぇぞ!!」


 怒る虎太郎を武虎は制しながら虎雲の手をがっちり両手で握って


「ありがとう、本当に頼むよ」


「はい」


「大」


「はい」


「お前も海津城に残ってくれ」


「えっ!」


「海津城は今回の戦のカギを握る大事な場所だ。虎雲の言う事をしっかり聞いて虎雲の手伝いをしろ」


「はい」


 不動武虎は一呼吸おいて


「じゃあ、虎太郎、疾風殿、優共に軍率いて八幡原で金崎を迎え討つぞ!!」


 疾風と優は声を揃えて


「はい」


 と答えた。


 しばらくして武虎は大を呼び寄せて


「大、本当はお前も連れて行きたかったんだがあいつ(虎雲)を一人にしておくとろくなことしないから見張りとしてお前を残す。しっかりと見張りを頼むぞ」


「なるほど、そういう事でしたか。わかりました」




 不動軍は海津城を出て八幡原に進軍しそこで陣を構えた。


 八幡原に進軍した不動軍の情報を聞いて金崎は


「よし、皆さん今から妻女山に行きますよ」


 金崎の家臣は慌てて


「妻女山は裸山じゃないですか不動軍に包囲されたら終わりですよ」


妻女山は不動軍の陣営の南に位置する小高い裸山なのである。


金崎は家臣の肩をポンと叩き


「不動武虎はとても慎重な男です、絶対に勝てると思った戦しかやらない。だから私が圧倒的不利な状況にならないと決戦にならないんですよ」


 そう言って金崎はグビっと酒を飲んだ。


 金崎軍が裸山の妻女山に陣を取ることで数の多い不動軍は圧倒的に攻め込みやすくなるのである。


「しかし、不利な状況になって最強の騎馬隊不動軍に勝てるんですか」


 金崎はグビっと酒を飲んで


「勝てますよ、私は毘沙門天の化身ですから」


 酒を飲む金崎に家臣は不安そうに


「殿、まさか酔っぱらってるんですか?」


 金崎は笑顔で


「私は酒は飲みますが酒に飲まれた事はありませんよ」


 金崎はそう言ってまたお酒を飲んだ。


 その姿を見て家臣はとても不安なのであった。



 その頃不動軍陣営では


 伝令が慌てた感じで


「お屋形様‼」


 武虎は伝令を見て不安な表情で


「どうした?」 


「金崎軍が妻女山に陣取りました」 


 武虎のは驚いた表情で


「まことか‼」


 隣にいる虎太郎は首を傾げて


「おかしいですね、我らよりも人数が七千も少ないのにあんな攻めるのにも守るのにも不利な場所に陣を置くなんて」


「そうだな、金崎は何を考えているのか?これは何の罠何だ」


 不安そうな表情の武虎に虎太郎は自信満々に


「お屋形様、私に策があります」 


「なに?」


「啄木鳥戦法でございます」


「何?啄木鳥戦法とは」 


「啄木鳥は木の中に入った虫を取るのときあえて穴と反対側を突っつきます。そして突っつく音に驚いて穴から飛び出した虫を食べるのでございます」


「つまり金崎を裏側から襲いそれに驚いて逃げ出した所を表で待ち構えていればよいということか」


「さすがお屋形様、その通りでございます」


 武虎は自信をもった表情の虎太郎を見て


「虎太郎がそこまで自信があるならこの策でいこう」


「はい」


 武虎は虎太郎が策を考えてからは一回も負けたことがないから虎太郎を完全に信用しているのであった。


 海津城では


「金崎軍妻女山に陣取った模様」


「そうか、なら今から俺らは妻女山に攻め込むぞ」


「虎雲様、ダメですよ!!僕らは海津城を任されているんです。勝手な事はしちゃダメです」


「勝手な事じゃない!!お前はみすみすこの好機を見過ごすのか!!」


「好機でも何でもないですよ。今動けばただの軍律違反!!絶対にダメです」


「うるさい、臆病者のお前はここに籠ってろ!俺は今から俺こそが最強に強い武将って事を証明しに行ってやるんだから!!」


 大は止めたが虎雲はそれを振り切って海津城を出発し妻女山に向かった。


 虎雲は兵達に向かって


「皆の者!俺ら最強軍団虎雲軍の存在感を示すため大声を出し敵を威嚇しながら進め!!」


「はっ!!」


 虎雲軍は怒号を上げながら進む。


 この怒号を妻女山で聞いていた。天羽軍と金崎軍は


 経丸が金崎に


「敵が攻めて来ますね」


 金崎は


「奇襲で来ると思いきや怒号を上げて来るとは」


 経丸は金崎に


「敵を山の上から迎え討ちますか?」


「いや、反対側からも敵は攻めて来るはずです」


 凛が


「一気に私達を挟み撃ちするって事ですね」


「おい、先生。それがしら最強の騎馬隊に挟まれたらヤバいじゃないですか」


 慌ててる士郎に金崎は


「士郎君、作戦通りですよ」


「どういう事」


「今から一気に敵の怒号と逆方向に山を下る」


「そして一気に山を下った勢いそのまま私達を待ち構えている不動軍本陣に攻めかかる」


「二手に軍を分けている不動軍に私達連合軍がそのまま襲い掛かれば不動武虎の首を取れる!!」


 金崎の策を聞いて皆納得する。


「ここからは時間が勝負となる。一気に攻めかかりますよ!!」


「はい」


 天羽、金崎連合軍は全力で山を下って行った。



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